あなたトトロって言うのね / stay night 作:hasegawa
「静まりたまえーーーーーっ!!
さぞかし名のある弓の使い手と見受けたが、何故そのように荒ぶるのかッ!!」
「アシタカ! 人間と話したって無駄だ!!」
衛宮家の門前。現在ポカンと大きく口を開けている遠坂凛とアーチャーの前に、アシタカとサンが現れた。
ちなみに凛もアーチャーも、何にも荒ぶってなどいない。たった今ここに駆けつけたばかりだ。
「サン、私は人間だ。………そなたも、人間だっ!!」
「黙れぇーーっ! 私は山犬だぁーーーーっ!!」
そしてなにやら痴話喧嘩を始めだす二人。
遠坂主従は、ただその光景をポカンと見つめている。
「あれ? 遠坂じゃないか。なにやってんだよこんな所で」
そこにのほほんとした顔の衛宮士郎が現れる。肩に小トトロを乗せて。
士郎と遠坂主従の目の前では今、アシタカがサンを優しくハグしてやり、よしよしと頭を撫でている。
「急にサンとアシタカが走り出していったからビックリしたけど、
遠坂達だったんだな」
「……え、衛宮君? あの、サンとアシタカって……」
「ああ、あの¨もののけ姫¨のサンとアシタカだぞ。見てみろよ遠坂、本物だろ?」
「…………」
凛が目を向けた先では今、サンとアシタカの「アシタカの事は好きだ。でも人間を許す事はできない」「それでもいい。私と共に生きてくれ」という、大変いいシーンが上映されている。
「あ、これ映画で観たわ私」と凛は思った。
「とりあえずここにいるのも寒いし、お茶でも入れるから上がっていってくれよ。
そっちのお兄さんも、どうぞあがっていって下さい」
「…………」
「…………」
意外とキレイなテノールボイスで「張りつめたぁ~♪ 弓のぉ~♪」と口ずさみながら家へと入っていく士郎。呆然とする凛&アーチャー。
アシタカに優しく肩を抱かれたサンに「グルルルル…!」となにやら後ろから吠えられながら、とりあえず凛達も衛宮家にお邪魔する事となった。
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「共闘するに決まってるじゃない、いい加減にしてよ」
開口一番、遠坂はそう言った。
現在遠坂凛は、衛宮家の居間でナウシカとガッツリ握手を交わしている。
「お会い出来て光栄ですわナウシカ姫。
私冬木のセカンドオーナーをしております、遠坂凛と申します」
凛は士郎から見てもちょっと気持ち悪いくらいにガッツリ猫を被り、固く固くナウシカの手を両手で握って、ブンブンと上下に振る。
こいつナウシカと仲良くなってメーヴェに乗っけてもらう気まんまんじゃないか。士郎は思う。
「ん~。まぁ聖杯戦争ってヤツの事は大体わかったけどさ?
ところでアーチャーさ」
「ん? なんだ貴様」
ザックリとではあるが凛達から聖杯戦争についてのレクチャーを聞いた後、士郎は遠坂凛のサーヴァントである、アーチャーへと話しかける。
「アーチャーはさ? ジブリ映画の中では何が一番好きなんだ?」
士郎は清々しい程に、全然関係のない事を聞いた。
「…………お前、いったい何を訊くのかと思えば」
アーチャーは、呆れたような仕草でやれやれと首を振る。
「“おもひでぽろぽろ“に決まっているだろう。いい加減にしろ貴様」
アーチャーは、結構意外な所を突いて来た。
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「うめぇなこれ、うめえなこれ」「こりゃうめぇな!」「美味しい!おいしいです!」「ひゃ~!」
\ ハグハグ!モグモグ!モシャモシャ!ガツガツ!モリモリ! /
只今、マスターとサーヴァント達は食事の真っ最中である。
ジブリキャラの面目躍如と言わんばかりに、勢いよくモシャモシャとごはんを食べる一同。
何故かはわからないが普段はとてもお行儀が良いのではないかと思われるナウシカやキキなどのメンバーも、他の者に負けじとモリモリと夕飯を掻っ込んでいく。映画では見れなかった姿だ。
「食事シーンが見どころの一つ」と言われるジブリの信仰の高さゆえなのだろうか?ジブリのメンバーの食べる勢いが明らかに強化されているような気がする。
なにやらその場の雰囲気につられてか、遠坂やアーチャーまでお皿にしがみつくようにしてごはんを食べているではないか。
お前「優雅たれ」はどうしたんだよと、ツッコミを入れたくなる士郎。
しかし、こんなに美味しそうに料理を食べてくれるのは、作った者としてはこの上なく嬉しい事だ。
士郎は最近新しく買った圧力釜を駆使し、大急ぎで料理を作った。
今夜は特製、ビーフシチュー。これには料理の得意なシータとキキもお手伝いとして参加した。
シータが料理上手なのはもちろんの事、キキの手際の良さというのも士郎を大いに唸らせる。
きっとおかあさんの仕込みも凄くよかったんだろうなと関心してしまう程の腕前だ。
士郎はシータとキキと共に、楽しく料理をしたのだった。
「……あの、おかわり沢山あるからさ?」
「ん!」「ん!」「俺も!」「私も!」「僕も!」
おかわりの有無を士郎が伝えた瞬間、空のお皿を持った手が一斉に伸びてきた。というか全員だ。
士郎は一瞬ビックリしつつも、沢山食べてくれるみんなの姿をみて自然と笑顔になっていく。
これは……明日から料理に気合が入りそうだ。
士郎はそんな事を思いながら、みんなにおかわりのシチューを渡してやるのだった。
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「ただいま¨クロネコ魔女宅急便¨では、メンバー会員を募集しています。
時間帯指定も出来て、ポイントも溜まりますし、大変お得ですよ?
いかがですか士郎さん♪」
そんなキキの入会案内などを道中で聞きながら、士郎は凛に連れられて言峰教会へと訪れていた。
とりあえずは詳しい聖杯戦争のルールを説明してもらうと共に、一応はマスター登録というのもしてもらわなければならないらしい。
本当は士郎も凛もポルコの飛空艇に乗りたかったりメーヴェに乗りたかったりしたのだが、今回は断腸の想いで断念。みんなで歩いてここまで来た。
サンが教会に入る事を「ここ臭い、鼻がもげそう」と言って嫌がり、
ポルコは「そうゆう所はな坊主、人間同士で行きな」と言って遠慮し、
そしてメイはぶっちゃけおねむの時間だった為、士郎はサーヴァント達にここで待っていてくれるよう頼んでから、凛と共に二人で教会へと入っていく。
教会では言峰綺礼という胡散臭い神父の男が、なにやら士郎を見て驚いたりニヤけたりしながら聖杯戦争について説明してくれた。
「これより聖杯戦争の開幕を宣言するよ! 各自優勝目指して、頑張っていってね!」
士郎は話半分に聞いていたが、なにやらそんな風な事を神父が言っていたように思う。
そして最後に「よろこべ少年。お前の願いはようやく叶う」とかなんとか。
願いってなにさ?
俺は早く帰って遠坂にメーヴェ作んなきゃなんないんだよ。ヤックルと小トトロもさ。
そして士郎は帰り際、このまま無視して帰るのもなんだか悪いと思い、全然関係ない話を言峰に振った。
「ところで言峰神父さ? 聖杯戦争はいいんだけど、
あんたジブリ映画では何が好きなのさ?」
驚愕の表情を浮かべる、言峰綺礼。
先ほど士郎が「衛宮切嗣の息子だ」とわかった時よりも、更に驚愕した表情を見せている。
士郎はもう話す事もないかなとばかりに背を向けて教会から出ようとするが、「待つが良い衛宮士郎」と言峰に呼び止められ、扉の前で立ち止まる。
「¨ほたるの墓¨だが、それがどうかしたか?
お前の父は確か¨海がきこえる¨だったが」
言峰の答えは予想が付いたが、父の意外と尖った好みにちょっとビックリする士郎だった。