あなたトトロって言うのね / stay night   作:hasegawa

18 / 20
 前回のお話で、当作品の第2シーズンは終了です。
 沢山のご声援、ご感想、ありがとうございましたっ♪

 これは心ばかりになりますが、皆さまへの感謝の気持ちを込めたオマケです♪





フリースローを全力で邪魔する、ジブリの仲間たち。

 

 

 唐突ではあるが、現在ジブリの仲間たちは、真っ二つに割れて言い争いをしていた。

 

「パンだよ! パンの方がおいしいよ!」

 

「ライスよ! ぜったいライスの方がいいに決まってるわ!」

 

 士郎くんのシチューと一緒に食べるパンの、なんと美味な事か。

 いやいや! 士郎くんのカレーライスの美味さを、まさか知らんとでも言うつもりかえ?

 いつも仲良しジブリの仲間たち。しかし彼らにだって譲れない物もある。具体的には好きな食べ物の事とか。

 

 よってここに、第一次ジブリ大戦が勃発。

 凛たちマスター勢やサーヴァント勢を含めたジブリの仲間達は、パン派ライス派の二つに分かれ、冬木市の公園にてパチパチと火花を散らす。

 

「よし! じゃあケンカはよくないから、

 バスケットのフリースロー対決で勝負よっ!」

 

 それぞれのチームから5名づつの代表者が選出され、シュートを決めた数で勝敗を競う。

 今夜のばんごはんのメニューを賭けた戦いの火蓋が今、切って落とされた。

 

 

……………………

………………………………………………

 

 

 パン派チームの第一投目は、キキだ。

 以前パン屋さんに下宿し、そこの看板娘を務めていた身としては負けられない。パン食サイコーなのだ。

 ボールを胸の位置に構え、目の前のリングを静かに見つめて、徐々に集中力を高めていく。

 キキの髪が、気合と魔力によってザワザワとうごめく。映画でも見たヤツだ。

 

 ……しかし、そのキキが対峙するバスケットゴールのすぐ後ろには、なぜが今サンが立っていた。

 真顔で棒立ちをしているサン。ただ「じ~っ」とこちらを見つめているその姿が、嫌でもキキの視界に入ってくる。

 

(……気にしちゃいけないっ! これはライスチームの作戦よ!

 私の集中力を乱そうとしているんだわ!)

 

 気にしない、気にしない! 今はただシュートを決める事だけ!!

 そしてキキがボールを高く抱え上げ、シュートの態勢に入ったその瞬間……。

 じっと突っ立っていたサンが、なぜかパラパラを踊り出した(・・・・・・・・・・)

 

「――――ごふぅッッ!!!!」ガッシャーン!!

 

「~♪」クイッ! クイッ!

 

 あさっての方向に飛んでいくボール、口や鼻から色々な物を噴出するキキ。

 そして未だ真顔でパラパラを踊り続けているサン。どうでもいいが、物凄くキレのある動きだ。

 

「きったねぇぞぉライス派ぁ!

 それがお箸の国の人のやる事かぁ!!」

 

「黙れぇ! 私は山犬だぁーっ! こい~は~♪ スリルショック♪」

 

 左右にステップを踏み、腕をサッサと動かしているサン。いつの間に覚えたんだそんな踊り。

 イエーイとハイタッチを交わすライス派たちの姿に、「グヌヌ……!」と歯を食いしばるパン派の一同。

 

「そっちがその気なら、こちらも容赦はしないわ。

 ……ポルコ、お願い出来る?」

 

 パン派キャプテン遠坂凛のお願いに、力強く頷くポルコ。

 

「任せときな嬢ちゃん。

 ライス派の連中にゃ、1点だって入れさせやしねぇさ――――」

 

 

………………………………………………

 

 

 ライス派の第一投目はアシタカ。

 お米を愛する日本人としてここは外すワケにはいかない。はりつめた弓を射る時と同様に、集中力を高めていく。

 しかしアシタカが見つめるバスケットゴールの遥か向こうの空に、〈ブ~ン!〉と一機の飛空艇が飛んでいるのが見えた。

 

(……あの飛行機はポルコ!? ……いかん、今は集中だッ。

 曇りなき眼で見定め……決めるッ!!)

 

 そしてアシタカがシュートを放とうとした瞬間、ヒュ~ッと音を立てて飛ぶポルコの飛空艇が、〈ドゴーン!〉と地上に墜落するのが見えた。

 

「 !?!? 」ガッシャーン!

 

 あさっての方向に飛んでいくアシタカのシュート。だが今彼はそれどころではない。

「ポルコッ! ポルコォォーー!!」と叫び声を上げ、アシタカが地平線の向こうへと駆けて行く。大切な友を救う為に。

 

「……馬鹿な、そこまでするってぇのかパン派は……!」

 

 ライス派のランサーが、驚愕の表情でパン派たちを見つめる。

 たかがばんごはんのメニューの為に、ポルコは命を投げうったってのか! そこまでの覚悟がっ!

 

「負けるワケにはいかないの……。

 あたし達にはパンの……小麦の神様がついてる!」

 

「こちとら農耕民族……ノーライス、ノーライフ!!

 土に根を生やし、風と共に生きてるんだ!!」

 

 第一投目を両チーム共に外し、0対0。

 ジブリキャラ達のフリースロー対決は、次第にその苛烈さを増していく。

 

 

………………………………………………

 

 

「ほらっ、さっさと歩けッ!」

 

 バスケットゴールの後ろに、警官の服装に身を包んだアーチャーが現れる。

 その後ろには、顔を隠すように頭からコートを被らされている人物。

 腕に手錠をかけられて連行されていく“エボシ御前“がいた。

 

「――――ぶふぅっっ!!」ガッシャーン!

 

「えっ!? 何したのエボシさん!?」

 

「脱税ッ!? 脱税したの!?」

 

 ザワザワするジブリの一同。顔を伏せて歩き去るエボシ様。

 もちろんシュートは、あさっての方向へと外れた。

 

 

 

………………………………………………

 

 

 …………ゴールリングの後ろ、沈痛な面持ちで正座している清太さん。今その眼前には、腕を組み仁王立ちしているキキの姿があった。

 

「……………」

 

「……………」

 

 そして突然、辺りに〈スパーン!〉という音が響き渡る。

 ……そう、キキが清太の頬を“札束でビンタしたのだ“。

 

「なんでだよ!! やめろ清太にそういうの! 生々しいよ!!」

 

「自営業! 社長だもんねキキは! お金もってるもんね!!」

 

 

 もちろん、敵のシュートは外れた。

 

 

………………………………………………

 

 

 …………同じくゴールリングの後ろで、じっと正座をするアシタカ。その眼前には酒瓶を上段に構え、今にもアシタカの頭に振り下ろさんとしているシータの姿があった。

 

「――――シータ殿、いざっ!!」

 

「わかったわ! そ~れっ!」

 

 合図と共にシータが酒瓶を振り下ろす。

 それを真剣白刃取りしようとし、〈スカッ!〉と失敗するアシタカ。

 

「おい今〈ゴスゥ!〉ってすげぇ音したぞ!!」

 

「パーンって! アシタカの手と手だけが! パーンって!!」

 

「大丈夫かアシタカ!! 死ぬなぁーーッッ!!」

 

 

 全身ワインまみれになり、地に倒れ伏すアシタカ。

 もちろん敵のシュートは外れた。

 

 

………………………………………………

 

 

 ………………集中力を高め、桜はゴールリングを見つめている。

 今そのゴールの後ろには、「ニッコー!」と笑うトトロの姿があった。

 

(駄目よわたし! いくらトトロのお願いだってここは譲れないっ!

 ぜったいにシュートを決めなきゃ!!)

 

 まさか他ならぬこの私に、トトロをあてがってくるとは――――

 もうライス派が本当に手段を選ばなくなってきている事が、アリアリと見て取れた。

 

(………よしっ……よし! …………今っ!!)

 

 タイミングを測り、桜がシュートを放とうとしたその瞬間……、トトロが小さくその口を動かす。

 

「――――桜サン、がんばってクダサイ」

 

「「「 ごっふ゛ぅぅっっ!!!! 」」」

 

 その場の全員の口から、いろんな物が噴出した。

 桜はズッコケて外した。

 

「おいトトロ!? ……お前いま……普通にッ!!」

 

「なんで!? じゃあ今までなんでッ!?」

 

 もうバスケとかそっちのけで、トトロのもとに詰め寄るジブリの一同。

 しかしどれだけ問い詰めようとも、ふたたびトトロが口を開く事は無かった。

 

 

………………………………………………

 

 

 そして現在0対0。これをパン派チームが決めれば勝ち、という場面。

 チームメイトの信頼を一身に背負い、遠坂凛が今ポジションに着き、静かにボールを構える。

 

 しかし彼女が見据えるリングの後ろに、突然“雫と聖司“が現れた。

 耳をすませばからの、まさかのスポット参戦である。

 

「聖司くんっ、バイオリン聴かせてっ」

 

「おっし! それじゃあお前歌えよ?」

 

 これは映画にもあった名シーンの再現か。聖司が肩にバイオリンを構える。

 

「えっ!? あたし、歌なんて……」

 

「大丈夫、お前も良く知ってる歌だから」

 

 そしてバイオリンの前奏を聴き、すぐにその曲が何なのかを察する雫。

 タイミングを測り、大きく息をすって――――

 雫が澄んだ歌声を響かせていく。聖司のバイオリンの音色にのせて――――

 

 

『ハンキモォ~♪ ナウホチィ~♪』

 

「「「 なんでポリスストーリーのテーマなんだよっ!!!! 」」」

 

 

 その場の全員が、一斉にツッコんだ。

 雫と聖司のミニコントの前に、もちろん凛は撃沈したのだった。

 

 

……………………

………………………………………………

 

 

「……やるじゃんお前ら。パンも美味しいよな」

 

「ライスだって美味しいわ。 私も大好きだもの」

 

 結局勝負は0対0の引き分けとなり、お互いの健闘をたたえ合う両チーム。

 ぼく士郎くんにパン食を頼んであげるよ。私も士郎くんにごはん系を頼んであげるわ。

 そんな事を言いながら、握手を交わして微笑み合うジブリの仲間たち。

 

 パンも、ライスも、どっちも美味しいさ――――

 

 いい汗を流し、さわやかな気持ちで衛宮家へと帰っていく。

 

 

「おかえりみんな。もう夕飯できてるぞ」

 

 

 

 今夜のごはんは、天ぷらうどんだった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。