すべてを語った繁和は、綱吉を真っ直ぐに見る。
「…私は、唯では、ない…けれど、あの子がどれだけ辛かったのか…想像することは、できます」
「村さんのお父さん…」
「…何もしてやれなかった、私だけれど…あの子のために、頭を下げることは出来ます、だから…どうか…」
ゆっくりと繁和は綱吉に頭を下げた。
「あの子と、これからも、仲良くしてあげてください」
「…逃げるんですか」
繁和が目を見開き、顔を上げて綱吉を見る。
綱吉は、強く、そして鋭く繁和を見つめていた。
「また、逃げるんですか」
「…君は、随分と直感が、いいんだねぇ」
「茶化さないでください」
「…違うんだ、逃げるわけじゃない…ただ、私にできる、今からできる簡単な行動の一つを、しているだけだよ」
真意がわからなければ逃げているようにしか見えない。
そう、綱吉は視線で訴えるし、心の中でも叫んだ。
綱吉にとって父親というのはいつだって勝手だというイメージがつきまとう。
それは自身の父親がそうだったからだ。
そして、目の前にいる父親もそう。
だからこそ、はっきりとした答えを聞きたかった。
仲良くするのは当然だ、唯は、綱吉にとって大切な友達なのだから。
しかし、それをわざわざ言う必要はなかったはずだ。
「あるよ」
突然、繁和がそう言ったので、綱吉は思考を読まれたことに驚く。
「…久しぶりとは言え、今の仕事の前は、裏にいたんだ…人の思考を見るくらい、なんてことはないさ…君は何よりわかりやすい」
「…必要は、ないはずです」
「あるよ」
何故、と声にならないものが綱吉から発せられる。
繁和はまっすぐに綱吉を見つめ、はっきりと教えた。
「伝えなくては、伝わらない気持ちがある」
綱吉から視線がブレることなく、繁和は続ける。
「今、君に伝えるべきだと、私は、思ったんだ…何も知らずに、あの子の戦いを見るのと、知っていてあの子の戦いを見るのとでは、応援の仕方も、変わるだろう?」
戦いを止めることは出来ない、それはボンゴレと門外顧問が決めたという書類がある限り決定された未来だ。
だから、門外顧問の候補が唯だと知らされた時、綱吉達は何も知らない自分たちを自覚させられた。
特に、綱吉は誰よりも唯と一緒に居たのにもかかわらず、マフィア関係者ということくらいしか知らなかった。
今、唯のほぼ全てを知って、繁和に対してここまで怒りの感情も出せるが、それだって知らなければ出来なかったことだ。
何も知らずに唯から繁和を紹介されていたら、唯に「優しそうなお父さんだね」とか言ってしまっていたかもしれない。
唯がどんな気持ちになるかも想像しないで。
人を傷つけるのは悪だ。
しかし、知らなければ、傷つけたことすら気づけない。
綱吉は、今までのことを振り返り、何度か唯にとって心無いことを言ったかもしれないと震えた。
しかし、そんな綱吉を繁和は尚もまっすぐ見つめる。
「君も、今、伝えるべきことは、伝えておくといい…隠していても、恥ずかしがっていても…結果が同じならば、伝えたほうがずっといい…伝えることは、ずっと、簡単なことなんだから」
そう言って締めくくった繁和は、最後まで綱吉のことをまっすぐに穏やかな表情で見ていて。
綱吉は、自然と下がって俯いてしまった顔を上げられなかった