あの茜色の空を見上げて   作:イズナ/泉中

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やっと完成。今3桁狙ってイベント走ってるのであまり時間は取れませんが、空き時間見つけて頑張ります。


Vier

 

 

 時は過ぎ放課後。私達五人はとあるライブハウスで練習をしていた。

 

 「もう一回サビからやろう。沙綾、カウントよろしく」

 

 「オッケー!いくよ、1・2・3・4!」

 

 沙綾のカウントに合わせて楽器の音が響き渡る。自分の演奏に集中しながらも、周りの音もきちんと聞いておく。コードはもう覚えているので、あとはどうアレンジを加えて皆と合わせられるかだし。

 

 (ここは気持ち速くても問題ないね…!)

 

 愛用の薄紫色のギターを全力で弾きながら、本来のリズムとはほんの僅かにずらして皆より先行する。イメージとしては皆の《音》を引っ張っていく感じか。

 

 サビの部分だけ演奏し終えて一息。どうやら上手くいったようで、皆の喜びが伝わってくる。

 

 「…上手くいった!」

 

 「やったね!」

 

 「初めてだよね、ここまで上手くできたの!」

 

 壁際に座り込み夏希、真結、文華の三人が喜んでいるのを眺めていると、沙綾がこちらにやってくる。

 

 「茜のお陰だね、音で引っ張ってくれてたでしょ?」

 

 「…やっぱバレてた?」

 

 「わかるに決まってるじゃん、一緒に練習したのは一番長いんだから。それに、茜があそこのリズムで走り気味になる事なんてないんだし」

 

 私の隣に座りながら沙綾はそう言って笑う。やはり沙綾にはバレていたらしい。伊達に長い間一緒に練習していた訳ではない…という事か。

 

 「でも、よくあんなことできるね。どうやってやってるの?」

 

 「うーん、なんていうんだろう。自分の《音》をロープにして、皆の《音》を引っ張るイメージ?」

 

 「へぇー。結構難しそうだね」

 

 「集中力使うから、あんまり長くは出来ないけどね。まあ、沙綾もできるようになると思うよ?私が出来たんだし」

 

 要領も覚えも悪い私が出来たのだから、多分練習すれば誰でもできるようになると思う。私は呆れるくらい物覚えが悪くて、人が二、三回やればできることを十回も二十回もやってようやく…何て事もザラだ。

 

 「それにしても、もう初ライブまで1ヶ月無いんだね」

 

 「そうだね…なんかあっという間だったよ」

 

 私と沙綾が『CHISPA』に加入してもう半年以上。ようやく初ライブの権利を得た。しかも地元のお祭りで演奏するとなれば嫌でも気合が入るというもの。現に練習も普段と比べて量が増えたりしている。辛くない訳では無いけれど、楽しさが圧倒的に勝っている状態だ。

 

 「二人とも、そろそろ続きやろう!」

 

 夏希に呼ばれた私と沙綾は立ち上がり、各々の立ち位置へと戻り練習を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 およそ二時間に及ぶ練習が終わり、帰宅した私と沙綾は別行動を取っていた。具体的には沙綾が買い物で、私が家事。放っておくとすぐ千紘さんが無理してしまう為、こうして役割分担をしながら千紘さんを無理させないようにしているのだ。

 

 沙綾が買い物から帰ってきたタイミングで夕食を作り終えた私は、沙綾と紗南ちゃん、純くんがお風呂から出るのを待つ間に学校の課題を消化していた。

 

 「はぁ…やっと終わった」

 

 たった数問やるだけなのに20分もかかってしまった。この単元はもう5回目なのに未だに公式を覚えられていない。ここでも物覚えの悪さが出てしまっている。

 

 「茜姉ちゃん、ご飯だって!」

 

 いつの間にかお風呂から出ていたのだろう、純くんが部屋の扉のところに立っていた。

 

 「うん、今行くよ」

 

 純くんにそう返事をして、机の上をさっと片付ける。最後に部屋の電気を消して、純くんと共に階段を降りてリビングへ。既に皆座っていて、私達を待ってくれていた。

 

 「それじゃあ、いただきます」

 

 「「「「「いただきます」」」」」

 

 亘史さんの号令で一斉に食べ始める。今日の夕食は鮭の塩焼きに大根の味噌汁、白いご飯に漬物と和食に寄せてみた。家がパン屋であってもやはり日本人はお米が食べたいのだ。

 

 「おいしい!」

 

 「ホントだ…茜どうやって味付けしてるの?」

 

 味噌汁を1口啜った沙綾が驚きの表情を浮かべながら私に問いかけてくる。

 

 「どうやってって言われても…普通にやってるだけだけど?」

 

 「その普通にってやつを教えて欲しいんだけど…」

 

 「私は完全に目分量でやってるだけだし…」

 

 正直、本当に目分量で大雑把にやってるだけだからそんなに美味しくないと思う。沙綾や千紘さんが作る料理の方がよっぽど美味しいんじゃないか?

 

 程なくして食べ終わり、食べ終わった後の食器等は沙綾に任せ、私は風呂に入る。

 

 湯船に浸かると、今日一日の疲れが抜けていくような感覚が押し寄せてきた。

 

 「ふう…」

 

 大きく息を吐き、湯船により一層深く浸かる。

 

 (今まで以上に、頑張らないとなぁ…)

 

 私達『CHISPA』の初ライブまで残り1ヶ月を切っている。皆の士気も上々、当日演奏する曲もだいぶ形になってきた。あとは細かいところの調整をやれば、発表できるレベルには到達すると思うけれど…

 

 「私がもう少し要領よくやれたら、もっといい演奏になるのに…」

 

 正直、自分の要領の悪さといったら呆れるレベルである。実際に何度か挫折し、音楽を辞めたいとも思ったけれど…気付けばギターを手に取って練習していた。

 

 (何がそんなに私を駆り立ててるのかな…?)

 

 正直よくわからない。確かに皆とバンドをやるのは楽しいけれど、私は何故『ギター』をやっているのだろうか?そもそも、なんで始めようと…?

 

 ズキッ!

 

 「づぅ!?」

 

 そこまで考えて、唐突に襲ってきた頭痛に思わず呻く。頭の内側から針が刺さっているような痛みに涙目になるが、何とか堪える。

 

 「はぁ、はぁ…今の、なに?」

 

 ───早く上がって早めに寝よう。

 

 原因不明の頭痛に若干の恐怖を抱きつつ、寝れば治るだろうと思い早めにお風呂を上がって寝ることにした。

 

 風呂場を出て洗面所で素早く着替える。朝着ていた寝間着とはとは別の寝間着を着て、自分の部屋に戻りドライヤーを使って髪を乾かす。髪を乾かし終え、いざ寝ようとベッドに入った瞬間───

 

 コンコン

 

 「茜、ちょっといい?」

 

 「沙綾?いいよ」

 

 ───沙綾が自前のドラム練習パッドとスティックを持って部屋を訪ねてきた。

 

 「どうしたの、何か用?」

 

 「いや、今日の練習で間違えたとこ合わせて欲しいんだけど…もしかして寝るところだった?」

 

 「ううん、大丈夫。それで、どこだっけ?」

 

 ギターケースから自身の愛用のギターと今練習している曲の譜面を取り出しながら答える。それを見た沙綾が笑顔になりながら傍までやってきて、練習したい場所をスティックで指し示す。

 

 「ここだね、お願いできる?」

 

 「いいよ、2小節前から始めよっか」

 

 夜なのであまり大きい音は出せないが、アンプに繋がなければ問題ない。眠るのは遅くなるけど仕方ないな、と思いながら私はギターを弾き始める。

 

 部屋の中で響く私のギターの音色と、沙綾の練習パッドを叩く音。それらをBGMにしながら私は静かに考える。

 

 (私の音楽をやる理由って…)

 

 未だに鈍痛が止まない頭の中で答えの出ない問いを反芻しながら、私はギターを静かに弾き続けた。

 

 

 




いーぬさん、NoElaさん、しまらくださん、さか☆ゆうさん、KATSU51さん評価ありがとうございます!お陰様で評価バーが赤になりました。嬉しい限りです。

これからも精進しますのでどうぞよろしくお願いします!
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