次期門外顧問の私   作:ケロポケット

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精神世界にて 2

 

「……ん?」

 

六道はゆっくりと自分の右手につけられた手錠と、それが繋がった紐の先を視線で追う。

するとそこには、静かな怒気を含んだ瞳で六道を見ているプラチナブロンドの男性がいた。

 

「あなたは?」

「それを君に教えるつもりはないよ、早くここから立ち去れ」

「おやおや」

 

男性が思い切り紐を引っ張ると、それにつられた手錠が六道の右手を容赦なく引っ張る。

それに抵抗することなく立ち上がった六道の行動で、唯はようやく現状に意識を戻すことができた。

男性の姿に見覚えがあった唯は目を見開き、ほんの少し口も開けてしまう。

六道はそんな唯に視線をちらりと向けたが、諦めたように両手を上げてから唯に体を向けた。

 

「邪魔が入ってしまいました、けれど、次会うときには先程の返事を聞かせてくださいね、クフフフ」

 

そう笑って霧となって消えた六道骸がいた場所を見つめる唯に、男性が手錠を回収しながら近づく。

ゆっくりと男性に視線を向けた唯に、男性は優しく微笑んだ。

 

「こうして会うのは初めてだね」

「あなたは……?」

「僕の名前はアラウディ、名前だけなら聞いたことあるんじゃないかな?」

 

(雲雀さんに似てる……ん?アラウディって確か……)

 

頭の中にあるアラウディという名前の男性について思い出そうとする唯を優しく見つめるアラウディ。

それはまるで、愛おしい者を見るかのようで。

 

「あ!初代門外顧問の!」

 

ひらめいたと手を一回叩いた唯。

 

「そちらのほうが先に出るのは珍しいけれど……うん、よく勉強しているね、えらい、えらい」

 

親が子供を褒めるかのように優しく唯の頭を撫でるアラウディに唯は困惑した表情でアラウディを見つめる。

そんな唯が面白いのかクスクスと笑いながら手をどけたアラウディは唯の瞳を見つめた。

 

「君の目は、おばあさんに似たね」

「おばあちゃんに?」

「うん、君のおばあさんは君と同じ髪と目の色をしていた、覚えてない?」

 

唯は自分の祖母の姿を思い出す。

唯にとっては優しくない家族と違って、父方の祖母はいつだって優しく唯と向き合ってくれていた。

この家も、庭も、全てが祖母の家だ。

長期休みになれば、唯は必ず祖母の家に泊まりに行っては遊んだり、祖母の焼いてくれたクッキーを一緒に食べたりしたのだ。

優しくて、でも時には叱ってくれる。

唯が生きていく上で必要な知識のほとんどを教えてくれた、恩師のような存在。

それが唯にとっての祖母。

老人特有の白髪に瞳は青色をしていた祖母のことを唯は海外の人間と思っていた。

あとになって知ったことだが、祖母は初代の遺伝を濃く受け継いでいる人間だったらしい。

そこまで思い出して、唯は改めてアラウディに意識を戻した。

プラチナブロンドに青色の目、確かに祖母と同じだ。

違う点を上げるならば、祖母は花のようなはっきりとした青色で、唯は水のような淡い青色、アラウディは空のような鮮やかな青色だ。

 

「おばあちゃんと会ったことあるんですか?」

「何度かね、彼女は歴代で特に僕の血を濃く受け継いでいたから、繋がりやすかったんだ、でも」

「でも?」

「君のほうが濃く受け継いでいる、だからこそ、僕はこうしてはっきりと君の世界に来れているってわけさ」

 

何度か現実世界でも、君のそばにいたのだけど気づかなかった?

そう言って微笑むアラウディに唯は首を横に振る、そんなこと全く気付けなかった。

確かに一年ほど前、ものすごく安心感を覚える日々があったが……。

 

「もしかして、去年、いました?」

「ふふ、あの赤ん坊はとても驚いていたよ」

「ああ、だからあんな反応を……」

 

当時は必死だったので後になって疑問に思ったことが今、解消された。

 

「でも、意外でした」

「何が?」

「あなたはもう少しだけ厳しい人だと思っていたので、なんというか……」

「ふふ、そこまでは調べられてなかったみたいだね」

「どういうことですか?」

「どういうことも何も、そのままの意味だよ」

首を傾げている唯が本当にわかっていないのを察したアラウディはまた唯の頭を撫でた。

「後に伝わっている僕の話だけど、僕は一度身内と決めた人にはとことん優しいんだ、甘いとも言うけどね」

 

目を細め、穏やかにそう答えたアラウディに唯はようやく気づいた。

先程から自分が、所謂おじいちゃんに可愛がられる孫の状態にあることを。

確かにアラウディはある意味唯にとって祖父のような存在ではあるが、相手も同じような気持ちでいたとは思っていなかったのだ。

アラウディの言ったことも知ってはいたが、それは初代ボンゴレボスと意見が合致した時に限る話であり、普段はむしろ敵同士であったとも聞いていた。

だからこそ、ここまで優しいとは誰が予想できるだろう。

今も唯の頭を優しく撫でるアラウディはどこか嬉しそうにしている、今すぐにでもその懐から小袋の“おこづかい”が出てきそうな勢いだ。

そんな経験、祖母からしかなかったので戸惑う唯はふと、明日のことを思い出した。

 

「アラウディさん」

「僕のことはおじいちゃんって」

「アラウディさん」

「……なんだい?」

「私、明日おばあちゃんに会いに行くんです」

 

一瞬アラウディの手が止まるがすぐに動き出す。

 

「そう、お土産は?」

「山本君と一緒に選んで行こうかと思っています」

「山本君……ああ、あの野球少年か」

 

自身の知る雨の守護者とそっくりの顔をした少年を思い浮かべてアラウディは興味なさそうに頷く。

 

「それじゃあ、待っているよ」

「一緒に行かないんですか?」

「どうせ行く場所が同じなら、僕は待っているよ、お土産楽しみにしているね」

「……わかりました」

 

そこでアラウディの手が唯から離れる。

そのまま下ろされた手を唯が眺めていると、アラウディはゆっくりと言葉を発した。

 

「意外と、簡単なことだよ」

「え?」

 

唯が思わず顔をあげると、透き通った大空を細めた瞳と合った。

 

「君の身に降り掛かっている問題は、意外と解決策は簡単だ、ただ、紛らわしいものが多いだけで」

 

その大空が揺れているように見えたけれど、アラウディはまっすぐに、そして穏やかに唯を見つめている。

唯は自分の頬が寒く感じた。

そんな唯の頬をアラウディが片方だけ手で温めてくれる。

 

「また、明日、話をしよう」

 

穏やかな大空を背景に、アラウディがどんどんぼやけてくる。

それがまるで雲のようだ、なんて。唯は呑気に考えて意識を手放した。

 

 

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