黒に染まるオラリオの中で一つだけ灯りがついていた。
部屋の中で、リゼリットは隣で眠る少女に眼を向けた。この少女が娘に成ってから早一週間。未だ名前すら浮かんでこないし、この子の声すら聞いたことがない。母親が死ぬ、と言うのは三歳の子供が体験してはいけない痛みだ。リゼリットはそれを誰よりも理解していた。だから母親を殺されて精神が破綻しているのも分かっていた。
不意に外を見た。何故だろうか。嫌な予感がする。そしてリゼリットは開いた窓から外へ引き出された、、、
は?
「よぉ!!!」
頭に衝撃。次に鼻。そして腹。
咄嗟のことで理解が出来ていない。リゼリットは取り敢えず目の前に向かってくる拳を掴んだ。
「はっ!俺の拳を掴むか」
色んな疑問が脳内を駆け巡るがその前にこいつは誰だ。
「お前は誰だ」
リゼリットは不確かな視界のまま目前にいる人物を見据えた。全身に刺青が刻まれている男だ。
「そいつは答えられねぇな。なぁ竜人の娘は何処だ?」
「そいつは答えられねぇな」
男が後ろに下がる。
「そうか、じゃあ死ね!」
リゼリットは黙って拳を構えた。男の拳が顔に直撃する直前で顔を横にずらして回避した。
「お前、結構強ぇな。そこは父親譲りか?」
煩い男を無視してリゼリットは男との距離を一気に詰めて、顔面を殴った。
「おいおい、だんまりはつまんねぇぜ?オーディンのガがよぉ!」
「は?」
何を言っているんだ?この男は。リゼリットがそう思う間にも男はリゼリットの胸ぐらを掴み顔面を殴打した。そして下卑た笑いを浮かべながら男は言った。
「ヒャハハハハ!自分の事も知らねぇのか!こいつは!そりゃあおもしれぇな!」
男は馬乗りに更に激しくリゼリットの顔面を殴打する。
「結構可愛い顔してるじゃねぇか。女だったらこのまま犯してたぜ?」
馬乗りのまま男はリゼリットの腹を殴った。急に込み上げてくる鉄のような味。リゼリットは血を吐いた。男は更にリゼリットを殴る。暫く殴り続けられリゼリットのヘアピンが取れた。男は露に成ったリゼリットの真っ直ぐな角を見て、気持ち悪い笑みを浮かべた。そしてリゼリットの角に手を掛け、折った。
何故か声は出なかった。叫べていたなら、何れだけ楽だったろうか。男はそのまま角をリゼリットの片眼に刺したが、そんなことは正直どうでもよかった。竜人の弱点は角だというが、今、リゼリットはそれを確信した。
「いいか?よく聞けよ」
男はリゼリットに言う。
「ハイドランジアには神の血が流れてるんだ」
そう言って、男はリゼリットの左眼を抉り出した。そのまま角で腹を刺してかき混ぜる。
「そしてなぁ、オーディンは自殺なんかしてねぇん。おっと話しすぎたな」
それだけ言って、男はリゼリットのから離れた。そして黄昏の館の三階、リゼリットの窓に向かって大きく跳躍し部屋に入った。それから三秒もしない内に男は出てきた。少女を抱えて。
「じゃあな!」
身体が動かない。このままだと少女が連れ去られてしまう。朦朧とした意識と半分に成った視界の中でリゼリットは力を求めた。
ー力の渇望を確認。スキル【怪物】を使用しますー
ー怪物化進行完了ー
脳内にそんな声が響いた。
リゼリットの身体が光った。そして光の中から翼を持ったリゼリットが飛び出してきた。リゼリットは男を追う。光の速さで男の所へ行き、肥大した腕と爪で身体を貫いた。そして顔を掴み、両端から圧力をかける。
「あああああ!止めてくれ!痛い!痛い!まだ死にたくない!」
男の顔が苦痛に歪む。次の瞬間、鈍い音が響いた。リゼリットの白い髪を赤が染める。男だったものからは脳液が漏れ出し、リゼリットは男を投げた。勢いよく飛んでいった男はやがて見えなくなり、宙に舞う少女をリゼリットは胸に抱き寄せ垂直に堕ちた。背中を下に、少女に衝撃は与えないようにリゼリットは撃墜する。リゼリットは辛うじて生きている様で半眼で、アイズが近寄ってきている様子を見ながら意識を手放した。
見慣れた天井だ。さっきから頭痛が酷い。急に少女のことが浮かんで、焦ったがリゼリットの隣で、リゼリットの腕を抱いて眠っていて安心した。治療後らしく、リゼリットの上半身は裸で包帯が巻いてあり、血が滲んでいた。すると部屋の扉が開いて、幹部三人とロキが入ってきた。
「目覚めた様で良かった。早速だが何が有ったのかい?」
リゼリットは事情を話した。今回に至って、リゼリットは何も悪くない。むしろ被害者だ。フィンはロキに嘘をついていないか、確認したがロキは首を横に振った。そして暫くの間、談笑したあと、リヴェリアを除く全員が帰っていったがリヴェリアさんだけが話が有るようで残っていた。
「先ずは、リゼリット、その子と何が有った?」
リヴェリアさんは隣で眠る少女を指して言った。
「いや、特になにも」
「お前が倒れていた日からその子がお前から離れようとしないんだ。前までなら直ぐに離れていただろうし、そもそもそうして眠ること事態無かっただろう」
思えばそうだ。中々なついてくれず頭を抱えていたと言うのにこの有り様だ。リゼリットが男から少女を死守したからだろうか。理由はともあれ、素直に嬉しい
「そして次に報告だ。どうやらお前の身体はポーションを受け付けないらしい」
リゼリットの頭に大きな疑問符が浮かんだ。
「損傷の酷かった部分、特に腹にエリクサーを掛けたら逆に溶けた。だから自然回復を待つから暫くは動けない。その間は退屈かもしれんが我慢する様に。そうだ、この間を使ってその子の名前を考えたらどうだ?」
そうリヴェリアさんが言うのよ同時に少女が寝言を言った。
「お、、と、、、、さ、、ん」
この子には親が必要だ。実を言うとこの子の親になると決めた時の自分の気持ちや考えと言うものはよく分かっていなかった。ただこの子に昔の自分を見た気がした。今の自分の様に成って欲しく無かったから、この子を育てようと思ったかも知れない。
気付けばリゼリットの部屋には大量の本が置かれていた。詰まらなくならないようにと配慮して置いてくれたのだろう。リゼリットはおもむろに本を一冊取って、ページを繰った。少女の名前を探して。
戦闘描写が滅茶苦茶下手くそなのは言わないで下さい!
それとお気に入り200突破有り難うございます!
しおり80件突破有り難うございます!
白熊飴さん、コメント感謝致します。
その他コメントをくれている方、しおりをしてくれた方、お気に入りしてくれた方、この作品を読んでくれている全ての方に感謝致します。