盲目で灰色な日々~暗闇に響く歌声は~   作:清夜

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どうも!清夜です!

忙しかったGWも終わってやっと一息つけました!!

では!22話 歌鳥の夜明けはまだ遠く

どうぞ!!


22話 歌鳥の夜明けはまだ遠く

「ん?君たちは…?」

 

凛々しい雰囲気を発しながらも綺麗な顔立ちをした女性が友希那とリサを見て不思議そうにする。

 

「慧をどうするつもりですか!!」

 

慧を担いだ男性とその後に出てきた女性にリサは声を荒げて聞いた。

 

「…葛城先輩、僕たちもしかして勘違いされてます?」

 

「そうだな、完璧に誤解されているだろう。」

 

男の方は困ったように、女の方はやれやれといったように首を振っている。

 

「水瀬くんを離してください。警察呼びますよ?」

 

友希那は携帯を取り出しながら言う。

 

友希那の警告に男性は吹き出して笑っていた。

 

「なんか皮肉ですね。まさか警察に通報されそうになるなんて。」

 

「まぁ、なかなか良い皮肉だ。泣きたくなってくる。」

 

二人の反応は軽いもので、全くもって緊張感のないものだった。

 

友希那はそんな二人に苦い顔をする。

 

「慧を…慧を連れていかないで!!」

 

友希那の後ろにいたリサは必死な声で叫んだ。

 

「リサ!落ち着いて…」

 

「でもこのままじゃ!!」

 

友希那が宥めてもリサは焦る一方だった。

 

そんな二人に慧を担いだ男性は微笑を逆に申し訳なさそうな顔に変えていた。

 

「あの、先輩…」

 

「わかっている。」

 

男性の弱った声に女性は軽くため息をつきながら懐を探る。

 

それを見た友希那とリサは固まる。

 

二人には刃物やもしかしたら拳銃を突き付けられるかもしれないという不安に駆られる。

 

しかし女性が取り出したのは意外なもので…

 

「葛城 千秋巡査長です。」

 

女性、千秋が警察手帳を見せながら名前を言う。

 

「同じく山田 光 巡査であります。」

 

慧を担いだ男性は千秋に習うようにして名乗る。

 

「巡査って…」

 

「警察の人だったのね…」

 

リサは呆然とし、友希那は腑に落ちたように呟く。

 

「まぁ、そういうことだ。騒がせてすまなかった。」

 

「え?でもどうして慧を警察の人が?」

 

「それは...」

 

千秋は困ったように目線を逸らす。

 

「あはは...」

 

光も空笑いするだけだった。

 

「まぁ色々あるんだ。あまり詮索しないでくれ。」

 

千秋は話を終わらせようとして光に目配せをして行こうとする。

 

「あ…友希那」

 

リサが慌てたように友希那を見る。

 

友希那はリサの視線にため息を付くと、

 

「そうですか、なら明日…本人から直接聞きますね。」

 

友希那は千秋に向けて言った。

 

それを聞いた千秋は立ち止まる。

 

そして千秋は振り返らず言葉を続ける。

 

「出来ればそれは遠慮してほしい。これはデリケートな問題だから。」

 

「私もそうしたいですけど...流石にそうも行きません。彼は学校にとっては特別です。本来はあの学校に通うことは無かった筈の人。その人が警察の人に連れていかれることがあったとなれば…」

 

「ちょっと、友希那。」

 

リサは友希那の言っている事が不穏な方向へ行っていることが分かったのか止めようとする。

 

しかし友希那は厳しい目を一度リサに向けて視線を戻した。

 

「…成る程、君は聡いな。おおよそ検討はついているんだろう。」

 

「…完全ではありませんが。」

 

千秋は振り向いて友希那を見る。

 

「今日はもう遅い。また次の機会に…」

 

「もし今日話してくれないのなら明日聞くことになりますね。」

 

「…」

 

千秋の言葉を遮り友希那が睨む。

 

「はぁ、まったく。なんでこうもままならないかな。」

 

千秋はため息を吐いて歩き出す。

 

「着いてこい。慧の家で話すとしよう。」

 

そうして友希那とリサは千秋の運転する車に乗り、ある一軒の家につく。

 

光は慧を背負って千秋が先導して家に入る。

 

「慧!!」

 

ドアが開くと同時に奥から一人の少女が走ってくる。

 

「紗夜?」

 

友希那とリサは走って来た少女が紗夜と知り驚く。

 

そんな二人に気付かず、紗夜は光の背負っている慧の頬に触れて温もりを確かめる。

 

問題ないことを確認した紗夜は千秋へ鋭い視線を向ける。

 

「慧に何があったのですか!答えてください!」

 

「紗夜、落ち着いて…全部話すから。慧が起きてしまう。」

 

紗夜の肩に手をおいて宥める千秋。

 

そして後ろで事態を見守っていた友希那とリサに声をかける。

 

「君達も入っておいで。一緒に聞いてもらうとしよう。」

 

「っ!?湊さん、今井さん…?」

 

紗夜は千秋の視線を追って二人を見ると驚きと困惑で呆然とする。

 

「アハハ…さっきぶりだね、紗夜。」

 

「…」

 

困惑を隠しきれてないリサは無理やり笑うもののその顔は苦笑いになっていた。

 

友希那はなにも言わず黙っていた。

 

「これはどういうことですか?」

 

再び千秋に鋭い視線を向ける紗夜に千秋はため息を吐く。

 

「それを今から彼女達を交えて話す。どうやら知り合いみたいだし、彼女達も慧のことをある程度知ってしまったみたいだしね。取り敢えず山田くん、慧をいつもの場所へ。」

 

「了解です。」

 

そう言って光は慧の部屋へ入っていく。

 

千秋はリビングに入っていき、友希那、リサ、紗夜を招き入れる。

 

千秋の横に紗夜が座り、机を挟んで千秋の前に友希那、紗夜の前にリサという形で座る。

 

「先輩。」

 

「今日もすまなかったな、山田くん。」

 

「いえ、僕はもう帰りますね。」

 

「ああ、今度昼ご飯でも奢ろう。」

 

光はありがとうございますとお礼を言いながら帰っていった。

 

「さて、君達は慧の事をどれだけ知っている?」

 

千秋は友希那とリサを見ながら問いかけた。

 

先に口を開いたのはリサだった。

 

「どれだけって言っても…何かの理由で目が見えなくて、紗夜や日菜に助けてもらわないと学校に通えないから羽丘に特別に通わせて貰ってる男子生徒としか。」

 

「そうね、私もそれくらいだわ。」

 

友希那も同意するのを聞いて千秋はそうかと頷く。

 

「では、慧はなぜそうなったと思う?」

 

千秋の問いにリサは首をかしげる。

 

しかし友希那だけは目の力が増したのが千秋には分かり、友希那に先を促した。

 

「…私はリサからある事件を聞きました。ある一家の惨殺事件を。」

 

友希那の惨殺事件と聞いたとき紗夜の肩がビクッと跳ねるのが友希那にはわかった。

 

リサは自分の名前が出てきたことに驚き、一拍置いて顔色が悪くなり初める。

 

「…まさか。」

 

震える声でリサが呟くと。

 

千秋は今日何度目かのため息を吐く。

 

「…ああ、そうだ。慧はその事件の被害者だ。」

 

千秋のいつもより低い声はこの場にいる皆の心に冷たく響いた。

 

 

 

 

 

 

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