「だから、私に雇われない?」
「いや、2度言われても訳が分からないんですが…」
なんだよ雇われないかって、傭兵にでもなれってか?
「確かにバイトは探してますけど、雇われるって具体的になんです?」
「お、案外乗り気?」
「まあ、話だけでもよければと思いまして」
「うちの大学って結構セキュリティとかしっかりしてるじゃない?」
都内にある国立大のここは近代化が進む社会に合わせて、積極的に新しいものを取り入れている。
例えば、学園内に入る時、生徒は学生証を専用の機械にスキャンさせると出席確認を行ったり等だ。といっても知ってるのはそのくらいだが。
「そうなんですか?まあ確かに目新しいものばかりではありますけど」
「そう、だから監視カメラのプログラムとかもかなり新しいものになっていてね〜。なかなか解析できないらしいんだよね〜」
…なんかとんでもない事言ってるんですが
「高校時代は一応教師達に協力してもらっていたらしいんだけど、大学になると規模が大きすぎてそれも無理らしいんだってさ〜」
「一体なんの話です?」
「ん?ああ、監視?的なことだよ。まあ安全のためには必要なんだってさ。私は要らないって言ってるんだけどね。学校内で誰かいれば頼んでほしいんだってさ」
安全のために監視させる必要があるほどの存在なのかよこの人…
てか、監視カメラハッキングしてまで確認したいのかよ
「でも、それがどうして自分を雇うってことになるんです?」
まあ、大概の予想はつくんだけど…
「まあ、ボディーガード的なことだよ」
「ですよね〜…」
ボディーガードをしなければならないほどの人という事は、それなりに近づいたり敵意を持つ人を相手取るわけじゃないですか。そんなの怖いわ。
「普通にボディーガード雇ったらいいんじゃないんですか?」
「君は校内を黒服の人を侍らせて歩ける?」
「…確かにキツいですね」
その事についての納得はある程度した。だが、一つだけ納得の行かないことがある。
「どうして、俺なんです?」
雪ノ下さんはコーヒーを口に含む。
この人が何となく凄い人なんだということは理解出来た。それも、安全の確保が必要な程に。だが、そこで初対面の俺をその重要な役割を担わせる理由がいくら考えても分からなかった。
「君は観察力があるし、視野も広い。あとさっき腕を掴んだ時にそれなりの力があることもわかった。もう1つ言うとしたらその表情の薄さって所かな」
と、笑いながら口にする。
「あとは、単純に面白そうだからかな」
最初のは建前で本音はこちらにあるようだった。
「あと、秋月君は高校時代部活やってた?」
「まあ、一応運動部です」
「お、いいねぇ。腕っぷしもありそうだし合格だね」
「とは言っても、雪ノ下さんの身を心配?してる人に自分は認めてもらえるんですか?」
1番はそこだ。俺程度の人間など学校内、ましてや学校外に出れば数える必要のないほどいる。その程度の人間である俺が認めてもらえるとは到底思えない。
「ま、そこは実際にうちの親にあってもらってからかな〜?」
「…え?」
雪ノ下さんの親…だと……?
いやもう絶対やばいって。何がやばいってこの人の親だぞ。確実にチビるわ。
てかそもそも
「話だけ聞いてて思いましたけど、なんで自分が雇われる前提で話を進めてるんです?まあ、自分も結構色々と聞いちゃいましたけど…」
と言いつつもここまで首を突っ込んだらもう雇われるしかないよなぁとか思ってる俺がいるのも事実。
「でも君は断らないでしょ?」
「………」
「…それとも、またつまらない日常に戻るの?」
「……………」
高校時代までは普通に部活をして、何事もなく生活をするのが良かった。大学に入ってもきっとそうなるものだと思っていたし、そうしたいとも思っていた。
でも、それは高校までの話であり今の事ではない。
平穏に何事もない日々を送るのも悪くないと思うが、やはり、今までの人生はつまらなく感じていたものもある。
「…分かりました。雪ノ下さんの親に会わせて下さい。」
だから俺は雇われたいと、そう思った。
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…で、現在俺は雪ノ下家の客間に通され、雪ノ下さんの両親の前へ座っている。
ここに来たのはついさっきだが、屋敷のでかさに驚く間もなく客間に連れてこられたのだ。
そして、俺の真正面に座っているのが雪ノ下さんの母親である。
醸し出す雰囲気は雪ノ下さん以上、更にこの人の内面は全く見えないときた。
こりゃ下手したら殺されるんじゃね?
「…あなたの経歴は聞かせてもらってます。平凡に学生生活を送り、運動部に所属していたと。確かに少し他の方よりは力はあるのでしょうが、それで陽乃の守護を任せられるとはあまり考えにくいと思うわ。」
…まあ、普通に生活してきただけの人間だしな。そりゃ筋トレは多少してたが、元からその手の人間に匹敵するとは思ってない。
「陽乃。どうして秋月さんを選んだのか聞いてもよろしくて?」
「…別に理由はないよ。まあ強いていえば〜、一目惚れ?」
「ふざけないでちょうだい。」
「あはは〜、流石に冗談だよ。」
一瞬見えた雪ノ下さんの母の眼光は雪ノ下さんのもの以上だった。
「でも、彼は役に立つ。それだけは言えるよ。」
どこか自信のある目で母を見つめる雪ノ下さん。俺はやはり驚きつつも表情には出なかった。
「では、秋月さん。あなたは陽乃の為に、どこまでできる?」
アニメならここは死ぬまでやるとか言うんだろうけど俺は違う。死ぬなんてゴメンだ。
「死ぬまで、とは言えませんね。いくら傍付きとはいえ自分はまだ学生ですし、まだまだやりたいこととかあるので。でも、死ぬ気でやります。もちろん、死ぬつもりはありません。」
正直な気持ちを伝える。
これでお前には役不足だと言われても仕方が無いだろう。
「…そうね。あなたの気持ちもよくわかったわ。」
俺の目を見据える
「陽乃を任せるには条件をつけてもいいかしら?」
「無理難題でなければ」
「あなたにはうちのものに稽古をつけてもらいます。そのために1ヶ月ほどうちに泊まりなさい。それが出来ないなら、あなたには陽乃と縁を切ってもらうわ。」
「…分かりました。お願いします。」
そう言って俺は頭を下げた。
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ほどなくして、俺は雪ノ下家の一室へ泊まることとなった。元々一人暮らしなので親にも何も言わずに出てきたが問題無い。
そして、とんでもなくキツい稽古、というかトレーニングに励んで1週間が経った頃、部屋で休んでいたところだった。
「ねえ秋月君。ちょっとデートしに行かない?」
「はぁ、荷物持ちの間違いでしょう」
「まあまあ、いいでしょ?」
「行かないと俺が殺されるんで行きますよ」
雪ノ下さんの誘いに、ため息混じりにそう呟き立ち上がる。
手短に準備を整え雪ノ下さんと外へ出た。
「で、どこへ行くんですか?」
「ちょっと千葉のデパートまで行くよ〜」
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様々な店が揃ったこの場所を俺は散々連れ回され、荷物持ちとして精を出していた。
あと一つ驚いたことは、どの店に行っても店員が雪ノ下さんへ深々と礼をして挨拶していたことだ。雪ノ下家の力の大きさを感じた場面でもある。
両手に荷物を持って雪ノ下さんの後ろを歩き続けた時、不意に雪ノ下さんが足を止めた。
「…どうしたんですか?」
雪ノ下さんの視線の先を俺も見る。
そこにはとても目の濁った少年と、長い髪をツインテールにした美少女の、おそらく高校生ぐらいの2人組がいた。
「…あれー?雪乃ちゃん?あ、やっぱり雪乃ちゃんた!」
呼びかけるように、そしてその2人組、主に雪乃ちゃんと呼ばれた少女の方へ駆けていった。
もう片方の少年は訝しげな表情をこちらに向けている。
「…姉さん」
少女はそう呟いた。
更新だいぶ遅くなりましたね
たくさんのUA,お気に入り,評価ありがとうございます!
これからもゆっくりではありますが書いていくのでよろしくお願いします!
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