目を覚ますと、見覚えのある天井が目に入った。
体を起こせば、まだそれほど時間が経っていないにも関わらず、懐かしいと思う様相の部屋に私は居た。電気が付いておらず、薄暗い中でもここの風景を見間違えることはない。
ここは自分の部屋だった。
しかし、もう戻ることのできない、
これは、おかしい。
カルデアは謎の軍隊に襲撃され、二度と戻れない場所となったはずだ。
なのに自分はここにいる。
攫われた?あり得ない。私たちは敵が追ってこられない虚数空間に逃げ込んだのだから。
ならば、と思い浮かんだのは、人理修復を成し遂げてから迷い込んだ、下総国。
彼の地は、寝ている間に夢として宮本武蔵と旅をした場所だ。
もしかすると、あの時のように寝ている間にここに飛ばされてしまったのかもしれない。
ならば何故ここに呼ばれたのか……その理由がわからない。ここは、特異点となれる要素はないはずなのだ。
……いや、考えてもしかたがない。
とにかく動かなければ。
ベットから降りて立ち上がり、自分の状態を確認する。……特に調子の悪いところはない。令呪もあるし、魔術礼装もしっかり機能している。だが、契約している英霊はすべて送還してしまっており、仲間の1人である大切な後輩、マシュとのパスも朧げで呼びかけることができない。戦闘の際には自力でなんとか逃げるしかないだろう。
……なにか使えるものはないだろうかと部屋内を漁ってみるが、これ、と言えるものは見つからなかった。まぁそもそも、監査の際に私物は全て片付けてしまったので何もないのだが。
……残るは、部屋の外。
どのような危険があるかはわからないが、この部屋でじっとしていてもなにも始まらない。
意を決し、ドアの前に立つ。襲撃前出会ったなら、自動で開いたであろうそれは、少しも動くことはない。おそらく、襲撃の際に電力が供給できなくなったのだろう。仕方がないので、力尽くで扉を開く。
>よ……いしょぅ!
助けてくれる英霊がいないため、非力な自分ではかなりの力が必要だったが、なんとか扉を開いていく。
開いた先にあったのは……
>げほっ!ごほっ!
なに……これ……
扉を開いだ瞬間、肺に何かが入り込み、咳き込んでしまった。
腕で口を塞ぎ、扉の先を見てみれば、そこにあったのは、黒い霧が漂う薄暗い廊下。幸い霧は薄く、全く見えないわけではないが、それでも視界は大幅に制限される。
目を凝らして見てみれば、壁や床には戦闘があった名残なのか、大きく切り裂かれたような跡や、黒い泥のようなものがこびりついついていた。
……なんだこれは、なんなんだこれは?
少なくとも、脱出前はこんな状態ではなかった。壁や床にある傷跡はいい。襲撃にあったのだ、このくらいはあってもおかしくはない。
しかしこの霧はなんだ?泥はなんだ?
少なくとも、あの時は見なかったし、霧を発生させたり泥をばら撒くような存在はなかったはずだ。
脱出してから、何があったんだ……?
……とにかく、探索しよう。立ち止まってる余裕はない。早く、脱出の方法を探さなくてはいけないのだから。
しかし、この泥はなんだろうか?妙に禍々しく、そしてどこか生きているような印象を受ける。
それに、なぜか……本当に、理由がわからないけど、なぜか……
最初に訪れた特異点である、
「その泥には触らないほうがいいわよ。呪詛に囚われて死んでしまうから」
泥に近づいたその時に、後ろから声が掛けられる。
驚いて振り向くと、そこには1組の
あ、貴方達は……
>イシュタルさん、村正さん!?
此処は、本来あり得るはずのない特異点。
敵は存在せず、レイシフトさえ出来ないはずの場所だった。
此処が
そのたった一つの歯車が、全てを崩壊へと導いた。
そこは、あり得ざる特異点。
破滅が確定された世界。
非在特異点 人理定礎値:EX
A.D.2013 罪業霧幻基地 カルデア
セカンド・サーヴァント