「セイバーちゃん!!!こうなったら私とさしで勝負よ!!!」
納得がいかないと言わんばかりにセイバーに勝負を挑むのは藤ねえこと藤村大河。一応俺の姉貴の立ち位置にいる。
「この勝負に今日の夕食のおかず一品をかけるわ!」
…ああ見えても教員である。教員は生徒の模範となる行動を取るべきじゃなかったのか、藤ねえ…。しかもがっつり賭け事だし。
「ほう、負けた方は今日の夜空腹で喘ぐというわけですね」
セイバーは冷静に分析する。藤ねえはフッフッフッっと余裕の笑みを浮かべながらセイバーを挑発する。
「あら、セイバーちゃんにはこの勝負は厳しいかしらねぇ…?だって空腹で喘ぐなんてセイバーちゃんはなりたくないもんね〜?」
藤ねえはどうしてもセイバーと勝負がしたいらしい。効果は抜群でセイバーはやりましょう、と立ち上がる。しかし、藤ねえは一つ大きなミスを犯している。
「今日の夕食で喘ぐのはあなたです、大河。おかず一品がかかっているのであれば私も全力でこの勝負に挑みましょう」
ーーセイバーを煽りすぎたことだ。こうなったセイバーもう誰にも止めることはできない。…まぁ隙を見て俺が家主権限で救済してやればいいだろう。
「では始めましょう、大河」
「えぇ…負けないわよ〜!」
…なぜこうなってしまったのか、事の発端は少し前に遡るーー。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お昼を食べ終わった茶の間、おれはせっせと台所の掃除を行う。と言っても軽くだが。そんな中、桜がある提案をする。
「そうだ、たくさん人がいる事ですしみんなでトランプをしませんか?」
今日は衛宮家に住む(?)住民全員が茶の間にいるという珍しい状況である。
「そういえば、トランプもそうだけどみんなでボードゲームとかした事ないな」
台所を掃除しながらふと口にする。
「先輩もトランプ参加します?」
「ん参加したいのは山々なんだが…台所の掃除が終わるまで俺抜きでやっててくれ」
客観的に鑑賞するのも面白そうだ。こうしてトランプ大会が始まったのである。
「あ"ぁ"〜!!!な"ん"て"ぇ"ぇ"え"…」
今にも泣きそうな顔で叫ぶのは藤ねえ…みんなでかれこれもう20回目だろうか?連続最下位記録を更新中である。こんなに最下位になり続けるのはもはや才能と言える。
「も、もう一回よ…!次は勝てそうな気がする…!」
藤ねえの強い要望により21回目が始まる。セイバーが藤ねえのカードを抜く…のだが
「…」
セイバーが一番右のカードを引こうと手をかけようとすると
「…!」
なんという事でしょう、藤ねえは満面の笑みである。
「…」
そっとその隣のカードをセイバーを引こうとすると
「…!!」
悲しそうな顔…まて藤ねえ、流石にそれはわかりやすすぎる。なるほど、藤ねえ隠し事は苦手だもんな…。
「セイバーちゃんは…サイキッカー?!」
悲痛な藤ねえの叫び、無情にもジョーカーは藤ねえの持ち札から移ることなく…
「あ"ぁ"ぁ"ぁ"…」
もはやここまでである。藤ねえは皆に背中を向けて悶絶している。それを見かねた桜が違うルールでのプレイを提案する。
「じゃ、じゃあポーカーなんてどうでしょうか藤村先生」
「そ、そうね…ポーカーなら…」
なんだっけ、デジャヴ?フラグ?…どちらでもいいがなんとなく結末が俺には見えた。
「な"〜ん"〜で"〜さ"〜…」
藤ねえ、それは俺のセリフだ、と突っ込みたいのを抑える。藤ねえはノーペアに次ぐノーペア、やっとワンペアかと思いきや他の人はア以上…もうこれ才能でいいよな、そうしよう。連続最下位の人がいる中で絶対王者がいる、それはーー
「大河も大概ですがセイバーの引きの強さも異常かと」
と本音を漏らすライダー。そう、絶対王者はセイバーである。ポーカーでは今のところ普通にフルハウスだったり、4カードと、もはや無双状態である。
「私の直感はAクラスなので」
…ドヤ顔である、遠坂曰く本来のセイバーの幸運のパラメータも高いとか言ってたな。ん?これセイバー以外の人勝ち目がないのでは…?
と、こんなことがあって夕食のおかず一品をかけたポーカーが始まったのである…。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ディーラーはライダーがやってくれることに。結末が知りたくなり俺は一時作業を中断する。
「…言い忘れていましたが3勝先にした方が勝ちです。特に大河、恨みっこは無しでお願いします。」
念には念をと釘をさすライダー。うんうんと藤ねえが頷くのを見てライダーがカードを5枚配る。お互いにカードをめくって手札を見る…お?どちらも顔が渋いな。
「ライダーさん、2枚交換よ!」
先に動いたのは藤ねえ。交換した手札を見てーーお、どうやら今回は何かしらが揃ったようだ。一方のセイバーは
「ライダー、オールチェンジです。5枚ください」
ナニィ?!5枚交換?!正気かセイバー…。そして第1戦目の結果はー
「ふっふっふっ、これが私の本気よ!セイバーちゃん!!!」
藤ねえは…3カードか。セイバーは…
「申し訳ありません大河、私は4カードです」
…はい?手札全てを交換したら4カードだって?!冗談じゃない?!…あっ藤ねえの意識が遠くにいってるなあれ。
「さぁ、次へ行きましょう」
セイバーのスイッチが完全に入っている。もうやめてセイバー!藤ねえのライフはとっくにゼロだぞ!そしてあっさりとセイバーがストレートで3連勝を決めた。
「私の方です、大河。約束通り今日のおかずは私がいただきます」
「うわ〜ん!セイバーちゃんの鬼!悪魔ぁ!」
子どもか。さて、そろそろ俺も動くとしますか。
「はいそこまで。なんでいつのまにか賭けポーカーになってるんだ?家主権限で賭けた物の取引は無効とする」
ちらっと藤ねえを見る。予想通り満面の笑みで何事もなかったようにするが…そうはさせない。
「たーだーし」
藤ねえの動きがピタリと止まる。
「生徒の模範となるべき先生が生徒の目の前で賭け事とは…しかも言い出したのは先生である藤ねえだって話を聞いたんだけど?」
藤ねえは凍ったように微動だにしない。…これはお灸をすえるべきだろうな。
「よって、藤ねえだけおやつは抜き!藤ねえの分のおやつはみんなで分けて食べる」
家主特権をこれでもかと振るう。
「えっえっ、う、嘘よね士郎?」
「藤ねえ…俺は嘘言わないぞ」
藤ねえはその場で背を向けて横になる。これを機にやらないように!
「セイバー、次こうなりそうだったらセイバーも藤ねえを止めてやってくれ」
セイバーはすいません、と謝りながら
「どうしても勝負事になると熱くなってしまうので…あと今回は、不覚ながら大河の挑発に乗ってしまったのもあります」
「大丈夫セイバー、あれは誰でも怒る。藤ねえはこれを機に反省すること!いい?」
「ひゃい…もうしましぇん…」
やれやれ、反省しているようだし少しおやつをあげることにしよう。
「トランプで
藤ねえは藤ねえで負けるたびに舞う…というか悶えてたな、しばらくトランプ見たくないとか言いそうだ。
「直感スキルはAクラスなので」
ドヤァ…とドヤ顔。写真撮って平常時のセイバーに見せたいなこれ。
「はいはい、セイバーの強さはよく分かったけど…今度は俺も混ぜてくれよ。一通り作業終わったからな」
賭け事は無しの純粋なトランプが始まる。結果はーー言うまでもない。
今日も我が家は平穏だ。