あなたトトロって言うのね / stay night   作:hasegawa

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衛宮家の夜。

 

 

 

 現在衛宮家では、まだ若干えぐえぐとしているライダーがナウシカに優しく頭を撫でてもらいつつ、¨チコの実¨をポリポリしている。

 

 怖い思いをするわ、チコの実はまじゅいわ、ナウシカは優しくしてくれるわで、もうライダーの心はグチャグチャだ。

 いったい何をどう想えば良いのかもわからない。

 

 女の子座りでポリポリえぐえぐするライダーを、衛宮家の面々もさすがに申し訳なさそうに見守っている。

 

 

 ……あの時、まったく原因不明な謎の¨ラピュタ的雷¨を受けて空から墜落していったライダーは、即座に駆けつけたナウシカのメーヴェにより、無事空中で救出された。

 

 地上へと下ろしてもらい、ちょっとだけ¨まっくろくろすけ¨になってしまったライダーを見て「お前、(雷に)撃たれたのか……死ぬのか……」とサンが突然縁起でもない事を口走ってしまい、ちょっと怒られたりしたが……ライダーは健在だ。

「生きろ、そなたは美しい」である。

 

 ナウシカのお腹にしがみつきながら若干鼻声で「ナ゛ウ゛シ゛カ゛て゛す゛!」と、ようやく自分の好きな作品名を言い、わんわんと泣くライダー。

 これからはもっとライダーに優しくしてあげよう。慎二と桜は思う。

 

 この後ナウシカに加えて、キキがライダーのメンタルケアを担当。

 この若さで配達業を営み、そして様々な人生の苦楽を経験するキキの相談役としての手腕は実に見事な物で、30分もすると無事ライダーはその笑顔を取り戻す。

 

「落ち込んだりもしたけれど、私は元気です」

 

 

 ライダーは見事、そう言ってのけたのだった。

 

 

………………………

………………………………………………

 

 

 そして時刻は夜10時。

 今日は沢山食べて沢山運動したし、そろそろみんなでお布団に入ろうかという頃。

 ナウシカやキキ、そしてシータという女の子の面々に囲まれ、いい子いい子としてもらっていたライダーの所に、突然メイが現れる。

 

「ライダーおねえちゃん! ライダーおねえちゃん!」

 

「ん? どうしたのですかメイ」

 

「見て! 見てこれ!」

 

 目を輝かせ、ピョンピョンと元気に自分の後ろを指さすメイ。何気なく示された方向に顔を向けるライダー。

 するとそこには¨ポルコの丸いグラサン¨をかけて仁王立ちしている、アシタカの姿があった。

 

 

『―――我が名はアシタカ!! 東の果てよりこの地に来た!!』

 

「「「ん゛ふ゛ッッ!!!」」」

 

 

 口と鼻から色んな物を噴出するライダー達。真顔のアシタカ。

 丸いグラサンを装着し、チャイニーズマフィアの若い衆みたいになったアシタカがそこに降臨していた。 

 

「あは! もっとよアシタカ! もっと!」

 

『―――あの子を解き放て、あの子は人間だぞ!!』

 

 

「「「こ゛っふ゛ぁ゛ッッ!!!!」」」

 

 爆笑し床に転げまわるナウシカ達。息も出来ない程に笑っているライダー。グラサンのアシタカ。

 いたずらが成功し「討ち取ったり」とご満悦のメイが、今度はそれをパズーへと手渡す。

 丸いグラサンを装着し、真顔でライダーの前に立ったパズーが、言い放つ。

 

 

『―――親方! 空から女の子がっ!!!!』

 

 

「「「きぃぃやぁああぁーーーー!!」」」

 

 

………………………

………………………………………………

 

 

 衛宮家の居間は現在、大きな笑いに包まれている。

 腹を抱えて笑う士郎、ガッハッハと転げまわる凛。全員が床にひっくり返っている。

 

 深夜のテンションでもうおかしな事になっている一同は、勢いそのまま、

『第一回、ポルコの丸いグラサン選手権』を開催。

 順番にポルコのグラサンを受け取っていく一同。まずは凛がグラサンを装着し、真顔で言い放つ。

 

 

『―――いざ、お供つかまつらん!!!!』

 

「どこにだよお前! 誰だよ!!」

 

 

 まさかのバロン登場に沸き立つ会場。「ヒューヒュー!」と歓声が上がる。

 遠坂凛の丸グラサンの破壊力は、筆舌に尽くしがたかった。

 

「ほらアンタもグラサンかけなさいよ!

 アイアーム、ザ ボーン オブ マイソゥ~ド……(巻き舌)って言いなさいよ!!」

 

「断るッッッ!!」

 

 眼鏡片手にアーチャーに掴みかかっていく凛、必死で抵抗するアーチャー。

 息も出来ない程に笑うライダーが、そろそろ痙攣し始め本格的にヤバイ事になっている。このままでは消滅してしまう。深夜のテンションとは恐ろしい物だ。

 

 それにしても、何故全員が真顔になって台詞を言うのだろうか?

 ルールには無いハズなのに、何故かポルコのグラサンをかけた全員が、真顔の仁王立ちで台詞を言っていくのだ。

 

 やがて決意を固めた表情で、サン、キキ、ナウシカ、アシタカが出撃する。

 全員丸眼鏡だ。

 

 

『―――アシタカは好きだ。でも人間を許す事は出来ない』

 

「それ大事なヤツでしょうが! ぶち壊しよ!!」

 

 

 

『――――ちぃ~~いさーい♪ 頃ぉ~~は~♪』

 

「眼鏡外しなさいよ! 入ってこないのよ!」

 

 

 

『―――――怒りに我を忘れてる、 静めなきゃ!!』

 

「アンタが静まれよ! 王蟲もビックリするよ!!」

 

 

 

『――――――曇り無き眼で見定め、決めるッ!!(キリッ)』

 

「グラサンじゃないのアンタ! 曇ってるわよ!」

 

 

 全員でヒーヒーと笑い転げ狂乱の渦に包まれる衛宮邸。ブラボーブラボーと喝采が上がる。夜中だと言うのに。

 ライダーはすでに、ピクリとも動かなくなった。またチコの実をポリポリさせなければ。

 

 その後、「あたしもやってみようかしら」とポルコのグラサンを装着したシータの

『―――40秒で支度しな!』(鼻声)に全員が撃沈。

 優勝は見事、シータの物となる。

 

「ずるいよシータ! それ人のヤツじゃないか!」と床を転げまわるパズー。

「うふふ♪」と満足気に笑うシータの笑顔がとても印象的だった。グラサンをしていたけれど。

 

 二大巨頭のアシタカとの天王山を制したシータに、衛宮家の面々からの惜しみない拍手が贈られた。

 その後は¨誰が一番丸いグラサン似合っているか大賞¨に話題が以降し、チャイニーズマフィアの親分みたいになったアーチャーが見事、その栄冠に輝く。

 そしてその様子を密かに水晶玉で観察していたキャスターが、自宅で撃沈した。

 

 

 腹を抱えてヒーヒーと笑い、椅子から転げ落ちるキャスターさん。

 あんまり笑いすぎて宗一郎様に変な目で見られてしまい、えらい事になってしまった。

 

 この陣営は、やばい。色んな意味でやばい――――

 早急になんとかしなければ…。いやでも、なんとかなるのかしら?

 とりあえず対策を立てる為、キャスターは自室で黙々とジブリ映画を鑑賞する。

 

 

「なんで¨耳をすませば¨のキャラが居ないのよ! 馬鹿じゃないの!!」

 

 

 こうして魔女の夜は更けていく。

 

 


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