「うぅ〜寒い…」
息は白く、凍てつくように寒い。この季節が来るといつも負担が恋しくなる。家主兼料理番の俺は朝一番に起きて部屋にあるストーブをつける。
「さて、今日の朝は…鮭の塩焼きと卵焼きと…」
冷蔵庫にあるもので朝食を作る。これがいつもの俺の仕事。料理をしてる間にいつのまにか皆起きてきたり、朝食を食べにうちに来たりと炬燵に大集合である。
「あー、もうすぐクリスマスねー」
ふと遠坂がテレビを見ながら呟く。ちょうどクリスマスのCMでも流れたのだろう。
「クーリスマスがこーとーしもやって来るー、ってか?」
「それコンビニのCMでしょ」
最近よく見るCMのワンフレーズだ。しかし、クリスマスかぁ…。去年まではこんなにたくさん人いなかったからなぁ。確か去年は桜と藤ねぇと俺とでクリスマスケーキをつくったっけ。
「今年のクリスマスみんな予定はあるのか?」
「私は別に〜、というよりクリスマスなんてあんまり意識してなかったから今年もいつもどうりゆっくり過ごす予定だけど」
「私と藤村先生も予定は特にありません。部活はありますけど遅くはならないそうです」
遠坂と桜、藤ねえは予定なしと。…藤ねえは毎年ベロベロになるまで飲むからな、遠坂が来てくれると助かる。
「ライダーとセイバーは?」
「私は何もありません」
「私も特には」
「ん」
とりあえずみんな暇はある、と。せっかくだしクリスマスパーティーといきますか。
「それじゃあクリスマスパーティーをやろう。と言ってもまだ何にも考えてないけどな」
イリヤも誘ってみよう。イリヤが良くてもメイドさんがどう出るか分からんが…。
「私はそういうのあまりやったことないから士郎に任せる形になっちゃうけど?」
「遠坂、安心してくれ。俺や桜だってこんな大人数でクリスマスパーティーなんてしたことないから」
「えぇ…あんまり安心できないわね、しょーがない私も手伝うわよ」
ありがとう遠坂、実のところ料理人2人では大量の料理を作るのは厳しかったから即戦力の人材は非常に助かる。
「クリスマス…というのは具体的にはどのようなものなのですか?」
セイバーの質問は最もである。ライダーも私もよくわからないのですが、と言わんばかりの視線を投げる。
「俺もそんなには分からないけど…まあ身内と一緒に過ごしたりする、って言い方が近いかな」
「へぇ〜、士郎。セイバーが効いてくるだろうと思って勉強しておいたの?」
さっきテレビで見た…とは言わないでおこう。
「えっ?あぁ…まあそんなとこ。家族や恋人と一緒に食事したりして楽しく過ごすのが今のクリスマスかな」
「なるほど、それは是非やってみたいです!料理、ということはクリスマスにしか食べられないものもあるのですか?」
流石セイバー、食べ物に目がない。…今にもヨダレが垂れそうだぞ〜王様の威厳なくなっちゃうよ〜。
「まあ全部が全部そうとは限らないけど…大きなケーキはクリスマスくらいじゃないかな」
「おぉ…クリスマスという文化には感謝しなければなりませんね!」
「なるほど、クリスマスの概要は分かりました。何か手伝えることがあれば私もセイバーも手伝いますので気軽に声をかけてください、士郎」
自分の世界に飛び込んだセイバーを置いておいて冷静に話すライダーだが少し楽しみなのか笑顔が見える。そのたまに見せる笑顔、反則級なり。
「ありがとう、その時はよろしくな」
「イリヤスフィールは呼ばないの?」
「声はかけてみるよ、まあその…もしかしたらイリヤのお城が会場になったりして…なーんて」
そんな会話を朝してたわけなんだが…
〜夕方、イリヤスフィール城〜
「クリスマスパーティー?うちでもやってるわ、どうせならみんなを呼んでここでやろうよ、士郎!」
「へっ?」
まさか現実になるなんて…いやいやいや、朝のあれは冗談半分だったんだけどなぁ…。
「お嬢様!そんな勝手に決めてもらっては…」
まぁ当然の反応だ。メイドさんの1人であるセラはなんかこう…あれだけ当たりがひどくないか…?もう慣れたんだけど…慣れって怖いな。
「セラ、私が決めても別にいいでしょ?聖杯戦争はもう終わってるし、士郎の料理は美味しいんだから」
プイッと顔を背けるイリヤ。頬が少し膨らんでる、お怒りのご様子。
「私はイリヤに賛成。士郎の料理は美味しいから」
リズはイリヤに同意することが多い。イリヤ曰く、リーゼリットさんとは繋がりがあるらしく、意見がよく合うそうだ。
「リーゼリットまで…!た、確かに衛宮様のお料理が美味しいのは認めますが…衣装はお持ちでは…」
「確か衣装室にあったと思うけど…?セラはそんなに嫌なの?」
「い、いえそう言うわけでは…仕方ありません」
はぁ、とため息をつき承諾するセラ。保護者の立ち位置ではあるけど城の所有者はイリヤなので権力はイリヤが上という…。結局はイリヤの言う通り、と言うことになる。
「やったぁ!そう言うわけだから士郎、みんなにも伝えておいてね!」
「ぅおぁっ?!イ、イリヤ?!」
満面の笑みで抱きついてくるイリヤ。セラ、目が笑ってないヨ。違うヨ、これは事故だヨ。
「と、とにかく俺に手伝えることがあったら言ってくれ。やれる範囲でやるから」
「うーん、士郎はやっぱり料理担当ね。セラとリズでも十分作れるけど士郎の料理も食べたいし」
料理を作る者としてこれほど言われて嬉しいことはない。うむ、これは奮発して良い材料でいつもより良い料理作らないとな。
「イリヤ、当日にお迎えは私がしてもいい?」
「そうね、よろしくねリズ」
トントン拍子に話は進んでいく。やると決めればそれにちゃんと従うメイドさんもそうだけど…なんか夢みたいだな、お城でクリスマスって…。
「衛宮様、聞いておられますか?」
「うぇっ?あぁ…ごめん、聞いてなかった」
「士郎達にもクリスマスの時は私のお城にある服を着てもらうけどって言いたかったんだけど、何か考え事?」
「考え事っていうか…こんなお城みたいなところでパーティーってのがなんか…楽しみだなって」
いやほんと。我々庶民じゃおとぎ話みたいなものだし。
「そっか、士郎は大きなパーティーとか出たことないもんね。うーん、セラ」
「何でしょうかお嬢様」
「士郎に基本的なことだけは伝えておいてね。セラと士郎がちゃーんと意見を合わせておかないと上手くいかないんだから」
「お嬢様がそうおっしゃるなら…仕方ありませんね、衛宮様」
「は、はい!」
思わず背筋が伸びる。
「クリスマスの件で少しお話し合いを。そうしなさいとお嬢様からの指示ですので」
「あ、あぁ分かった」
この後2時間くらいで話し合いを終え、早速準備に取り掛かることにした。
〜その日の夜、士郎の自室〜
「…うーむ、予算オーバーか…」
電卓を打ちながら頭を抱える。うぅーん、メイドさんからはできるだけ質のいいものを、とのこと。多少は妥協してもらうとして問題は料理だよなぁ。
「肉料理、か。んー…あっ」
突然閃く。肉料理はチキン、と先行していたがアレがあるじゃないか。
「しかも安くても高級感も出せる。…よし、これに決定だ」
買い出しリストに書き込んでいく。クリスマスは明後日。決まったのがギリギリなのもあって料理もたくさんは作れないと思っていたけどメイドさんもある程度作ってくれるらしい。とりあえず明日にはある程度仕込みやらなんやらを終わらせておかないといけない。
「明日は忙しくなりそうだなぁ…」
そっと目を閉じる。明日の予定を整理しているうちに自然と寝てしまった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
〜クリスマス当日〜
「わぁ〜…素敵です、姉さん!」
「あら、桜も綺麗よ、よく似合ってるわ」
女性陣はドレスを着る。遠坂は自前で桜はイリヤからレンタルしている。イリヤ曰く、凛に貸すのは嫌だけど桜ならいいとのこと。俺はスーツかタキシードらしいが…料理をしないといけないのでイリヤのお城で着ることになっている。
「どうです士郎!似合ってますか?」
「桜、私たちも着替え終わりました」
もちろんセイバーとライダーも女性なのでドレスを着る。…のだが。
「セイバー…なんでスーツなんだ?」
「えっ?あっいえそのですね…ドレスは落ち着かないというか…」
真っ黒なスーツに革手袋、まるでボディガードである。
「…」
なんと言えばいいか、似合ってるから何も言えない。だけどせっかくだしセイバーのドレス姿も見たいなー…とか…。
「衛宮君、ちょーっとセイバー借りてもいいかしら?」
「へっ?」
俺の返事を待たずして遠坂がセイバーの肩に手を置く。
「セイバー、ちょっといいかしら?」
「凛…?わわっ、凛?!」
ズリズリと連れて行かれるセイバー。遠坂のやつ…ありゃ本気だな…。
「ライダー素敵!可愛い〜!」
「さ、桜…その、私可愛くは…」
タジタジのライダー。桜にタジタジなのは珍しくないがドレス姿はお目にかかるのはこれ以降ないかもしれない。
「先輩、ライダーのドレス姿どうですか?」
「似合ってると思うぞ、桜がドレスを選んだのか?」
「はい、ライダー初めは私はいいですって言ってたんですけど、ほらライダー、私の言った通りでしょ」
「そうですが…その…」
ライダー…こんな格好したことないから恥ずかしいのか?これもまたもう見れないかもしれないものを見た気がする。
「さて…俺は先にイリヤところで料理しなきゃいけないから、先に行ってる。桜たちはあとでリズが迎えに来るからそれで来てくれって」
「わかりました先輩、また後で」
上着を羽織り、家を出る。12月中旬なこともあり、雪が積もっている。…ってあれは…
「シーローウー!」
「イリヤ?!」
走って飛び込んでくるイリヤ。とっさの判断で受け身を取る。相変わらずすごい勢いである。いやしかし…
「なんでここにいるんだ?」
お城で待ってるのかと思ったら我が家の前にいるし、1人で来たのか?
「リズがね、雪積もってシロウが来るの大変そうだから迎えに行くって言ってたから付いてきたの!」
イリヤが指を指す方を見ると車が止まってる。なるほど、あれで…。
「イリヤ、寒いし風邪引く前に乗ってしまおう」
「そうね、風邪を引いたらせっかくのクリスマスも台無しになっちゃうわね」
車に乗り込むとリズがこちらを覗き込んでいた。
「シロウ、こんばんは」
「こんばんはリズ」
挨拶を返すと笑顔で話を続ける。
「今日雪が凄くて寒いから家まで迎えにきた」
「あぁ、おかげで助かったよ。ありがとうリズ」
ふぅ、と息を吐き座席に背を預ける。流石イリヤのところの車なだけあって乗り心地が良すぎる。一般庶民の俺たちじゃ普通じゃ乗れないよな…。イリヤとリズの会話に混ざって話してるうちにイリヤのお城に着く。早速厨房に入り料理をしておくとしよう、セイバー達が来る前に終わらせておかないとな。それから厨房に入る直前にセラさんからお嬢様のお口に合うような料理を、と念押しされた。
「よし…やるか」
こうしてせっせと料理に取り掛かる俺をイリヤは静かに見守っているのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ん…?」
「どうやら、到着みたいね」
どうやらセイバー達がイリヤのお城に到着したようだ。…が。
「つ、疲れたわ…」
「はいー、疲れてしまいました…」
「あっ、士郎!今着きました!」
「お、おう…」
桜と遠坂は疲れ切っている。何かあったんだろうが深くは聞かないでおこう。
「セラ、お客さん連れてきた」
「ご苦労様ですリーゼリット」
これで全員だけど、みんなドレス姿だから全然雰囲気が違う。ぱっと見なら貴族のようにも見える…ってあれ。
「セイバーは…私服か?」
セイバーだけ私服である。するとセイバーは顔を赤らめ、桜と遠坂はフフッと笑っている。
「そのことなんだけどね、士郎の仕事はもう終わった?」
「ん?あぁ、あとは机に運ぶだけかな」
「じゃ、セイバーのドレスを選んであげなさい」
「…は?」
えぇっと…俺がセイバーの着るドレスを選べ、と…?
「士郎、その…私からのお願いなのですが…」
「そういうことよ士郎、私が選ぼうとしたらどうせなら士郎に選んでほしいって」
「り、凛!それは言わないと約束したではないですか!」
ははー、なるほどー。うん、これが幸せってやつかなー…。
「わかった、セイバー。一緒にドレス見てみるか?」
「…はい…」
顔は見えないが耳が赤い。こういう所は何も変わらないよな、セイバー。
「えっと…勝手に進んでるけど、いいのかイリヤ?」
ここはイリヤのお城で、ドレスもイリヤからの借り物ということになるのだが…。
「別にいいわよ。それに
小悪魔イリヤの意地悪な一言である。詳細は省くがセイバーは遠坂からもらった服と甲冑以外着たことはない。…まぁ例外はあるが。
「ん…まぁ、セイバーに似合うドレスを選ぶよ」
「エミヤ様だけでは心もとないでしょうから…リーゼリット」
「わかった、シロウ。こっち」
リズが案内してくれるようだ。
「それじゃ、行こうか。セイバー」
セイバーに手を差し伸べる。
「お、お願いします士郎」
「それじゃあとは私たちでやっておくから、ごゆっくり~」
遠坂たちにあとは任せて、俺はセイバーのドレスを選びに行くことになったのである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ここ、ドレスがたくさんある」
リズがドアを開ける。
「おぉ…」
「…」
セイバーは声を上げるがその量に俺は思わず絶句する。たくさんあるというかその次元を超えてるというか…。
「こ、この中から…ありすぎて迷うな…」
「シロウ、これは私のおすすめ」
リズが指さしたドレスは雪のように白く、青色の…。
「あー…リズ、ありがたいけどあれはセイバーが嫌がるかな」
「そっか、じゃあ仕方ない」
例外の時の服装とすごく似ている。ウエディングドレスっぽくて俺が緊張してしまいそうだ。…いやいやそんなことを考えてる場合じゃない。あたりのドレスに目をやる。ちなみにセイバーだが、周りに目をやるだけで俺が選んでくれるのを待っているようだ。
「お…?」
1つのドレスはすごく惹かれた。暗めの青色がメインで腰のあたりに布で花を模したものに黒色の長手袋。可愛いというかクールな感じになりそうだ。
「リズ、あれ取れるか?」
「あの青色のやつ?わかった」
あの、その長い棒はいったいどこから…?長い棒(?)でひょいとそのドレスをとると俺に渡す。
「サンキュー、リズ。それと俺はドレスの着せ方分からないからセイバーのお手伝いをしてもらってもいいか?」
「うん、わかった」
そのドレスを持ってセイバーの元に行く。
「士郎が選んだのは…それですか?」
「あぁ、多分だけど似合うと思う。リズが手伝ってくれるからちょっと着てもらえるか?」
「わかりました、少々お待ちを!」
そして着替えるために消えていく。さて…こうなると暇だな。俺は上下に来ている服を脱げばタキシードになるわけだが…。
「うーん、似合わないと思うなこれ…」
釣り合ってないというか、なんというか…。アイツなら似合うんだろうな、そういうところは羨ましい。俺が着ると子供っぽさが余計目立つ、気がする。
「…まぁ滅多に着ないしな」
とりあえず良しとする。笑われても話のネタにはなるだろう。
「お待たせしました、士郎」
「シロウ、ちゃんと着れた。問題ない」
振り向くとそこには、凛々しいセイバーがいた。俺の予想通り、クールな感じになった。うーんすごい、似合いすぎて。
「うん、似合ってるぞセイバー」
「さすがですね士郎。私のことをよくわかっています」
「そりゃーどうも。俺的にはもっと可愛くてもいいかなって思ったけどこのドレスだとセイバーらしさが出るかなと思ってさ」
セイバーはうんうんと頷いてる。まぁ気に入ってくれて何よりだ。
「シロウもタキシードに着替えないと部屋に入れない」
「うっ…」
リズ、しっかり見てるなぁ…。
「似てないから…笑うなよ?」
部屋に移動して、ササっと上下を脱いで鏡の前で髪を整えたりして身だしなみを整える。
「シロウ、似合ってないことはないと思う」
「そうかなぁ…」
「大丈夫、似合ってるから安心していい」
人に言われると似合ってる、のかな…。どう考えたって何も変わらないもんな、とりあえずセイバーの所に行くか。
「お待たせセイバー」
「士郎、似合ってますよその服」
「そ、そうか?」
「えぇ、私と同じであまり見れない姿なので…目に焼き付けとかないといけませんね」
フフッと小さく笑うセイバー。たまにセイバーも遠坂やイリヤのように小悪魔みたいになるよな…まぁ遠坂の売位は小悪魔というか悪魔そのものだが。
「それじゃ、そろそろ行くかセイバー」
「えぇ、行きましょう士郎」
3人して衣裳部屋から出ていく。で、いざ会場に行くと5人が待っていた。
「お、来た来た」
遠坂がワクワクしているのが声のトーンで分かる。
「おぉ~」
「わぁ~」
遠坂と桜はセイバーを見て驚きの声を上げる。
「ねぇ、セイバーのドレスはほんとに士郎が選んだの?」
「えぇ、士郎が選んでくれました」
「先輩はセンスがありますね!」
3人でワイワイと盛り上がっている。そりゃそうだ、正直俺もびっくりしてる。ここまでとはなぁ…。
「ふーん、士郎もセンスあるじゃない」
いつの間にか隣にイリヤがいた。
「いや、俺にはセンスはないよ。イリヤがたくさんドレスを用意してくれたおかげだ、ありがとう」
「そ、そう?じゃあ今度は私の洋服も選んでもらおうかしら」
「士郎!じゃあ私のも選んでよ」
遠坂が歩きながら俺に言う。えぇ…遠坂にはアーチャーがいるからアーチャーに選んでもらえばいいんじゃ…。
「もう凛のドロボー猫!またそうやって!」
「何よーいいじゃない。別に減るもんじゃないんだから」
「じゃ、じゃあ私も…」
今度は桜?!続いてライダーも…おおぅ、勘弁してくれぇい…。
「あーあー、いいか?」
流石に声をかける。喧嘩をしに来たんじゃないからな。
「飯が冷めちまうから、温かいうちに食べよう」
「それもそうね…あっ」
イリヤが何かを思い出したように、ポンと手をたたく。
「どうしたんだイリヤ?」
「そろそろ
アレ…?何が、と聞こうとするとバン!扉が開く。
「ば、バーサーカー?!」
遠坂が驚きの声を上げる。って何か担いでないか?
「おかえりー、バーサーカー!わぁーおっきい!」
あれは木か。…あぁ、なるほど。
「わかったぞイリヤ、それの正体」
「ははーん、なるほどね」
俺と遠坂はあれの正体がわかったが他の人は分かっていないようだ。
「もうある程度飾りつけは済ましちゃってるから、あとは電源を入れるだけね」
コンセントに差して電源を入れる。
「なるほど...」
「あの大きな木は…」
「クリスマスツリーだった、ということですか」
桜とライダー、セイバーも電装で分かったようだ。
「やっぱりこれがあるとクリスマスって感じだな」
「それじゃ、食事にしましょう!」
待ってましたと言わんばかりにセイバーはささっと席に座る。はは、見た目は凛々しいけどやっぱりセイバーはセイバーだな。
「それじゃ、いただきます!」
『いただきます!』
今年のクリスマスはお城でエレガントなクリスマスだった。来年もやるかどうか、それは分からないけどこういう慣れない格好してクリスマスもなかなかいい体験になった。クリスマスも平穏な1日であった。