黒の騎士団長と花騎士たち   作:七篠シマ

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閑話。



幕間1

「席に着け。これより定例会議を始める」

 

ロッサは席に着き出席を取っていく。

 

「クロノ、…おい、クロノはいないのか?」

 

新しく騎士団長になった青年の名前を呼ぶが返事はない。

 

「あ、あの、ロッサ先輩」

 

「…なんだ?」

 

「その、クロノさんから伝言を頼まれてまして…」

 

「伝言?」

 

「は、はい。『他にやることがあるから会議欠席する。任務は余ったもので構わない』だそうです」

 

「ほう…。あの馬鹿者がそんなことを」

 

こめかみに浮いた青筋がピクリとした。

 

「す、すみません!私が止めていれば」

 

「いや、君が謝ることじゃない。あの者には私からきつく言っておこう。それでは、今週の任務についてだが――」

 

………

……

 

会議は滞りなく終わり、足が進む先は会議を無断欠席した騎士団長の執務室だ。

 

「失礼するぞ」

 

扉をノックするも応答はなかった。

どこをほっつき歩いているのやらと思っているとこちらへ向かってくる足音が聞こえた。

 

「いやー、収穫だったな」

 

「えぇ、まさかOKしてもらえるとは思ってませんでした」

 

「波長でもあったんじゃない?ほら、あの人って――」

 

アブラナがそこまで言いかけて止まった。

 

「会議を無断欠席して花騎士と歓談に勤しむとは見上げたものだな」

 

「ん、ロッサか。何か用か?」

 

「…さんをつけろ馬鹿者。話は執務室でする。開けろ」

 

執務室の扉を開け、ロッサは絶句する。

錆びたねじを回すようにギギッと首を団長の方へ向けた。

 

「……なんだこの惨状は」

 

乱雑にばらまかれた書類。

遊び途中のボードゲーム盤。

まるで泥棒でも入ったかのようなとても執務室とは思えない足の踏み場すらないそんな部屋の現状だった。

 

「ほら、団長。出かける前に片付けなさいって言ったじゃない」

 

「帰ってからやろうと思ってたんだ。それにこうした方が資料がすぐとりやすいだろ。なぁ、ロッサ」

 

「即刻片付けろ馬鹿者がッ!!!!」

 

怒髪天を突くとはこのことか。

ロッサは深紅の髪を逆立たせて声を荒げた。

 

「貴様には常識というものがないのか!出したら片付ける!部屋は綺麗に使う!それぐらい守らんか!!」

 

「…あー、悪かったよ。片付けるまで待っててくれ」

 

………

……

 

それから数十分後。

すっかり片付いた執務室の床に正座させられている団長と仁王立ちしているロッサの姿があった。

 

「貴様にはいろいろ言いたいことがある。が、まずなぜ今日無断欠席したか聞かせてもらおうか」

 

「無断ってか会議に出るやつに伝言を頼んだんだが聞いてないのか?」

 

「聞いたとも。だが、あんなもの伝言と呼べるか」

 

「あっそう。俺この辺りの地理詳しくないんだよ。で、地図を見るだけじゃよくわからなくて実地に行ってきたんだ。どうせ。最初の任務ブロッサムヒル周辺だろうからな」

 

「どこまで行ってきたんだ?」

 

「フォス丘陵地からガルデの裾野行って南下してナヴィア平野、あとはミムイスの湖畔ぐるっと回って帰ってきた」

 

新人の団長が充てられるだろう任務地を見てきたらしい。

 

「…そういえば騎士学校出ではなかったな」

 

「おう、もともとあちこちを旅してたんだ。騎士団長になったのはまぁ、なりたいと思ったからだな」

 

あっけらかんと言う団長。

ロッサは心の中で嘆息する。

なんだなりたいと思ったからって。

そんな風になろうと思ってなれるものではないのだ。

つくづく女王陛下が何を考えているかわからない…。

 

「…貴様が考えなしの馬鹿者ではないのはわかった。明日から貴様が見てきた場所を哨戒してもらう。スケジュールは――」

 

「りょーかいりょーかい」

 

丁寧に説明していくロッサ。

それと対照的に生返事する団長であった。

 

「それと明日の任務は私も付いていくからな」

 

「何でだよ?」

 

「お前がこちらの想定外のことをしでかすからだ。しばらく監視しておかないと安心できん」

 

「へいへい。心配性な奴だな」

 

「それはそれとして、反省文書いて任務前に提出しろ」

 

「げ、まじかよ」

 

………

……

 

翌日。

フォス丘陵地を哨戒する騎士団一行の姿があった。

 

「――団長!こっち片付いたわよ」

 

声を上げるアブラナ。

 

「お疲れさん。調子はどうだ」

 

「昨日より動きやすいわ。下見したおかげかしら」

 

「はい、攻撃に転じやすい気がします」

 

「ご主人の言うとおりです?経験は大切です?」

 

「はいー。みんながどういう風に動くのかがわかりますねー」

 

ロッサは驚いていた。

アブラナたちが准騎士だとは聞いていたが動きはすでに花騎士のそれと遜色ない。

出会って一ヶ月程度でここまで連携が取れるのは類を見なかった。

そのまま哨戒任務は続き春庭の脅威を見事撃破し、任務を完遂した騎士団一行。

その報せはフォス丘陵地を静かに駆け巡り、騎士団の名は少しずつ広まっていったのだった。




団長「チュートリアル終わった。あと名前が出た」
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