再びかなりの期間が空いてしまいました…本当に申し訳ないです。
取り敢えずこの一週間にあと1話はあげようとおもいます。
では、
30話 逃れられないもの
友希那達との仲が拗れて更に一週間程、お昼に友希那とリサが来ることは無くなった。
前と同じ、日菜と二人だけの時間だった。
しかし、4人で食べていた時間はそんなに長かったわけでもないのに日菜は寂しさを覚えていた。
「…」
『…』
二人の間にあるのはほとんど沈黙だけで、日菜はどこか腫れ物を扱うような態度だった。
「(なんだろう…なんでこんなに慧が怖く感じるんだろう…)」
日菜は慧と友希那の仲が拗れる少し前からどこか距離を取ったいるような感じはあった。
いつもその距離感を気にせず平気で踏入って傍にいることができた。
しかし、拗れてからの慧はまるで周りが見えない壁で覆われているようで、触れられる筈なのに何故か触れようとする手が途中でとまってしまうのだった。
最初の内はそれでも無理やりその手を取っていた。
『日菜、これからは手を繋がなくて良いよ。』
「え?...ど、どうしたの?」
『最近一人で帰ることも増えたし、杖を使うのも慣れないといけないからね。ただでさえ色んな手助けをしてもらってるんだ、一人で出来ることは一人でしないと。出来ることも増やさないとね。』
慧のその一言で日菜は手を取れなくなっていた。
日菜はわからなかった。
普通ならそれすら笑い飛ばして強引にでも手を取れていたのに。
それは慧と一緒に過ごしているなかではじめての心からの拒絶だった。
これまで慧がここまで日菜を拒絶することがなかった。
そのはじめての拒絶に日菜はどうして良いのかわからなかった。
その日の帰りも慧は一人で帰っていた。
ただ、その日の帰り道はいつもと違う帰り道だった。
その道はあの事件がなければ今でも帰るはずだった家がある道のりだった。
そしてその家の前まで来ていた。
その時、慧の電話が鳴る。
「ハロー、慧くん。今日も一人ね。」
『ああ…』
慧が答えるともに、近くで電車が通る。
「随分と不便になったんじゃないかしら?これまで周りに助けられてきた貴方なら随分と心細いでしょう?」
『別に、登下校くらい一人でも出来るさ。』
「そう言いながら…本当は寂しいんでしょ?私が迎えに来てあげましょうか?」
『くだらないこといってないで要件を話したらどうだ?』
要件を切り出さない長門に苛立ちを覚えて少し声を荒げる。
「ええ、そうね。近々迎えが行くからよろしく。」
『迎え?』
「ええ、いい加減そろそろ終わりにしましょう?貴方は私を殺したいんでしょ?」
『大人しく殺されてくれるのかよ?』
「いいえ、どっちが先に目的を達成するか…その舞台を用意しただけ。まぁ、それまで待っていることね。」
長門はそう言って電話を切った。
『…終わり、か。』
長門の言葉が忘れられない。
『少なくとも一方的に殺すつもりは無いようだな。それに、どうやらあいつは近くで見張っているわけでもないようだ。』
先ほど近くで電車が通ったときに長門の電話から電車の音がしなかったことで確信をもった。
『そんな事はどうでもいいか。』
慧はそう言って自分の家から離れた。
慧の行く先には一つの公園があった。
来るのに慣れているのかその公園のベンチへ腰かける。
この公園はあの事件の前によく遊んでいた場所だった。
今では遊ぶ子供がいないのか静かなものだった。
慧はなにも考えずただただ思考を停止していた。
そんな慧に声をかける人がいた。
~友希那side~
「あれは…水瀬君?」
個人練習の帰りにいつも通る公園で慧の姿を見つける。
何故こんな所にと一瞬戸惑ったがすぐにその考えを振り払う。
「(彼はもう私たちとは関係ない。それは彼が自分で関わらないと言ったのだから。)」
友希那はそう思って公園を通り過ぎようとする。
だが途中でその足が止まってしまう。
そして私は彼の元へ歩き出す。
「こんな所でどうしたの?水瀬君。」
私が声をかけるとこちらへ顔を向ける水瀬君が驚いているのか口を半開きにしていた。
『湊さん?貴方こそどうして?』
「私は練習の帰りよ。」
そう言って私は彼のとなりに座る。
『…僕は思い出していました。ここで遊んでいた思い出を。』
「…そう、貴方はいつも過去を見ているのね。」
「先の未来を見ることが出来ないから、過去しか見えない。」
「過去は変えられないわ。でも未来は自分で作れる。例え見えなくても…手探りでも…自分のやるべきことさえ見据えていれば。違うかしら?」
友希那は凛とした声音で言いきる。
『…強いね、君は。でも危うくもある。』
友希那ははぐらかされたと思って顔をしかめる。
『君は僕が過去に捕らわれていると思っているんだろう。でもね、違うよ。』
「え?」
『決して取り戻せないもの、それは過去…そして逃れられないもの…それは自分だ。』
「自分から…逃れられない?」
友希那は理解できないように呟いた。
『そう…自分からは決して逃げられない。いくら自分が変わろうとも…根本にあるものは変わらない。それを受け入れられず自分は変わったなんて言えるのはただ自分から逃げているだけ。いつか自分に呑み込まれる。』
「…よくわからないわ。」
『そうだよね、ごめん。ただ1つ。君は自分のこと全て理解出来ている?』
慧からの問いに友希那は眉を寄せる。
「当然じゃない。自分を全て理解できるのは自分だけよ。」
『…そっか、ただ忘れないで。自分には嘘をつけないこと。』
「…今更ね。」
友希那は聞くまでもないというように首を振る。
そして慧は立ち上がる。
『それじゃあ、さよなら。湊さん。』
「送っていくわ。」
『いいよ、大丈夫。一人で帰れるから。』
友希那も立ち上がり手を取ろうとするが、慧が断る。
「…そう。」
友希那はそう言うと慧を追い越し去っていった。
心なしか先ほど慧と話していた声音より冷たく感じた慧だったが、今更だと思い帰路についた。
自分の小説を読み返して思ったこと、日菜が原作の日菜より大人っぽいな。
自分はどうもああいうはっちゃけたキャラ書くのが苦手な様です。