2018/6/4
後書きの誤字を修正
「・・・なので、 『ヒーロー』は手札消費の激しい融合召喚主体である以上、手札補充のためのカードは必須だということだ。覚えておくように」
スクリーンに要点を表示しつつ、教卓の女性は教室を見渡す。暗に、『試験に出るぞ』と告げたその知識を、ノートに書き記す生徒たちの中に一人、グーグーといびきを洩らす生徒が一人。
「・・・十代。お前、また寝てるのか? 」
言葉とは裏腹に、ニヤリと笑った彼女はその生徒に向かってゆっくりと近づく。そしてーー
「うわぁぁ、なんだこれぇ!? 」
放課後、赤色の制服に身を包んだその少年は、自らの頬に書き込まれた『落書き』を見て悲鳴を上げた。『私はバカです』と無駄に達筆なその落書きは油性インクによって書かれており、容易に落ちることはない。
「翔~、何で起こしてくれなかったんだよぉ・・・」
「僕はちゃんと起こしたっすよ。アニキったらぜんぜん起きないんだから・・・」
タオルを持った黄色の制服の少年が、ため息をつきながらそう愚痴る。
赤色の制服、すなわち落ちこぼれの代名詞であるオシリスレッドの少年が黄色の制服、すなわちラーイエローの少年にアニキと呼ばれて慕われているようなことは、そうそう有ることではない。というか、普通は逆なのだ。だが、このオシリスレッドの少年だけは違う。去年この学園を卒業した、学園最強の男。現在はプロデュエリストとしてデビューを果たした“カイザー”丸藤亮と引き分けたこの男、遊城十代は現学園最強の決闘者と言っても過言ではないのだ。
だが、それは決闘の腕前の話。彼は座学が大の苦手なのだ。どこかのエアーマンとは真逆である。
「よう、居眠り坊主。私の落書きは落ちたかい? 」
トイレの入り口から声がしたのはそのときであった。凛と響くやや低めのハスキーボイスの主は、そこまで大きくない己の胸部の下で腕組みをしながら、トイレの入り口の真正面の壁に持たれて立っていた。パンツスーツのポケットからは、油性のマジックペンが顔を覗かせている。
「あぁ~! 何で姉ちゃんがここに!? 」
「学校では『遊城先生』と呼ぶように言ったろうが。なんど言ったらわかるんだ・・・」
彼女の名は遊城葵。このデュエルアカデミアで教育実習を行っている現役大学生であり、遊城十代の実の姉である。
「さて、赤点ばかりのお前には、楽しい楽しい補修のお時間だ。さぁ、さっさと行くぞ」
そうして連行されていく十代。後に残った翔は、しばらくの間ドナドナと歌っていた・・・
これは、デュエルアカデミアの教育実習生、遊城葵の物語である。本来の歴史にいなかった彼女の存在が、それにどのような変化を与えるかは、まだ誰も知らない。
葵「次回から、というか決闘があった回は、このコーナーで『今回の最強カード』の解説を行うぞ」
カジ「解説サポートの作者です。他に、カードの使用者にも出演していただくと思います」
葵「今回は決闘がなかったから、とりあえず適当に引いたカードの紹介でも・・・」
葵がデッキからカードをドローする。
『儀式魔人リリーサー』
カジ「おぉう、初っぱなからなんちゅうカードを・・・」
葵「うむ、私のデッキのキーカードの一枚だな」
カジ「ちなみに、リアルで適当に引いて選びました」
葵「そんなことはどうでもいい。とりあえず、このカードの解説を始めるぞ」
カジ「言わずと知れた、儀式モンスターサポートテーマ『儀式魔人』シリーズの一体にして、最も使われる率の高いカードだな」
葵「『儀式魔人』共通の『墓地から除外して儀式召喚の生け贄にできる』能力と、固有能力として『自身を使用して召喚された儀式モンスターがいる限り、相手の特殊召喚をロックする』能力がある」
カジ「何より強力なのが、このロック能力は『スキルドレイン』等の『フィールドのカード効果を無効にする』カードでは無効にできないという点だ。その凶悪な能力に加え、儀式召喚サポート能力を持つこのカードは、儀式召喚を主体として使うデッキであれば、可能な限り採用したい一枚といえるだろう」
葵「弱点としては、レベルが3と低いため、単体での儀式召喚はほぼ行えないという点。特に『生け贄のレベル合計が8固定』なデミス等のカードとは相性が悪いし、レベル12の『崇光なる宣告者』なんかは手札消費がさらに膨らむことになる」
カジ「相性がいいカードの例としては『現世発魔界行きデスガイド』『魔サイの戦士』等の悪魔族サポートカードや『おろかな埋葬』なんかの直接墓地に遅れるカード」
葵「『祝灯の聖歌』や『機械天使の儀式』等の儀式モンスターに耐性を与えられるカードだな」
カジ「対策としては、『月の書』等で裏側にするのがおすすめだぞ」