覚えてくれている人はいるでしょうか…
遅くなってすいません!
言い訳はしません。
ただ一言…完結させることは諦めてません!!
27話と28話纏めて投稿します。
では、27話 終わらない過去は虚無
『僕が…スタジオで?』
「ええ、スタジオなら音も漏れないし好きなだけ歌えるわ。スタジオの中に貴方だけであれば誰かに聞かれる事もない。悪くはないと思えるのだけど?」
慧は友希那の急な提案に戸惑っていた。
「ちょっと待ってよ友希那。スタジオだって無料じゃないんだよ?それに行き来だってあるんだから。」
リサも戸惑いながら友希那に言う。
「それなら行き来は私がするわ。それに料金なら私が個人練習のときに一室を借りて共有すればいい。」
リサは余計に戸惑った。
音楽にかける情熱は人一倍強い友希那は音楽にかける時間を一秒でも無駄にしない。
そんな友希那が個人練習の時間を慧の為に割くと言ったのだ。
『…それは流石に駄目ですよ。そこまでしてもらう義理はないし僕の歌にそこまでの価値は無いから。』
無料で使えるスタジオならここまで渋る事もないだろう。
しかしスタジオは有料だ。
それも友希那なら月に行く回数は多いことだろう。
高校生が自由に使えるお金も多くないのにその貴重な時間を使うことに慧はやはり出来なかった。
「…価値が在るか無いかを決めるのは貴方じゃないわ。それを聞いている人よ。」
それでも友希那は引かず、慧の歌はその貴重な時間を使う価値が在ると主張した。
「けれどその歌すら君は聞かないのだろう?」
話を聞いていた薫も口を挟んでいた。
「そうね…もし貴方が無償で使うことに抵抗を覚えるならその歌を私だけに聞かせてくれれば良いわ。それならお互いに損はないでしょう?」
『…どうしてそこまで?』
慧には友希那がそこまでする理由がわからなかった。
慧の歌は贔屓なしにみても確かに上手いだろう。
しかしそれだけだ。
友希那の様に歌だけを追及してきた人間のような声量やオーラも無い。
「私がそれだけの価値があると思った…それが全てよ。これ以上問答するつもりは無いわ。行くか行かないか…答えを貰えるかしら?」
友希那は冷たく慧に聞いた。
『…僕は…』
「ねぇ、友希那。どうして急にあんなこと言い出したの?」
友希那とリサは屋上から降り、教室に向かう廊下を歩いていた。
『全て言った通りよ。それ以上でもそれ以下でもないわ。』
「慧の歌にはそれだけの価値があるってやつ?」
「ええ。」
友希那は頷いて言葉を続ける。
「言ってしまえばこれは私のわがままで私の利があるようにしか言ってないわ。私はただ彼の歌に私に無い何かを魅せられた…それが何かを知りたい。そうすれば私の歌はもっと良くなるわ。」
全ては自分のため…そう言う友希那の目に嘘は無いようだった。
「そっか…友希那の音楽のための時間を削る訳でも無いんだね。」
「そうね。」
リサは少し残念そうにしていたが友希那は見ないふりをした。
全ては音楽のため、そして自分の目標のため…その為には慧を利用する事になっても構わないと思い無理やり罪悪感を押さえ込んだ。
そうして何事もない一日を終えて放課後。
「水瀬君、行きましょう。」
『はい…湊さん。』
朝の提案通り友希那が迎えに来る。
『(やっぱり本気なんだな。)』
朝の一件で友希那が本気だったことは知っていたが改めて実感した。
そのまま友希那に手を引かれてスタジオへ向かう。
その間に会話は無く、馴れない故にお互いに気まずさがあった。
そしてスタジオに到着し、友希那が手続きをしてスタジオに入る。
「さて、少し発声しましょうか。水瀬君もするでしょう?」
『…うん、そうですね。発声なんて小学校の音楽の授業以来かもしれません。』
慧は少し笑いながら答える。
そうして友希那の後を続くように慧は発声練習をする。
そして友希那はパソコンで打ち込んでいたDTMの音源で歌って個人練習を始める。
そして一通り続けて歌うと慧へ振り向いて感想を聞いてきた。
『感想を求められても…ただ凄いとしか言えません。専門的なこともわかりませんし。アドバイスできる程耳が肥えてないので。』
慧は苦笑いしながら応える。
慧の言葉に謙遜の様子は無かったのがわかり、友希那は「そう」と返すだけだった。
「さて、今度はあなたの歌を聞かせてもらおうかしら。」
『…わかりました。』
慧は友希那の言葉に少し間を置いて頷いた。
そして友希那が自分の使っていたマイクの元まで連れていった。
『~♪』
そして慧が歌い始めると友希那は真剣な顔をして慧の歌に耳を傾けた。
そうして友希那と慧が入れ替わりながら二時間程歌い、予定時間になったの友希那が手を引きながらスタジオを後にした。
そして帰り道。
『やっぱり僕もスタジオ代を…』
「何度も言っているわ。お金は元々私が出す予定なのだから必要ないと。」
友希那が少しウンザリした様に言う。
それはスタジオを出る時から行われたやり取りだった。
『…僕の歌にはそれだけの価値があったんですか?』
「ええ、それなりに収穫はあったわ。」
『…何の収穫なのかわからない…』
慧は首を横に振りながら言うもこれ以上の問答は無意味だと悟って諦めたようだった。
それから二人の会話はたいして無く、無言のまま帰路を歩いていたが…
「っ!慧!!」
後ろから声をかけられて慧と友希那の足が止まる。
慧は声のした方向へ顔を向けるも困惑した様子だった。
『誰?』
「本当に慧なのか!俺だ!長嶋裕だ!!」
『…裕…』
それは過去に傷跡を残した元親友だった。