「……みんな! ひとまず集りましょう。そうしないと、こんな知らない土地……」
クラス委員が手を叩いて彼女らの不安を何とか押し留めようとするが、当の彼女も膝が笑っている。
皆が恐怖に打ち震えているこの光景、これも二度目だ。
自分は既に経験している。
――だがどうして?
疑問が突き立った胸中を断じるかのように不意にいななき声が耳朶を打った。
ジェム領のユニコンとオーラバトラーがこちらへと向かってくる。
――どうして、ここまで……「同じ」……。
「何……あれ」
「馬車……? 外国なの?」
馬車から降り立った女性がクラスメイト達を数え始めた。
「えっと……全部で四十四人」
『かなり多いな』
息を呑んだ。まさか、と自分の聞き間違いだと思いたかった。
だが、紛れもない。その声の主は、つい先ほど自分の胸の中で死んだはずなのに……。
「……ザフィール騎士団長?」
声にした途端、相手が胡乱そうにこちらを注視する。警戒するオーラバトラーが一斉に銃口を向けた。
『……奇妙な。地上界から呼んだはずの者が、どうして俺の名前を知っている?』
「だってさっきまで……。騎士団長! わたくしはさっきまで、《ソニドリ》と戦っていました! 翡翠もいて……、あの記憶は……」
夢だったのか。否、夢にしては生々しく、そして血の臭いさえも纏いつく。どうしてここまで「同じ」事が起きているのか。そもそも、この目にしている現象は本物なのか、偽物なのか。
その是非を交わす前にアルマーニが疑問符を挟む。
「……貴女、オーラが違うわね。どうしてかしら。他の地上人もオーラ力自体は高いのに貴女だけずば抜けている。検証したいわ。何なの、貴女」
歩み寄ってくるアルマーニに対し、ザフィールが注意を飛ばす。
『エ・フェラリオ。相手は武器を持っている。……だが、どうしてだ? 俺と同じ剣を……』
「奇妙な符号じゃない。運命的なのかもね」
アルマーニの呑気な言葉繰りに兵士達が惑わされている間にも事態は転がっていく。
蒼はハッとここで起こるであろう「未来」を口走っていた。
「いけない……! ゼスティアの奇襲が来る!」
その言葉に胡乱な眼差しが注がれる。あり得ない、と一笑に付されてしまった。
『おいおい! いくらなんでもここにゼスティアがはかったようなタイミングで来るなんて……』
その瞬間、一機の《ドラムロ》へと機銃による火線が瞬く。
よろめいた《ドラムロ》へと、敵の奇襲作戦班が割って入っていた。想定よりもかなり速い。恐らくは自分が奇襲を口にしたせいだろう。
ゼスティアの思わぬ伏兵に全員が戸惑う。
『ゼスティアの機体! この地上人、どうして……』
『うろたえている場合か! 剣を取れ! ここで立ち向かわずしていつ立ち向かう! ジェム領騎士団の名が泣くぞ!』
蒼は《ドラムロ》と敵のオーラバトラーが接戦に入るのを黙って目にするしかなかった。ザフィールの駆る《ドラムロ》が敵オーラバトラーと近接戦に入る。その光景すら、どこか虚飾じみている。
その時、肩を触れる人影があった。
反射的に剣を向けると、アルマーニが手を上げる。
「……剣は、向けないで欲しいわね」
「アルマーニュ・アルマーニ……。どうしてここにいる? どうして……またわたくし達を呼んだ?」
「また? それに名前まで……。貴女、本当に何なの? オーラ力が桁違いに高い上に、ザフィール騎士団長と同じ剣を持っているなんて。……言いたくはないけれど、まるで選ばれた、みたいな……」
選ばれた。その言葉に蒼は思い返す。白亜の悪魔、《ソニドリ》に乗っていた翡翠の姿、その口の紡いだ意味深な言葉を。
「……あれは翡翠であって翡翠でない……? でも、この手で殺したはず……。いいえ、殺したから、ここにいるの?」
アルマーニは困惑の只中にある自分へと興味が湧いたらしい。顔を覗き込んで、悪戯そうな笑みを浮かべた。
「……面白いわね、貴女。大丈夫よ。ザフィール騎士団長はかなりの手だれ。奇襲だからって言ってやられたりはしないわ。それに、他の騎士団の面々もね。何があったのか、よく聞かせてもらえる?」
この戦闘も間もなく終わる。それは分かり切っていた。相手はジェム領国への奇襲作戦が目的だ。ゆえに、それほどの兵力で向かってきているわけではない。
想定通り、ザフィールの《ドラムロ》が最小限の被害で敵陣営を退ける。
それも一度見た光景。そして、圧倒された景色であった。
『……アルマーニ。何が起こった?』
「今は、まだ決定的なのは何も。でも、面白い発見がありそうよ。ザフィール騎士団長、それにジェム領の騎士達。もしかしたら思わぬギフトを、手に入れたかもしれないわね」
にやりと笑みを浮かべたアルマーニを、蒼は見つめ返していた。