さて、目的の人物のところに向かうのだが、唯は綱吉が今どこにいるのかわからないので携帯を取り出し、綱吉の携帯に電話をかける。
『もしもし』
「もしもし…あれ、その声はリボーン君?」
『そうだぞ』
「綱吉は今忙しいのかな?」
『まぁな、何か用なら俺が代わりに聞くぞ?』
思いがけない人物が出てきてしまい、言葉に詰まる。
ザンザスが来ることは恐らく綱吉も知っていること、リボーンが教えないはずがない。
ならば今は修行か特訓の最中。
そこまで予想した唯は少し考えてから口を開く。
「よければ息抜きに話せないかなと思っただけなんだ、綱吉って今どこにいるかな?」
『そういうことならツナは…』
それから聞いた場所を頭のなかにある地図と照らし合わせて理解した唯は苦笑しつつも応えた。
「わかった、それじゃあ今から向かうね」
相手から了解の返事を聞いてから電話を切り、ポツリと呟く。
「…ツナの修行、私と同じくらいハード?」
*
「あ、いたいた」
大きな爆発音の方に顔を向ければ仰向けて倒れて目を回している綱吉がいたので唯はその近くにいるリボーンに手を振った。
「おーい、リボーン君、綱吉!」
唯の声に反応したリボーンが片手を上げて返事をする。
「チャオッス、唯、こんな所までよく来たな」
「まぁ、来られない場所ではなかったしね」
「村さん!なんでここに!?」
復活した綱吉につられて、綱吉と対峙していた少年が唯に気づく。
「おぬしは…?」
「ツナの同級生の沢村唯だ」
リボーンが一気に距離を縮めて何かをコソコソ話している間に唯はいまだに驚いて固まっている綱吉に近づく。
「電話でリボーン君に息抜きに話そうって伝えたはずだけど、その様子じゃ伝わってなかったみたいだね」
「なっ、り、リボーン!」
話題の中心人物のはずなのに何も知らなかったことに怒った綱吉が叫ぶが当の本人はどこ吹く風で口笛まで吹いている、そこまでうまくはない。
「まぁ、それだけ集中していたってことだし、集中切らせてまで伝えることでもなかったんでしょ」
唯がフォローを入れるが綱吉がリボーンを睨むことはやめない。
一つため息を付いて、紙袋からタッパーを取り出す。
綱吉がそこでようやく唯の持ってきたものに興味を示し、そわそわとする。
それに呆れて笑いながら唯が蓋を開けると、中には茶色い液体の中に浮かぶレモンが。
「レモンのはちみつ漬けだ!作ったの!?」
「うん、小休止するにはちょうどいいかと思って」
「助かる!ありがとう、村さん!」
輝かんばかりの笑顔でそう言われてしまえば、唯も作ったかいがあったと嬉しくなってつい口元が緩む。
その勢いのまま唯は離れたところで真面目な顔して話し合っているリボーンと少年に声をかける。
「二人も食べませんか?」
「めっちゃうまい!」
一つ食べた綱吉の言葉と唯の声に反応した二人が二人のそばに来る。
まるで初めて見たというような、驚いた表情をする少年に唯は首を傾げつつタッパーを差し出す。
思わず後ずさった少年の肩にリボーンが乗ってヒョイッとレモンを一つ取ってかじった。
「リボーン殿」
「ん、確かに美味いな」
「…では、失礼します」
リボーンの反応で安心したのか、それでも未知との遭遇のように恐る恐る手を伸ばしてレモンを一つ取って口に入れた少年は目を見開く。
「…おいしい」
「よかった」
少年は唯の顔を見る、とても穏やかな笑みを浮かべていた。
「いっぱい体動かしたみたいだし、休憩にはやっぱりこれでしょ」
今度はニシシと笑う唯に少年はようやく唯の前で笑ったのだった。