ようやく頭の中の構想を繋げれたので投稿。遅くなってしまい大変申し訳ございません。
それでは、普段より駄文マシマシではありますが読んでいただけると嬉しいです。
「ヤバいって、次私たちの番だよ!?」
「わかったから、落ち着きなって夏希!」
「さっきから同じことしか言ってないよ!」
ステージの袖のところで待機している私達は、個人差はあるものの全員が緊張していた。夏希なんて、さっきから何度も何度も同じ言葉を繰り返している。それに加えて、普段ツッコミに回らない筈の文華と真結がツッコミをしているのを見ると、こっちまで緊張してくるから笑えない。
──────それにしても、朝感じていた倦怠感は相変わらず消えてくれない。一応普段通りには動けるから無視していたけれど、今になって症状というか…身体が重くなったような気がする。
「茜?」
「ん、どうしたの沙綾?」
「いや、なんか調子悪そうだから。緊張してる?」
「緊張はしてるけど、体調は別に普段通りだよ?」
沙綾には心配をかけたくなくて、思わず嘘をつく。まあ半分は本当だし、全部が嘘ってわけではないのだけれど。ちょっと心苦しいけれどしょうがない。
「もし噛んだりしたらどうしよう〜!」
「そ、そういう時は沙綾と茜が何とかしてくれるよ!」
「ちょっと待って何その他力本願は。バンドリーダーは夏希なんだから、何とか頑張んなよ」
「私たちに急に振られたって、流石に出来ないよ?」
いつの間にか私達を放って進んでいた話の矛先が、唐突にこちらに向いた。私と沙綾は損な役回りを回避するため、正論を投げつけておく。これでとりあえずは…
「で、でもぉ…」
…これはダメなやつだ。相当緊張しているみたいだし、フォローしないと何やらかすかわかったもんじゃない。
「…はぁ、わかったよ。出来るだけフォローするから、なつも頑張ってよ?」
沙綾も同じ結論に行き着いたのだろう。折れることにしたようだ。私もできる範囲でフォローに回るとしますか。
「CHISPAの皆さん、準備お願いしまーす!」
「と、とりあえず皆!全力で楽しもう!」
夏希の一言に全員が笑う。どうやらウチのバンドリーダーは何だかんだで頼りになるらしい。
チラッとステージ袖から観客席を見れば、すし詰め状態で満員だった。
私の半身と言っても過言では無いほど愛着のある薄紫色のギターを抱え、静かに集中する。
さあ、ライブの始まりだ。
「こんにちは!CHISPAです!」
ステージへと立った私達。ドラム担当の私からは観客席の奥まで見通せる位置で、夏希や茜、文華の姿がよく見える。夏希と文華は緊張しているのが一目瞭然だ。背中が強張っているのがよく見える。
キーボードを担当する真結も似たような状況だろう。私だって緊張しているせいでスティックを持つ両手が震えている。
──────大丈夫。ちゃんと練習したんだから、練習通りに叩けばいいんだ。
そう自分に言い聞かせながらちらりと茜を見ると、薄紫色のギターを構えたまま自然体で立っていた。その背中は緊張など欠片も感じさせない。本当に緊張しているのかどうか疑いたくなる。
「今日初めてたくさんの人達の前で演奏するんですが、聞いていただけると嬉しいです!」
夏希のMCの途中、振り返った茜と目が合う。茜は僅かに微笑みを浮かべて、口だけを動かして言った。
『沙綾なら、ちゃんとできるよ』
「…そうだね。分かったよ、茜」
「それじゃあ早速1曲目、『 Be shine, shining』!」
真結のキーボードが音を奏で始める。それに合わせて振り上げたスティックを持つ私の手の震えは、完全に止まっていた。
これなら────いける。
湧き出てきた少しの自信。それに従って私はひたすらにドラムを叩き続ける。周りの音を聴いてみれば、全員が練習通りに弾けているのがわかった。みんなの表情も楽しそうだ。
けれど…上手くいくと思っていた私に叩きつけられたのは絶望という名の現実。それは、唐突に訪れた。
ドサッ…
決して大きくはない、けれど何故か周りに響いたその音は、茜が突然倒れた音。
──崩壊が、始まった。
身体が熱い。
意識が混濁する。
動かなくちゃいけないのに、立ってギターを弾かなくちゃいけないのに。視界は霞み、どれほど力を込めても私の四肢はピクリとも動かない。まるで見えない力に磔にされたかのように、私は身体を動かせずにいた。
「茜ッ!?」
誰かの…叫び声?割と近いところから聞こえてくるから、沙綾とか夏希が私の事呼んでるのかな?
そんなことを考えていたら、誰かに身体を抱えられる感触。霞む視界の中誰かの顔を見れば、必死な表情の沙綾が見えた。
「しっかりしてよ茜、茜!」
「さ、あや…?」
今にも泣きそうな表情で沙綾が叫んでいる。沙綾の名前を呼ぶけれど、私の口から出たのは掠れ切った声にならない声だった。
続いて感じたのは背負われる感覚。同時に視界に入ってきたのは、見慣れたローズピンクのポニーテール…沙綾だ。どうやら私は沙綾に背負われているようだ。
そのままどこかに運ばれていくのは朧気ながら知覚出来たけれど、私の意識は限界を迎えてしまったらしい。
声も出せぬまま、私の意識は闇へと沈んでいった。
「──極度の過労ですね。ここまで溜め込んで今まで倒れなかったのが不思議なくらいです」
「そう、ですか…」
「少なくとも、一週間は絶対安静です。意識が戻り次第連絡致します」
「ありがとうございました…」
「…」
先生が病室を出ていくのを見送って、母さんと共に礼をする。
「お母さんは一度家に戻るけど、沙綾はどうするの?」
「…まだここにいるよ」
「…わかったわ。あまり遅くならないようにね」
母さんが病室を出ていく音がした。それをぼんやりと聞きながら、私はベッドの側へ移動する。
──何で、気が付かなかったのだろうか。
茜の眠るベッドの横でパイプ椅子に座りながら、ゆっくりと茜の髪を撫でる。
──今思えば、おかしな点はあった。ライブ前だってぼーっとしていたし、あまり元気が無い感じだった気がする。…もう少し早く気づいていたら、また違った結末になっていたのだろうか?もしこのまま茜が目を覚まさなかったら…
幾つもの悪い結末が頭をよぎり、思わず頭を抱えこむ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
茜の左手を握り、掠れた声でひたすら懺悔する──私に残された道は、それしか存在しなかった。
恒例の感謝から!
セツナの旅さん、AYANさん、如月提督さん、諸月さん、峰風さん、我妻さん、まちゃこジャンヌでーへんさん、評価ありがとうございます!
いつの間にかUAも5000を超え、お気に入りも134件…ほんとに有難いです…良ければ感想もくれると嬉しかったり…
これからも、この作品をよろしくお願いします!