マンチキンと言う言葉をご存知だろうか?
別に月の出ている夜に、人鶏に変身するトンチキな種族の事では無くて、ゲームに於けるプレイスタイルの一種の事である。
アメリカを中心とした洋マンチと、日本を中心とした和マンチが存在しているが、俺自身は自分が和マンチだと思っている。さて、なぜこんな事を突然説明しているかと言うと……
「転移させるからキャラ作れって言ってるのに、デッドボールばっかり投げてんじゃないわよ! いい加減にしないと怒るわよ!!」
目の前の地球の女神様が激おこしてるからである。うちのシマじゃノーカンだったから、いつものノリで作っただけだったのに。それなら最初に言って欲しかった。
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古い友人から連絡があったのは、今年のゴールデンウイークの予定をどうするか考えている最中の事だった。
「久しぶり、実はGM探しててさ……お願い! うちのサークルで、一回だけで良いからゲームマスターして!」
そう頼まれたのだった。別にTRPGは嫌いじゃないのだが、仕事が忙しかったのと、最近の流行りについて行けなくなって疎遠になっていたのだ。
「クトゥルフもシノビガミもノーサンキュー 空想で遊びたいのに、現実世界の延長でジミジミ考えるの苦手なんだよ。俺が推理物苦手なの知ってるだろ? 後、何でTRPGでPvPする必要があるんだ、MMOのギルド戦の方が手軽だぞ。めんどくさいから嫌だ」
「最近、TORGの復刻版が出たでしょ? やりたいって子が何人もいるんだけど、あんなシステム誰も回した事なくてさ。確か引退した先輩から、古いシステムを引き取ったって言ってたから、持ってるかなって思って」
「……はぁ~…………いつだ?」
「五月○○日! ……大丈夫?」
「ああ、用意しておくよ。場所はいつもの所で良いんだよな?」
「うん、あ~⋯身内のノリはダメだからね! 初心者対応でよろしくね!!」
「貸し一だ、精々おいしい物を奢らせてやるから震えて待ってろ」
「ぶーぶー、最低な事言うな。寧ろ奢って」
「…………」
「………………」
「「……………………」」
スマホを切った後、妙に静かなのに改めて気が付いた。サイドテーブルに置いてある写真立てを一瞥した後、シナリオを作る為にPCを立ち上げる。
「惚れた弱みかね。まあ、久しぶりに会うのは嬉しい……か?」
微妙な感じだが、悪くない気分だった。だったのだが……
当日、電車で移動中にクソ重い本を抱えて駅の階段を上っている最中、はしゃいだ子供に突き飛ばされて宙を舞った後で後頭部から落ちた。最後に思った事は、サプリにはプレミア付いてるから雑に扱わないでくれって事だった。
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目が覚めたら白い空間に居て、周りには俺の部屋の本棚と机が置いてあった。物凄いシュールである。
「トラックに轢かれなかったのにこうなったか。悪い事してない筈なのになぁ」
転生してファンタジー世界って言うのはゲームだから楽しいのであって、実際にそうなるのは覚悟がいると思うのだが――
「おめでとうございます!! あなたは十億人丁度に死んでしまった人間です。特典として、日本人に今流行りの異世界転移をプレゼントいたします~!!」
――問題は目の前のハイテンションな存在に、話を聞いてもらえるかと言う事だった。
テンプレ通りにこの存在は地球の女神様で、何でも異世界の友達女神様が助けを求めていて人を送って欲しいそうなのだが、その場所が問題だった。
「ラクシアって本気かよ。あそこ一万年以上戦争してる所だろ。……友達って誰です?」
「妖精神アステリア。仲が良いんだけど最近会ってないんだ。忙しくてラクシアから離れられないんだって」
TRPGの舞台が現実に存在するとか色々言いたい事はあるのだが、あんな危ない場所に転移させられるのは勘弁して欲しい。
「断るのはダメですか?」
「ゴメン。日本人なら喜ぶかと思って魂をカスタマイズしちゃったから、地球の転生の輪に戻せない。う~ん……ここで神様の修行でもする? 十万年くらい修行すれば、見習い位には成れるよ?」
十万年も修行なのは嫌なのだが。……考えた末、俺は転移を受け入れる事にした。
***
「こういう場合チートが必要でしょ? あなたの場合、魂にTRPGが染みついてるからキャラクターを作るのが一番なの。あなたの部屋から本棚を持ってきたから、これでキャラを作っちゃって……初期作成キャラでね」
ジト目で俺を見ているけど、俺は悪くない。たまたまアルシャードサプリのアインヘリアルを持っていただけである。アインヘリアルキャラを作れば、不老不滅と自動復活スキルで楽出来ると思ったのに。
「初期作成のキャラなんてチートとは言えないだろ、ボーナス頂戴。SW2.0の初期キャラとか言われると、軽く死ねるんだけど」
「むー、贅沢言いすぎ! …………アイテムボックスとラクシア全ての言語理解、後は別ルールのキャラを作っても無理矢理ラクシアの世界法則に合う様に調整するわ。ただし! 一ガメル百円換算として、運用コストは自前だからね」
エンゼルギアRPGのルールブックを手に取っていたのはたまたまだ、初期作成キャラだったらこれが一番強いのに。物理法則を無視する第三世代型
「もう一声」
「我儘言い過ぎ!! う~……SNE系ルールブックだったら経験点ボーナスをあげる。これで最後なんだからね!!!」
「版は?」
「全部良いわよ、FEAR系みたいにぶっ飛んでないと思うから」
そうして俺は、シャドウラン第四版のルールブックを手に取った。女神様の顔が引きつっていたが、言われた事を守っているだけである。そして、経験点ボーナスを元手に熾烈な交渉をして、サイバーパンクキャラクターに必須なアイテムの入手手段である、女神様通販を手に入れる事に成功した。代わりに経験点ボーナスは無しになったが、惜しくない犠牲だ。
女神様通販は戦闘中以外で、一ガメル一新円換算の買い物が出来ると言う優れものだ。燃料も一新円で一リッター買えるし、アイテムボックスに入れておけば、無料で各種機材の整備もしてくれる。更にお金を払えば、乗り物の修理や機材の補充や充電もしてくれるのだが、日本語に翻訳済みのサプリまでと言う枷を嵌められてしまった。
ガウスライフルや対戦車ミサイルで、何処までやれるか不安な所である。
後はキャラを作るだけだ。何だか楽しくなって来て、頭を捻りながらキャラの作成を開始したのだった。
そして、冒頭に戻る。女神様激おこ中である。
「規制対象品:動物の形質/神経増速:3と、強化遺伝子の継承者:動物の形質/神経増速:3を組み合わせてんじゃ無いわよ!! アホか!? 後、何で種族がオークなのよ! 私、ラクシアに行くって言ったわよね!?」
「オークは前衛系として見たら、低コストで強キャラだから選択しない理由が無いんだよ。一応ヒーュマン風の外見取ったから、見た目は人間だし大丈夫だろ。それに、そのお陰で色々組み合わせて対弾防御レーティングが33、対衝撃防御レーティングは31だし。まあ魔法も使いたかったけど、流石に無理だった」
女神様がため息をついた。いや、言いたい事は分かるけど、こっちだって命がかかってるから必死なんだよ。
「一応、その体でもラクシアの魔法は使えるから、向こうで覚えれば良いんじゃないかな? バカっぽいやり取りだったけど結構楽しかったわ。じゃあ、あっちでも楽しみなさいよ! 日本人に大人気の異世界転移なんだからね!!」
そう女神様が言った後で、意識が薄れていく。次に目が覚めた時にはラクシアで目が覚めると思い、俺は意識を手放したのだった。
ISの小説が煮詰まっているので気分転換がてら書いてみました。
グダグダな内容で、人気が無さそうな題材ですけど書いてて楽しかったです。
続きが読みたいと思ったら、感想とか書いて下さると喜んで書くかも……よろしくお願いします。