衛宮家の日常。   作:ますたー☆あじあ

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秋と言えば…?

「庭の掃除、しないとなぁ…」

はぁ、とため息をつく。俺の家の庭は自慢じゃないが広い。…が広いが故に掃除が面倒なのである。特にこの時期、秋は落ち葉も相まって掃き掃除をして落ち葉を定期的に無くさないと大変なことになる。幸いなことに今日は学校は休み、やる事も出かける用事もないから掃除をすることにしよう。

「えっと…箒は確か土蔵にあったかな」

とりあえず土蔵に向かい、箒とゴミ袋を握りしめる。落ち葉をちりとりに入れるより手で掴んでゴミ袋に入れる方が効率がいい。

「士郎、何をしているのです?」

「庭の掃除。定期的に掃いておかないとこの時期は大変なことになるからな」

「なるほど、一人では大変でしょう。箒は土蔵ですか?私も手伝います」

「あぁ、助かる。箒は土蔵にあるから適当に1本持ってきて使ってくれ」

こうしてセイバーとともに清掃を始めたのだが…

 

〜2時間〜

 

「これは…どうするのですか?士郎」

「あはは…どうしよう」

こんもりと山のようになる落ち葉。冬木市指定の燃えるゴミ袋だと何袋使うんだろうな、これ…。

「焚き火にしようか、セイバー」

「焚き火…ですか」

「あぁ、何かあるのか?」

「いえ、今の時代にはもう電気で明かりが灯っているので焚き火はなんだか久しぶりな気がしまして…焚き火はよくするのですか?」

「いや、年に2回やるかやらないかくらいかな。こうやってつもりに積もってる時とかにな」

次はもっと早くやろう、と思いながら落ち葉の中にアルミホイルで巻いたサツマイモを入れていく。

「士郎、それは何ですか?」

「さつまいも。一緒に焼いて焼き芋にしようと思ってさ」

それに秋といえば食欲の秋とも言うしな、と言おうとすると

「なるほど、秋とは言えばさつまいも、秋といえば食欲の秋。さすがです、士郎」

とセイバー。なるほど、セイバーは食欲の秋か。セイバーらしい。

「焼きあがるまで時間かかると思うから火を見ながらゆっくりするか。セイバーは火を見ててくれ、お茶入れてくる」

「分かりました」

確かイリヤからもらった紅茶があったっけ。あれにしよう。小走り気味に部屋に戻り、紅茶を淹れる。紅茶なんてうちではインスタントばかりで淹れ方には慣れなかったが、ここ最近は慣れてきて手際よく作れるようになった。

「おまたせ、セイバー。冷めないうちに」

「ありがとう士郎」

二人で紅茶を飲みながら火を眺める。

「こうやって焚き火してると前藤ねえに怒られたことを思い出すよ」

「大河にですか?なぜ?」

「今時焚き火とかする家はないから煙が出てると火事と間違えられるんだ」

あの時も煙がもくもくと立たないようにはしていたけど、藤ねえにゲンコツされたっけ。

「なるほど、たしかに今時では焚き火なんてものはしませんよね」

納得するセイバー。火を眺めてる目は癒されてるというよりは…

「…セイバー、さつまいもが気になるか?」

「い、いえ!そんなことは!」

とぶんぶんと手を振るが視線は火、さつまいもに向いている。

「はは、セイバーは食欲の秋、か。とすると、遠坂や桜は…」

「桜も私と同じ、食欲の秋かと。えぇ、間違いありません」

と力説するセイバー。言われてみれば桜もよくご飯を食べる。

「まぁ桜は身体を動かしてるからな〜。そりゃお腹が空くのは当然か」

部長もやっているのだから仕事も多いだろうから食欲も出るのだろう。

「それでは私が何もしてないのにお腹が空いている悪者みたいではないですか!」

騎士王様はお怒りでいらっしゃる。セイバーの悪口を言ったつもりはないんだけど…と、とりあえず嵐になる前に静めないと!

「さ、桜はスポーツでセイバーは俺と買い物行ったり、お手伝いしたりして身体動かしてるだろ?そういう違いだよ!」

苦し紛れの言い訳だがとりあえず効果はあったようでスッと嵐が静まる。

「なるほど、そういうことでしたか。では次に…凛はなんの秋になるでしょうか?」

「遠坂か…うーん…」

遠坂か…食欲には該当しないし、スポーツも違うよなぁ…。あ。

「…強いて言うなら勉強の秋、かな」

「勉強ですか?」

「あぁ、遠坂ここ最近魔術の勉強をしてるみたいでさ。この前教えを受けようと思ったら明らかに寝てない顔で。んで問いただしたら勉強しているって言ってたな。だから勉強の秋」

「なるほど、だからこの前帰ってくるのが早かったのですね」

「そういうこと。それじゃあ次は…ライダーだ」

「ライダーですか…読書の秋ではないでしょうか?」

「あー確かに。本読んでるもんな、ライダー」

本読んでるも何もライダーの部屋には本が山のようにある。まるで図書館のように。俺もたまにライターから本を借りて読んでいるし、暇があれば本棚でも作ってあげたいところだ。

「では次は…イリヤスフィールはどうでしょうか?」

「イリヤか…うーん、難しいな…」

イリヤは何というか食欲…読書もあまりしてないからなぁ。あ、そういえばこの前テレビを見ながら俺も見るべきだ〜って指摘してたっけ。

「イリヤも遠坂と同じで勉強、じゃないかな」

「ほう、理由を聞かせていただきますか?」

「この前イリヤが芸能人のニュース見ててさ。あんなにつまらないのを何で見ていられるか聞いたら世間に詳しくなっておかないといけないからって言われたんだ。だから勉強かなって」

実際俺は見るとしたら政治とかのニュースか天気予報くらいだ。そろそろ芸能人関係のニュースとか見ておかないとイリヤに怒られそうだ。

「なるほど、私もよくニュースは見ますが最近はイリヤスフィールも一緒に見てますね。特に芸能人関係のニュースの時は食い入るように見ていましたが…なるほどそういうことでしたか」

納得するセイバー。意外と見てないようで見てるんだよな、セイバーは。何だかんだライダーのことも気にかけたりするし…何でこうぶつかり合うかなぁ。

「それじゃあ最後」

「…大河、ですね」

藤ねえかぁ…藤ねえはいっぱい食べるし、教師だから常に勉強してるし。スポーツは…いや、顧問だからってスポーツやっているには入らないか。

「スポーツ以外当てはまる…?」

「スポーツ以外当てはまるのでは…?」

セイバーと同じ意見だった。

「セイバーもそう思うか?」

「はい。大河はよく食べますし、教職員なので常に勉強もしているでしょう。スポーツは…顧問しているからと言ってこの前士郎から聞いた話ではやっているには含まれないでしょうからないでしょう」

「俺と全く同じだな。はは、藤ねえのスポーツといえば剣道だけどセイバーに構えろとか言って、セイバーは竹刀すら持ってないのに攻撃してさ〜、んでセイバーが藤ねえの竹刀を取って…懐かしいな」

「そんなこともありましたね。まさかあれだけで士郎を盗られた、と大泣きされるとは思いませんでしたが」

苦笑するセイバー。あの時の桜と藤ねえは突然のことで何が何だかだっただろうなぁ。藤ねえがしばらく泣き止まないもんで全員で介抱したんだっけか。

「いや、俺もあんなことになるとは思わなかったんだけどな。ちなみに藤ねえ、ああ見えてスポーツ万能でいろんなスポーツにすぐ順応できるんだってさ…団体競技以外は」

「すごいのですね、大河は。やはり見習わなくてはいけませんね」

いや、あれを見習うのはよしてくれ…手のつけられない猛獣が増えてしまう…。冬木の虎に獅子王様ですか…ひえぇ…考えただけでゾッとする。俺は気を失うだろうし桜に関しては闇落ちしかねん。そうならないようしないようにしないと…っと。

「そろそろ、焼き芋が出来てる頃合いかな」

土蔵にあった少し長めの棒で真っ黒になった落ち葉を探り、その中からアルミホイルに包まれたサツマイモを取り出す。取り出しながらセイバーに1つパスする。

「セイバー、焼き芋は焼きたてが美味いから先に食っててくれ。熱いから気をつけてな」

焼き芋を受け取ったセイバーは左右の手に芋をパスしながら少しずつアルミホイルを剥がしていく。残りは藤ねえや桜たちに残しておこう。あとは水をかけて…っと。

「では、士郎。お先にいただきます」

焼き芋のアルミホイルを剥がし終わったセイバーが焼き芋を頬張る。

「…おぉ、これは…。士郎、これはどのような味付けを施したのですか?」

「味付け…?いや、味付けはしてないぞ。ただほんとに芋を焼いただけだ」

まあま強いていうなら火で炙るとかで高温ではなく、低めの温度でしているから甘みが増してるってくらいか。

「なんと…これさえあれば私はまだ数年、いやもっと戦えたはずだ…」

クッと悔しそうなセイバー。そういや前も言ってたな、料理はとにかく雑だったとか。初めてじゃがいもを見せた時は少し絶望したような目をしてたもんなぁ。…それだけで芋づくしの料理だったのかなと容易に想像できるくらいに。

「それと、今のゆったりした雰囲気も相まって余計に美味く感じるんじゃないかな」

「確かに一理あります。戦いの前は味を気にしたりなんてできないですから」

もっきゅもっきゅと平らげるセイバー。いつも思うがセイバーは美味いものを食べると分かりやすく態度や非常に出るから作る身としては嬉しいしありがたい。

「セイバー、そんなに急いで食べなくても焼き芋は逃げないぞ?」

「ふぁい?!」

「はは…ほら、セイバー」

もう一本セイバーに渡し、俺も1本食べる。夕飯まで時間もあることだしセイバーは2本食べても問題ないだろう。

「あぁ、美味です。あと30本は食べられる…!」

「30本は勘弁してくれ、俺の財布がすっからかんになっちまう…。けど、まださつまいもはあるからまた今度もするか?」

「その時は私も呼んでください、手伝いますので」

グッと親指を立てるセイバー。まさかそこまで気にいるとは思わなかった。

「さてと、俺はそろそろ夕飯の仕込みを始めないとな」

焼き芋を食べて箒やちりとりを土蔵に戻す。セイバーも手伝ってくれたおかげですんなりと片付けも終わった。

「さて、セイバー。今日の夕飯どうしようか?」

どうせなら何か食べたいか聞いておこう。そのほうがセイバーも喜ぶだろうし。

「では、今日は秋の味覚を使ったメニューでお願いしたいです」

なるほど、そうきたか。確か秋刀魚と栗と…結構色々あった気がする。

「わかった。今日の夕飯のコンセプトは秋の味覚大集合って感じだな。待ってろ、今日も腕によりをかけた料理を作る」

「えぇ、楽しみにしてます、士郎」

そんな会話をしながら料理をする準備に入る。焼き芋、また作らないとな〜と思いながら今日のメニューを決めるのであった…。


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