「沢村さんって、少し怖い人かと思っていました」
突然開口一番にそう言われて唯はハルのことを思わず見つめた、そりゃあもう穴が空くかというくらいに。
ハルはクスクス笑って唯を見ている、その目には決して馬鹿にする色はなく純粋に唯の反応が面白いという気持ちだけが込められていた。
それに気づいた唯は自然と入ってしまっていた肩の力を抜く。
「無愛想、だったかな」
「いえ、緊張していたんですよね?どこか声が固かったから最初はそういう子なのかなと思っていたんですけど…私もよく人見知りするので」
「三浦さんも?」
唯が思わず聞くとハルは優しく笑って頷いた。
「だから、よく他の友達に初めての場所にはついてきてもらったりすることも多いです、一人じゃ怖くて…」
「あ、わかる、変じゃないかなって思うんだよね」
「そう!」
思ったよりも会話が弾んで唯は思わず言葉を続ける。
ハルに対して唯はどこか、自分とは無縁な存在として避けてきていたのだ。
綱吉に片思いしている相手と言うのはわかるが、そうでなくともこのグループの中では明るくムードメーカーになることが多いというイメージから唯は自分とは趣味が合わないだろうと思っていた。
だからこそ、共通点が見つかって嬉しかったのだ。
「実は最近できたカフェ、ずっと気になっていたんだけど一人で行けなかったんだよね」
「そこ知っています!サンドイッチが美味しいって聞いて気になっていました!」
「一緒に行く?」
「行きましょう!それじゃあいつ行きますか?空いてる日に合わせますよ」
「それじゃあ、今度の祝日とかどう?その日なら多分空いてると思うし」
「再来週でしたっけ、いいですよ、楽しみですね!」
「うん」
唯は自然と頬を染めて口元が緩んでしまうのを自覚しながら、止めずにフフと声を零した。
ハルも同じように笑っており、お互い和やかな空気が流れていた。
唯は感動していた、生まれてこの方まともに女友達なんて千沙くらいしかできたことがなかったため、これはもうハルのことを友達と呼んでもいいんじゃないかと考えて内心震えた。
さらに言葉をかけようと口を開こうとしてふと、視界の端にケーキ屋が映る。
そしてすぐさま頭に浮かんだのは最近それを当たり前のように自分の作ったケーキを頬張り、ミルクティーを飲むようになった緑色の姿。
「あれ、沢村さんなんだか楽しそうです!」
「え?」
唯の変化に気づいたハルが声を上げ、さらにふとある考えが頭によぎり思わずといった形で口に両手を当てる。
そんなハルに首を傾げる唯だったが、突然瞳孔を開いてこちらを見たハルに思わず肩が震えた。
ハルは周りにいる他のメンバーがこっちを見ていないことを確認してから、唯に内緒話をするという合図として口に当てていた片手を唯に向けて、手招きした。
「もしかして沢村さんって」
その時、綱吉の悲鳴が聞こえてきたので思わず顔を上げると綱吉の上に柔らかい茶色の髪の少年が乗っているを見て、思わずカバンに手を当てた。
ハルも綱吉の様子に気づいて「ツナさん!」と綱吉の方に他のメンバーと駆け寄っていく。
敵かどうかは分からないが唯は他に仲間がいるかもしれないと周囲を警戒しつつ綱吉たちに近づいた。
「ゔぉお゛い!」
突然の低く裂くような声に全員が建物の上を見る。
そこには銀髪の長い髪を風に揺らした今にも人を殺しそうな鋭い目を持った黒服の男性が片足を塀にかけて立っていた。