感想くださった方、励みになっております。凄くありがたいです。
久しぶりに家に帰ってきたというのに、気まづい雰囲気になり、逃げるように外に出た青年、藤丸立香は後悔していた。
「も〜ギルにジャンヌ!なんであんな、睨んだりしてんの!?妹はただの一般人!怯えてたじゃん……」
街へと向かうために皆と歩きながら立香は振り返って言う。
両親は仕事で何年も帰って来ず、妹の律とずっと2人で生活してきた。
そして、突然海外に行って1年以上連絡取らずにいたのだから、相当心配かけたことだろう。それでいて、突然知らない人を何人か連れてきて、その人に何故かすごい睨まれたら、怯えないわけがない。
しかも、ギルとジャンヌ相手だし、相当怖かっただろうな……。
「言わせてもらうが、我らサーヴァントからしたらマスターである貴様以外と関わりを持つことなんてありえん。紹介されたところで、無駄なのだ」
「でも、俺の家族だし、仲良くして欲しいじゃん?」
「そんなこと、知ったことか。我にはマスターだけで良い」
少しイラついたギルは、立香の頭をくしゃくしゃと乱暴になでる。
立香は、うわぁぁ、と悲鳴をあげながら、そっかーと、少し凹んだ顔をした。
「律は大切な家族だから、認めて欲しかったんだけど、だめかー……」
あくまでも、彼らはサーヴァント。マスターの立香と契約を結んだ関係であり、家族が敵となればきっと容赦はしないだろう。
だからこそ、律は敵ではないし、ましてや本当に何も知らない一般人なのだから、同じ女であるジャンヌやジャックぐらいは、と思っていたのだが。
「ふん、私を見ても無駄よ。」
「?おかあさんの家族は私達でしょ?」
こんな感じだと、希望は薄そうだ。
「先輩!私は律さんともっとお話したいですよ!特に昔の先輩の話とか……」
マシュはとても優しい子だ。先輩、涙出ちゃう。最後の方は、小さくて聞き取れなかったけど。
「マシュはいい子だね〜そのままでいてね。ってまぁ、ここにはレイシフトしてきたから、現代日本で、流れてる時間もカルデアにいた時と一緒だったけど、どうか分からないのが現状だよね」
「あぁ、そうだな。」
急に後ろから低めの声がしてびっくりしたが、その声の主がエミヤだと分かり、苦笑いを浮かべる。
さっきまでエミヤは空気がうす、気配を消していたようで、存在を少し忘れていた。
「ですが先輩、特に律さんに異常、違和感は感じられてないようですし、私たちは普通に現在の先輩の故郷に来ただけなのかも知れませんね」
実は立香たちは、ここにはレイシフトしてきたのだ。ごく小規模、少し違和感がある程度の異常が観測され、それを調査するために来たのである。
その場所が現在の自分の故郷だった時は少し複雑な気持ちだった。
ただ、連絡を取れずにいた律に会えるのだから願ったり叶ったりである。
「でも、異常が見つかったんでしょう?なら、さっさと解決して早く終わらせましょう。」
ジャンヌはそう言い捨てる。
そう言いながらも、レイシフトする前から服の準備や身だしなみで気合を入れていた様だけど。
「うーん……それにしても、どう異常を探せばいいのやら。とりあえず良さそうな霊脈地をさがそうかな」
「その事だが、マスター…………!?」
エミヤがそう言いかけた途中で、エミヤの他にもギル、ジャンヌ、ジャックの4人は一斉に同じところへ振り返った。
ジャックは特に立香を守るような位置取りをする。
そのため、立香もこの状況を察し、あたりを警戒する。
「何かいるの?」
とリツカが問えば
「どうやら、こそこそと私たちの後を追っている命知らずがいるみたいだわ」
ジャンヌは余裕な笑みを浮かべる。
どうやら、立香達の後をつけている者がいて、反応せざるおえないような状況になったようだ。
「敵サーヴァントでしょうか」
「あのね、おかあさんのお家を出たぐらいから気配は感じてたんだけどね、急に距離を近づけてきたの」
立香は視線だけを見渡し、少し焦る。
ここは住宅街で、平日の昼間だとしても人がいないわけではない。もし、ここで戦闘になるようなことは避けたい。よりにも寄って気性の荒い2人がいる。
「……気に食わんな。隠れてないで、出てきたらよかろう?」
ギルが誰もいない道を見つめて言うと、少し空気が揺れた気がした。
どうやら、霊体化をしていたようで、素直に姿を現す。
そこに現れた姿に、立香とマシュ驚く。
深緑のマントをに身を包み、フードで顔は隠れているが、そこから見える明るい茶色の髪が揺れる。
その姿は、
「「ロビン(さん)!?」」
「はいどーも。皆さん方」
ロビンと呼ばれた男は、友人に会ったかのように、ひらひらと手を振る。
しかし、その表情はフードに隠れていてこちらには伝わらない。
「なんだ、ロビンか。敵かと思ってびっくりしたよ。でもなんでこんな所にいるの?」
立香は警戒心を解き、ロビンに歩み寄ろうとするが、ギルに片手で道を塞がれてしまった。
その行動に立香は首を傾げる。
「……ギル?」
「下がっておれ。やつは、何か企んでおる」
「うん、お母さん危ないよ」
「いやぁ、別に何も企んでなんていないんですけどね。今日は珍しいお客さんがいたもんで、気になっただけですよ」
そういって、戦う気は無いと伝えるためかロビンは両手をあげる。
その証拠に、ロビンの武器、弓が右腕には装着されていなかった。
「珍しいお客?それはどう言う意味だ?それに、お前は立香のサーヴァントではないな」
それでも、警戒心を解かないエミヤは問う。
エミヤの言葉で、立香はロビンが自分の契約したサーヴァントとは違うロビンだと言うことを知る。
「ご名答。オレはアンタのサーヴァントではない。でも、アンタらのことはよく知っているぜ。それに、お客はお客、そのまんまの意味さ」
「……なんで、ロビンはこんな所にいるの」
「それに、気になることが何点かあります。答えていただけませんか?」
立香がそう質問すると、マシュも続いて問う。
ロビンは「やれやれ」と軽いため息を吐いた。
「そりゃー、マスターに召喚されたから以外に何があるんだ?」
「……まさか、ここで聖杯戦争が行われている……?」
サーヴァントが召喚されるということは、ここには聖杯があり、聖杯戦争が行われていることになる。
それ以外にサーヴァントを召喚することなどはないはずだ。
ほんの少しの違和感、少しの異常で来てみたら聖杯戦争が行われていたなんて、想像もしていなかった。
いや、しかしレイシフトしている時点で可能性がないわけでは無かったはず。
「聖杯戦争が行われているということは、貴方は私たちの敵になるのかしら。それとも、味方かしら?私たちをよく知っているのならば、目的も分かっていることでしょう」
瞬間、ジャンヌは鎧を纏ったいつもの服へと転身する。そして、自身の武器である旗を表した。
敵だと言うのなら容赦はしないってことなのだろう。
だが、この場での戦闘は極力避けたい。住宅が並ぶこの場所では、人の目も被害も大きくなる。
「……ロビンは、俺達の」
「オレはアンタらの敵でははねぇ」
ロビンは、立香の言葉を遮って言う。
「かと言って、味方でもない。……そうだぁ、俺のマスターに危害を加えるような素振りでもすればアンタ達はオレの……オレらの敵になるだろうね」
「では、そのロビンさんのマスターの目的は何は教えては貰えませんか?」
「目的……目的ねぇ。」
ロビンはふと俺達から視線を外し空を仰ぐ。
今日は清々しい青が広がっており、そこに浮かぶ雲は触れられたのなら気持ちよさそうな、快晴だ。
ロビンはフードを外して、目を細めた。
「目的なんて、オレたちの方が聞きたい……」
なんて、寂しそうな目をするのだろうと、立香は思った。
ロビンはこちらに視線を戻し、またフードをかぶり直す。
「なら、今俺達が戦う理由はないという事か」
「あぁ、そういう事になるな」
エミヤは警戒態勢をとく。
それに倣って、他も警戒をとき、ジャンヌもさっきまで来ていた服に戻っていった。
とりあえず、この場での戦闘は避けられたので一安心する立香。
しかし、わからないことだらけなので、ここでロビンと別れるのも惜しいところ。
そこで、立香は提案する。
「もし、そっちのマスターが良かったらだけど、1度協力しあわないかな?」
なんてことを言ってきて、立香以外のサーヴァント達はぎょっとこちらを見た。
「雑種……何を言っているのかわかっているのか?」
「うん。危険なことはわかってるけど状況がわからない中、動くよりわかる人と動いて情報を得る方がいいと思ったんだけど」
だめ、かな?
立香は少しおどおどしながら、ギルを見た。
ギルはため息をして、仕方がないというふうな表情をみせた。
「え、いや、お断りなんだけど」
ロビンは手を横に振って否定する。
「という事なんで、おいとまするぜ。オレはマスターが悲しい思いをしない限り、アンタらには手を出さないさ。……オレはだけどな」
「ちょっと!まって、まだ聞きたいことが……」
しかし、ロビンは既に目の前からいなくなってしまった。
きっと、ロビンの宝具の一つ【顔のない王】を使ったのだろう。この場からいなくなるのに、跡をつけられないように。
「そういや、一つ忠告しといてやる。オレは別にアンタらと戦う気はあんまねぇが、アンタらを見つけたらすぐ攻撃するようなサーヴァントもいるから気をつけるんだな。
まぁ、オレ達にとってはアンタらはいなくなった方がいい対象なんだろうけど」
どこからか、ロビンの声が聞こえた。
きっと、姿を消してからまだ近くにいたことになる。
「……完璧に気配が消えたな」
「後、追わなくてよかったの?おかあさん」
ジャックが俺の袖を引っ張って見つめてきた。
立香しゃがみこんで、ジャックの頭を撫でた。
「うん、守ってくれてありがとう。今はまだ、やる事もあるからね」
「一体ここでは、何が起きているのでしょうか……。聖杯戦争となると、まだ他に6人のサーヴァントがここに現れることになります。とりあえずは、ダヴィンチちゃんに報告をしないといけませんね」
「あぁ、その事だが、さっきの言いかけていた続きなんだがな」
エミヤは俺達が来た方向、俺の家がある方を向いて
「マスターとマシュ以外は気づいているだろうが、マスターの実家が1番、強い霊脈が通っているみたいなんだ」
「そういう事だ、雑種。我も言おうか悩んだんだがな、あそこは異様に強い霊気が流れておる」
それを聞いて立香は、なぜ自分の家がそんなになっているのか、という疑問よりも、
またすぐに自分の家へ、律のもとへ戻ることになってしまった何とも言えない気持ちの方が大きかった。
「……まじか」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「お父さん!お母さん!たっだいま〜」
元気に、明るく、楽しそうに自分の家へ入る少女がいた。
少女は旅行に行っていたのか、大きなキャリーケースを引きずっている。
少女は急ぐように靴を脱いでゆく。
「お父さん?お母さん?可愛い娘が帰ってきたよー!もしかして何かサプライズ〜?」
ふんふん♪
少女は機嫌の良い鼻歌を歌いながら廊下を進む。
少し悲しい出来事があったけど、本当はここにもう1人連れて行きたい子もいたけれど、それでも家族に会える喜びは大きい。
少女はそんな、ルンルン気分でリビングのドアを開けた。
「久しぶりのきたーくっ!…………え?」
目の前に広がっていたのは、両親の姿ではなく、赤色だった。
よく少女が見慣れた赤い血だ。
床に両親が血を流して横たわっている。母を庇うように倒れている父と、それでも守りきれず死んでしまった母。
そして、両親を殺した犯人らしき、黒いローブを纏った人がいた。
「なん、で……。」
少女は、目を見開き立ちすくむ。
ガタガタと、身体を震え上がらせる。
久しぶりに実家へ帰ってみれば、両親の死体。
死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体。
少なからず、少女は何度か人間の死を見てきたことはあったが、両親の死体を見て正気ではいられるはずがない。
「なにを、しているのっ!?」
少女は甲高い声で叫び、右手の指をピストルのように人差し指と親指を立てて、ローブの人へと向けた。
「ガンド!!!」
そう言い放つと共に黒い球体がローブの人の元へ向かう。
しかし、それは呆気なくバリアのようなもので防がれてしまった。
「ガンド!ガンド!ガンドガンドガンドガンド!!!!」
少女は防がれても、諦めない。
「ガンドガンドガッ……」
足がガクンと沈み、膝を床につけた。
魔力切れだ。
少女は大きく息切れをし、震える体でなお続けようと相手を睨む。
「クソッ、ゆる、さない……絶対、ゆ……るさないんだからっ……」
ガクガクと震える体で両親の元へ近づこうとする。床に這いつくばって、床に流れる両親の血で足を滑らせながら。
「諦めろ。恨むなら自分を、お前を人類最後のマスターにしたヤツを恨め。」
「なぜ、それを……」
声を聞いてやっとローブの中の人が男だとわかった。
しかし今はどうでもいい。
なぜ、人類最後のマスターなんて言葉を知っている。それは、1部、本当に極わずかの人しか知らないはずで、むしろ、外の人間は信じている人の方が少ない。
なのに、なぜ。
「お前は、貴重な存在だ。数々の特異点へと赴き、様々な英霊たちと縁を結ばれたその生きた存在は唯一無二。そんな存在の血縁者となればまた、良い材料になるかと思ったんだがな、これらは、なんも価値もなかった」
男は足で父を転がす。
父は目を見開き固まったまま動かない。
「護衛もなしに野放しにする魔術協会も無能というものだ。さぁ、一緒に来てもらおうか、世界を救ったマスター藤丸立香」
男がそう言いきった頃には少女の意識はもう既に途切れていた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「あ゛ぁ!!」
私は勢いよく上半身を起こす。
「はぁはぁ…………夢、か。」
嫌な夢を見た。
私の前世の頃の夢。
最低で最悪な地獄の始まりの夢。
「クソッ」
拳を握り勢いよく、テーブルを叩きつけた。
「クソッ クソッ クソッ!!!」
何度も何度も、テーブルを叩く。
その度に手が痛みむけれど、怒りの方が勝ってしまう。
私のせいで両親は死んでしまった。
ガシャン!
テーブルに乗っていたお客様用のティーカップが落ちて割れたことで、私は我に返る。
もう、終わってしまったことだ。昔にもう、忘れようと誓ったはずなのに。
久しぶりに過去の夢を見てしまったことで、揺らいでしまった。
きっと、サーヴァント達と会ってしまったから、思い出すように夢に見たのかもしれない。
私はゆっくり立ち上がり、割れてしまったティーカップを片付ける。
右手の人差し指に拾った破片が刺さり、血が出てしまう。
「……あっ」
今は嫌でも見たくなかった血。
それを見て、視界が霞む。泣いちゃだめだと自分に言い聞かせる。
少し指がヒリヒリするけど、破片を綺麗に掃除機で吸い取るところまで、やりきった。
まだ少し心が落ち着かなかった。
時計を見ると、兄が出てからまだ1時間も立っていない。きっと、さっきは緊張しすぎたせいで、それがとけて眠ってしまったんだろう。
とりあえず、ティーカップを全てキッチンに持って行く。
その時、混ぜかけのクッキーの生地が目に入った。
そういや、作り途中なのを忘れて放置してしまっていた……。
もう、乾いており、使えなさそうなので勿体ないが、処分することにしよう。
あと、ティーカップは後で洗うとして。
悪夢で汗もかいてしまったことだし、心を落ち着かせるためにシャワーでも浴びることにしよう。
今話から、伏線をはれたらなぁ、という感じで書いております。
次回戦闘シーン、はたしてわかりやすく書けるのか
よろしくお願いします