次期門外顧問の私   作:ケロポケット

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伝言

ヴァリアーが去った後やってきたディーノの説明で山本の対戦相手であるスクアーロがヴァリアーのボスに相応しい強さを持っていると知った面々は各々思うところはあれど、ひとまずその場は解散ということになった。

唯は先程千沙から言われたことが頭から離れず、ついその場から動かないで考えていた。

そんな唯に気づき、ニィっと笑ってゆっくりと後ろから近づいて。

 

「わっ!」

「ひっ!?」

 

突然の声に驚いて唯が振り返ると、そこにはニコニコとしている山本がいた。

 

「や、山本君」

「さっきのことか?」

「……うん」

 

誤魔化そうか考えた唯だったが、何故か山本にはバレそうな気がして素直に頷く。

山本は「そうかそうか!」と笑い、それから「とりあえず帰り送るぜ?ここにいても仕方ねぇし」と帰ることを促した。

唯はそこでようやく自分と山本以外は全員帰っていることに気づいて慌てて頷いた。

 

「ご、ごめん!帰ろう!」

「おう!」

 

校舎から出た2人、門に向かって歩いていたが山本が誰かに気づき唯を背に庇う。

 

「誰だ」

 

低く警戒している声に唯が驚いていると、慌てた声が聞こえてきた。

 

「せ、拙者でござる、山本殿!沢村殿!」

 

すぐに姿を見せたバジルに山本は警戒を解き、唯もホッと息を吐いた。

バジルに近づきながら山本は首を傾げる。

 

「こんなところで何してんだ?もう帰ってたはずじゃ…」

「はい!一度は戻りましたが、その際に親方様からの手紙が届きまして、これを、沢村殿にお渡ししようと」

「私に?」

 

懐から手紙を出して唯に差し出すバジルに、戸惑いながら唯は手紙を受け取り、チラチラとバジルを気にしながら手紙を開けて中を見た。

そこにはこう書かれていた。

 

『未来の門外顧問へ

これを君が受け取っている頃、もうすでに俺は日本にはいないだろう。

俺は今、イタリアのボンゴレ本部にいる。

そこで何をしているのかは秘密にさせてもらうが重要な任務についているということだけ理解してほしい。

今回君に手紙を出したのは他でもない、今君が目前に控えている戦いについてだ。

きっと君は様々な問題が露呈して戸惑っている頃だと思う、自分の問題、他人の問題。

家庭教師からの定期連絡が途絶えてしまったことから、君への教育も満足にできていないことも理解しているし、それはこちらの落ち度だ、申し訳ない。

部下からの報告で、君の兄が君に関することの大半を教えたと聞いた。

どこまで聞いているかわからないが、今回君に伝えたい事は実はたったの一つだけだ。

これから君は今以上に問題が山積みとなってしまうだろう。

だが、どうかこのことだけは忘れないでほしい。

 

君は選ばれた人間だ。

 

このことが、君の成長につながればいいと願っている。

それでは、健闘を祈る。

ボンゴレ門外顧問 沢田家光』

 

「親方様は、沢村殿にとても期待しているのでしょう、だからこそ手紙を……沢村殿?」

「沢村?どうしかしたか?」

 

読み終わった頃を見てバジルが家光の気持ちを解説しようとして、動かない唯に声を掛ける。

山本も不思議に思って唯の顔を覗き込めば、目を見開きそれを揺らしながら動かない唯がいた。

唯の視線の先を追って見た言葉に山本はもう一度唯を見る。

唯が見ていた言葉は家光が唯に最も伝えたかった言葉だった。

しかし、唯の様子からそれを唯が喜んでいるようには見えない。

この反応は、どちらかといえば……。

ゆっくりと顔を上げて唯はバジルを見た。

その表情を見て、バジルは己と自身の尊敬する親方様の失態を理解した。

不安にさせまいとしようとしたのか、上がっている口の端。

それでも湧き上がる感情のせいで目は大きく開かれ、右目からは一筋の涙が流れていた。

それはとてもちぐはぐで、けれど今の唯にできる精一杯の“笑顔”だった。

 

「わかりました」

 

街灯に照らされたその表情がとても不気味で不安定で、バジルはどうしたらいいかわからず動けずにいた。

その時、唯の頭をガシガシと撫でる人物が。

 

「わっわっ」

 

思わず声が出て戸惑う唯はそれが止むと恐る恐る自分を撫でただろう山本を見上げた。

山本はジッと唯を見ていたが、先程と違う唯の戸惑う表情を見てニコッと笑う。

 

「明日、ちょっと俺に付き合ってくんね?」

「明日?」

「おう!」

 

締まりのない表情でそんなことを聞く山本に唯は苦笑して頷く。

 

「いいけど」

「よし、決まりだな!バジルはどうする?」

「あ、せ、拙者は沢田殿の修行の手伝いがありますので……」

「そうか?頑張れよ!」

「は、はい!」

 

数分前の空気と違い、ずいぶんと軽くなったこの場に安心したバジルは唯と山本に別れを告げて、その場を去り、残った2人も帰路についた。

時間もかなり遅くなってしまっているからか、どこか2人の歩みは早い。

 

「明日、何するの?」

「んー?どこか行きたいとこあるか?」

「いや、ないけど……」

 

そもそも山本の方から誘ってきたのだから、唯に行きたい場所などなかった。

山本は「そうか?」と言って悩みだしたので、山本の方も突然思いついたことだったのだろう。

提案したのは山本であるのに、と唯は首を傾げる。

歩きながら山本はしばらく考えていると「あ!」と何かひらめいた。

 

「それじゃあ、明日、並中の屋上集合な!」

「わ、わかった」

 

そこでタイミングよく唯の家についたので山本と別れた唯は家に入り靴を脱いで、キッチンに行った。

手洗いうがいを終え、風呂に入り、自室に戻り、乾いていない髪をそのままにベッドで横になってようやく思考がはっきりする。

 

(そういえば……次、なんだっけ……)

 

動きたくないという欲望を抑えてなんとか起き上がり、机の上にあるノートを開く。

黒線が2つ引かれているその下には『祖母のところへ行く』と書かれていた。

これを書いた二日前くらいの自分が何を思っていたのかを思い出して苦笑する。

たった数日違うだけなのに、ここまで気持ちが変わるものかと呆れたのだ。

そこでふと、山本のことを思い出す。

携帯を取り出し、夜も遅いのでメールだけを送る。

 

 

[明日、行きたい所あるんだけどいいかな?]

 

 

送信完了を確認してから、携帯を充電コードに挿してベッドに潜る。

ゆっくりと意識がなくなる寸前に携帯が震えたが、明日確認すればいいと思った唯は、そのまま意識を手放した。

 

 

 

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