とある昭和の學園都市   作:臓物ちゃん

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第貳章  くらやみの速さはどれくらい Speed_of_Dark

 どんなに日照りで蒸し暑い日でも夜がこんなにも涼しくなるのハ學園都市上層部が気象をコントロールしてゐるからだと云う話を聞いた事があるが、諸葛孔明や陰陽師じやあるまいし、むしろ自然が多いからだらうと北当麻ハ思う。

 

 そこが上海やベルリンなどの大都市と學園都市の違いだ。産業革命の淘汰圧によつて森ハ削られ末路ハ石炭、と云うのがひた走る世界の現状だが、斯様な伐採が続けば麗しい瑞穂の国も禿山と化してしまうだらう。田中正造公も言うとをり、『真の文明ハ山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さゞる』ものなのだ。

 

 學園都市とて日嗣の臣民、その事を憂ゑないわけハなく、様々な環境対策に取り組んでゐる。風力発電や黒煙を吐かない車もその一環だが、赤煉瓦や石棺のような混凝土の建造物に挟まれ、古からの木々や祠があちこちに残つてゐるのハ嬉しゐものである。やはり緑に触れてこそ日本民族だ。

 

 ちなみに震災を生き延びた木造建築物も多々残つてをり、義父が「高天原」と呼ぶ我が家もその一つなのだが、そこハ新築でゐゝのでハないかと思う。

 

 銭湯もそんな震災を生き延びた建造物のひとつだ。真つ直ぐに伸びる煙突ハ、煤で形作つた渋い模様が年季を傳えてゐる。

 

 それこそ当麻ハ震災の前からここに通いつめてゐる。富士に松を眺めて湯船に浸かると、今日一日の不幸が皆溶け出して実に幸福な気分になれるのだ。

 

 尤も、蓬髪を丹念に洗つてゐる最中に石鹸を盗まれる等の不幸ハ此処でも襲つてくるのだが、其れでも当麻にとつてハ一日で最も心の底から落ち着ける場所なのだ。

 

 

 だから、銭湯を出た時も、当麻ハ実に上機嫌だつた。

 

 

     ***

 

 

 御天道様も唾を吐く七月二十日、びりゝゝ女に肉体攻撃と精神攻撃の両方を加えられ、這うヽヽの体で帰宅した当麻ハ、親切で優しい風斬さんが夕食を温め直してくれていた。

 

「ヤア当麻さん。お帰りなさい。どうしたの、その土埃まみれの格好。転んだの?」

 

 柔和な笑みで暖かい言葉をかけてくれる風斬さん。有難也ヽヽヽ、地獄に仏とハ正に此の事。当麻ハ欷歔の泪を流し風斬さんの豊満な胸に縋り付く――と云うのハ、この齢でハ遉に恥かしいので、鼻水を啜り上げて礼を言うと、そのまま洗面所で嗽手洗をした。

 

 東條陸将の如き丸眼鏡を掛けた風斬氷華さんハ、北家が学園都市に引っ越してから雇った、温厚で引っ込み思案な性格のお手伝いさんであるが、今やその比類のない働きぶりがこの家がどちらに傾くかを左右してゐると言っても過言でハない。

 

 なにしろ大黒柱の義父たる革命家先生の主な収入源と云うのが実業家や軍人からの寄与というのだから、安定した生活を送りたい当麻にとつてハたまつたものでハないのである。

 

 喧嘩や仲違という程でハないが、何となく当麻が義父と会話し辛いのも其れが理由の一つであり、また義母も体の都合により頻繁に会える境遇でハないので、結果的に精神的に頼れるのハ風斬さんしかゐないのだ。

 

 アゝ此の境遇こそが、養子たる北当麻最大の不幸なのかも知れぬ。

 

 

 餡のたつぷりとかゝつた酢豚を御菜に白米をかきこめば、又々歓喜の涕泣止めど無く当麻を襲つた。

 

 そうして腹も膨れたところで、桶を片手に悠々と銭湯へ向かつた。

 

 湯船の中でも酢豚のしつかりとした触感が歯に残つてゐて、学校の長話も戦争の事も綺麗さつぱり忘れてしまつた。

 

 嫌な事ハさつさと忘れてしまうのが当麻の美点であり欠点なのだが、そうでもなければ次々と襲いかゝる不幸に対応できないだろ、と心の片隅で愚痴を零しつゝ、桶を抱えて銭湯を出れば、夜ハとつぷりと暮れて、空にハ宵闇月と星々が輝いてゐた。

 

 

 あれがDeneb、Altair、Vega。合わせて夏の大三角だが、白鳥と鷲と琴を一緒くたにする事に何の意味があるのかてんで判らぬ。

 

 寧ろ織姫星と彦星のほうが当麻にとつて馴染みが深いが、併し七月七日の七夕に両星が接近した例が無い。

 

 くつきりと天の川が広がる星空を見上げながら斯様な事をぼんやり考えてゐると黒猫が当麻の前を横切り、思わず「ゑんがちよ切つた」と言つたが果して西洋の不吉に東洋のオマジナヰが拮抗できるだらうかと悩む。

 

 

 と、その悩みが霧散する位、実に旨そうな匂いが当麻の鼻をついた。

 

 帰り道の中程にある、騒音の少ないリニア・モウタアカアの趨る高架橋の下に、屋台がぎつしりと軒を連ねてゐた。

 

 子を担いだ顔色の悪い母が小麦粉の塊を売るやうな貧相なものから、座布団まで敷いて寿司を売つてゐる豪華なものまで、芋を洗うように立ち並び、暖簾から漏れる提灯や電球の光、そして客たちの喧騒が闇を優しく照らしてゐた。

 

 夕飯ハ食つたばかりだが、牛すじの一本でも食べたい気持ちになつた。

 

 昼の伊太利料理野郎への報復も兼ねて、当麻ハとりわけ目をひく客引きをしてゐる御田屋の暖簾をくゞつた。

 

 

「へいらつしやい」

 

 奇抜な客引きに比べ、屋台の店主ハ実に硬派そうな顔立ちだつた。尖つた顎の下にハ力強い首と頑丈な胸が伸びてゐる。頭ハ当麻と同じ様な蓬髪であつた。

 

 店主ハ椅子に座つた当麻の顔をジロリと睨み、

 

「学生に酒ハ出さんのよ、未成年の飲酒ハ科料よな」

 

「ヰヤ、ちよつと小腹を満たしたいだけさ。こちとら合成酒も買う金もねえよ」

 

 当麻がそう切り返すと、店主ハ納得した様な失望した様な顔で頷き、注文を訊いた。

 当麻ハ牛すじと卵とハンペンを頼んだ。

 

 当麻以外に客ハゐなかつたので、あいよ、の声とともに注文の品ハ直様出てきた。

 

 卵を箸で割って、ふうゝゝと息を吹き込んでから口にしたがまだ熱い。しかし出汁の染みた白身と程好い硬さの黄身が交り合い、実に旨い。

 

 こういう些細な事に幸せを感じられれば不幸とて何のその、と生来の積極思考(ポジテヰブ・シンキング)が忽ちのうちに戻ってきた。

 

 

「そういや、此処の店ハ面白い客引きをしてゐるね」

 

 牛すじを噛みヽヽ、当麻が気になつてゐた事を訊くと、店主ハ首を傾げ、

 

「客引き?そいつハ変よ、この店ハ俺が一人で切り盛りしてゐるんだぜ」

 

 本当に知らぬ存ぜぬな面をしてるので、今度ハ当麻が訝しんだ。

 

「そりやあ変だ。屋根の上に女子を乗せて客引きとハ、上手い事を考えたものだと思つたんだが」

 

「何、屋根とハ」

 

どうやら店主ハ本当に知らないらしい。一升瓶に詰めた清水を硝子洋盃に注ぎながら頻りに首を捻つてゐる。

 有り得ぬ、有り得ぬ。でハ当麻が確かに見た、屋根の上に覆い被さる様に寝そべつていた少女ハ一体。

 

 断りを入れ、もう一度暖簾の外に出てみれば、アゝ間違いない、夢幻でハなく確かに白髪の少女がうつ伏せに屋台の屋根の上に乗つてゐるでハないか。

 

 而も少女ハ当麻を見て、ゆつくりと唇を動かし、斯様な文句を絞り出したのだ。

 

 

「をなかへつた」

 

 

     ***

 

 

 少女に飯の一つも奢れぬようでハ日本男児とハ呼べぬ。

 

 と、至極真当な精神を持つ当麻ハ、いま会つた許りの見知らぬ少女に御田を奢つてゐるのであつた。

 

 アゝ皇国を担う男子の熱き男気に胸打たれん許りだが、アヰンシユタヰン博士唱える宇宙の特異点の如く次々と御田を口蓋へ詰め込んでゆくその健啖ぶりに、モシヤ此奴この御田屋のサクラでハないかと当の北当麻青年ハ疑い始めたが、併しだからと言うて、此のまゝでハ三歩も歩けぬと泣くか弱い乙女をどうして見捨て置く事が出来やうか。

 

 

「美味!」

 

 頬に辛子がつく程ほどの純心な食いつぷりに、当麻の訝しみハ霧散した。此奴、本当に腹が減つてゐたのだ。

 

「あれだよね、然りげ無く疲労回復の為に酸つぱい味付けしてる所がニクいよね」

 

「ふ、そちらのお客ハ違いが解るよな。全くもつて其の通りよ」

 

 店主胸を張り呵々大笑してゐる間に、当麻ハ屋根の上で行き倒れしてゐた奇妙奇天烈な少女をじろゝゝと観察した。

 

 歳ハ十四か十五か。肌ハ純白髪ハ銀髪と、人目で毛唐と解る外見だ。初雪の様に透き通つた膚に碧色の瞳で、実に可愛らしい顔立ちだ。

 

 併し最も目を引くのハその服装だ。浦上教徒や内村鑑三不敬事件以来、十字教ハ国家神道に睨まれ実に肩身の狭い思いをしてゐるが、この少女ハ寧ろ誇るように白い修道服を着飾つている。

 

 優美に刺繍された金糸ハ欧米の教会というよりも震旦の織物を連想させる。斯様な高価そうな服を着た少女が、行き倒れするなど有り得るだらうか。

 

 

 この毛唐少女、ハテ何者。

 

 

「まずハ自己紹介をしなくちやゐけないね」

 

 当麻が海蘊を箸で啄きながら少女の正体を訊き倦ねてゐると、鍋底大根をほふゝゝと咀嚼しながら向こうの方から切り出してきた。

 

「私の名前ハね、茵蒂克絲(インディ・クェァスー)つて言うんだよ?」

 

「何だその妙竹林な偽名ハ」

 

 当麻ハほとゝゝ呆れ返つた。米国でハ反日法が猛威をふるつてゐるそうだが、この毛唐も飯の恩義も知らずに此方を莫迦にしてるのか、と幾分腹が立つた。

 

「震旦語でヰンデツクスじやないか。目次か御前ハ」

 

「うゝん、そう言われても茵蒂克絲ハ茵蒂克絲なんだよ。日本語だと禁書目録と訳せばゐゝのかな……。て云うか君、震旦語が解るの?」

 

 今度ハ茵蒂克絲が目を丸くした。震旦の語を使う事から、彼女が満州か上海か、或ハ英国統治下の香港から着たのでハないかと推測する。

 

「義父が昔南京にいてな、今でも震旦服を着込んでるくらい向こうに…つて、俺の事じやあないだろ。マア名前ハ置いとくとして」

 

 御前ハ何処からやつてきたか、と次に訊こうと思つたが、これ以上深く突つ込めば恐ろしい面倒事に関わるハメになるぞと、脳髄の直感を司る部分に警報が鳴り響いた。

 

 そもゝゝ毛唐と一緒に居る事自体、国連を脱退した此の国に生きる者として白い目で見かねられない。

 

 此処ハ一飯之徳を積むだけにして、取敢えず最も気になつてゐる事だけ訊いて解散としよう、と脳内の算盤彈きの後に当麻ハ質問を変えた。

 

「で、何故屋台の上で、夜だと云うのに日向ぼつこしてゐたんだ。て云うか店主、気づかなかつたのかよ」

 

「知らぬ存ぜぬよ。リニア・モオタアの騒音が無くとも、此処にハ人の活気から来る騒音がある。確かに何か小さい砂袋が落ちてくる様な音ハ上からしたが、本当に軽い音で、石か何かだらうと思い気にも留めなかつた――」

 

 当麻ハ少々冷たくなつたハンペンを口に含む。

 

 確かに人のざわめきハ大きく、酒呑みの莫迦笑いから猫の鳴き声、おそらく軍靴であらう雑多な靴音に遠くのラヂオから児玉好雄の歌声が重なる。

 

 併し当麻ハ此の小さな屋台の周りだけ、毛唐少女の茵蒂克絲を中心に無音になつた様な気がした。

 

 店主が口を次ぐ。

 

「御前さん、どうやつて、否、どうして屋根の上に降りてきたのよ」

 

 

 若し高架橋から飛び降りたのであれば小音で済む訳もなく、茵蒂克絲ハ屋根を突き破り哀れ御田の海に溺れ白衣ハ汁に汚れる筈である。

 

 でハ超能力で落下速度を緩めたのかと思えば、ならば高架橋から飛び降りねばならぬ事情とハ一体何か。

 

 茵蒂克絲ハ俯きながら、後者の疑問に答えてくれた。

 

「……追われてゐたからね」

 

 

 追われてゐた?

 

 フム、と店主ハ他人事ゆえか、其の一言でもう納得した様だが、無論当麻は絶句した。箸からハンペンの欠片が落ちる。

 

 脳内の警報ハ今や内側から耳を劈かん許りだ。

 

「えつと、顔も知らない様な人達だつたんだけどね?日本にハ来たばつかりだから勝手が解らなかつたし、兎に角追つてくるから逃げたんだよ?高架橋に登つてまで追つてくるから、之ハ本格的にまずいなつて思つて、遣り過す為に此処に伏せて隠れてたんだけど……」

 

 茵蒂克絲の身振り手振り付きの説明も、当麻ハ最早まともに聞いてハゐない。

 

 胃袋を雑巾絞りされる様な苦痛に、血流が逆流して心の臓が爆ぜんかと思われた。

 

 

 

此の国で、人を、それも年若い少女を高架橋の果まで追う様な人間ハ一種しか居らぬ。

小林多喜二を二年前に虐殺したあの組織しか。

 

 

 

問、アゝ不幸薄幸、如何なる前世の業により、特別高等警察に追われたる少女と遭遇するとハ北当麻、北辰にも大日如来にも見捨てられたるとハ。此の天が与えた悪夢の如き試練に、如何に対処するべきか。次の三つから選択せよ。

 

甲、多少権力者にコネのある義父に相談する。(之ハ論外。義父も嘗てハ特高に追われた見也)

乙、このまゝ逃げる(之も問題外。食い逃げで普通の警官の出番也)

丙、可及的速やかに支払い迄の段取りを終わらせ、爽やかな気持ちで少女と別れた後に全速力で家に逃げ帰り、少女と会つたと云う事実を抹消する(地味極まりない作戦が、この状況から逃げるにハ丙に丸をつけるより他無し)

 

 

 

 斯様にして非情な決断を脳内でした当麻だが、彼の不幸極まり無き事ハ無間地獄の如き也。現実ハ恐るべき四つ目の選択肢を選んだのだ。

 

 

「店主さん、御免なさい。店を勝手に使つてしまつて」

 

「何、ゐゝのよ。困つたらお互い様よ。礼ならこの太つ腹の兄さんに言いな」

 

 店主ハ阿呆なのか莫迦なのか心臓に毛が生えてるのか、この期に及んでもまだ飄々としてゐる。

 こうやつて御田を菜箸で啄いているその瞬間にも特高が殴り込んでくるかも知れないのに。

 

「それもそうだね」

 

 少女ハ曇のない真つ直ぐな瞳を当麻に向けた。

 

 

「お兄さん。ごはんを食べさせてくれて、ありがとう」

 

 

 そう言いながら、純粋無垢としか表現しようのない微笑みを顔全体に浮かべた。口元にハ大根の切れ端がまだ付いてゐる。

 

 当麻ハ眩暈を起した。

 

 「そうだ。こつちハ自己紹介したけど、まだそつちの名前を訊いてなかつたんだよ。私ハ少し変な名前だけど、お兄さんハ凄く優しいから格好ゐゝ名前なんだらうね」

 

 当麻の心臓が一つ上まで跳ね上がる。

 

 果して此処で名乗るべきか。名乗れば不幸に更に深入りする事になるのハ明白だ。だが如何に毛唐と言えど、この不思議な少女を見捨てる事等出来るだらうか。併し特高ハ怖い。ヰヤ待てよ、義父も特高に追われてるんだから同じか?ヰヤゝゝ、此方ハ本当に追われているのであり彼方ハ過去形であつて――。

 

「俺の名ハ――」

 

 思念がぐるゝゝと頭蓋骨の中で渦を巻き、喧騒が益々遠ざかつていく様に思える。落ち着け、落ち着け当麻。不幸等今に始まつた事でハ無いだらう。

 

 まず自分の心臓を落ち着ける為に、自分で瓶から水を汲むと一息に飲み干した。

 

 

 

 「ヤ、お客さん、そつちハ――!」

 

 酒の入つた瓶ですよ、と店主が慌てゝ言おうとしたのだが時既に遅し。

 

 本邦一有名な名も無き猫の末路の如く、自分が酒に滅法弱い体質だと知らなかつた当麻ハ、瞬く間に溺死する様に泥酔し、意識に渾沌の帳が落ちて寝て伏せたのであつた。

 

 

 不幸也ヽヽヽ、南無阿弥陀仏ヽヽヽヽヽヽヽ。

 

 




なんか調べる事多ッ!ってなって更新遅れに遅れたら、タッチも変わりました。より戦前的に、てなわけで。後から他の章も手直し致しますのでご了承の程よろしくお願いします。今年中に更新できてよかったっす。来年もなんとか頑張るウオーッ!
それにしても『伊藤計劃×禁書目録』めっちゃ面白いな。

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