「なんだぁ?外野がぞろぞろと、邪魔するカスはたたっ斬るぞ!」
「な、何なの一体…!」
綱吉の呟きを流しながら唯は男性から目が離せないでいた。
明確にわかる、一般人の唯でも感じ取れるほどの殺気。
唯はついにカバンの中にまで手を入れ、あの小瓶に触れた。
(…ビリビリする…これが…)
ある意味人生初体験の殺気に唯は腰が引けてくるがその男が動いた瞬間、何か行動をと思うよりも早く男が剣を振り落としていた。
「失せろぉ!!」
唯には状況がうまく飲み込めないが、あの男が何かしらの攻撃を連続でしていることだけはわかった。
砂煙に腕で目を守り、小瓶に触れる手に力が入った。
しかし、ちょいちょいと小さな感触が背中にきたのでそちらを向くと、リボーンが立っていた。
「女子供は避難するぞ」
安心させるためかいつも通りのリボーンの言葉に唯は一瞬迷うがすぐに頷いた。
姿勢を低くしながらリボーンについていき、その場から離れるとハルと京子の姿が目に入り、思わず唯は早足になる。
「三浦さん、笹川さん、怪我は」
「私たちは大丈夫だけど」
「ツナさん達が」
不安そうな二人の視線の先にはまだ砂煙の中にいる綱吉達。
しかし戻すわけにも行かないと思った唯は二人に向き直って真剣な顔になる。
「でも、今は危険だから、私達がいても綱吉たちの逃げ道を塞ぐことになる、早く逃げよう」
二人の手を握って半ば強引に歩き出すと、戸惑いながらも二人はついてきてくれて、そのことにリボーンは目を見開く。
三人の背中を見送る形になってしまっていたリボーンに気づいた唯は怪訝な顔をしながらも焦った声色でリボーンにも声をかける。
「そこにいたら危ないから、私達と一緒に行こう、リボーン君」
「あ、お、おう」
思わず返事をして、唯の肩に飛び乗る。
ぼーっとしていて反射的にやってしまったこととは言え、リボーンは振り返ることなく、ある場所へ向かっている唯の行動に先程から驚いていた。
気が弱いと思っていた、演技力が一流なだけでいざという時には頼りにならないタイプだと。
「…怖くねぇのか?」
綱吉ならきっと悲鳴を上げて騒ぎながら逃げるだろう、場合によっては京子とハルの手すら握らずに一人で。
けれど、彼女はただまっすぐ前を見据えて歩いている、後ろに敵がいなければこれが逃げている行動なのだと気づけないくらいには堂々と。
だから思わず聞いてしまったリボーンに唯は真剣な目を緩めることなく、固い声で答えた。
「怖いですよ、でも、私達がいたら綱吉はきっと気にして戦えないと思ったから」
リボーンはそこで唯の肩が強張っていて、尚且つ少し震えていることに気づいた。
ハルや京子の不安な表情はまだ消えないが、それは自分たちの身の危険の心配より、わずかに伝わってくる唯の震えに対する唯の精神状態の心配だった。
「だから、逃げるんです、彼の帰る家にいれば、きっと一番安心させられると思いますし」
街道を歩きながら、まるで自分に言い聞かせるかのようにそう言って黙った唯は、もうあの砂煙も攻撃の音も聞こえない静かな場所まで来たのに、繋いだ手を一向に離そうとはしなかった。
その姿がどこか悔しそうだったことは、他の三人は気づけなかった。