盲目で灰色な日々~暗闇に響く歌声は~   作:清夜

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どうも、清夜です。

プロローグでわかっていただけると思いますが、この小説は基本シリアス進行になると思います。

重い!!という方もいると思いますが、主人公がどう変化していくのか、注目していただけると幸いです。

では、この物語の主人公、水瀬 慧(みなせ けい)の物語の始まりです。


1話 悪魔が残した傷痕

ふと夢から覚める感覚を感じると共に激しい吐き気に襲われる。

 

『グッ!?ウグッ!!』

 

(けい)!!」

 

吐くのを我慢すると直ぐに隣から名前を呼ばれると同時に何かを押し付けられる。

 

「うっ!」

 

慧は躊躇わず渡されたものに胃の中のものを吐き出す。

 

その間隣に居た人物は優しく背中を撫で続けてくれていた。

 

『っ!う...』

 

「大丈夫?」

 

ひとしきり慧が吐き終えると隣の人物は心配そうに声をかけてくれる。

 

『...うん、いつもごめんね、紗夜。』

 

「気にしないで、仕方ないわ。今日もアレを見たのでしょう?」

 

紗夜の言うアレ...小学5年生の夏休みに起きた忌々しい出来事。

 

あの日に慧は光と家族を失った。

 

三人の悪魔によって...

 

真夏の真夜中に家に押し入った強盗は人をなぶり、殺して快楽を感じる異常者だった。

 

その標的にされてしまったのが慧の家族、水瀬家だった。

 

両親は共に子供の目の前で見せしめの様に惨たらしく殺され、妹は辱しめを受け殺された。

 

唯一生き残ったのが慧ただ一人。

 

かなりの重症で生死の境をさ迷い、それでも一人生き残った。

 

しかし、生き残った彼に希望はなかった。

 

愛する家族は殺されこの世を去り、両目を潰され光を失い、死に物狂いで足掻いた故に体に残る罪の感触。

 

近所からの通報で警察官が駆けつけその場でみたのは地獄絵図だった。

 

犯人の男三人の内、二人は逃走するも警察の捜査により逮捕。

 

調べていく内にかなりの罪状が上げられ、死刑判決を受けることとなった。

 

残りの一人は...

 

水瀬家の地獄絵図の一つとなっていた。

 

鑑識によると、犯人の男と、被害者である水瀬慧の指紋が付着したナイフで滅多刺しにされているのがわかった。

 

さらに、先に犯人の男の指紋の上から慧の指紋が付着したことから慧の正当防衛が認められた。

 

しかし、いくら法に認められた出来事であっても幼い少年の心を大きく歪める出来事だった。

 

自分は家族を殺したあいつらと同じ殺人鬼...そう思い込んでしまうのも仕方ないことであった。

 

しかし彼の歪みは別にあった。

 

「未だにあの悪夢に囚われているのね。」

 

紗夜は悲しげに眼を伏せる。

 

 

 

『本当...何で僕は生きてるんだろう...?』

 

「っ!!」

 

紗夜の顔が泣きそうに歪む。

 

しかし、慧は気づかずにまるで何かに取りつかれたように呟き出す。

 

『確かにあの死にそうな時に生きたいと願った。父さんや母さん、結希はもう死んでしまったのに。生きたいと願った。でもそれは...あいつらを...あの悪魔二人を殺したいと思ったからなのに!』

 

慧は許せなかった。

 

自分の平和を壊した奴らを。

 

家族を殺したあいつらが生きているのを許せなくて、この手で仇を取りたくて生きたいと願ったのに。

 

彼が事件後の深い眠りから覚めたときには犯人二人は法で裁かれていた。

 

死刑判決を受けて実行された後だったのだ。

 

『なんで!!』

 

怒り、哀しみ、後悔、全ての感情が押し寄せてくる。

 

この手で仇を取れなかった。

 

怒りを向ける矛先が無くなってしまった。

 

生きる意味を無くしてしまった。

 

『なんで俺は生きてるんだ!!』

 

「もうやめて!慧!!」

 

激しい感情に支配されたときふと、優しい温もりに包まれる。

 

「そんな悲しいこと言わないで!もし貴方まで居なくなっていたら...わたしは!!」

 

紗夜に抱き締められてようやく理性を取り戻す。

 

彼女は泣いていた。

 

慧は寝起きに精神が不安定になることがよくある。

 

理由は先程のように過去のトラウマを「夢」で見てしまうためだった。

 

その際、起きて直ぐに嘔吐し、錯乱を起こすのが定期化していた。

 

本来なら今面倒を見てもらっている同居人が落ち着かせてくれるのだが、仕事が忙しく家に居るのが不定期だったりするため、慧の寝起きを幼なじみである紗夜やその妹に任させることもある。

 

『ごめん、紗夜。ありがとう。もう大丈夫だから。』

 

紗夜の温もりを感じ、落ち着いた慧は未だにすすり泣く彼女に謝罪とお礼を口にしながらもう大丈夫だと表すように紗夜の背中をポンポンと軽く叩く。

 

「...私こそごめんなさい。私まで感情的になってしまいました。」

 

紗夜はゆっくりと体を離す。

 

紗夜の体温を名残惜しく思いながらも紗夜が泣き止んでくれたことに安心する。

 

「では、私は朝食を暖め直してきますね。着替えたら降りてきてください。」

 

『うん、ありがとう。千秋さんは今日も早かったの?』

 

「ええ、朝の4時には出勤するとのことでした。お昼に半休を取って夕方から夜遅くまで出勤とのことでしたし下校は日菜が付き添ってくれるはずです。」

 

千秋とは今慧が一緒に暮らしている女性で、慧を事件後に引き取ってくれた人物でもある。

 

そして、事件の時に駆けつけて慧を直ぐに病院へ連れていってくれた警察官でもある。

 

『そっか...毎回ごめんね。日菜にも伝えといて。』

 

眼が見えない慧を千秋が送り迎え出来ないときに手伝ってくれる紗夜と日菜の姉妹に申し訳なさを感じて自然に謝罪をする。

 

しかし紗夜は

 

「慧、毎回言っていますが私たちは好きで貴方を支えているのです。感謝してくれるのは構いませんがそこまで謝られると少し悲しいです。」

 

紗夜は少し怒ったように、そしてどこか寂しげに言う。

 

「あなたは...もっと私達を頼ってください。」

 

『......うん、ありがとう。紗夜』

 

「はい!」

 

慧には見えてないが恐らく紗夜は微笑んでいるのだろう。

 

そして彼女が出ていった後、紗夜の気持ちに罪悪感を感じながら呟く。

 

『僕は...何を目的に生きていけばいいんだろう.....』

 

 

 

彼の明日は誰かに手を引いてもらいながら歩むだけで、先は暗闇のままだった。

 

 

 

 

 

 

 




鬱すぎたかな。

本当はもっと軽めにするつもりだったのですが...

一応最後はハッピーエンドにするつもりなのでご安心を。

こんな駄文で良ければまた読んでくれると嬉しいです!

後、是非感想、ご意見をお聞かせ下さると嬉しいです!!

クロムスさん!感想を直ぐ頂けてありがとうございました!!

ご希望に添えたかわかりませんが、少しでも添えていると嬉しいです。

あと、一応言っておきますが、メインヒロインは友希那の予定です。

では!次回にお会いしましょう。
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