あれ以来、山本の態度が激変したことは、恐らく唯を観察し続けていたリボーンと唯と本人しか知らないだろう。
廊下で向こうが唯を見つければ駆け寄ってきて挨拶してくるようになったし、体育の授業中に目が合えば嬉しそうに手を振ってくる。
綱吉と唯が話をしていると間に入ってくることは変わらないが、どちらかと言えば唯と綱吉の会話の聞き役に徹するようになった、前は綱吉と自分が話すようにしていたのに、だ。
(…犬みたいだなぁ)
遠い目をしだした唯にバジルと綱吉は首をかしげる。
「…まぁ、お互いに腹を割って話すことができてからは普通に友達だよ」
「普通に?」
「普通に」
聞き返した綱吉に唯は頷く。
さすがに話せば長くなるので当時のことは話さないでおく唯に、リボーンもそれを察して黙っておくことにした。
「さて、そろそろ私は帰るよ」
「あ、差し入れありがとう」
「大変美味でした」
「送ってくか?」
リボーンの言葉に唯は首を横に振る。
「んじゃ、気をつけて帰れよ」
三人に見送られた唯は住宅街を歩く。
バジルに言われたことを思い出しながら唯はぼんやりしていた。
「緊張感かぁ…そういえば先生にもないって言われたなぁ」
【お前はどうして死ぬ気モードのはずなのに気が抜けているんだ、普段も…もう少し緊迫した空気を出せ、威嚇は武器だぞ】
出会った当初よりアドバイスに他意が含まれるようになった言葉に、唯はなんと返したっけと考える。
ふと、そこで前方に学校が目に映る。
「…ん?」
普通に通り過ぎようとしたら、その屋上の部分にて何か行われているのが見えた。
片手を額の前で立ててよく目を凝らすと、何やら戦闘シーンが…。
「…喧嘩?…あ、降りた」
それは突然屋上から降りたかと思うと、どこかへ移動しようとしているように見える。
段々とそれが誰と誰が戦闘しているのかわかるようにまでなり…。
「…あれ?こっち来てる?う、うああああ!!」
片方が何やら強烈な一撃を食らわせたのか砂埃が舞い、唯は思わず悲鳴をあげる。
それに気づいたらしい、片方が唯を見て目を見開く。
「君は確か…」
「よそ見?余裕だね」
「あ、ちがっ…!」
金髪の青年が唯に何かを言おうとして、それを唯も見覚えのある黒髪の少年が遮ってトンファーで攻撃する。
「雲雀さん!?」
「ん…君は、千沙の…」
唯の声でようやく気づいたのか、雲雀も唯の方を見て目を見開く。
第二撃に備えていた金髪の青年は動きの止まった雲雀に驚きつつ、二人の会話を警戒しながら見守る。
雲雀はしばらく攻撃の構えで固まっていたかと思うと、ゆっくりとそれをといて唯の方に近づく。
「え、あの」
「少し、いい?」
唯の目の前で立ち止まった雲雀は無表情のまま拒否権を与えない威圧感で質問する。
そんな風に言われてしまったら強くなったとは言え小心者の唯には断る理由が見つからず。
「こ、答えられる範囲でなら…」
少し体を震わせて相手を見ることしかできなかった。
「よかった…ねぇ、最近千沙の様子が変だけど、君、なにかした?」