黒の騎士団長と花騎士たち   作:七篠シマ

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初期組の4人と出会う話です。


2話

「ふーっ、やっと着いたぜ!」

 

なるべく街道沿いを歩いていたが途中寄り道などもしていたせいもあり予定よりも遅めに到着した。

 

「ここがブロッサムヒル、か」

 

ナンテンと過ごしていたリリィウッドよりも穏やかな感じがする。

人の行き交いも都市に近づくにつれて増してきていた。

 

「ウィンターローズは貴方のその格好だと寒そうだし、一先ずここで情報収集ね」

 

「りょーかいっと。ま、水浴びくらいしかしてなかったしなぁ」

 

「そうね、それも重要だけど少し休んでもバチは当たらないんじゃないかしら」

 

「そうと決まれば宿だな。行こうぜ」

 

「……臭うかしら」

 

早歩きで中心部に向かうのを見ながらナンテンはひとり呟くのだった。

 

………

……

 

中心部にほど近い宿の部屋を取り、ナンテンと別れ浴場に向かい身体の汚れを取った。

部屋に戻る途中窓を覗くと街はまるでお祭りのような喧騒に包まれていた。

 

「…ふぅ、そういや外が賑やかだなぁ」

 

そんなことを言いながら眺めていると後ろから宿屋のおばちゃんが話しかけてくる。

 

「知らないのかい?」

 

「なんかあるの?」

 

「今日は騎士学校の卒業式なんだよ」

 

「へぇ、お、ちらほら強そうなやつがいるなぁ」

 

桃色の髪をした二人組。隊列を組んで歩く金髪の女性。並んで歩く青髪の少女たち。

見える範囲で挙げるとするとこんなものだろうか。

 

「お兄さんは卒業式を見に来たってわけじゃあないみたいだね」

 

「んー、まぁ、騎士団長になりに来たんだけどな。おばちゃん騎士団長になるにはやっぱり騎士学校入らなきゃ駄目なの?」

 

「普通はそうなんじゃないのかい?私も詳しくはないけどねぇ。あとは花騎士に推薦されるとか」

 

「…んー、そうかぁ…」

 

「そもそも花騎士があんたの身近にいるようには見えないけどねぇ」

 

「ツレが花騎士なんだけどなぁ…」

 

「え!?」

 

心底驚いたかのように言う宿屋のおばちゃん。

そんなに驚かなくてもいいだろう…。

 

「…や、まぁ、あいつのためにも俺が団長になんなきゃいけないことはわかった。このままじゃ俺のせいでナンテンが無職だ」

 

………

……

 

それから数日後。

最低限の身支度を整えナンテンと話しながら城に向かっていた。

 

「花騎士は世界花の加護があればいいんだろ?団長になるのはなんでこんなに難しいんだ?」

 

「一応、花騎士も加護だけでなれるわけじゃないのよ。団長選出が厳しい理由は花騎士との相性があるからじゃないかしら?」

 

「じゃあナンテンと俺は相性ばっちりだな」

 

「もう、そういうことを言いたいわけじゃないのよ?」

 

「ま、いきなりお偉いさんに会えるかはわかんねえが聞いてみようぜ」

 

通りすがりの茶髪の女性に声をかけてみる。

 

「はい?」

 

………

……

 

あれよあれよと応接室に通され、事の顛末を話していく。

 

「なるほど、そういう事情が」

 

「んで、騎士団長になりたいんだけどなんかいい方法ない?」

 

「ない、と言えば嘘になりますね」

 

「まじで?」

 

「ですが、そうですねまずテストから始めてみましょうか」

 

「何を測るテストかは知らないが測ってわかるものなら何でも測ってくれ」

 

「では、こちらに…」

 

案内されたのは訓練場。

そこには4人の少女が訓練に励んでいた。

こちらに気付いたのか4人とも不思議そうに駆け寄ってくる。

 

「ナズナさんどうしたんですか?」

 

「こちらの方が団長になりたいそうなので皆さんにも見てもらおうかと」

 

「今期は、…たしかもう終了しましたよね?」

 

「ギンランさん、特例ということで」

 

「はぁ、そうですか。わかりました。よろしくお願いします」

 

そう言ってギンランと呼ばれた少女は握手をしようと手を差し出す。

それをぎゅっと握る。

 

「ギンラン、よろしくな!」

 

「は、はい」

 

「あたしはアブラナ。アンタが団長になったらよろしくしてあげるわ」

 

「おう、よろしくなアブラナ」

 

「だから、よろしくするのは――」

 

「モコウはワレモコウです?よろしくです?」

 

「よろしくなワレモコウ」

 

「あら??私、セントポーリアっていいます~」

 

「よろしく、セントポーリア」

 

「それでモコウたちが試験するです?」

 

「いえ、ちょうど街の近くに害虫の出現情報があるので向かっていただきます」

 

「了解です!」

 

………

……

 

テストの内容としては新人の花騎士一人でも対応できる程度の害虫を相手するというものだった。

それに対して俺とナンテンが挑むというもので影からナズナと先の4人が見て判断を下すらしい。

 

「この辺りですねー?」

 

ぽわぽわとした声でセントポーリアがそう言った。

 

「……、みんな下がれ」

 

「はい?」

 

「何のつもり?」

 

「来るぞ」

 

「シイイイイィ!」

 

小型の害虫が羽音を鳴らして茂みの中から飛び出してくる。

 

「2体か。ナンテン、任せるぞ」

 

「わかってるわ!」

 

ナンテンとのコンビネーションで撹乱していき最後にはナンテンの一撃で害虫は倒れた。

 

「こんなもんかな」

 

「……あなた、どうして一緒に戦うです?」

 

「ん、そうだな。俺の剣じゃ害虫は倒せない。せいぜい弱らせるくらいだ。それでも見てるだけは性に合わない。だから、ナンテンを頼りにして俺も前に出た。負担は増えてそうだけどな」

 

「……モコウは気に入ったです?」

 

「おー、サンキュー」

 

「私もこの出会いに感謝します!」

 

「私も~」

 

「……ちょっとは認めてあげるわよ。ちょっとだけなんだからね!」

 

「でもまぁ、お前たち実力はありそうなのにどうして騎士団に所属してないんだ?」

 

「あのですね、彼女たちも他の騎士団に内定していたのですが…」

 

「…仕方ないじゃない。所属先の団長がだらしない奴だったんだから」

 

「モコウの練った策の方が断じて上策?それが騎士団長には伝わらなかった?」

 

「私は決して不埒な輩ではないんです!ただ出会いを求めていただけで、」

 

「私は~どうしてでしたっけ~?ナズナさーん」

 

「というわけでして…」

 

「なるほどな。いやー、でもちょうどよかったわ」

 

「丁度いい?」

 

「おう。俺が騎士団作るなら出自や国家、所属なんて関係なく協力する騎士団にしようぜって思ってな」

 

ぽかんとする花騎士たち。

ナンテンには前に話してたから驚きはしてないだろうが。

 

「わかりました。皆さんも認めているようですしあなたを団長として推薦しておきます。試験まで1か月ほど猶予がもらえますのでしっかり勉強しましょうね!」

 

「え、試験あんのか…。そっちの方が不安だぜ…」

 

………

……

 

それから一か月後。

無事に試験を通過し、任命式に臨む団長の姿があった。

 

「右の者をブロッサムヒル騎士団長に任命する」

 

「…は、忠誠を女王陛下に」

 

滞りなく任命式が終わり、与えられた執務室に戻ってくる団長たち。

 

「あっちーあっちー。堅苦しい式典だったな」

 

式に出ていた時の神妙な表情とは打って変わってリラックスした表情でぽいぽいと来ていた服を脱ぎ捨てていく。

 

「…あぁ、もう!脱ぎ散らかさないでよ!」

 

そう言いながら服を拾っていくアブラナ。

 

「団長さーん、就任おめでとうございます~」

 

「おう、ありがとな。とりあえずみんなで飯食いに行くか」

 

「はーい、賛成でーす」

 

………

……

 

その頃、とある一室にブロッサムヒルの騎士団上層部が集まっていた。

 

『まったく、ブロッサムヒルの騎士団でありながらブロッサムヒル所属の花騎士が少ないとはいったいどういう料簡で騎士団を設立しようなどと企てるのか…』

 

『任命した女王陛下も女王陛下ではあるがな。しかし、名も聞かない新米の騎士団長に新米の花騎士。それに加えリリィウッドの町医者と花騎士のなりそこないとなると仕事は任せられんな』

 

『まったくです。あんなところに任務や依頼を回して失敗でもしたら私たちの株が落ちるというもの』

 

『ははは、そのうち自分たちで瓦解していくでしょう』

 

『というわけだ。あの輩はロッサ君君の下につける。適当に管理したまえ』

 

『は、かしこまりました』




団員No.2
name:アブラナ
【備考】
准騎士でありながら高い戦闘経験を持つとか
努力家のため、団長と模擬戦をしているところをよく見かける。

団員No.3
name:ギンラン
【備考】
前陣速攻スタイル。
強力無比な一撃が害虫を打ち倒す。

団員No.4
name:セントポーリア
【備考】
ぽやぽやガール。
戦場では普段のおっとりした言動からは信じられないほど素早く動き、読めない太刀筋で害虫を切り裂く。

団員No.5
name:ワレモコウ
【備考】
騎士団の軍師、作戦立案担当。
攻めのモコウ、守りのキンモクセイとして知られる。
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