獣の歌   作:ミサエル

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お久しぶりです。ミサエルです。
いやー、元号が変わる前にとか何とか言ってたのに、気づけば令和になっちゃって。

どんだけサボってんだよ!
もう皆忘れてるよ!

って感じですけども、まぁ、どうにかこうにか書き上げました。
お暇ならお付き合いください。

それでは、どうぞ。


Dance with me

「おいおい。戦うつもりはないって言ってるだろう?」

「そんなこと言うなら、あんたが先に変身を解いたらどうだ?」

 

互いに一歩も譲らず、警戒を解こうとしないネオと赤いアマゾン―アルファ。

一触即発の空気とはまさにこのことだろう。

 

「あ、あのぅ...。」

 

その均衡を、一人の少女が破った。花丸だ。

 

「うん?どうした?」

「いえ、その、ルビィちゃんは大丈夫なのかと...。」

「ルビィちゃん?あぁ、この子か。」

 

アルファが抱き留めていたルビィをそっと地面に寝かせた。

 

「気を失っているだけだ。すぐに起きる。」

「そ、そうずらか。良かった~。」

 

ほっと安堵の息をついてから、とてとてとルビィに歩み寄る花丸。

その様子を見て何故か数度、首を縦に振るアルファ。

 

「んで、お前は何なんだ?」

 

そう言って、アルファはオメガの方を向いた。

 

「...僕?」

「あぁ、お前だ。ここに来て5年は経つが、お前みたいなのは初めてだ。俺以外にそのドライバーを持っているアマゾン、なんてのはな。」

 

語りながら、オメガへとゆっくり歩み寄るアルファ。

彼から放たれる殺気を受け、オメガも自然にファイティングポーズをとる。

両者の距離が約2メートル、となった地点でアルファが立ち止まり、オメガに1つの問いをぶつけた。

 

「答えろ。お前は、何者だ?」

 

―何者。

 

それは今のオメガ、星夜にとって一番答えに困る質問だ。

一瞬だけ、オメガの構えが解けた。

答えを探しているのだろう。

 

「だんまりか...。なら、身体に聞くだけだ。」

 

アルファがそう言って腕を広げた瞬間だった。

 

「セイヤよ!オハラ・セイヤ!!」

 

そう叫んで鞠莉が両者の間に入った。

 

「この人は、尾原星夜。私の、大切な人よ。」

 

アルファと対峙し、正面切ってまた叫んだ。

少しの間、鞠莉とアルファが睨み合う。

すると、ふっと息を吐きアルファが腕を降ろした。

 

「そこまで言われちゃ、敵わねぇな。」

 

やれやれ、と言った風に肩を竦めて言う。

そして、くるりと背を向けた。

 

「じゃあな。」

 

そう言うが早いが、ジャンプして木に跳び乗りそのまま木から木へと跳び移ってどこかへと消えていった。

 

※※※

あの後、ネオと名乗ったアマゾンは善子ちゃんをお姫様抱っこしてどこかに跳んでいき(善子ちゃんはずっと決めポーズをとっていた)、僕と鞠莉ちゃんと花丸ちゃんはルビィちゃんが起きるのをその場で待った。

2人にはアマゾンについて説明しといたけど、わりとすんなり受け入れてくれたし、別にトラウマにもなっていないみたいだったから一安心だ。

 

「良いですか?皆さん、夏と言えば!はい、ルビィ。」

「...多分、『ラブライブ』!」

「さすが我が妹!可愛いでちゅねぇ~。よくできまちた~。」

「頑張ルビィ!」

 

その証拠に、今もホワイトボードの前で姉妹仲良く戯れている。

 

「何、この姉妹コント。」

「コント言うなっ!」

 

善子ちゃんがボソッと呟いた言葉に、ダイヤさんが少し怒りながらツッコミを入れた。

その善子ちゃんを見ながら、僕はあの青いアマゾンのことを考える。

 

彼は一体、何者なんだろう。

彼だけじゃない。あの赤い方もだ。

あの人は僕と同じベルトを持っていた。

もしかして、僕のことを何か知っているんじゃないか?

 

「...星夜さん?善子ちゃんのことを睨んで、どうしたんですか?」

「え?」

 

花丸ちゃんが僕の顔を不思議そうな顔で見ていた。

 

「クックックッ。そんな事も分からないの?ずら丸。星夜さんはこのヨハネの魅力の虜になったのよ。」

「!?」

 

善子ちゃんがポーズを取りながら言った。

鞠莉ちゃんが驚いた目で、僕の方を見ている。

 

「善子ちゃん。星夜さんは鞠莉さんの執事ずらよ?」

「甘いわね。ずら丸。このヨハネにかかれば、どんな人間も私に忠実な僕になるのよ。」

「いや、僕、人間ではないんだけど...。」

 

僕が発した一言に、2人は何とも言えない表情になった。

 

「...星夜さん。今のは、ヨハネでも少し反応に困ってしまうわ。」

「あ、ごめん。」

「あんまり言わない方が良いと思うずら。」

「うん、分かった。」

「そこ!うるさいですわよ!」

 

善子ちゃんと花丸ちゃんと話していたらダイヤさんが僕達に向かって指を突きつけた。

 

「全く、今は『ラブライブ!』に向けたミーティング中ですわよ!優勝したくないのですか!」

「ご、ごめんなさい。」

 

僕(だけ)が謝ると、ダイヤさんは会議を再開させる。

 

「んっんん。それでは、気を取り直して。夏と言えば、『ラブライブ!』その大会が開かれる季節なのです!」

 

そう言ってダイヤさんは、ミーティングが始まった時点からホワイトボードに貼られていた紙を指差す。

 

「『ラブライブ!』予選突破を目指して、Aqoursは

この特訓を行います!」

 

その紙には、円グラフで1日の練習メニューが書かれていた。

 

「これは、私が独自のルートで手に入れたμ's(ミューズ)の合宿のスケジュールですわ!」

「すごい、お姉ちゃん!」

 

μ's(ミューズ)』って確か、スクールアイドルの文化を全国的に普及させた伝説のグループだっけ。

ちょうど昨日、鞠莉ちゃんからその話を聞いていたな。

Aqoursも、彼女達に憧れた千歌ちゃんが作ったグループなんだってことも教えてもらった。

その彼女達が行っていた練習メニューか。

一体どんなものなんだろう。

そんなことを考えて、僕はホワイトボード上の紙を見る。

 

...いや、厳しくない?

 

「遠泳、10キロ...?」

「ランニング15キロ...。」

「こんなの無理だよぉ...。」

 

花丸ちゃん、善子ちゃん、そして千歌ちゃんが紙に書かれたメニューに対して難色を示す。

アマゾンの僕ならまだしも、普通の人間の皆には無理じゃない?

 

「ま、何とかなりそうね。」

 

...果南ちゃん、実はアマゾンだったりしないよね?

 

僕の失礼な疑問は、恐らく口に出さなくて正解だっただろう。

その後もミーティングは、賑やかに、和やかに続いたのだった。

 

※※※

結局、色々あって私達は、夏休みに千歌さんの家で合宿をすることになった。

 

「全く。朝4時なんて、起きられるわけないじゃない。」

「善子ちゃん、朝弱そうだもんね。」

「堕天使だからよ。というか、善子じゃなくて、ヨハネ。」

「堕天使は皆、朝が苦手ずら?」

「皆かどうかは知らないわよ。」

 

痛い所を指摘してきたずら丸に、私は無難な返事をする。

 

今、私達1年生は他の学年より少し離れた場所にある下駄箱に向かって歩いていた。

 

「そういえば、善子ちゃん。」

「だからヨハネ。何?」

 

ルビィが私の隣に来て、話しかけた。

とっても無邪気な笑顔を浮かべて、私に聞く。

 

「あの青いアマゾンさんって、もしかして善子ちゃんの彼氏さんなの?」

「はぁ!?」

「あ、それはマルも気になってたずら~。」

「な、ずら丸!?」

 

何で!?

何でそうなった!?

 

「べ、別に、そんな関係じゃないわよ...。ほら、言ったでしょう!?あいつは私のリトルデーモンだって!」

「でも、リトルデーモンって彼氏さんって意味じゃないの?」

「違わい!」

 

くっ!あぁ言えばこう言う!

あぁもう!!

 

「うるさいうるさいうるさい!!早く行かないとダイヤさんに怒られるわよ!」

 

私は少し速度を早めた。

ルビィとずら丸はクスクスと笑いながら後ろを着いてくる。

 

あいつのことなんて何とも思ってないわよ!

 

校門では、2年生と3年生、プラス星夜さんが談笑しながら立っていた。

鞠莉さんが星夜さんの腕に抱きついていて、それをダイヤさんが注意しているらしい。

 

「鞠莉さん!学校内では節度を持って星夜さんと接するとあれほど!」

「いーの!星夜は私の執事なんだから!」

「意味が分かりませんわ!」

 

随分とまぁ、賑やかね。

こっちにまで声が聞こえてくるわ。

 

「星夜さんと鞠莉ちゃん、仲良しずらねぇー。」

「そうね。でも、ダイヤさんの言うとおり、あんまり学校ではくっつかない方が良いと思うけど。」

「善子ちゃんは、くっつきたくてもくっつけないもんねー。誰にとは言わないけど。」

 

...聞こえなかったフリしとこ。

 

「あ、来た来た。おーい。」

 

千歌さんが私達に気づいたみたいで、こっちに向かって手を振った。

私達が合流したところでダイヤさんと鞠莉さんの漫才も終わり、ダイヤさんが咳払いをした。

 

「さて、それでは皆さん、先程も言った通り、明日は朝の4時に集合です!」

 

4時...。やっぱり、起きられる気がしない。

最悪、ママに起こしてもらおうかしら。

 

「では、本日はここで解散としま...って、あら?」

 

そう言ってダイヤさんが校門の外を見る。

気になって見てみると、こちらをじっと見つめる男の人が居た。

暑いのに長袖のパーカーを着て、フードを被っている、見るからに怪しい人。

 

「あのー、何かご用ですか?」

 

さすが生徒会長。ダイヤさんが男の人に話しかけながら近づいた。

 

その光景を見ていた私は、その男の人の左側の二の腕が不自然に膨らんでいることに気がついた。

 

まさか...。

 

「ダイヤちゃん、そいつに近づくな!」

 

私がそう思ったのも束の間、星夜さんが叫んだ。

その緊迫感のある叫びが、私の嫌な予感を確信に変えた。

 

「えっ、近づくなって...。きゃ、ちょっと、何ですの!?」

 

星夜さんの叫びを聞いたダイヤさんがこっちを向いた時だった。

男の腕が、ダイヤさんの腕を掴んだ。

 

そして、男の身体からみるみる蒸気が上がり、その蒸気が晴れる頃には、そこには鷹のような姿ををしたアマゾンが現れた。

 

「ちょっと、離してください!」

 

ダイヤさんが必死にアマゾンの腕を振りほどこうとしているが、力で敵うはずもない。

タカアマゾンは背中に生えている翼を広げて、空へ飛び上がろうとする。

 

「ダイヤ!」

「お姉ちゃん!」

 

鞠莉さんとルビィが叫んだ。

 

「くそっ!間に合え!」

 

星夜さんが呟いて走り出した。

ダイヤさんの足を掴もうとするものの、タカアマゾンの方が早く飛び上がっていたせいで、ギリギリ届かない。

 

タカアマゾンは上空で体を1回転させ、どこかへ飛び立とうとした。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

刹那、()()()()()()()()

 

その衝撃で、タカアマゾンはダイヤさんを離した。

 

「ピギャァァァァァァ!!!」

 

悲鳴をあげながら落ちてくるダイヤさん。

でも、その下で待ち構えていた星夜さんに、俗に「お姫様抱っこ」と呼ばれる格好で無事にキャッチされた。

 

「大丈夫!?」

「...え、あ、はい。大丈夫ですわ...。」

 

ん?何か照れてない?

 

「...むぅ。」

 

あぁ、ほら。

鞠莉さんが私の隣で膨れてるじゃない。

 

「早くあっちに。」

「え、ええ。」

 

ダイヤさんがこちらに向かって走ってきた。

とりあえずまぁ、一安心ね。

 

タカアマゾンは打ち所が悪かったのか、地面でうずくまっていらしい。

そんなタカアマゾンに向かってどや顔を向ける男が1人。

 

「どうだ!俺の必殺キックは!よく効くだろ?」

 

そう叫んでいるのは、というよりカッコつけているのは、黒いライダースジャケットを着た()()()

 

...やっぱりか。

 

「ねぇ、君。助けてくれてありがとう。」

 

星夜さんが絶賛カッコつけ中のアイツに話しかけた。

 

「礼には及ばねぇよ。それより、ちょっと離れてろ。」

「いや、ここは僕が戦うから、君こそ離れてて。」

「あ?そりゃどういう意味だ?」

 

アイツが星夜さんに聞いた。

 

「星夜!」

 

するとタイミング良く、鞠莉さんが星夜さんにベルトを投げ渡した。

 

「ありがとう!」

 

鞠莉さんにお礼を言って、星夜さんは腰にベルトを巻く。

 

「...アマゾン。」

 

そう呟いて、ベルトのグリップを回した。

 

『O・ME・GA』

 

音声と共に一瞬、緑色の熱風が辺りに吹き荒び、星夜さんはアマゾンオメガに変身した。

 

「アンタ、この間のアマゾンか!」

「早く逃げて..って、え?この間の?」

 

星夜さんのその疑問に答えるかのように、アイツはニカっと笑うと着ているライダースジャケットのジッパーを下げた。

アンダーシャツの上に巻かれているのは、鳥の横顔のような見た目の、赤い派手なベルト。

アイツがポケットから、小さな注射器を取り出し、ベルトに装填した。

 

『NE・O』

 

さっきとはまた別の、聞き取りにくい機械音声が鳴る。

 

「アマゾン!!」

 

アイツがそう叫ぶと、辺りに今度は青色の熱風が吹き荒れた。

 

熱風が晴れると、そこにはプロテクターを纏った青色のアマゾンーネオが立っていた。

 

「君は、アマゾンネオ!」

「よく覚えててくれたな!」

 

2人のアマゾンが楽しそうに話す。

あの2人、タカアマゾンのこと忘れてない?

 

「キィヤァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

痛みが解けたのか、それとも存在を忘れてたことに怒ったのか(?)タカアマゾンが立ち上がって叫んだ。

 

「一緒にやるか?」

「うん。よろしく!」

 

そう言って各々がファイティングポーズを取った。

アマゾン2人とタカアマゾン。

互いに睨み合って、相手の出方を伺う。

 

「...っくちゅ!」

 

すると私の隣で、ルビィがくしゃみをした。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「きぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

それを合図に、3体のアマゾンが同時に駆け出す。

 

私達の目の前で、獣達の戦いが、幕を開けた。

 

※※※

同時刻。

内浦のとある海岸。

 

「はぁ...はぁ...っあ...。」

 

あるカップルが走り回っている。

何かから逃げているようだ。

2人は物影に座り込み、周りを見回して、周囲に何も居ないことを確認した。

 

「くそっ!!何なんだよアイツ!」

 

男の方が息を切らせながら悪態をついた。

 

「あのまま、地の果てまで追ってくるつもりかしら。」

 

女の方もまた、息を切らせながら喋る。

 

「...さぁな。でも、アイツには絶対勝てない。だとしたら、このまま逃げきるしかないだろ。」

「このまま...。」

 

海風が優しく2人を撫でる。

直後、2人の顔が強張った。

 

「...来た。」

「あぁ。分かる。」

 

そう言って、男は立ち上がった。

 

「お前だけでも逃げろ。」

「嫌。だったら、私も一緒に死ぬわ。」

 

女もまた、立ち上がる。

 

2人が見つめる遥か先に、揺れる人影が歩いている。

 

「ねぇ、ずっと一緒に居てくれるわよね?」

「...あぁ、地獄まで一緒だ。」

 

2人の身体を、蒸気が包み込む。

そして、2人を本来の異形の姿に戻した。

 

「行くぞ。」

「ええ。」

 

異形達は、人影に向かって駆け出した。

 

※※※

 

※※

 

 

「...全く、嫌な海だ。」

 

呟く影が1つ。

鈍い銀色の身体を持ったその獣は、両手に持ったものを握りつぶした。

 

獣の足元には、さっきまで異形だったものが2つ、転がっている。

 

「潮風に乗って、アイツらの臭いが飛んでくる。」

 

歩きながら、獣は独り言を言う。

 

「まぁでも、仕方ないか。」

 

獣が取り出した写真には、アマゾンオメガの姿が写っている。

 

「待ってろよ。すぐに、すぐにだ。」

 

獣は写真を、見つめて、そして、こう言った。

 

 

「すぐに、会えるからな...我が息子よ。」

 

 

銀色の獣はそのまま、どこかへ歩いていった。

不穏な予感と共に。

 

 




はい、如何だったでしょうか。

ぶっちゃけ、書いてて段々、自分でも分からなくなっていきましたね。

それで何度も書き直して出来上がったのがこちらになります。はい。

意味がマジで理解できない所とかあったらどうぞ、感想等で意見を聞かせてください。
できれば優しくW

今後もお読み頂ければ幸いです。

それでは、次回。

また、新たにお気に入り登録してくださった、

王蛇さん、いて座の馬さん、クウ太さん、フユニャンさん、大日小進さん、tantan3さん、artisanさん、大根の味噌汁さん、ボーフボルシチさん、テテフガチ恋民さん

ありがとうございます!

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