「桜、頼まれた荷物、ここに置いておきます」
「ありがとうライダー。お昼までお茶の間でゆっくりしてていいからね」
私、ライダーことメデューサはセイバーのマスターである衛宮士郎の家に上がって作業をしている。といっても住んでいるわけではなく、どっちかというとお泊まりが近いでしょうか。私のマスターである桜は数年前に士郎とは知り合いの関係にあった。元々、怪我をしていた士郎の家事の手伝いをしていて、それが今でも続いていると桜は説明していましたがーー
「先輩、今日のお昼は何にしましょう?」
「うーん、そうだな…冷蔵庫の中には…っと」
第三者の私から見ると同棲しているカップルにしか見えません。桜や士郎にいうと顔を赤らめてそんなことはないと言うのですが…。
「…」
仲睦まじくお昼のことを考えている2人を見ながら私は少し考え事をしていた。桜や士郎には日頃色々お世話になっている。家事や掃除の仕方はもちろん、日々の過ごし方など…。
「急用を思い出しました。士郎、桜私は昼食は外出先で済ませますのでお昼は不要です。」
「あらそう…気をつけてね、ライダー」
「りょーかい。夕飯までには帰ってきてくれ」
「了解しました。それでは行ってきます」
思い立ったら即行動です。ふむ、しかし困りましたね…お礼の品、何を渡すかなんて何も考えていません。誰かに相談して見ましょうか…。と言ってもセイバーに相談するのは論外でしょう。そもそも彼女とは馬が合いませんし、喧嘩が始まって怒られては本末転倒です。
「とりあえず新都に行ってみましょうか」
私はうーんうーん、と考えながら新都へ向かうバスの出るバス停へと向かったのでした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
新都の大きなデパートにやってきました。ここで何かあれば良いのですが。まずは士郎のものから探しましょう。
「そうですね士郎といえば---」
思考を巡らす。そういえば殿方がどんなものを欲しいのか、なんて考えたことありませんでした、失策です。どうしたものでしょうか…。
「おや、誰かと思えば…こんなところで何をしている、ライダー」
「…アーチャー、私はサーヴァントとは言え女性。一人でデパートに来て買い物するのはおかしいですか?」
アーチャー、彼は衛宮士郎の理想。聖杯戦争ではアーチャーと士郎は死闘を繰り広げたと聞きました。アーチャーと士郎は和解した、とは聞いたのですがどうなんでしょうか。っと、折角なので私の買い物に付き合わせるとしましょうか。
「アーチャー、あなたがプレゼントされて嬉しいと思うようなものはありますか」
しかも都合がいいことにアーチャーと士郎は同一人物、思考も似ているはずなので間違いなさそうです。
「ん?私が貰って嬉しいものか…そうだな、最新の調理器具を貰えると嬉しい、圧力鍋というやつだ」
なるほど、調理器具ですか。確かに料理をしている士郎はとても楽しそうだ。
「なるほど、ありがとうございます。では」
「…?なんだったんだ…」
圧力鍋があれば士郎は楽に料理ができますし、私たちはおいしいご飯を頂ける。一石二鳥というのはこういうことを言うのでしょうか。お金はアルバイトでの稼ぎがあるので問題はありません。
「士郎はこれで決まりですね。喜んでくれるでしょうか…」
アーチャーが言うならたぶん大丈夫…なはずです。さて、と一息置いて次に選ぶのはーー
「桜には何をプレゼントしましょうか――」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
桜とは聖杯戦争を共にし、良き関係だがこれといってほしいなぁと呟いているのを聞いたことがない。
「おや…」
目に留まったのは女性の髪留めがたくさん置いてあるお店だ。確か凛が言ってましたね、女性の髪は命だとかなんとか…
「桜には綺麗で美しい女性でいてほしいですね…」
つい本音が口から洩れる。…さて、どれから見ていきましょうか。髪留めといっても様々なものがある。桜の髪の色は…おや、あれは…。
「凛、何をしているのですか?}
「あら、ライダーどうしたの?」
凛はこういういうのは得意分野だと、私の直感がささやいています。
「桜の髪留めを買ってあげようかと思いまして…」
はは~んと納得したような笑顔で私を見る。なるほど、これが士郎のいう小悪魔すまいる、というものでしょうか。
「桜は薄い紫色の髪の毛だからね~。そうね~…」
と一緒に悩んでかれこれ1時間、二人で導き出した答えは…
「これね」
「私もこれがいいと思います」
ピンク色のヘアゴムに桜を模した飾りのついた髪留め、というよりはヘアゴムというべきでしょうか。
「わざわざ時間を割いてくれてありがとうございます、凛」
凛がいなければまだどれにするか悩んでいたでしょう。
「全然大丈夫よ、桜に喜んでもらえるといいわね」
「はい、凛、このお礼は必ずいたします」
「えぇ、楽しみにしておくわ」
じゃ!といって凛は一人別の場所へ行ってしまいました。今度凛にもプレゼントするとしましょう。そして私は帰路についたのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ただいま戻りました」
荷物は先回りして部屋において、正面に戻る。面倒ですがそうしないとサプライズになりませんので。
「お帰り、ライダー。飯はもう少し待ってくれ」
お茶の間に入って桜がいないことを確認する。桜は…入浴中のようですね、好都合です
「ライダー、どうかしたのか?」
「士郎、少しここでお待ちを」
「?」
そしてプレゼントを持ってきて、渡す。
「士郎、私からの感謝の気持ちです。受け取ってください」
受け取った士郎は少し恥ずかしそうにしている。ふむ、士郎にはこういう一面もあるのですね。
「わざわざよかったのに…ありがとなライダー。もしかして今日の外出はこれを買うために?」
「はい、ちょうど良いタイミングかと思いまして。どうぞ開けてみてください」
プレゼントの包装をとると士郎は眼を輝かせる。アーチャー、ありがとうございます。
「これは…圧力鍋じゃないか!ほんとにいいのか?」
「はい、その鍋でこれからも私たちに美味しい料理を作るってください士郎。」
このかわいい士郎をセイバーに見せつけてやりたいですね…果たしてセイバーはどんな顔をするんでしょうか。
「士郎、圧力鍋をじっくり見るのは良いですが早くしないとセイバーに怒られますよ?」
「っと、そうだった。プレゼントありがとなライダー。大事に使わせてもらうよ」
「喜んでもらえて何よりです。では着替えるので一度部屋に戻ります」
士郎はあぁと軽く返事をすると料理を始めた。本当に料理が好きなのですね、士郎は。
「あとは桜…あら?」
部屋に戻る途中で消したはずの部屋の電気がついていることに気付く。
「少し遅かったですか」
「あ、お帰りライダー。お風呂先にいただきました」
桜がお風呂から上がってくる前に部屋に戻るつもりでしたが、桜の方が少し早かったようです。桜にわからないように渡すプレゼントを置いていましたが…よかった、気付いてないですね。
「桜これを…」
隠しておいたプレゼントをとり出し、そっと桜に手渡す。
「これは…?えっと、今日は初めてライダーに会った日、じゃないし、私の誕生日でもないし…」
「桜、それは私からの感謝の気持ちを込めたプレゼントです。
「ライダーが私に…?今日の用事ってこれのために?」
こくり、と頷く。桜は少し驚いた表情の後に
「ありがとうライダー、わざわざ私のために」
桜の満面の笑みが目の前にある。これだけが見れただけでも今日買いに行った買いがあったというものです。
「これは…桜の…」
「桜は綺麗ですから、花もあなたも」
「ラッ、ライダー!」
よっぽど恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしている。さすがにストレートすぎましたか。
「ふふっ、でも桜それは事実ですよ。桜はもっと自信を持っていいですよ」
もう、と呟いてじっとヘアゴムを見る。
「桜、付けないのですか?」
「じゃあ、ライダーがつけてくれる?」
私は笑顔で桜の髪をセットする。
「はい、できましたよ桜」
「うわぁ…」
満面の笑み、何度見ても桜の笑顔は素敵です。
「桜、士郎やセイバーには見せに行かないのですか?」
「行きます!いまから!」
勢いよく桜は部屋を出ていく。士郎と桜、どちらも初めて見る反応でなかなか新鮮でした。たまにはこういうサプライズはありかもしれませんね。
茶の間から笑い声が聞こえてきますね、私も混ぜさせてもらいましょう。
衛宮家は今日も平和です…。