遊戯王 Resonance   作:龍崎悠司

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いきなり長くなってしまった……


新たな出会い〜罪背負いし者のデュエル〜

 

 

 

 決闘学園セントラル校入学式。

 

 

「では、編入生主席・鹿波遊司から代表の挨拶」

「はい」

 

 当然のことながら、遊司は試験に合格し編入を果たした。

 だが、どうにも周りからの視線が痛い。

 現に今も敵意をひしひしと感じる。

 

(う〜ん、やっぱり容赦なさすぎでしたかね……)

 

 この前のデュエルはいくら思い出しても苦笑しか出てこない。

 手加減をするつもりは当然ないのだが、それにしたってハマりすぎていた。

 

(そもそも僕としては、あんな勝ち方をする予定ではなかったんですけどね……)

 

 そうなのだ。

 遊司本人としては、コストを払う効果を発動した時に『脱税』と『脱税犯、逮捕!』のコンボで1400のダメージを与えて牽制。

 さらに、『攻撃許可証法案』と『罰金要求』で手を鈍らせ、壁モンスターで凌ぎつつ逆転の目を狙うつもりだったのだ。

 それがまさかの先行からの後攻ワンキル。

 遊司としてもあそこまで綺麗に決まったのは人生で初めてだったのである。

 だが、他の生徒たちにとっては何も関係がない。

 自分たちのアイドル的存在であるまゆを惨めなまでに叩きのめした悪い奴。

 それが今の遊司の立場になってしまった。

 

(う〜、ただでさえこんな慣れないことしてるのに……あー、胃が痛い……)

 

 どことなく不安を抱えたまま、遊司は挨拶を終えた。

 

 

 ーーーーー

 

 

「…………で」

「?」

「なぜあなたが?」

「もう、いけずやなぁ。学園の説明出来るんはウチしかおらんでしょ?」

 

 遊司は今、まゆと共に学内を歩いていた。

 その理由は約一時間前に遡る。

 

「改めまして、編入生筆頭の鹿波遊司です」

 

 じと〜……

 

 隠す気の無い敵意に、ため息を吐きたくなる。

 クラスでの自己紹介で簡単に挨拶をしたのだが、見事なまでに味方がいない。

 と、思いきや。

 

 ワクワク!キラキラ!

 

 その周りが全て味方しているはずのまゆだけは、何故か遊司を輝かしい目で見つめてきている。

 よく分からない。

 

(とはいえ、このまま圧力を掛けられるだけというのも面白くありませんね……)

 

 一つ、覚悟を決める。

 

「では最後ですが、あなた方が決闘者(デュエリスト)であり、僕に文句があると言うのなら、真正面から堂々と決闘を申し込んで来てください。僕は逃げも隠れもしませんので」

 

 !!?

 

「ぷっ!あははは!あはははははは!」

「綺蝶さん、静かに」

 

 担任に注意されるも、笑いの止まらないまゆ。

 それもそうだろう。

 何せ、今遊司が言い放ったのは挑発なのだから。

 

 気に入らないからとセコイ真似なんかしないで、さっさとかかって来い。

 

 自分の実力に対する絶対的な自信。

 何が来ても返り討ちに出来るという自負。

 それを見せ付けられてなお、愉快だと祭りの予感を感じたのはまゆただ1人。

 どことなく気まずい空気の中、自己紹介を終えて席に戻った遊司は……

 

(ヤバい……僕、友達出来ない…………)

 

 自分の発言を絶賛後悔中だった。

 

 

 ーーーーー

 

 そんなことがあれば、誰かに説明を求めることが困難なのは自明の理。

 困り果てていたところに声を掛けてきたのが、まゆだったという訳である。

 本日は入学式、授業も何もなくすぐに解散。

 セントラル校には寮制度があり、遊司も入寮の予定だったのだが、その寮の場所も知らないままだったので、まゆの申し出はとてもありがたいものなのは確かだ。

 しかし……

 

 何であの編入生が……

 まゆさんと……

 クソ羨ましい……

 

(プレッシャーが凄い!)

 まゆの説明を聞く傍、冷や汗が止まらない遊司なのであった。

 

「なぁなぁ、結局遊司はどないするん?」

「……どうするって?」

 

 いきなりの名前呼びにツッコむか悩んで辞めた。

 多分、言っても聞かないから。

 

「通いか寮か、あとどの寮かも、やね」

「ああ、なるほど。寮ですよ、ゾーク寮」

「あそこかぁ〜」

「何か問題でもあるとこなんですか?」

「いや、ちと古風やけどええとこやよ」

 

 何処と無くしみじみとした顔になったまゆに疑問符が浮かぶ。

 

「まぁ、行けば分かるやろ。多分いる」

「?」

 

 首を傾げながらも、寮の場所が分からないのでやっぱり案内してもらう遊司。

 足取りが、何となく重くなった様に感じた。

 

 

 

 ーーーーー

 

 

「ここが、ゾーク寮や」

「あー、うん。はい……」

「歯切れ悪いな〜……まぁ、理由は分かるけども」

 

 場所さえ分かってしまえば、絶対に見間違うことは無いだろう寮に到着した。

 外観は古風。

 和な感じの建物で今時引き戸。

 しかしボロいということもなく、印象は良い。

 それだけならば。

 

「まさか、寮の脇に大邪神ゾークの像があるとは……」

「意外なとこ狙い撃ちっちゅーか、抉り取りにいっとるもんなぁ」

 

 そう。

 寮の入り口の脇に2メートルほどの銅像が建てられているのだ。

 さすがにドン引きである。

 

「まぁ、とにかくありがとうございます綺蝶さん」

 

 礼を言うと、ちっちっちっ、と舌を鳴らして人差し指を振るまゆ。

 

「まゆ、って呼んでや」

「では寮の管理人の方に挨拶しますかね」

「けちんぼー」

 

 それを遊司、見事にスルー。

 対応に慣れを感じる。

 恐らくは距離感の近い人間と長いこと接してきたのだろう。

 

「こんにちはー」

「あん?」

 

 玄関を開けると中から少し強面の男子生徒がいた。

 なんとも可愛いエプロンと鍋を持って。

 

「あ、どうも。僕、今日から入寮します鹿波遊司です」

「お、おぅ……俺は猪古羽(いのこば)(じん)だ」

「よろしくお願いします」

「ああ、よろしく……」

「…………」

「…………」

「…………あの」

「あ?」

「エプロン、可愛いですね……」

 

 そこがまゆの限界だった。

 

「ぶっ!ははははは!あはは、あははははははは!!」

「なっ、てめ!いたのかよ!?」

「あははははは!何や、何やのそれ!あははは!傑作や、スキャンダルや!あははははははは!ひー、ひー……」

 

 戸惑う遊司を余所に大爆笑。

 陣という男子生徒の方も顔を赤くして怒ってる。

 

「てか、どうしたん?それ」

「寮の人からもらったんだよ。捨てるのも悪いから使ってるだけだ」

「ぷっ、え、ええと思うよ?に、似合、似合ってるし……ぶあはははは!」

 

 どうにか世間話に入ろうとするまゆだが、ツボに入ってしまい、その努力は水の泡である。

 

「あーもう!ちょっと待ってろ、鍋とエプロン置いてくっから!」

「え、エプロンはそのままでも、ぶふっ!……え、ええんやない?あははははは!」

「うっせぇ!」

「いってらっしゃーい」

 

 何故だか、喋ってないのに疲れた気がした遊司であった。

 

 

 ーーーーー

 

 

「おう、待たせた」

「あれー?エプロン脱いでもうたの?」

「黙ってろ」

 

 意地の悪い笑顔のまゆを放って置いて、陣が遊司に向き直る。

 

「とりあえず、何となくで自己紹介したけど改めて……猪古羽陣だ」

「鹿波遊司です」

「つっても俺は管理人じゃねぇけどな」

「あれ、そうなんですか?」

「まぁ、俺は手が空いてることが多いから料理を手伝うことがあるだけだ」

「?」

「まっ、陣は不良なんよ。悪い人なんや。……エプロンは可愛かったけどな」

「ふん、別に授業何か受けなくても成績は問題ねぇし、デュエルの腕さえ訛ってなきゃどうとでもなるしな」

「なるほど……」

「まっ、距離を置きたきゃ別にいい。面倒なのと関わる必要はねぇよ」

「いえ、同じ寮ですし、これからよろしくお願いします」

「同い年だ、敬語はいらねぇ」

「うん、分かった」

 

 年上に見えたということは黙っていようと思う遊司。

 

「部屋は余ってっし、(はな)さん……管理人な。その人が来てくれりゃ手続きもすぐなんだが……」

「呼んだかしら?」

 

 困った顔で陣が話していたら、にゅっ、と女性が登場した。

 上から逆さまに。

 

「うぉわっ!!?

「きゃぁああああ!?」

「…………(もう、何が来ても驚けないや……)」

 

 凄いインパクトの連続や、1日周囲から敵意を受け疲労した精神で最早、驚くことも遊司は出来なくなっていた。

 

「あらー?リアクション薄いなぁ?」

「何となく、今日1日でスルースキルが高まったので……」

「あらあら〜、お疲れ?じゃあお風呂沸かしましょうか」

「ありがとうございます」

「いやいや待て待て!そのまま普通の会話始まるのちょっと待ってくれ!」

「あー、心臓飛び出るかと思たわ……」

「あらあら〜、ごめんね〜……よっと」

 

 逆さまの女性が床に降りる。

 言動や口調だけでなく、雰囲気や表情からもゆったりマイペースな印象を受ける女性だった。

 

「えっと、今日から入寮します……」

「ああ、いいのいいの。ちゃんと話は聞いてるわ。私は空街(からまち)(はな)。ようこそ鹿波遊司くん」

「はい、お世話になります」

「それで早速なんだけど……」

「はい」

 

 部屋の案内か、家事か何かの手伝いか、他の入寮生の話か。

 そう思って身構えた遊司。

 

「陣くんとデュエルしてちょうだい」

「はい?」

 

 だが、告げられたのは予想をはるかに斜め上に裏切る内容だった。

 

「はぁっ!?何でだよ!?」

「いいじゃない、それに彼、この前そこのまゆちゃんを倒して編入試験を突破したのよ?」

「いや、そりゃ驚きだけど俺料理中だし……」

「陣くん?」

「大体同じ学年なんだから今戦わなくても……」

「やりなさい」

「…………はい」

 

 謎の圧力をかける華には勝てなかった陣。

 

「じゃあ、玄関前に行きましょうか」

「はい」

「はいな」

「けっ」

「陣くん?」

「い、行きますよ……」

 

 

 ーーーーー

 

 

 というわけで決闘(デュエル)である。

 

「楽しみやわ〜」

「まゆちゃんもそう?私もなのよ〜」

 

 イェーイ!とハイタッチする2人にため息しか出ない陣。

 

「悪いな、巻き込んじまって」

「いえ、とんでもない。というかデュエルディスクが……」

 

 本来、左腕に着けるデュエルディスクが右腕に着いている。

 

「ああ、俺は利き手が左でな。それでそっち用の試作品を使ってんだ」

「この学園、そういうこともやってるんですね」

「本来は障害で左腕に着けられない人用の開発の副産物って奴だよ」

 

 使いやすいから助かってっけどな、と言ってディスクを展開する。

 

「まぁ、美味い飯は出してやるからそれで勘弁な」

「そんな構いませんよ」

「でもよ……」

 

 不良だ何だと言う割に、良い人全開である。

 どうして不良なんてやっているのか疑問だったが、今はいい。

 

「それに、いずれやっていたものが、今に変わっただけですから」

「!」

「やろうよ、決闘(デュエル)

 

 その一言で、遊司の纏う空気が変わったのが、陣に伝わった。

 少し気弱そうな優男の雰囲気から、病的なまでに決闘(デュエル)に魅入られた決闘者(デュエリスト)のものへと。

 

「……なるほど、こりゃ強い訳だ」

「?なにか?」

「いや、なんでもねぇ。やろうぜ」

 

 2人が、構える。

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

「先行は俺だ。手札から、『罪禍の受刑者(クライム・プリズナー)・ナイフジャグラー』を召喚」

 

 手札から、受刑者用の白黒の縞模様の服を着て、ナイフでジャグリングをする男が現れた。

 

 罪禍の受刑者(クライム・プリズナー)・ナイフジャグラー

 レベル4 悪魔族 闇属性

 ATK 1600 DEF 1100

 このカードが召喚・特殊召喚された場合に発動出来る。

 手札から罪禍(クライム)と名の付いたカードを墓地へ送り、その後デッキから1枚ドローする。

 

「こいつで俺は『罪禍の看守者(クライム・ジェイラー)・ハウンドウルフ』を墓地へ送る。さらに、ハウンドウルフの効果でこいつを墓地から特殊召喚する!」

 

 罪禍の看守者(クライム・ジェイラー)・ハウンドウルフ

 レベル3 獣族 闇属性

 ATK 1200 DEF 800

 このカードが手札・デッキから効果で墓地に送られた時、発動出来る。このカードを特殊召喚する。

 

 一気に二体モンスターを揃えてきた陣。

 

(いきなりレゾナンス召喚ですかね?)

 

 さすがに先行1ターンキルが出来るとも思えないが、陣の巧さが垣間見えたプレイングに、警戒度は上がる。

 

「俺は魔法カード『二重召喚』を発動!」

「!」

 

 だが、陣はその予想を超えてきた。

 

 二重召喚

 通常魔法

 このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

 

「俺は、フィールドの2体をリリース!」

 

 罪の名を背負うモンスター2体が墓地へ送られる。

 

「アドバンス召喚!罪禍の看守者(クライム・ジェイラー)・ハウンドケルベロス!」

 

 2体の生贄を食らって現れたのは、看守の服を着た三つ首の猟犬。

 威嚇とばかりに吠える姿は、ソリッドヴィジョンだと分かっていても迫力がある。

 

 罪禍の看守者(クライム・ジェイラー)・ハウンドケルベロス

 レベル7 獣族 闇属性

 ATK2300 DEF 1600

 自分のフィールドの罪禍(クライム)モンスターが効果の対象になった場合に発動出来る。手札から罪禍の受刑者(クライム・プリズナー)モンスターを1枚捨てることでその効果を無効にする。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

「僕のターン、ドロー!」

 

 手札を見る。

 それなりには動けるが、次のターン凌げるかどうか。

 だが、やるしかない!

 

「僕はフィールド魔法『聖裁者(ジャッジメンツ)の裁判所』を発動して、『聖裁者(ジャッジメンツ)・ナイトディーラー』を召喚!」

 

 舞台が法廷の場となり、検察と弁護の立つ位置にお互いが立っている状態になった。

 そして現れたのは、本を持ち、手を剣の柄に添えている男だった。

 

「ナイトディーラーの効果!このカードが召喚に成功した時、相手と自分の手札・フィールド・墓地のいずれかの枚数が同じなら1枚ドロー出来ます!」

「面倒くせぇ条件だな、おい……」

「まぁ、その辺りも含めて、面白いカードたちですよ」

 

 今、2人のフィールドは共に2枚。

 遊司がドローする。

 

 聖裁者(ジャッジメンツ)の裁判所

 フィールド魔法

 自分のカードによって効果を発揮するためにLPを支払った場合、自分の場の聖裁者(ジャッジメンツ)モンスター1体を対象に発動する。

 そのモンスターの現在の表示形式であるステータスを500上げる(攻撃表示なら攻撃力、守備表示なら守備力が上がる)。

 

 

 聖裁者(ジャッジメンツ)・ナイトディーラー

 レベル4 魔法使い族 光属性

 ATK 1500 DEF 1900

 

 

「だが、そのモンスターじゃケルベロスは倒せねぇぞ?」

「えぇ、ですからこうします。『聖裁者(ジャッジメンツ)伝統の六法辞典』をナイトディーラーに装備!」

 

 表紙に聖裁者(ジャッジメンツ)と書かれた分厚い辞典がナイトディーラーの前に現れる。

 

聖裁者(ジャッジメンツ)伝統の六法辞典を装備した時、そのモンスターの表示形式を変更出来ます!」

「なるほどねぇ」

 

 聖裁者(ジャッジメンツ)伝統の六法辞典

 装備魔法

 聖裁者(ジャッジメンツ)モンスターのみ装備可能。装備した時、そのモンスターの表示形式を変更する出来る。

 装備モンスターが攻撃された時、このカードを墓地へ送りLPを500払うことで攻撃している相手モンスターを対象に発動出来る。

 その攻撃を無効にする。

 

「さらにカードを1枚伏せて、ターンエンドです」

 

 遊司がターンを終える。

 

「なんちゅーか、モンスターカード、あったんやねぇ」

「ええ、私ももっとカードをセットするかなって思ってたわ〜」

「前回のあれはまぐれです。本来の僕の立ち上がりは静かなものなんですよ」

 

 印象に残るのは分かるが、それが遊司の全てではないのだ。

 

「ったく、決闘(デュエル)の邪魔すんなよ……まぁいいや、俺のターン、ドロー!」

 

 返しのターン、陣の手札は2枚。

 レゾナンス召喚の最低条件の一つは、フィールドの2体のモンスター。

 だが陣は、それをせずにわざわざ二重召喚を使ってモンスターを召喚した。

 一見、上級モンスターでの牽制に見えるが、陣の狙いは恐らく別。

 

(墓地肥やし……ならこのターン、仕掛けてくる!)

 

「俺はケルベロスを対象に『罪の清算』を発動!」

「罪の清算?」

「このカードは、自分フィールドの罪禍(クライム)モンスター一体を対象に発動し、そいつをリリース。リリースしたモンスターの星四つにつきカードを1枚ドローするって効果だ」

 

 つまり、せっかくの上級モンスターを墓地へ送って1枚のドローという訳だ。

 はっきり言って損失である。

 

(そこまでして墓地肥やしを進める価値が、彼のレゾナンス・モンスターにはあるということですかね……)

 

 警戒レベルを最大限に引き上げる。

 

「だがここで、ケルベロスの効果だ!」

「!?」

「ケルベロスは自分フィールド上の罪禍(クライム)モンスターが効果の対象になった時、手札から罪禍の受刑者(クライム・プリズナー)モンスターを捨てて発動出来る!その効果を無効にする!」

「なっ!?」

 

 せっかく発動したカードを無効にした陣。

 だが、無効化されたはずのカードが光を放つ。

 

「こ、これは?」

「教えてやるよ。罪の清算は、効果が無効にされた時カードを2枚ドロー出来んのさ」

「なぁ!?」

「ま、こいつは制限カードだ。次は飛んで来ねぇから、安心しろ」

 

 罪の清算

 通常魔法

 自分フィールド上の罪禍(クライム)モンスター1体を対象に発動出来る。そのモンスターをリリースし、そのモンスターのレベル四つにつき1枚をドローする。このカードの効果・発動が無効になった場合、カードを2枚ドローする。

 

 損失かと思った効果は、コンボによって手札交換へと変貌した。

 ケルベロスの効果を見せはしたが、墓地にモンスターを増やしつつ手札を補充。

 彼の撃つ、一手一手が油断ならない。

 1つプレイングを進める度に、次の一手が2つ3つと増えていく。

 強い決闘者(デュエリスト)

 

(ゾクゾクしますね……!)

 

 だが、遊司は根っからの決闘者(デュエリスト)

 強い相手を目の前にして、興奮しない道理がない。

 

「行くぞ、召喚指定は『墓地に存在している『罪禍(クライム)』モンスター3体』!」

 

 共鳴の召喚条件を、陣が紡ぐ。

 

「俺は、罪禍の受刑者(クライム・プリズナー)・ナイフジャグラーと罪禍の看守者(クライム・ジェイラー)・ハウンドウルフ、そして今墓地へ捨てた罪禍の受刑者(クライム・プリズナー)・ウィルスエンジニアを除外!ファントマイズ・レゾナンス!!」

 

 3体のモンスターの魂が、新たなモンスターを呼び起こす!

 

「罪の証を瞳に宿す龍よ、更なる罪を背負い反逆せよ!レゾナンス召喚!罪禍眼の逆十字龍(クライムアイズ・アンチクロスドラゴン)!!」

 

 そして現れたのは、※を少し回転させて十字にしたような眼を持ち、胸に逆十字を刻んだ黒い龍だった。

 

 グォオオオオオオ!!!

 

 龍が、吼える。

 それは、目の前のモンスターを通り越し、遊司を睨んでいるようで……

 

罪禍眼(クライムアイズ)……まさか、こんなところで……」

「?」

 

 惚ける遊司に首を傾げる陣。

 そんな陣の様子に気付く余裕は、遊司には無い。

 だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お、おい?」

「失礼、決闘(デュエル)を続けましょう」

「おう」

 

 仕切り直して再開する。

 何か聞くのは後だ。

 今はこの楽しい決闘(デュエル)を続けることにしよう。

 

「バトルだ!ハウンドケルベロスでナイトディーラーを攻撃!」

「当然対策してます!六法辞典の効果!このカードを墓地に送り、LP500払って攻撃モンスターを対象に攻撃を無効にします!」

「甘ぇ!ちゃんと引き込んでるぜ!俺は手札から2枚目の罪禍の受刑者(クライム・プリズナー)・ナイフジャグラーを捨て、その効果を無効にする!攻撃は続行だ!」

 

 ケルベロスの牙が、ナイトディーラーに迫る。

 

 聖裁者(ジャッジメンツ)・ナイトディーラー

 DEF 1900→2400

 

「んだと!?一体何…………フィールド魔法か」

「はい」

 

 聖裁者(ジャッジメンツ)の裁判所は、LPを支払い、対象となるモンスターがいれば、場合効果のため必ず発動するカード。

 攻撃力か守備力かの選択は出来ないが、500の上昇は侮れない。

 

「巧い!」

「陣くんの意表を!?」

「だが、それでも甘ぇ!リバースカードオープン!『罪の意識』!」

 

 1ターン目から伏せられていたカードが発動する。

 

 罪の意識

 通常罠

 相手のモンスターを対象に発動出来る。表示形式側のステータスを700下げる(攻撃表示なら攻撃力、守備表示なら守備力が下がる)。

 

「こいつでステータスは逆転だ!」

 

 聖裁者(ジャッジメンツ)・ナイトディーラー

 DEF 2400→1700

 

「ならば僕は、ダメージステップ開始時に手札の『聖裁者(ジャッジメンツ)見習い・ブロックンの効果を発動!手札から捨てることで、フィールドの聖裁者(ジャッジメンツ)モンスターの攻撃力か守備力を600ポイントアップします!」

「ちぃ!」

 

 聖裁者(ジャッジメンツ)ナイトディーラー

 DEF 1700→2300

 

 目まぐるしく変化するナイトディーラーの守備力はハウンドケルベロスと同じになった。

 これで、ナイトディーラーは戦闘破壊を免れる。

 

罪禍眼(クライムアイズ)でナイトディーラーに攻撃だ」

「破壊されます」

「ちっ、まさか耐え切られるとはな……」

「こちらもまさか、防御手段を全て使わされるとは思ってませんでした」

「へっ」

「ふっ」

 

(こいつ……)

(この人……)

 

((強い!))

 

 互いが互いを認め合い、決闘(デュエル)はさらに白熱する。

 次は、遊司のターン。

 

(ここから巻き返す!)

「僕のターン、ドロー!」

 

 決闘(デュエル)は、まだ終わらない。








遊司「そもそも肝心のレゾナンス召喚について説明していないっていうね」
陣「まぁ、それよりも訳の分からないカードが出て来たのが悪い」
遊司「ともかく、レゾナンス召喚は場所を指定する召喚方法です」
陣「フィールド上や墓地の特定のモンスターを枚数分除外することでエクストラデッキから召喚出来る」
遊司「レベルだけでなく、召喚条件が厳しくなればなるほど強い効果になる傾向があるね」
陣「融合やシンクロ、エクシーズなんかも厳しい条件の1つだな」
遊司「えっと何々?『ペンデュラムとリンクはどうしてもバランスが良いものが考え付きませんでした』?何これ」
陣「んだそれ?」
遊司「さあ?」
陣「それは置いておいて、召喚場所によって名称が変わるのも特徴だよな」
遊司「とは言え、あれは俗称であって公式ではありませんけどね」
陣「あ?そうなのか?てっきり公式かと」
遊司「フィールド上はサクリファイス・レゾナンス」
陣「墓地からはファントマイズ・レゾナンスだな」
遊司「あとは……」
陣「あん?他にないだろ?」
遊司「ま、それは次で……」
陣「?」
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