衛宮家の日常。   作:ますたー☆あじあ

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『友達』以上『恋人』未満

「セイバー、ちょっといいか」

「士郎ですか、どうぞ」

扉を開けるとセイバーはファッション誌を読んでいた。

「士郎、それはなんですか?」

「あぁ、これか。新作のおやつだ、試作だからそんなに量はないし味の保証はできないけどな」

ほう、と興味ありげなセイバー。そんなセイバーを横目にファッション誌に目をやる。

「セイバー、ファッション誌読んでたのか?」

「えぇ、女の子たるものファッションには気を使うべきであるとテレビで言っておりましたので」

なるほど、そういえばセイバーは今来ている服と甲冑以外見たことがないな。

「そういえばセイバーは聖杯戦争に2回参加しているんだろ?1回目の時、服はどうしたんだ?」

セイバーは霊体化することができない。かといって甲冑で日中の街中を歩くのは不審者だしものすごく目立つ。

「1回目はスーツを着ていました。アイリ…いえ、1回目のマスターだった人曰く、とてもクールでカッコいいと言われました」

セイバーの1回目の聖杯戦争のマスター俺の爺さん、衛宮切嗣だった。霊体化できないセイバーに服を買ったりとかなり苦労してそうだ。それと、とセイバーが付け加える。

「スーツを着てバイクに乗ってました」

スーツにバイクか…。うん、クールなセイバーが簡単に脳裏に浮かぶ。これはこれで…ありだな…。

「…郎?士郎?」

「ん?あぁ悪い考え事していた」

そっと試作で作ったお菓子に手を伸ばしながらセイバーは話を続ける。

「しかし、この時代にはいろんな服があるのですね。…士郎はわたしにはどんな服が似合うと思いますか?」

「うーん、そうだなぁ…」

軽くファッション誌に目を通しながら似合いそうだ、と思った服をセイバーに着せた姿をイメージする。

「セイバーは…その可愛いし、綺麗だからな…どんな服でも似合いそうだけどな…」

「しっ、士郎!」

なんだよ、と言おうと顔を顔を上げると目の前に顔を真っ赤にしたセイバーの顔がある。あ、この光景どこかで…。

「そ、そこまで褒めるのならばわたしの服を買いに今度新都へ行きましょう!」

「セイバーの服を選びに?いいぞ、いつ行こうか」

喜んで快諾する。

「で、では、明日はどうでしょうか?」

「ん、了解。桜とライダーに話しておいておくから家のことは気にしなくていいぞ」

恥ずかしさを紛らわすかのようにセイバーはおやつを頬張る。

「これは美味です。もちもちしててひんやりしている…、この時期のまだ少し暑さが残る季節にはもってこいのおやつです」

なかなかの高評価だ。作るのには手間がかかったがその分美味しそうに食べてもらえるのは作った甲斐があるというものだ。

「そりゃよかった、これはわらび餅って言うんだ。市販でも売ってあるんだけど1から作ってみたんだ」

よほど美味しかったのか、すごいスピードでわらび餅が消えていく。うん、これはまた作ってあげよう。

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

一連のやりとりをしながらセイバーが呟く。

「さっきまでファッションのことを語っておいてすぐに食い気に早変わりとは…我ながら情けないです」

はぁとため息を吐きながら机に突っ伏する。

「セイバーが食い気をなくしたら死ぬほど心配する、割と本気で。それにーー」

セイバーは顔を上げこちらを見る。

「幸せそうに食事をするセイバーが見るだけで幸せになれるから」

と続けるとセイバーはプイッとそっぽを向いてしまった。な、なんか悪いかと言ったかな俺…。

「そういうのはずるいです、士郎…」

「ん?何か言ったか?」

「なっ、なんでもありません!では明日、楽しみにしておりますので!」

と言って準備があるとかなんとかで部屋から追い出されてしまった…。

「とりあえずライダーに言っておくか」

桜は部活動で不在、ライダーを通じて伝えてもらおう。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「了解しました、桜に伝えておきます」

「ありがとうライダー、助かるよ」

ライダーは書物をそっと閉じて続けざまに言う。

「士郎、明日のセイバーとのデートは凛や桜には言わない方がいいでしょう」

「え、というかデートじゃなくてセイバーの服を見にいくだけであってそれは…」

はぁと大きなため息をつきながらライダーは頭をかかえる。

「士郎は鈍いと思っていましたが、これほどとは…。士郎、貴方は明日セイバーと2人で服を買いに新都へいくのでしょう?それは立派なデートですよ」

「確かに…そ、そうだよな」

ライダーに言われて意識する。デートか、セイバーと…デート。

「ーーっ」

改めて意識する。明日は…しっかりエスコートしないとな。それからどこにいくかも決めないと…。

「…士郎」

「ひゃい?!」

思わず変な声が出る。

「…ファイトです」

「あ、あぁ…頑張るよ…」

ライダーも応援してくれてるんだし、頑張らないとな…。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

翌日、朝食を済ませてデートの準備をする。デートだと思う谷に鼓動が早くなる気がした。

「お待たせしました、士郎」

「俺も今準備を終えたところだ、行こうかセイバー」

2人でゆっくり新都へ向かう。まずはどこに行こうかーー。

「こうして士郎と2人きりで過ごすのは…初めてな気がします」

胸が高鳴る。確かに思い返してみれば休日にゆっくり2人で出かけたことなんてなかったな…。

「そうだな…昨日は楽しみで寝れなかった」

「わ、私もです…」

セイバーが寝れなかったというのは珍しいな。よし!

「セイバー、今日は楽しい1日にしような!」

「よろしくお願いします、士郎」

そして今日のために考えたプランをセイバーに説明しながら信徒へ向かう。まず最初に向かったのはもちろん…

「はじめはここ、だな…」

新都でも洋服を取り扱うお店が密集しているエリアのある店舗の前に着く。セイバーに合いそうな服が多くありそうなところはここだ、と思いやってきた。

「士郎はここのお店で私の服を見繕ってくれるのですね」

「あぁ、昨日約束したしな。まぁ…あんまり期待しないでくれよ、あんまり自信はないからな」

早速中に入り選んでみる。セイバーもいろいろ見ている。うーん、これはちょっと地味すぎるな…。これは…セイバーには派手すぎるし…。と悩むこと1時間くらいか、あるものが目につく。

「お…これは…」

ミッドナイトパープルというのか、かなり暗めの紫色のワンピースで白色の部分が少しある。そっと手に取りセイバーの元へ。

「セイバー、これ着てみてくれないか?」

「分かりました。少しお待ちを」

セイバーは試着室へ向かう。試着室の外で待つ事にしたがどうせなら靴も選びたいところだな、サンダルとか似合いそうだ…ん?

「アレが良さそうだな…」

ワンピースのすぐそばにあったサンダルを手に取る。試着が終わったら一緒に履いてみてもらうか。

「し、士郎!そこに居ますか?!」

「おう、いるぞ」

試着室のドアが開く…。ゴクリと息を飲む。

「…ど、どうでしょうか…」

暗めの服のせいか、俺が慣れてないせいかセイバーの肌の色が目立つような気がした。白くて綺麗な肌、いつもよりスカートの丈が短いのでスラッとした足がよく見える。

「士郎…その…あんまりじっくりみられると…恥ずかしい…」

「わっ、悪い…」

慌てて目をそらす。そ、そうだ感想を言わないとな…。

「似合ってるぞ…見とれてしまうくらい…な…」

直球だが俺の本心である。色気もそうだが似合っている、まだ少し暑さの残る今の季節にはちょうど良さそうだ。

「士郎が似合っているというのなら似合っているんだとは思うのですが…」

セイバーはスカートをぎゅっと握りしめる。

「こ、これは短すぎではないのですか?」

セイバーは恥ずかしいのか目で訴えてくる。確かにいつもの私服よりスカートは短い。

「でもセイバー、遠坂のスカートもそれくらいだぞ?」

というか穂群原学園の制服のスカートもそれくらいだったような…。

「慣れるまでに時間がかかりそうです…」

「セイバーが嫌なら変えてもいいんだぞ…?」

「いえ。せっかく士郎に選んでんらった服ですそれに…」

セイバーが顔をそむける。

「士郎の好みの格好であればなおさら…」

「ん?何か言ったか?」

「いえ!何も!」

セイバーはそういうとしばらく着ている服をまじまじと見てフフッと笑う。セイバーも気に入ってくれて何よりである。

「そうだセイバー、これ履いてみてくれるか?」

先ほど似合うかもと思って手に取ったサンダルを渡す。

「わかりました」

履いて立ち上がるセイバー。うん、よく似合っている。

「士郎はセンスがないと言っていましたが十分あると思いますよ」

「そりゃどうも。相当悩んだからな…遠坂とかだったら怒られそうだ」

「今日一日はこの姿で過ごします!」

そういうとセイバーは試着室を出ていく。

「ちょ、ちょいまちセイバー!まだお金払ってないから!」

バイトで貯めたお金でセイバーの洋服を買う。それほど高くはなかったので俺のお財布のダメージは少ない。そして何より—―。

「~♪」

このセイバーを見るだけ買ってよかったと思う。セイバーは上機嫌だ。この後は…っと。

「セイバー、近くに新しいカフェができたんだがそこに行かないか?」

「そうですね、そろそろお腹も空いてきたのでちょうどいいころ合いかと」

カフェに入り食事を済ます。お互いがっつり食べずにそれなりに食べるだけにした。この後もまだ行くところもあるし、お腹いっぱいまで食べると移動がきついからだ。

「士郎、パフェがおいしかったです」

「本当か?俺は食べてないからまた今度来るか」

「えぇ、その時はまたお供します」

笑顔で言葉を返すセイバー。食事をして落ち着いたがこのまま帰るのももったいない気がした。

「なぁセイバー、もう少し付き合ってくれるか?」

「はい、私は問題ないのでお付き合いします」

「よし、じゃあ次は――」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「ふぅ…さすがに疲れたな…」

「そうですね…羽目を外しすぎました…」

あの後、デパートで買い物、バッティングセンターやゲームセンターで遊んだりと大はしゃぎした。セイバーは負けず嫌いだからなおのことだ。

「でも今日は楽しかったな」

「えぇ、私も楽しかったです士郎」

バスを降りる。あとは家まで歩いて帰るだけだが…。

「どうしたのです、士郎?」

立ち止まる、えぇい衛宮士郎!ここで勇気を出していなかったら後悔するぞ!

「あ、あのさセイバー…」

なんですか?と首をかしげるセイバー。口に出る寸前で言葉が詰まる。落ち着け落ち着くんだ…大きく深呼吸する。

「手を…つないで帰らない…か…?」

勇気を出し提案する。セイバーは…固まっている。

「せっかく2人きりだったのにさっきまでははしゃいでて…その…()()みたいなこと…できてなかったし…」

何を言っているんだろう俺は。もうどうにでもなれ!とほぼやけくそだったのかもしれない。

「あぁもう!その、俺はセイバーと手を繋いで家まで帰りたいんだ!…ダメ…か…?」

セイバー顔を真っ赤にしてしまって下を向いてしまった。

「私も手を繋ぎたいです士郎…」

小声だったがはっきりと聞き取れた。言い出したのは俺だしここはしっかりエスコートしないとな。

「セイバー、手を」

セイバーに手を差し出す。少しびっくりしたのか一瞬驚いた表情をするがすぐに笑顔になる。

「はい、よろしくお願いします士郎」

この手をつなぐ時のセイバーの笑顔はとびきり愛おしかった。今まで見た笑顔の中でもとびきりに素敵でまるでーー。

「…世界に一つだけの花、かな」

「どうしたのです?士郎」

セイバーはギュッと手を握りしめてくる。と同時に今まで自分が言った言葉を全部思い出し恥ずかしくなる。

「な、なんでもないぞセイバー。帰ろうか」

目を少し反らしながらゆっくりと歩き出す。顔が燃え上がるように熱い。セイバーもそれを見てか、俺と同じように顔を赤らめる。

「はい、士郎。帰りましょう」

お互いゆっくり歩く。何も言葉は交わさない…俺とセイバーの心にあるのはずっとこの時間が続けばいいのに、ということだった。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

1秒でも長く、そんな思いが私たちが家に向かう足の速度を下げていく。家の前に辿り着いてもお互いに手を離そうとしない、というよりいつ離してもいいか分からないし、いつできるかも分からない。そんな気持ちが手を離したくないという私の気持ちに拍車をかける。

「セイバー」

士郎が私を呼ぶ。私は顔を上げる。この時、士郎にはどんな風に私の顔が見えたのだろうか。不安そうな顔、泣きそうな顔…とにかく私があまり良くない顔をしていたのは確実だ。

「また…一緒に()()()してくれるか?」

士郎は私に顔を向け、笑顔で問う。デート…そうだ、私は服を選んでもらうという口実で士郎をデートに誘った。士郎には直接デートをしましょうと誘ったわけではない。無自覚なのかもしれないけれど…それでもデートだと自覚してくれて私は嬉しかった。

「はい…!また一緒にデートしましょう」

そう答えるのが精一杯だった。それ以上の言葉が出てこなかった。そして私の方から手を離す。

「士郎、大河や桜が待っています。早く入りましょう」

「あぁそうだな」

今日のデートはこれでおしまい。でもまたいける、次があるから私は安心して手を離したのだ。

「士郎お願いがあるのですが…」

「ん?なんだ?」

「大河や桜にはサプライズでこの姿を見せたいので一度と部屋に戻りますね」

「あぁ、そういうことか、了解だセイバー。こっちは2人の気を引いておくよ」

私は部屋まで走り抜ける。部屋に入り扉を閉めて私は少しだけ涙を流した。悲しいわけではなく、嬉しくて嬉しくて、幸せを噛み締めながら涙を流した。

「こんなに泣いてると士郎に心配をかけてしまいますね」

涙を拭く。あぁ私は幸せ者だ…。

「セイバー、すまん。桜と大河が見たがっているんだが…大丈夫か?」

部屋に籠り過ぎたようですね。鏡で目が腫れていないか確認する。

「申し訳ありません、士郎。少し手間取ってしまいました、今行きます」

そう言って私は部屋を出る。大河や桜はどんな反応をするのか楽しみだ。

今日の士郎の家は平和で…幸せな日でした。




最後までお読みいただきありがとうございます!
UAは3000を突破して、お気に入りしてくださってる人もいて、ものすごく嬉しいです、ありがとうございます。
これからもたくさんの人に楽しめるような作品を書いていきたいと思っております。これからもよろしくお願いします!
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