次期門外顧問の私   作:ケロポケット

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少女の告白

しかし千沙は固まってしまった綱吉が言葉の意味を理解できなかったものと判断したのか顎に手を当てて考える。

 

「言葉になじみがなかったか、そうだな…君の知っていそうな言葉で言うなら…GLや百合、他には」「いいよそれ以上言わないで!!!」

 

綱吉は千沙の言葉を止めると考えていることを口に出し始めた。

 

「え、つまり寺田さんは俺の周りにいる女の子の誰かを好きで、八つ当たりっていうことはつまりそのそういうことで、俺はただのとばっちりってこと!?」

「そういうことになるな」

「え!?好きな人って誰!?」

「沢村唯だ」

「…ええええええええええええええ!!!???」

 

綱吉は記憶の中にある唯の言葉を思い出す。

 

「え、つまり2人は幼なじみだけど村さんの言ってた特別な友達ってそういう言う意味で、八つ当たりってそういうことで」

「あー、違う違う、彼女への気持ちは私からの一方通行だ、ただ八つ当たりの意味はそれであっている」

 

綱吉は一旦深呼吸をすると千沙の言葉の続きを待った。

千沙はそんな綱吉を見て、事情説明をしなければならないと判断し話し始める。

 

「なれそめってほどではないが、私が彼女に恋をしたのはこれまでの積み重ねによるものだ」

「積み重ね?」

「ああ…これは最初から話した方が良いな、どうせ明日も休日だし、とことん話してやろう」

 

千沙はほんの少し照れくさそうにこれまでの経由を話し始めた。

 

「私と彼女が初めて出会ったのは五歳の時だ、ゆっちゃんたちが隣に引っ越してきて近所挨拶の時が初対面で…最初は明るい子だと思った、外で遊ぶのが好きで怪我をしてはよく泣いていたけれどすぐに立ち直って私を連れてすぐそこにある山に行って遊んでいたっけ」

 

外で遊ぶのが大好きな元気な女の子だった唯は部屋で遊ぶ方が楽だと考えていた千沙を家から連れ出してはあちこちに走った。

時には川で水遊びをし、時には日向ぼっこをしてのんびりと過ごす。

元気な女の子だけれど本を読むのも大好きだった不思議な女の子、それが唯だった。

 

「私の家はほら…マフィアだろう?一般人に混じって生活しているとはいえやはり堅気じゃない世界に最初からいれば嫌でも堅気の人間との違いを思い知る…たとえば、経験、とかな」

 

千沙は目を伏せた。

 

「そんな私を家から連れ出して自由に生きることの楽しさを教えてくれたのがゆっちゃんだったんだ、だからこそ、私にとってゆっちゃんは特別であり、大切なのだ」

 

けれど、と千沙は続ける。

 

「所詮ゆっちゃんにとって私は近所の子供の一人でしかなくて、同じ保育園に通っている同じ年の子という認識でしかなかった、ただ親に言われたから私とよく遊んではくれたけれどその回数だって他の子の方が多くて…窓からゆっちゃんが他の子と楽しそうに笑って走って行く姿なんてよく見かけたさ」

 

そもそも住む世界が違っていたのだからお互いの認識が食い違ってしまうのは仕方のないこと。

綱吉も片思いをしている相手がいるが理解はしている、自分はたくさんの友人の一人でしかなくて、きっとリボーンという変化球が来なければ自分は笹川京子にとって少し出来の悪い同級生程度にしか思ってもらえなかっただろうから。

だからこそ、少しだけ千沙の気持ちが綱吉にも理解はできた。

静かに続きを促した綱吉に千沙は素直に頷く。

 

「だから、どうしたらあの子にも私を特別な友達と思ってもらえるだろうかと考えて、ゆっちゃんの傍にいることにした」

「傍に?」

「ああ…ゆっちゃんが学校と自宅のどちらでも問題を持っていることは理解していた、学校の方の原因は知っているが家庭の問題は私にも調べることはできない、気付かれて嫌われてはいけないからな」

 

綱吉は俯く千沙を見る。

 

「学校と家庭のそれぞれの問題のせいで明るかったゆっちゃんが大人しく暗い性格になっていくのを見ていた、だからこそ傍にいようと思った、だってそうだろう?ゆっちゃんは私を救い出してくれた人だ、恩返しがしたいと思うのは当然だし、問題の解決にはなれなくとも傍にいればゆっちゃんの心を癒すことができる!そう、思っていた」

 

綱吉は千沙の手を見る

わずかに、震えていた。

 

「けれど、それは失敗に終わった」

「…どうして?」

「…私ができる人間だったからだ」

「え?」

 

突然のことに綱吉は思わず言葉をこぼすが、当然の反応だと千沙は苦笑する。

 

「気持ちはわかる、いきなり何をうぬぼれているんだと思うだろうが、まぁ、話の続きを聞いてほしい」

 

千沙の言葉に居住まいを正した綱吉。

 

「私はゆっちゃんの傍にいるために努力をした、ゆっちゃんが困っていたらすぐに助けられるように頑張ったんだ」

 

けれど、と、千沙は吐き出すように言った。

 

「それではだめだったのだと、教師から褒められてから気付いた…私の周りに人はたくさん来てもゆっちゃんは離れていったからだ、誰もが人気者の私の友人がゆっちゃんであることを認めようとはしてくれず、むしろゆっちゃんに気を使っている優しい子とまで言われてしまった」

「もしかして、それ」

「ああ、もちろんその話は…ゆっちゃんの耳にも入っていた」

 

綱吉も俯く。

それはあんまりにもあんまりなものだった。

 

「今まで無理して私と遊んでてくれたんだよね、ごめんねちーちゃん、私のことは気にしなくていいからね、ありがとう…とそんなことを笑いながら言われた…だから私はそれ以上ゆっちゃんの傍にいようとするのをやめた」

「でも、この間は一緒にいたよね?」

「あの時は君のことを調べるためにゆっちゃんに近づいたのさ、もちろんゆっちゃんが一人で泣いているところを見かけたら声くらいかけるがそれだけだ、話を聞こうとしても逃げられてしまうからな」

 

自嘲するように笑う千沙に綱吉は胸が痛くなった。

決して、唯も千沙も悪くはないが、その大きな原因が分からない。

必ず何か一つが悪いはずなのにその原因を、それ自体を綱吉は知らないのだ。

励ましの言葉一つ、出てきやしない。

 

「…だから私は別のクラスになるよう親に頼み、極力ゆっちゃんの視界に入らないように努めて離れた、それが、ゆっちゃんが私に望んだ唯一のことだからな」

 

千沙は顔をあげずにまだ笑う。

 

「もちろん、ゆっちゃんのことを忘れることはできるわけがないが…それで、少しでもゆっちゃんの心が救われるなら、それを私は良しとすることができる」

「…寺田さん」

「でも、中学に入って」

 

顔を上げて綱吉を睨みつける千沙に綱吉は気圧される。

 

「私は沢田君のことを知ってしまった…ゆっちゃんは沢田君と昼食の時間に教室で楽しそうに話をしていた、幼い頃にも見たことのない、明るい、笑顔でな」

 

千沙は近くの机を思い切り叩いた、机の上にあった果物かごから林檎が一つ落ちる。

 

「分かるか!?沢田君は!私がしたくてしたくて、でもできずに諦めたことをまるで当然のようにやっていたんだ!!」

「寺田さん、それは…!」

 

綱吉は言葉を続けようとしたが何一つ理由が思い浮かばない。

千沙の勢いはなくなり、また俯いた千沙の声は暗かった。

 

「最初は嫉妬した」

 

まるで懺悔するように呟く。

 

「途中で考え直そうとして…でも嫉妬した」

 

千沙の手の甲に雫が落ちる。

 

「どうして私は駄目だったのかと思った、男だったらよかったのか、私が女だからいけなかったのかと考えた、努力せずに共感すればよかったのか、それなら、それなら私でもいいはずじゃないか!!!」

 

悲痛な叫びが病室に響く。

 

「沢田君に嫉妬して、ゆっちゃんに失望した!そして、そんな自分自身に呆れ果てた…何がゆっちゃんの心を癒すだ、何が救えるだ、そうしていればゆっちゃんの傍にいられるとでも思ったのか、ばかばかしい!愚かにもほどがある!!」

 

千沙の声はとても震えていた。

 

「でも…」

 

ぽつりとこぼれていく言葉。

 

「それでも…」

 

それはこれまでの人生で奥底にしまった本音。

 

「私は昔みたいにゆっちゃんに手を引いてもらいたかったんだ、エゴでもなんでも、ゆっちゃんに笑いかけてほしい、だから」

 

千沙はこぶしを作る。

 

「だから私は、ファミリーに電話をかけて君の暗殺計画の実行者になることを名乗り出たんだ…それが一番…」

 

綱吉はゆっくりと千沙を見る。

自分の暗殺計画があることには驚いたが、それに彼女が名乗りを上げる理由に引っ掛かりを覚えたから。

しかし千沙は綱吉の気持ちを無視して話を進める。

 

「安心してほしい、私怨の襲撃は今回限りだし、当分は計画の実行はやらないつもりだ」

 

千沙は立ち上がって、床に転がっている林檎を拾うとそれをもってドアの方に行く。

 

「あ…」

「…聞いてはいるかもしれないがここらの不良が襲撃されているだろう?君への詫びに一つ情報を与えよう、その首謀者はマフィア関係者であり、ボンゴレを狙っている…見つからないように隠れるもよし、下手な正義感で首謀者を狙うもよし、あとは君の好きにするといい…まぁ、その傷じゃあしばらくは満足に動けないかもしれないがな」

 

それだけ言い残して千沙は出て行ってしまった。

残された綱吉はこれまでの話を頭の中で整理、そしてやはり引っ掛かりを覚えた。

なので、恐らくいるだろう存在に声をかける。

 

「リボーン」

「教え子の成長が早くて寂しいなぁ」

「茶化さないでよ、それよりさ、さっきの話聞いていたよね?」

 

唯に関することに対してはマフィアのボスらしい表情と頭の良さを見せるようになった綱吉に本気で成長の速さに驚いていたリボーンだがそれを茶化したものと判断されたのでそのままにし、千沙の話を思い出す。

 

「ああ、もちろんだ」

「俺…どうしたらいいのかな…?」

 

不安そうな声が病室に響く、けれど綱吉はどれだけ考えても答えが出てこなかった。

けれどリボーンの答えられるものは一つだけ。

 

「そんなの一つしかねぇ、お前はお前のやりたいようにやればいいんだ」

「そんな簡単な話じゃ…」

「簡単だぞ」

 

あまたの死線を潜り抜けてきたヒットマンはニヒルな笑みを浮かべてそう断言した。

 

 

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綱吉は不安そうな顔をしてそのまま俯いてしまった。

そんな教え子にリボーンはただ笑みを向けるだけ。

 

 

 

 




展開的に、わかる方がいたらお友達になりたいけど話し合いがしたいですね。
誰に似ているかってわかればそのキャラが千沙のモデルとなったキャラです。
彼女ほど千沙は真っ直ぐではないけれど、そういうキャラとして書けたらいいなと思っています。
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