休日の早朝、朝飯をつくるために台所へ。うちは台所と居間が同じ場所にあるんだが今からテレビの音が聞こえる。こんな朝早くに…昨日消し忘れたのか?。
「お、ライダーか」
「おはようございます、士郎」
今ではライダーがテレビを見ていた。良かった、消し忘れじゃなかったんだな。ふとテレビの内容を見る。ちょうど料理番組をやっていた。
「懐かしいな、俺も小さい頃はその番組をみて料理を作っていたっけ」
今でも紹介されたレシピの料理を作るときがある。最近ではてっきり見なくなっていたが…。
「この前桜が独り言で私と一緒に料理をしたいというのを聞いて…」
「あー…」
確かに俺もよく聞く。ライダーも料理してくれるようになったらいいのに、と昨日も言っていたからな。ということは…
「朝早くから料理の勉強ってとこか?」
「そんなところです」
じっとテレビ見つめるライダー。料理は見てるだけじゃ始まらないからな…よし!
「ライダー、俺と一緒に朝飯作ってみるか?料理は実際にやった方が憶えられるし」
「よろしいのですか?」
「あぁ、ライダーが良ければ。朝飯は簡単に作れるようなものばかりだから初心者でも手を付けやすいと思う」
我が家の朝飯はあんまり時間がないから簡単に作れるものを作る。弁当にも入れたりするからその時は少し多めに作っておく。休日は時間があるからじっくり作るんだが、平日ならそうはいかない。幸い今日は休日、忙しくないから教えることも作ってもらうこともできる。
「では、よろしくお願いします。士郎…先生」
「普通に士郎でいいよ、先生なんて呼ばれるほど俺は料理はできないし」
「了解しました、士郎」
さて、朝といえば…
「じゃあライダー、みそ汁を作ってみようか」
「みそ汁、ですか」
みそ汁といえば、桜にも教えたっけか。あの時はまだ桜があまり料理ができなかった時だったか、懐かしいな。
「じゃ、さっそくやってみようか」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ライダー、昆布は沸騰する前に上げるんだ」
「わかりました」
我が家では昆布でダシをとって味噌を入れる、具はシンプルにわかめを使う。
「これを溶かすだけでいいのですか?」
「あぁ、それだけでいい」
着々とみそ汁をつくるライダー。ライダーはポニーテールで桜のエプロンを着ている。いつもと違うライダーはなんというか…珍しいというか…
「士郎?私に何か問題でも?」
「あ、ごめん…いや何もないよ」
見蕩れていたみたいだ。ライダーはそうですか、と一言いうと作業に戻る。っと、俺も見蕩れてる場合じゃないな、次の料理準備をしないと…。
「士郎、みそ汁が完成しましたので味を見てもらえませんか?」
「ん、了解…。うん、上出来だライダー。俺は少ししか教えてないのによく出来たな」
「桜が作っているのをちょくちょく見ていたので。味噌を溶かす分量は少しずつ入れて調整はしました」
意外と料理の心得を知っているなライダー…もっと前から教えてあげれば良かったと少し後悔する。
「ライダー、まだ時間もあるしもう一品作ってみるか?ライダーの腕なら多分できると思うから」
「分かりました、では監督役お願いします、士郎」
楽しいのかライダーは笑顔になる。ライダーが笑顔になることはあまりないから少しドキッとした。
「じゃ、じゃあ次は――」
ライダーに指示を出そうとしたところに居間の襖があいて誰かが入ってくる。
「あ、先輩おはようござ――」
桜だ、あれ今日はゆっくり寝るって昨日言っていたはずなんだけど…。桜とライダーの動きが止まる、まるで石になったかのように。
「…あー、二人とも…?」
「桜、これは…その…」
ライダーが申し訳なさそうにしながらもじもじする。
「先輩、変わってもらってもいいですか…?」
「え?あ、あぁいいけど…エプロンはライダーが使ってるし」
「大丈夫です、部屋に新調したのがありますから!それはライダーに譲ります!」
桜は走って部屋に戻っていく。おそらくエプロンを取りに行ったんだろう。
「士郎、私はまずいことをしてしまったのでしょうか…?」
ライダーが不安げだ、桜を怒らせたと勘違いしているようだ。怒った桜の怖さはライダーとセイバーが一番知っているからな。
「桜は別に怒ってなんかいないさ。むしろ喜んでいたぞ」
居間を出る時のあの笑顔、とても嬉しそうだった。桜の望んでいたことが叶うだからそりゃ喜んで取りに行くよな。そっとエプロンを脱いで桜を待つ。
「士郎?なぜエプロンを脱いでいるのですか?」
まだ何をするか教えてもらっていない、と困惑気味のライダー。
「桜と交代する。桜の料理の腕は確かだから安心してくれ」
…っと、桜が来たみたいだ。
「桜、あとは任せてもいいか?」
「!はい、先輩!」
桜と変わる。遠目で少し見ているが…見てわかるくらい楽しそうだ。
「…ここにいるのは場違いかな」
そっと居間を出る。鍛錬でもするか。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「士郎、ご飯ができています」
「あぁ、ありがとう。すぐいくよ」
「えぇ、お待ちしています」
セイバーは走って去っていく。どうやらかなりの時間が経っていたようだ。汗を拭いて、上着を着替える。
「さて、あの二人はちゃんとできたかな…」
俺がしてあげたのはみそ汁だけ。それ以外は桜とライダーが協力して作った料理だ。まぁ、あのセイバーの反応を見る限り美味しそうなのができていそうだ。
「お…これは…」
食卓には焼き魚に卵焼き、きんぴらごぼう…ザ和食って感じだ。
「こりゃ凄いな」
素直な感想が漏れる。
「あはは…張り切って作りすぎちゃいました」
楽しかったんだろうなぁ…ライダーと料理を作るの。
「大丈夫です、桜。美味しいのは無限に食べれます」
セイバー、味見したのか…。ま、セイバーがおいしいっていうなら俺を呼びに来た時のあの反応は当たり前か。みんないつもの位置に座る。
「それじゃ…いただきます」
「いただきます」
ん…美味いな。流石だ。
「このきんぴら、美味いな」
ライダーは少し顔を赤らめる。
「本当ですか?よかったぁ」
多分ライダーが中心で作ったんだろうな、あえて言わないのはセイバーがいるからだ。
「士郎の言う通り、きんぴらも美味しいですが今日の朝食は全体的によくできています」
セイバーはもりもり食べる。この食いっぷりは…いつも通りだな。あとで感想言っておくか。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
食器洗いをする二人に交じって皿を拭く。
「桜、ライダー。今日の飯、美味かったぞ」
「ありがとうございます、先輩。ライダー結構料理がうまくて…びっくりしちゃいました」
「ほんとだよな、ライダー以外とできるからな」
「…ありがとうございます」
ライダーは少し照れている。美味しかったのは事実だ。俺や桜が教える必要なんてなかったんじゃないのか?
「…桜に教えてもらうのは新鮮で楽しかったですし、それに—―」
「こうしてもらうのは、私が望んだことでもありますから」
まさか、ライダーもこういうのを望んでいたとは…。
「そうだったのライダー…?もっと早く言ってくれればよかったのに」
「その…恥ずかしくて…」
ライダーは赤くなる。ライダーもこういう顔するんだなぁ。
「ま、これだけの腕があれば即戦力で台所に立てるな」
「そうですね、ライダー、これからも一緒に料理してくれる?」
「はい、もちろんです桜」
桜とライダーが楽しそうに料理してくれるなら俺は嬉しい。セイバーも料理を始めてくれたし、いつか一緒に台所に立つ、なんてことは…ない、かな…?
「そんな日が来てくれるといいな」
俺はそんなことを思いながら皿を拭く。今日の衛宮家はライダーの新たな一面が見れた日であった。