今日は某国立大に俺が通い始めて1週間といったところだ。
ようやく大学への道のりも慣れつつある今日だが、元々平均レベルの私立高校に通っていた俺はなんとか講義の内容に食らいついているところ。本来なら誰か友人やサークルの先輩方へ教わったりするのかもしれないが、
俺にはこの大学に友達どころか知り合いすらいない。サークルも入っていない。が、別段困ることもないので良しとしよう。
今日の講義も終わり、バイトもまだしていないのでラノベでも買って帰ろうかと校内を歩いていたところだった。
中庭の方でとても綺麗で誰もが振り返るような女生徒が少しチャラい男2人に話しかけられているのを見る。まだ大学に通って1週間だがここ3日程見かけている。本来なら彼氏のふりでもして声をかけたりするのだろうが、なんか軽くあしらってる感じだし、もし知り合いと話しているだけならただただ恥ずかしいだけなので無視する。
というかそんな度胸は俺にはないし、冴えないどこにでもいるようなモブ顔の俺が声をかけられるはずもない。
それにあの作った感じの笑顔とか底が見えなくて正直怖い。なので俺は無視して帰路へつく。
「あ、いたいた!待ってよー!」
視線を前へ向けた時、後ろからあの女生徒のものと思われる声が聞こえた。
ほら、俺を含めた他人が助けなくとも堂々と男2人を無視していけるんだから気にしなくて済んだというものだ。
「もう、酷いなー」
だんだんと声が近づいてきたと思った途端に俺の服の袖が掴まれた。
「…は?」
突然俺の服の袖を掴まれたことに驚きを隠せないでいると、
「いいから早く行こ?」
と言われ俺の袖を引いて歩いていく。
驚いて声も出せずにいても気にせずそそくさと歩いていくので大人しくついていくことにする。後ろから恨めしい視線を感じるが、それ以上にこの状況に驚きすぎて気にならなかった。
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そのまま校内を連れていかれ、人がいなくなった所で彼女は俺の服の袖から手を離し立ち止まった。
「酷いじゃない、3日前から気づいてたのに助けてくれないなんてさ」
彼女がそう言葉にした途端、背筋が凍るような目付きをした。声音はどこか楽しんでいるようなのに、その目つきはなんというか、獲物を見つけた虎のような、それでいて俺を品定めしているようなそんな目だった。
「……別に必要ないと思っただけですよ。さっきみたいな度胸であったり、今俺を見るような視線を出来るのなら尚更じゃないですか。それに3日前初めてあんたが絡まれてるのを見た時だって、上手く取り繕っていたじゃないですか。」
彼女はふーんというような顔をする。
「お姉さん興味持っちゃったなぁ。君、名前は?」
「…
「秋月君ねぇ。一応聞いておくけど、新入生だよね?」
「…まあ」
何故か興味を持たれてしまったんだが、この会話までの事もあり、気にしていなかったことに気づく。
…この人めっちゃ美人だな。
「私は雪ノ下陽乃。2年生だからよろしくね?」
「はあ…」
つい気の抜けた返事になってしまったが気にしない。
「とりあえず俺もう帰るんで、それじゃ」
もうなんかこの人といるだけで疲れそうなのでさっさと帰ることにする。てか絶対ろくな事にならん。美人だからって甘く見たらダメだ。
そう決めて後ろを向いた時、
「ぐえっ」
突然襟を掴まれて止められる。てか首絞まるからやめて。
「ねえねえ、このあと暇?」
そう雪ノ下さんが聞いてくる。でも、襟から手は離さない。
「この後はアレです、慣れない環境で疲れた身体を休めるという予定が」
「うん、暇だね。じゃあちょっとお姉さんとお茶でもしよっか。いいよね?」
なんでこの人有無も言わさず決めたの…
てかこれ俺が行くって答えないと手離してくれないじゃん…
「分かっ…たから、手離して…!」
答えてようやく手を離してくれた。この隙に本気で逃げたら後が怖いから仕方なさそうだ。
「じゃあ行こっか!」
「はぁ…」
俺は思わず溜息をつく。この状況、美人な年上の方に誘われてどこかへ行くというのは普通喜ばしいことなのだろうが、なにせ相手がこの人だし俺の性格上なかなか喜べない。というか、何されるか怖くてたまったもんじゃない。
だから大人しくついていくことにした。
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「あ、雪ノ下さん!」
現在来た道を戻り、中庭の奥にある校門へと向かっているのだが、どうやら雪ノ下さんの友人と思しき人達に声をかけられた。俺は人目を気にしてついて行っていたので、雪ノ下さんの少し後ろを歩いていた。どうやらあまり気にされてもいないようだ。
「なになに、彼氏でもできた?」
嘘、めっちゃ気にされてた。
まあ、確かに男に言い寄られても軽くあしらうくらい男っ気のない人そうだし気になるのもしょうがないか。
「いやいや、そんなんじゃないよ〜」
俺はぼーっとして話を聞き流す。まあ、話の内容も俺には関係ないし、終わるのを黙って待っていようと思っていた。
だが、会話の節々で聞こえる雪ノ下さんの声が酷く中身がなく、空っぽに聞こえたことに俺は一瞬目を見開いた。雪ノ下さんは聞かれたことにただ答えるだけ、感情なんかなくて、上手く誤魔化している、いや本当にどうでもいいと言った感じだと分かってしまう自分にも嫌気がさした。
「それじゃあまたね〜」
雪ノ下さんがそう言って歩き出したので俺もついて行く。
この後、俺はこの人に一体何をされるのだろうと不安で仕方なかった。
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雪ノ下さんに連れてこられたのは駅前にあるカフェだった。
落ち着いた雰囲気で、読書などにも向いていそうな場所である。
二人とも適当にコーヒーでも頼み、すぐに配膳されると話を始めた。
「それで、俺に何の用ですか?」
「君ってさ、友人ってどういうものだと思う?」
…またこれだ
表情は笑顔でもその裏に何を思っているのか全くうかがえない
…本当に怖いったらありゃしない
「…それを自分に聞くのは間違ってると思いますよ。高校時代に仲良かった人はいますけど、今じゃ連絡を取り合うこともないですから」
これは事実だが、本心は別にある。
実際友人などという関係に何も期待してはいない。昔はこれでも信じていた時はあった。だがそれ以上に絶対に信じることが出来なくなるほどの出来事が起きてからは所詮上辺だけの関係だとたかを括っている。
「じゃあ、さっきの私とあの娘達の会話を聞いててどう思った?」
すっと息が詰まる。
目を見開いたのも一瞬だったが、それ以上にこちらを見向きもせずにいた。
だが、それが原因なのかは不明瞭であるしまだ何か俺を試しているのかもしれない。
「別になんとも。友人のいない自分からしたら、良い友人達に見えましたが?」
「…それ、本気で言ってる?」
雪ノ下さんの眼光がとてつもなく鋭いものになる。
おそらく俺の表情の変化は眉がピクリとしただけなのだろう。俺は良くも悪くもとてつもなく表情を表に出すのが下手なのだ。良く言えばポーカーフェイスというやつだ。
なので、傍から見たら鋭い眼光を向ける美人に冴えない男が全く動じず、という光景が広がっていると思うのだが、もう一度言わせてもらおう。俺はポーカーフェイスなのだ。つまり内心はとんでもなくビビっている。それもチビりそうなくらいにだ。
「すいません、流石に本心ではないです」
「じゃあ、その本心ってのを聞かせて?」
もう諦めるしかないな。といっても俺の感じたままのことを言葉にするだけなのだが。
「…そうですね。確かにあれは友人と呼べるものではないと思いました。相手側からしたら友人と思っているのかも知れませんがね。あれはなんというかそういう状況を大学内でただ作っただけみたいな感じですかね。実際雪ノ下さんは友人とは全く思ってないと思います。事実、話題を持ちかけてきたのは全て相手側でしたし、雪ノ下さんの返答には全く中身がありませんでした」
「中身がないって、決めつけるんだ?」
「…まあ、それは過去の経験からです」
本当にくだらない過去だがそれによって学んだこともたくさんあった。例えば、雪ノ下さんの返答について、とかな。
「…すごいね、君。全くその通りだよ。
「…初対面の俺なんかに話してもよかったんですか?」
「うん、君のことは気に入っちゃったし、今の話を聞いてたら更に面白そうだと思ったからね」
まあ、実際そうなのかもしれないがどうせこのことを俺にばらされても問題無いといったところか。
「うーん、丁度いいし君に頼んじゃおうかな〜?」
「…何をです?」
嫌な予感しかしない
「君って今バイトとかしてる?」
「…?いえ、してないですよ。これから始めるとは思いますけど」
「そっか、じゃあ丁度いいね!」
ますます嫌な予感が…
「ねえ、私に雇われない?」
「……………は?」
こんな感じで進めていきます。
あと、忙しい時期が続くのと文章に起こすのが苦手なので、更新頻度はかなり遅めとなります
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