あなたトトロって言うのね / stay night 作:hasegawa
このお話には当作品の感想欄にて頂きました、皆さまの素晴らしいアイディアの一部を使用させて頂いております。
今までお付き合い下さいました皆様、誤字報告、ご感想、アイディア、ご評価を頂きました皆様、
そしてジブリが大好きな全てのファンの皆様。心よりお礼申し上げます。
本当にありがとうございました! ジブリ映画、万歳!
『――――王はジブリの良さがわからない』
そう言われ、円卓は割れてしまったと、セイバーは語る。
紅の豚が好きだったランスロット。
魔女宅の良さを父に判ってもらえず、ブチ切れたモードレッド――――
みんな、自分の元を去っていった。
そんな悲しい結末を変えたいと願い、私は聖杯の呼びかけに答えたのです。
セイバーは、そう自分の想いを士郎へと語った。
士郎はもう、苦笑いするしかなかった。
……………………………
………………………………………………
「あぁ~なんと嘆かわしい! 貴方には¨となりの山田くん¨の素晴らしさが
まだわからないと言うのですか?!」
衛宮家の居間で、その両手を大きく広げ、ジル・ド・レェが嘆く。
「いやいや! ¨ハウルの動く城¨こそ至高のジブリという物よ!
お主はあの城を劇場で観なんだのか? あれに乗ってみたいと思わんのか?
あぁなんと勿体ない! そうは思わぬか坊主!!」
イスカンダルに〈スパーン!〉と背中を叩かれ、士郎は〈ドテー!〉と畳の上に倒れ込む。もう本当にいい迷惑でしかない。とっても痛いじゃないか。
「お主はどう思うのだ騎士王よ?
やはり王として、あの城には心が揺さぶられる想いであろう?」
「いぃ~~え! ジャンヌはとなりの山田くんの方が好きに決まっておりますっ!
そうですよねジャンヌ? このジル・ド・レェ、信じておりますよぉ?」
「……は、はぁ」
セイバーは居心地が悪そうに、曖昧な笑みで答える。
この人達はいつもこうだ。たまに会う度にこうやって好きなジブリ映画の論争ばかり。
ワーワーとジブリ論争をする第4次サーヴァントの面子を眺め、セイバーは人知れずため息を吐く。
「というか、まさか第4次のサーヴァント達が、
全員この世に現界したままだったなんて、俺知らなかったよ。
会いに来てくれてありがとうセイバー。聖杯戦争は大丈夫だったのか?」
そう、今この場には過去に前回の聖杯戦争に参加したサーヴァント達、そして第5次のサーヴァント達までもが勢ぞろいしているのだ。
今は遠くロンドンやアインツベルンの城に住むという第4次のサーヴァント達は、第5次の戦いが終わったと聞きつけ、皆を労う為に来日していたのだった。
「……ええ、正直私達は、ろくに戦闘などは行いませんでしたから。
皆、この世界でレンタルビデオ屋さんに入り浸ったり、映画館に行ってばかり。
戦いなど、起ころうハズも無かったのです、シロウ……」
シュンとうなだれて、前回の戦いを振り返るセイバー。
ちなみにセイバーいわく、現在知られている前回の戦いについての資料の内容は、全部言峰綺礼の書いた嘘っぱちに近い内容であるという。
聖杯が爆散しただの、そして切嗣とアイリとマイヤの三角関係がこじれただの、ほとんど全てが綺礼の嫌がらせによって書かれた物らしい。
私達はろくに戦ってすらいません。期限が切れるまでジブリ論争してました――――そうセイバーは語る。
唯一自分が戦った相手は、バーサーカーと化したランスロットだったのだが……もう『ブタァ! ブタァァーー!!』としか喋らず、誰だか最初わからなかったらしい。
結局彼が剣を捨ててその場で泣き崩れた所で、「あ、この人ランスロットだ」と気が付き、戦闘を中止したのだそうな。
騎士らしいまっすぐな心根を持つディルムットには凄く期待していたというのに、彼も自分のマスターのケイネスという男と、毎日ジブリ三昧だ。
その輝く貌で猫の恩返しについて熱く語られたセイバーは、もうほんとウンザリしたのだという。
「こうなっては此度もまた、皆でジブリ映画鑑賞会を行うしかあるまいな!
坊主、酒とツマミの用意をせよ! 朝までジブリし倒すぞ!!」
「「「受けて立つぞ! イスカンダル!」」」
そう雄たけびを上げ、一斉に拳を突き上げる第4次&第5次のサーヴァント達。
いま史上初となる、13騎のサーヴァントによるジブリ鑑賞会の開催が、ここ衛宮家にて行われる事が決定。
セイバーはもう「どうにでもしてくれ」という風な表情で、ガックリと項垂れた。
………………………
………………………………………………
第5次の戦いは、もうすでに終結している。
あの洞窟のクラシックジブリ勢が勢ぞろいした大戦で、聖杯が無事に浄化された後……皆の想いから一番最初に“キャスターの受肉“という願いを叶える事となったのだが……。
「あの……ねぇみんな?
この聖杯、きっと30個くらい願いが叶っちゃうんだけど……」
聖杯の中にある魔力量を確認したキャスターが、頬を引きつらせながら、皆にそう報告したのだ。
「……え、どうしようみんな?」
「願い?! いきなりそんな事言われても考えてなかったわよ!」
「と、とりあえず何か食べ物でも頼みますか皆さん? ステーキとか!」
「バカっ! ここは古典的に『ギャルのパンティお~くれ』って……。
でも僕いらないよそんなの!」
大混乱に陥るマスター達。そして同じく何にも考えてなかったサーヴァント達。
「と、とりあえずみんなの願いが決まるまで、暫くこのまま待っててもらっていいかな……?」
聖杯にかける2つ目の願い。それはそんな、非常に情けない物となった。
…………………………
………………………………………………
いま衛宮家の庭では、トトロのお腹に抱き着くアイリスフィールとマイヤの姿がある。
その上空では、シータやパズーと共に赤い飛空艇に乗るポルコの姿。となりにはメーヴェに乗った凛とナウシカが空を飛ぶ。
ケイネスが笑顔でキキと魔術の話をし、ウェイバーがメイのお馬さんとなって庭を走らされていたりもする。サツキはちょっと困り顔だ。
眼を輝かせて山犬達を見る龍之介に、ブラッシングの仕方を意外と優しく教えてあげるサン。
それを見て、優しく微笑むアシタカ。
そして何故か生きていた切嗣と言峰が、殴り合い寸前まで火垂るの墓と海がきこえるの優劣を話し合っていたり……蟲じいちゃんとアハト爺さんが縁側でのんびりとお茶を飲んでいたり。
とにかく、有り得ない程に平和な光景がそこに広がっていた。
「セイバーは、ジブリ映画ってあんまり知らないのか?」
ひとり項垂れていたセイバーにお菓子とお茶を手渡してやりながら、士郎が話しかける。
彼女はどうもとそれを受け取りながら、困った顔で士郎の言葉に応えた。
「そうなのです……。私は生前から王としての職務に気を取られ、
余裕という物がまったくありませんでしたから。
こういった娯楽とは無縁で、イマイチ理解が出来ず……」
セイバーは、いま目の前で『■■■……! ブタァァーー!』とテンションMAXで騒いでいるランスロットに目を向ける。
そういえば私の妻はアリエッティという言葉をよく言っていたけれど、あれは一体なんだったのだろう? セイバーは知るよしもない。
「そっか。セイバーは王様の仕事を沢山頑張ってたんだもんな。国のみんなの為に。
なら知らない事があったって、全然悪い事なんかじゃないさ」
「……シロウ」
士郎はトトロに負けないくらいの太陽みたいな笑顔で、セイバーに語り掛ける。それを見て、思わず頬を「ポッ…」っと赤らめるセイバー。
「しかし、皆が好きだという物を私が判らないのは、やはり悔しいです。
シロウ、どうか私にジブリの映画の事を教えて頂けませんか?
私はもっと、皆と楽しさを分かち合いたいのです」
「俺でよかったら喜んで。ほら、今から¨となりのトトロ¨を観るみたいだぞ?
これはな? ジブリの看板って言われてる映画でさ?
これを観たみんなが、幸せな気持ちになれるような……」
―――映画を見終わったセイバーが、即座に庭へ飛び出し、トトロのお腹へしがみつく。
――――――その微笑ましい光景に、士郎がニッコリと微笑んだ。