あなたトトロって言うのね / stay night 作:hasegawa
沢山のご声援、ご感想、ありがとうございましたっ♪
これは心ばかりになりますが、皆さまへの感謝の気持ちを込めたオマケです♪
唐突ではあるが、現在ジブリの仲間たちは、真っ二つに割れて言い争いをしていた。
「パンだよ! パンの方がおいしいよ!」
「ライスよ! ぜったいライスの方がいいに決まってるわ!」
士郎くんのシチューと一緒に食べるパンの、なんと美味な事か。
いやいや! 士郎くんのカレーライスの美味さを、まさか知らんとでも言うつもりかえ?
いつも仲良しジブリの仲間たち。しかし彼らにだって譲れない物もある。具体的には好きな食べ物の事とか。
よってここに、第一次ジブリ大戦が勃発。
凛たちマスター勢やサーヴァント勢を含めたジブリの仲間達は、パン派ライス派の二つに分かれ、冬木市の公園にてパチパチと火花を散らす。
「よし! じゃあケンカはよくないから、
バスケットのフリースロー対決で勝負よっ!」
それぞれのチームから5名づつの代表者が選出され、シュートを決めた数で勝敗を競う。
今夜のばんごはんのメニューを賭けた戦いの火蓋が今、切って落とされた。
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パン派チームの第一投目は、キキだ。
以前パン屋さんに下宿し、そこの看板娘を務めていた身としては負けられない。パン食サイコーなのだ。
ボールを胸の位置に構え、目の前のリングを静かに見つめて、徐々に集中力を高めていく。
キキの髪が、気合と魔力によってザワザワとうごめく。映画でも見たヤツだ。
……しかし、そのキキが対峙するバスケットゴールのすぐ後ろには、なぜが今サンが立っていた。
真顔で棒立ちをしているサン。ただ「じ~っ」とこちらを見つめているその姿が、嫌でもキキの視界に入ってくる。
(……気にしちゃいけないっ! これはライスチームの作戦よ!
私の集中力を乱そうとしているんだわ!)
気にしない、気にしない! 今はただシュートを決める事だけ!!
そしてキキがボールを高く抱え上げ、シュートの態勢に入ったその瞬間……。
じっと突っ立っていたサンが、なぜか
「――――ごふぅッッ!!!!」ガッシャーン!!
「~♪」クイッ! クイッ!
あさっての方向に飛んでいくボール、口や鼻から色々な物を噴出するキキ。
そして未だ真顔でパラパラを踊り続けているサン。どうでもいいが、物凄くキレのある動きだ。
「きったねぇぞぉライス派ぁ!
それがお箸の国の人のやる事かぁ!!」
「黙れぇ! 私は山犬だぁーっ! こい~は~♪ スリルショック♪」
左右にステップを踏み、腕をサッサと動かしているサン。いつの間に覚えたんだそんな踊り。
イエーイとハイタッチを交わすライス派たちの姿に、「グヌヌ……!」と歯を食いしばるパン派の一同。
「そっちがその気なら、こちらも容赦はしないわ。
……ポルコ、お願い出来る?」
パン派キャプテン遠坂凛のお願いに、力強く頷くポルコ。
「任せときな嬢ちゃん。
ライス派の連中にゃ、1点だって入れさせやしねぇさ――――」
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ライス派の第一投目はアシタカ。
お米を愛する日本人としてここは外すワケにはいかない。はりつめた弓を射る時と同様に、集中力を高めていく。
しかしアシタカが見つめるバスケットゴールの遥か向こうの空に、〈ブ~ン!〉と一機の飛空艇が飛んでいるのが見えた。
(……あの飛行機はポルコ!? ……いかん、今は集中だッ。
曇りなき眼で見定め……決めるッ!!)
そしてアシタカがシュートを放とうとした瞬間、ヒュ~ッと音を立てて飛ぶポルコの飛空艇が、〈ドゴーン!〉と地上に墜落するのが見えた。
「 !?!? 」ガッシャーン!
あさっての方向に飛んでいくアシタカのシュート。だが今彼はそれどころではない。
「ポルコッ! ポルコォォーー!!」と叫び声を上げ、アシタカが地平線の向こうへと駆けて行く。大切な友を救う為に。
「……馬鹿な、そこまでするってぇのかパン派は……!」
ライス派のランサーが、驚愕の表情でパン派たちを見つめる。
たかがばんごはんのメニューの為に、ポルコは命を投げうったってのか! そこまでの覚悟がっ!
「負けるワケにはいかないの……。
あたし達にはパンの……小麦の神様がついてる!」
「こちとら農耕民族……ノーライス、ノーライフ!!
土に根を生やし、風と共に生きてるんだ!!」
第一投目を両チーム共に外し、0対0。
ジブリキャラ達のフリースロー対決は、次第にその苛烈さを増していく。
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「ほらっ、さっさと歩けッ!」
バスケットゴールの後ろに、警官の服装に身を包んだアーチャーが現れる。
その後ろには、顔を隠すように頭からコートを被らされている人物。
腕に手錠をかけられて連行されていく“エボシ御前“がいた。
「――――ぶふぅっっ!!」ガッシャーン!
「えっ!? 何したのエボシさん!?」
「脱税ッ!? 脱税したの!?」
ザワザワするジブリの一同。顔を伏せて歩き去るエボシ様。
もちろんシュートは、あさっての方向へと外れた。
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…………ゴールリングの後ろ、沈痛な面持ちで正座している清太さん。今その眼前には、腕を組み仁王立ちしているキキの姿があった。
「……………」
「……………」
そして突然、辺りに〈スパーン!〉という音が響き渡る。
……そう、キキが清太の頬を“札束でビンタしたのだ“。
「なんでだよ!! やめろ清太にそういうの! 生々しいよ!!」
「自営業! 社長だもんねキキは! お金もってるもんね!!」
もちろん、敵のシュートは外れた。
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…………同じくゴールリングの後ろで、じっと正座をするアシタカ。その眼前には酒瓶を上段に構え、今にもアシタカの頭に振り下ろさんとしているシータの姿があった。
「――――シータ殿、いざっ!!」
「わかったわ! そ~れっ!」
合図と共にシータが酒瓶を振り下ろす。
それを真剣白刃取りしようとし、〈スカッ!〉と失敗するアシタカ。
「おい今〈ゴスゥ!〉ってすげぇ音したぞ!!」
「パーンって! アシタカの手と手だけが! パーンって!!」
「大丈夫かアシタカ!! 死ぬなぁーーッッ!!」
全身ワインまみれになり、地に倒れ伏すアシタカ。
もちろん敵のシュートは外れた。
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………………集中力を高め、桜はゴールリングを見つめている。
今そのゴールの後ろには、「ニッコー!」と笑うトトロの姿があった。
(駄目よわたし! いくらトトロのお願いだってここは譲れないっ!
ぜったいにシュートを決めなきゃ!!)
まさか他ならぬこの私に、トトロをあてがってくるとは――――
もうライス派が本当に手段を選ばなくなってきている事が、アリアリと見て取れた。
(………よしっ……よし! …………今っ!!)
タイミングを測り、桜がシュートを放とうとしたその瞬間……、トトロが小さくその口を動かす。
「――――桜サン、がんばってクダサイ」
「「「 ごっふ゛ぅぅっっ!!!! 」」」
その場の全員の口から、いろんな物が噴出した。
桜はズッコケて外した。
「おいトトロ!? ……お前いま……普通にッ!!」
「なんで!? じゃあ今までなんでッ!?」
もうバスケとかそっちのけで、トトロのもとに詰め寄るジブリの一同。
しかしどれだけ問い詰めようとも、ふたたびトトロが口を開く事は無かった。
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そして現在0対0。これをパン派チームが決めれば勝ち、という場面。
チームメイトの信頼を一身に背負い、遠坂凛が今ポジションに着き、静かにボールを構える。
しかし彼女が見据えるリングの後ろに、突然“雫と聖司“が現れた。
耳をすませばからの、まさかのスポット参戦である。
「聖司くんっ、バイオリン聴かせてっ」
「おっし! それじゃあお前歌えよ?」
これは映画にもあった名シーンの再現か。聖司が肩にバイオリンを構える。
「えっ!? あたし、歌なんて……」
「大丈夫、お前も良く知ってる歌だから」
そしてバイオリンの前奏を聴き、すぐにその曲が何なのかを察する雫。
タイミングを測り、大きく息をすって――――
雫が澄んだ歌声を響かせていく。聖司のバイオリンの音色にのせて――――
『ハンキモォ~♪ ナウホチィ~♪』
「「「 なんでポリスストーリーのテーマなんだよっ!!!! 」」」
その場の全員が、一斉にツッコんだ。
雫と聖司のミニコントの前に、もちろん凛は撃沈したのだった。
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「……やるじゃんお前ら。パンも美味しいよな」
「ライスだって美味しいわ。 私も大好きだもの」
結局勝負は0対0の引き分けとなり、お互いの健闘をたたえ合う両チーム。
ぼく士郎くんにパン食を頼んであげるよ。私も士郎くんにごはん系を頼んであげるわ。
そんな事を言いながら、握手を交わして微笑み合うジブリの仲間たち。
パンも、ライスも、どっちも美味しいさ――――
いい汗を流し、さわやかな気持ちで衛宮家へと帰っていく。
「おかえりみんな。もう夕飯できてるぞ」
今夜のごはんは、天ぷらうどんだった。