「おい、リゼリット。正直に言い。自分、何したん?」
ロキのその言葉とともに渡されたのはステイタスの書かれた羊皮紙だった。
リゼリット・ハイドランジア
レベル3
力 :I 0
耐久:I 0
器用:I 0
俊敏:I 0
魔力:l 0
《魔法》
<ゲノス・ドラコ>
詠唱式【作者権限行使!!!】
<ドラコ・カノン>
詠唱式【カノン】
<ドラコ・トイコス>
詠唱式【トイコス】
<>
《スキル》
【血族】
自分の身体に武器を突き刺す事で、武器に穢れた血を付与することができる。使用中は失血していくのでダメージを負い続ける。
【魔神契約】
魔神との契約特典が使用出来る
特典
・経験値量増加
・敵が龍種だった場合、ステイタス超絶補正
・自らの瀕死時、ステイタス超絶補正
【竜化】
・任意発動
・自分の身体を竜へと変えることで身体能力を爆発的に上昇させる。使用中は痛覚が遮断される。
【竜力行使】
・竜力の行使権
・竜化のリミッターを外す
【怪物】
・魔石を喰らう事で力を得る。蓄えた力はステイタスに反映されることは無いが、本人が望んだ時に純粋な力として身体に還元される
・力を引き出すことで身体能力が大幅に上昇し、特殊能力が付与される。効果は永続的に続くが代償として自我を削る。
特殊能力:無し
怪物化進行度:0%
リゼリットは絶句した。ランクアップはしているだろうと思ったからそこまで驚きはしなかった。魔神と契約したという事実も何かしらスキルとして表れると思っていた。しかし【孤軍奮闘】等のスキルが無くなり、新たに生まれた【怪物】と言う名のスキルについてだ。十中八九、魔石が原因だろう。
「この【怪物】ってスキルはなんや?何したん?」
特に異常が無ければ魔石を食べたことは黙っていようと思っていた。しかし有事である。リゼリットは仕方なく口を割ることにした。
「魔石を、食べました」
ロキは目を見開き、動揺した様子で僕に言った。。
「リゼリット!?それをどこで知ったんや!?」
「ギルドの図書室で見つけました」
次にロキは表情を曇らせた。そして申し訳なさそうに言った。
「実はな、ウチも全部しっとったんや。竜人という種族が魔石を喰って成長するのも、全て知っとった。フィンもリヴェリアもガレスも知っとった。でもそれを言えばリゼリットは自分のことを調べて、傷付くかもしれんから言わんでおいた」
「全て、とは、、、」
「竜人は何れだけ人と近くても結局は、怪物と人間のハーフなんや」
「つまり、リゼリットは魔石を食えば強化種として成長する怪物と同じってことや」
リゼリットは息を詰まらせた。知っていた事である。しかし自分が一度が家族だと認められた人物に「お前は怪物だ」即ち「お前は殺すべき敵だ」と言われることはリゼリットの精神を的確に抉った。本を見たときの気持ちが蘇った。
もし自分が怪物だとすれば、この胸で動く心臓は何だ?
もし自分が怪物だとすれば、この身体に流れる紅い血は何だ?
もし自分が怪物だとすれば、リヴェリアさんに言われた家族という言葉の意味は、、、
頭の中を様々な考えが網羅した。リゼリットが魔石を食べれば、強くなるかもしれない、と無理矢理考えたのは自己嫌悪から逃れる為だった。前向きに捉えることで自分は怪物じゃないと言い聞かせることが出来た。しかし事実から逃げることは出来なかった。
気付けばリゼリットは走っていた。行く宛もない。行く目的すらない。ただ、ただ走っていた。ロキが僕を止める声が空に響いていたがリゼリットの耳にはまるで届いていない。
気付けば暗く成るオラリオを雨雲が覆っていた。
リゼリットは雨の中を走りびしょびしょだった。無我夢中で走った。けど胸に立ち込める霧は無くならない。茫然と立ち尽くすリゼリットの肩を誰かが叩いた。
「済みません、もしかして、、、」
リゼリットは振り返った。すると、そこにいたのは酒場の店員のシルだった。
「やっぱり!リゼリットさんじゃないですか!」
「どうしたんですか!?こんな大雨なのに、、、」
家出だと言えない。私情に他人を巻き込みたくない。
「いえ、、、少し、、、」
リゼリットは言葉を詰まらせた。そんなリゼリットを見てシルは察したのか、笑顔で言った。
「取り敢えずここから店は近いのでタオルを借りましょう!話はそこで」
リゼリットはシルに手を引かれて街を歩いていく。数分もしない内に酒場に着いた。
リゼリットは借りたタオルでびしょびしょの身体を拭いながら、暖かいコーヒーを啜った。
「何が有ったんですか?もし話して楽になるなら言って下さい」
この時間は客足が少ないらしい。ましてやこの雨なので客は僕しか居なかった。家出した経緯をぶちまけるには良い環境だろう。
「全部から逃げたくなりました。そして逃げました。逃げられなかったけれど」
最近、店で一人で酒を呑むことが多く、シルとは仲良くなっていた。シルになら悩みを打ち明けられた。
「済みません。分かりにくくて」
「結局、どう足掻いても俺は怪物なんだ」
誰にも聞こえない声で言ったその言葉をシルは拾った。そしてクスリと笑った。リゼリットはシルをみて自嘲気味に言った。
「笑える程可笑しいですよね」
「いえ、そう言うことではないんですよ」
シルに目を向ける。
「いや、リゼリットさんも悩むんだなぁ、と思いまして。悩みも全部一蹴するタイプだと思っていたけど」
シルは自分は何だと思っているんだ。そう心で呟いた。そう言えば今まで真剣に悩んだことなんて無かったし、真剣に怒ったことも、真剣に悲しんだこともなかった。
「最初の方の独りでいるリゼリットさんなんて物凄く怖かったですよ?」
「そう、ですか?」
「そうです!何を聞いても「はい」か「いいえ」しか言わないし!しかもずっと表情を変えないからなんだか嫌われてるのかな、なんて思ったりして」
そう言うわけでは無い、と即座に否定した。するとシルは分かってます、と言って話を続けた。
「でも今のリゼリットさんはちゃんと悲しい顔をしていますよ。悲しそうな目は何時も通りですけど」
笑うシルに首を傾げた。シルはまだわかりませんか?と前置きをして言った。
「ちゃんと人間ですよ。貴方は。今は逃げていてもいいんです。ちょっとずつ振り替えって立ち向かってください」
「きっとリゼリットさんなら出来ますよ」
少し、ほんの少しだけど楽になって救われた気がする。帰ってロキに謝ろう。そう決心して立ち上がった。タオルと相談代(?)と言うことで少し多めに、見慣れないエルフの女性にお金を払った。カウンターの奥へと進んでいく女性を指してシルは言った。
「あの娘、新しく入った娘なんですけど器用なのに不器用なんですよね。リゼリットさんと少し似ているのできっと気が合うと思いますよ」
リゼリットは褒めているのか、貶しているのか分からない言葉とともに酒場を出た。
気まずさに逃げたくなる気持ちに立ち向かい本拠に入ったリゼリットは完璧な土下座と言うものを見せられ少しの間硬直していた。
「リゼリット、すまんかった!」
数秒して硬直が解ける。
「いえいえ。どうか頭を上げてください。ロキ様。もとはと言えば悪かったのは自分なのに」
「それでも行ってはいかん言葉だったわ!」
リゼリットはロキの見よう見まねで土下座をする。
「これでお相子にしましょう。ロキ様」
「本当に済まんかった。お前は怪物やない!ウチの大事な家族や!」
「俺もいきなり家出して済みませんでした」
結局、この土下座大会はリヴェリアが来るまで続いた。大会の結果、リヴェリアの拳骨を一緒に受けることになり、頭の形が変形しかけたのは別の話である。
「お前は怪物なんかじゃない!大事な私の息子だ。だから一緒に寝よう!」
と、リヴェリアさんに言われて一緒に寝たのも別の話である。
あれっ、ハーレムなっ、、、ハーレム無s、、、の筈じゃ、、、
そして知らぬ間に崩壊していた闇派閥。