「はぁ〜……」
「遊司くん、湯加減ど〜お?」
「ちょうどいいですよ、ありがとうございます」
「いえいえ〜」
あの
ともかく今日は疲れたので、大変ありがたかった。
湯加減は、最高だった。
「というわけで、改めてようこそ遊司くん」
「ま、これからよろしくな」
「よろしくお願いします」
夕食の時間になり、お互いに挨拶。
だが、気になる部分がある。
「あの、寮の人ってこれだけですか?」
それなりの広さの寮だったのに、遊司を含めて3人しかいないのは、少なすぎる。
やはり、あのゾーク像が原因だろうか?
「違うわよ〜、外に出てたりする子が多くてね〜」
「外?」
「色々あるぜ?社会科見学だったり、修学旅行……は時期じゃねぇけど、海外の大会に出たり、研究所の助手として赴いたり、色々だ」
「ほぅ……さすがはセントラル校、と言ったところですね」
「まぁ、人が多くないのは事実だけどね〜」
「ホルアクティ寮に比べたら仕方ねぇよ」
ここの他にも寮があるらしい。
それも真っ当な名前だった。
ちなみに、まゆもそこの寮生なのだという。
当の本人は、夕飯の時間だからとその寮へ帰っていった。
「何故、ゾーク寮なんでしょう?」
「ホルアクティ寮が満員になるからって作ったらしいわ〜」
「けど、流石に不吉過ぎて人が入らなくて、他にも色々と寮が出来たんだと」
「それ、意味無くないですか?」
本末転倒ではないだろうか?
「でも、その当時は学園もここまで大きくなかったから、結果オーライだって聞いたことがあるわ〜」
「学園が大きくなった原因の1つに寮が多過ぎて赤字になるから、っつー噂はあったな」
「完全に目的がズレてるじゃないですか」
あくまで噂だが、本当にそれが理由なら、当時の経営担当はよっぽど無能だ。
大きくなった結果、寮を作ったならまだしも、寮を建て過ぎたから学園を大きくした、など順序が逆にもほどがある。
「というか、他にも寮があるんですね」
「ああ、細かく分けて5つ、大雑把なら4つだな」
1つはこのゾーク寮。
和風の建築様式で、懐かしさを感じさせる。
ただ、入寮している生徒の総数はかなり少ない。
先ほど話に出たホルアクティ寮。
こちらは、昔に建てた関係でかなり豪華仕様となっているらしい。
そのせいで定員はあまり多くなく、成績優秀者だけが住めるとのこと。
まゆがいるのもこの寮だ。
次はアルティマヤ・ツィオルキン寮。
そう遠くない場所に、男子寮であるアルティマヤ寮と女子寮であるツィオルキン寮が建っている。
2つに分かれているため、細かく分けて5つになっていたという訳だ。
ここの寮が一番大きいらしく、そのため男女に分けたのだとか。
最後がアーミタイル寮。
「あの、ゾーク寮のことがあったのに、何故、混沌幻魔の寮を作ったのですか?」
「まぁ、あそこは不良っつか、出来の悪い寮生とか問題児が一括収容されてんだよ」
「言ってしまえば、更生施設ね」
「色々あるんですね」
そこで、遊司は陣をじっと見やる。
「なんだよ?」
「いえ、不良だなんだと言っている陣くんはアーミタイル寮ではないんですね」
「ま、俺は授業に出てねぇけど成績は優秀だしーー
「陣くんのは自称だからね〜」
「って、おい!」
「そうですね、
「だから、エプロンの柄は俺が選んだやつじゃねぇんだよ!」
「納得よね〜」
「だー!もー!」
ゾーク寮の夜は、賑やかに過ぎていった。
ーーーーー
そしてその翌日から数日間……
「ダイレクトアタック!」
「ぐぁあ!?」
「カオス・ロウで攻撃!」
「ぎゃぁあ!?」
「ブロックンで守備力をアップ!」
「くそぉおお!」
「脱税犯、逮捕!により、1000のLPを払ってもらいます」
「く、やられた……」
遊司は事あるごとに
昨日の文句があるなら掛かって来い発言の影響である。
「ふぅ、やれやれ……」
正しく、息つく暇もない。
しかも……
「今日も気持ちええ全勝やな!」
何故か、まゆがよく一緒にいる。
そのために周囲からのヘイトが集まり続けているのだ。
「それで、この後はどの教室でしたっけ?」
「実習室はこっちや」
だが、教室移動の説明などしてくれるため文句は言えない。
(甘んじて受け入れるしかない、ですかね)
そもそも自分で撒いた種である。
いずれ収束するだろうと思って今は我慢することにした。
しかし、遊司が運ではなく本当に強いことが知れ渡る分、まゆのファンで無くとも挑戦しに来る者が増えるため、長丁場になること必至なのだ。
それに気付いて、頭を下げてまで挑戦を断り始めるのはまた別の話である。
…………それが進化して頭を下げる→土下座→ジャンピング土下座→超カットビング土下座になるのも、また別の話である。
ーーーーー
実習授業。
決闘学園には、普通の授業の他にも、デュエル講座が存在する。
座学による理論に始まり、VRを使っての詰めデュエルの課題、生徒同士の模擬戦、果てはデュエル界の重鎮からの講義や社会科見学まで、その内容は多岐に渡る。
本日は生徒同士の模擬戦だ。
「また当たらへんかなぁ」
「勘弁してください……」
再戦を楽しみにしているまゆには悪いが、勝っても負けても悪い方向にしかならない公開デュエルなど、遊司はごめんなのである。
「ちぇー」
「人がいないところでしたら受けますから……」
「なんや、デートしたら
「ど、どこを解釈したらそうなるんですか!?」
冗談やー、と軽い調子で笑うまゆに、ため息を吐きつつ対戦相手を模索する。
「おい、鹿波遊司」
「はい?」
と、体格の大きい男子生徒に声を掛けられた。
「あれ、高坂《こうさか》やん。どしたの?」
「知り合いですか?」
「えっと、高坂は……」
「大丈夫だ、自己紹介くらい自分でする」
ずい、と前に出て遊司を見下ろす形になる。
体格の分、威圧感があり遊司は、なんとも居心地が悪くなる。
「進級組の一年、高坂哲成《こうさかてつなり》。そして今日のお前の対戦相手だ」
「あ、どうも」
簡単な自己紹介を終えると、哲成が手を出してきた。
それに応じて握手する。
「今日は、楽しみにしている」
「は、はぁ……」
では後でな、と言ってその場を去る哲成に首を傾げる遊司。
はて、自分は何か彼の興味を引くようなことをしたのだろうか、と。
「当たり前やろ」
まゆに質問したところ、即答された。
「新学期が始まって学年で一番
「いや、危ない場面も結構あったんですが……」
まゆ絡みで突っかかって来る人の中には執念にも似た者もいたりする。
そういった者は大体が自爆するのだが、時折、恐ろしいほど気持ちの乗る
その者たちに苦戦させられるのだ。
最も、それすらねじ伏せた遊司の実力は推して知るべし、となるのは当然のことではある。
「それと、気ぃ付けや。高坂は結構強いで」
「へぇ…」
強い、という言葉を聞いた途端、遊司のスイッチが入る。
「いいですね、それは楽しみです」
ーーーーー
『それでは、本日の模擬戦を始めてください』
アナウンスが入り、各々がデュエルディスクを展開する。
『『
会場のあちこちで
同じように、遊司と哲成も
「「
「まずは僕のターン!手札から、『
手札からモンスターが捨てられ、ドローする。
☆4 魔法使い族 光属性
ATK 1800 DEF 1600
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、手札の『見習い
「召喚指定は、『フィールドと墓地の
フィールドと墓地から、モンスターが除外され、その魂が昇華する。
「混沌の法を司る術士よ。その絶対的な法の下、目の前の罪を裁け!レゾナンス召喚!『
光と闇を携えた魔術師が、その姿を現わす。
ATK 2500
「これが、噂に聞くカオスティアズ・レゾナンス……」
「僕はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
「やはり面白い。では自分のターン、ドロー!」
ターンの移った哲成が力強くドローする。
「自分は、チューナーモンスター、『シールド・トレイサー』を手札から守備表示で特殊召喚!」
「チューナー!?」
「このカードは、自分フィールドにカードが無く、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる場合、手札から特殊召喚出来る」
現れたのは、盾を構え、身体が列車で出来た戦士。
シールド・トレイサー
☆3 機械族 地属性
ATK 100 DEF 1400
チューナー
自分フィールドにカードが無く、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる場合、このカードは手札から特殊召喚出来る。このカードの特殊召喚は1ターンに一度しか出来ない
「自分はさらに、チューナーモンスター『フレンド・トレイラー』を攻撃表示で特殊召喚!」
「さらなるチューナーモンスター!?」
続いて現れたのは、カラフルな装飾の列車の戦士。
現れると同時に同じフィールドのシールド・トレイラーと肩を組む。
……組まれた方のシールド・トレイラーが微妙に嫌そうな仕草をしているのが、なんとも言えなかった。
フレンド・トレイラー
☆3 機械族 風属性
ATK 1200 DEF 600
チューナー
自分フィールド上に、『トレイラー』と名の付いたチューナーモンスターがいる場合、手札から特殊召喚出来る。
「さらに!トレイラーのチューナーが2体以上いる場合に、ライフを500払って『ジャブ・トレイラー』を特殊召喚!」
高坂哲成
LP 4000→3500
続いて現れたのは、先の2体より二回りは小さく、だがシャドーボクシングのような動きをしたやる気溢れる列車の戦士。
そんなジャブ・トレイラーの頭を撫でようとしたフレンド・トレイラーの手が払われた。
……その手を見つめるフレンド・トレイラーの姿が、なんだか哀愁を帯びている気がする。
ジャブ・トレイラー
☆2 機械族 炎属性
ATK 800 DEF 300
自分フィールド上に、2体以上『トレイラー』と名の付いたチューナーモンスターがいる場合、LPを500払ってもよい。このカードを手札から特殊召喚する。『ジャブ・トレイラー』の特殊召喚は1ターンに一度しかできない。
「そして自分は、レベル2『ジャブ・トレイラー』にレベル3『シールド・トレイラー』と、
「なっ!?」
2つの星が、X字のように重なったチューニングの輪を突き抜け、大きな光が差した。
「列車の戦士よ、希望を重ねて突き抜けよ!!
そしてフィールドに、巨大な拳を握る、黒と赤の列車の戦士が登場する。
ブローナックル・ギガゼトレイラー
☆8 機械族 炎属性
ATK 2900 DEF 1900
『トレイラー』モンスター+『トレイラー』チューナー2体
シンクロ召喚でのみ特殊召喚可能。
このモンスターのS召喚に成功した時、墓地に存在する、S素材にしたモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを装備魔法扱いとしてこのモンスターに装備する。その場合、そのモンスターの攻撃力分、このモンスターの攻撃力を上げる。そのターンのエンドフェイズ、装備していたカードを墓地へ送る。
「シンクロ召喚されたブローナックル・ギガゼトレイラーの効果発動!墓地のシンクロ素材となったモンスターを装備!フレンド・トレイラーを装備する!」
墓地から魔法・罠ゾーンにフレンド・トレイラーが設置され、列車形態となって、ブローナックル・ギガゼトレイラーに握られた。
巨大な手の握力のせいか、フレンド・トレイラーからミシミシ…という音が聞こえるのは、気のせいに違いない。
ブローナックル・ギガゼトレイラー
ATK 2900→4100
「攻撃力4100!?」
「ブローナックル・ギガゼトレイラーは、装備したモンスターの攻撃力分、攻撃力をあげる!」
カオス・ロウとの差、1600。
「バトル!ブローナックル・ギガゼトレイラーで、カオス・ロウに攻撃!ギガナックルスマッシュ!」
フレンド・トレイラーを握った拳で、思い切りカオス・ロウを殴る。
槍のように装備されたフレンド・トレイラーが使われることはないらしい。
鹿波遊司
LP 4000→2400
「くっ、リバースオープン!トラップカード『報復の断罪』!」
「ほぅ……」
「その効果で、除外されている
報復の断罪
通常罠
自分フィールドの『
表側表示で除外されている『
「さらに、除外から墓地へ戻った『見習い
「最初に手札から捨てたレゾナンス素材のモンスターか!」
「アウトローをさらに裏側表示で除外することで、
見習い
☆3 魔法使い族 闇属性
ATK 1600 DEF 200
除外されているこのカードが墓地へ戻った時、このカードを裏側表示で除外して発動出来る。デッキから『
「防がれるかと思ったが、次への布石とは……」
「こちらとしても、最初のバトルで発動することになるとは思いませんでしたよ」
「ふっ、やるではないか。自分はカードを2枚伏せる。そしてエンドフェイズに装備カードは墓地へ送られ、ブローナックル・ギガゼトレイラーの攻撃力は元に戻る」
ブローナックル・ギガゼトレイラー
ATK 4100→2900
「僕のターン!」
場にモンスターは無く、伏せカード2枚。
しかも、そのうち1枚は次の自分ターンまで使えない通常魔法。
状況は、圧倒的に不利。
(それでも……)
絶望は無く、負けるつもりも無く。
ただそこに、高揚感と勝気を込めて。
「ドロー!!」
3ターン目が開始される。