藤丸立香を救う計画   作:兎乃

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ATTENTION


・お久しぶりです。
・口調が迷子です。違和感あれば教えてください。
・またしても、ご飯。
・なんでも許せる人向けです。
・優しい目で見守ってください。




あの時の甘いカレー

 

 

 

ホテルに泊まると言っていたはずの兄たちはなぜか家にいた。

 

取り敢えず靴を脱いでリビングへ行けば、マシュとジャックがソファでテレビを見てくつろいでおり、エミヤはキッチンで何かを作っていた。

ジャンヌとギルガメッシュは見当たらないが、靴が置いてあったのでこの家のどこかにいるのだろう。

 

 

「あ、律さん、おかえりなさい。お邪魔しています」

 

 

マシュは私が帰ってきたことに気づき、丁寧にソファから立ちお辞儀をする。

 

「朝のおかあさんの知り合いの人!こんにちは!」

 

マシュを真似てジャックも挨拶をした。

私は状況が飲み込めず、「どうも」とそっけない返事しかできない。

 

 

「それで、ですね、突然で申し訳ありませんが、ここに泊めてくださいませんか?」

 

 

マシュは少し申し訳なさそうな顔で言う。その上目遣い可愛すぎて、Noだなんて言えない。それに、マシュ達ともっと話もしたいので、大歓迎だ。

 

 

「全然どうぞ!空いてる部屋もあるので、使ってください。お客様用のお布団出しておきますね」

 

「ありがとうございます!律さん」

 

 

私が了承すれば、マシュはぱっと、明るくなる。そして、「よろしくお願いします」と、私の手を握って振った。

 

兄はその光景を眺め、うんうん、と微笑ましい顔をしている。

 

 

「良かった良かった。これで野宿はまぬがれた」

 

「そもそも、私がダメって言ったら野宿する気あった?」

 

「いや、意地でも泊まってたわ」

 

 

それは、ドヤ顔で言うことではないぞ兄よ。

この家にいるのなら、とことんこき使ってやろう。

 

とりあえず、カルデア御一行はわが家に泊まることになった。

どのくらいこの家にいるのかは分からないけど、賑やかになるのだろう、なんて思いながら私は小さく笑う。

 

 

「しょうがないなぁ。夕飯はもうたべた?」

 

「それなら、今エミヤが作ってくれてるよ」

 

 

兄はキッチンにいるエミヤを指さす。

そちらを見ればやはり、何か作っていた。とても懐かしくいい匂いがする。

 

この匂いはカレーだ。

 

私はキッチンの方へ行く。

 

 

「あぁ、マスターの妹か。午後から学校に言っていたようで、偉いことだ。勝手にキッチンを使わせてもらっている。君の分もあるから、出来るまでゆっくりしているといい」

 

 

エミヤはお玉を手に鍋の中をかき混ぜる。

そのカレーはほぼ出来上がっているようで、あとはご飯の炊きあがり待ちのようだ。

 

 

「いえ、一応お客様なんですから……。あとは私がやりますので、エミヤさんこそゆっくりしていてください」

 

「いや、もう出来上がる。それに、料理は好きな部類だから、任せてくれると嬉しい。味は保証する」

 

 

うん、しってる。エミヤのカレーは最高だよ!なんて言葉を、胸の中に収める。

 

 

「それじゃぁ、食器の準備しますね!」

 

「律さん私もお手伝いします」

 

 

私が、食器棚からお皿を出せばマシュは近くに立ち手を差し出してきた。

お皿を持ってくれるのかと思い、私は出したお皿をマシュへと渡す。

 

というか、私含めて7人。スプーンあっただろうか。

というか、お布団も足りるのか?

 

ここで、いろんな心配が湧き出てくる。

足りなければ兄に何とかしてもらおう。

 

 

ピーと、ご飯が炊けたことを知らせる音がなる。

 

 

「お兄、オルタさんと、ギルさんも 呼んできて。ご飯にしよう」

 

 

エミヤのカレーも出来上がったようで、夕ご飯の準備を着々と進める。

 

ただ、ひとつのテーブルで7人は入らないため、ダイニングテーブルと、リビングのテーブルで4・3に分かれることになった。

 

マシュが盛ったご飯にエミヤがルーをかけて、私とジャックで運ぶ。

 

それが終わる頃に、兄が2人を連れてきてくれた。

 

 

「あ、オルタさん、ギルさんこんばんは」

 

 

二人の姿が見えれば私は挨拶をする。

 

 

「えぇ、お邪魔しているわ」

 

「……あぁ」

 

 

少しそっけない返事ではあったが、2人はリビングのテーブルの方へと座った。

 

ダイニングテーブルには、私、兄とマシュ、ジャックが座り、残りはリビングテーブルで食事をすることになった。

 

相変わらず賢王様はソファーに座ってカレーを食べるようだ。

 

 

「いただきます!」

 

 

ジャックが元気よくそう言えば、マシュやエミヤも「いただきます」と言ってからスプーンを手に取った。

 

私も兄も同じようにすれば、遅れてオルタがごにょごにょと言ってからカレーに手をつける。

 

なんて言ったのかは聞こえずらかったが、だいたい予想できた。

 

私はエミヤ特製カレーをスプーンですくい口へ運ぶ。

 

 

「うん、甘いカレーだ!おいしい!」

 

 

あぁ、この味だ。私が作っても再現出来なかったこのカレー。

小さなサーヴァントもいたので、少し甘めに作られたカレー。

それに、隣にはマシュが座っており、テーブルは違うが、かつての仲間だったサーヴァントもいる。

 

 

「しあわせ……だなぁ」

 

「律?どうした?」

 

 

向かいに座っていた兄がこちらを少し驚いた顔で見つめてきた。

 

 

「なに?顔にご飯粒でもついてた!?」

 

 

そう手を口元にやって見るが、何もついていない。

 

 

「いえ、律さん……その大丈夫ですか?」

 

 

マシュも変なことを言ってくる。

 

「泣くなんて、悲しいことでもありました?」

 

……泣いている?私が?

口元にあった手が濡れるのを感じた。

 

 

「あれっ」

 

「何かあったのか?」

 

 

ポロポロと涙が出てくる。

 

 

「あはっ、なんでかな、おかしいなぁ〜。きっとカレーが美味しいせいだ」

 

 

そう言って、勢いよくカレーを掻き込む。

うん、何度食べてもおいしい。

 

 

「何かあるなら、言えよ」

 

「私も相談に乗りますよ!」

 

「うん、ありがとう。でも、ただカレーが美味しくて涙がでるだけだから気にしないで!」

 

 

あ〜おいしいなぁ。

カレーをお口いっぱいに入れ咀嚼する。

それを繰り返せば、兄もマシュも止まっていた手をまた動かした。

 

 

 

「泣いてくれるほどおいしいと言ってくれるのは初めてだな」

 

エミヤは独り言のようにそう呟いた。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

食事が終わり、順番にお風呂に入ることになり、女性からということでマシュとジャック、オルタ、私の順に入ることになった。

 

私は朝にもお風呂に入ったので最後でもいいと言ったのだが、エミヤが譲ってくれない。

 

なので、現在私は2度目の入浴中だ。

 

 

「はぁ〜こんなんで泣くとか情ない」

 

 

湯船に浸かり一息つく。

もう、後悔しかない。

 

自分で自分の顔を挟むように叩く。

もっとちゃんとしなきゃダメだ。

 

 

「よし、もっとがんばらなきゃね」

 

 

そう気合を入れて、私はお風呂から上がる。

 

 

髪が濡れたままだが、気にせずにリビングへと行く。

 

 

「上がりました。つぎどうぞ〜」

 

 

と言えば、「俺か!」と兄がバタバタと着替えを取りに行った。

 

 

「ふぅ〜牛乳牛乳〜っと」

 

 

冷蔵庫を開けて牛乳を取り出しコップへ注ぐ。

それを一気飲みをして

 

 

「ぷはっー!」

 

 

やっぱり、風呂上がりの牛乳は最高だぜ。

そんなことを思っていると、ジャックと並んでソファーに座ってテレビを見ていたギルがこちらを見ていることに気づいた。

 

あ、目が合ってしまった。

前は割と交流もあったけど、今は他人であるから結構気まずい。

 

 

「え、えとぉ……なにか?」

 

 

普段でも目が鋭いので少し怖いんですが。

何かあるなら、何か言ってくれ!ないなら、テレビ見てて!!

 

なんて思っていればギルが口を開く。

 

 

「お前のその右肩の痣はなんだ?」

 

「へ?肩?」

 

 

思わず間抜けな声が出てしまったが自分の右肩をみる。

今私は黒のタンクトップと短パンという姿で、肩がわかりやすく露出していた。

するとそこには、赤黒い痣のようなものが出来ていた。

 

 

「うわっ何これ」

 

 

ぼやけた文字にも似た、と言っても文字ではないのだが、そんな感じの痣が肩にあったのだ。

ぶつけた覚えもないが、ぶつけてなるような痣とは形が全然違っている。

 

これではまるで―――・・・・・・・

 

 

「その痣に覚えはないのか?」

 

 

ギルがそう問えば私は、こくりと頷いた。

 

 

「そうか」

 

 

全然納得したような顔はしていないが、視線はテレビへと戻った。

 

もう一度、自分の肩を見てそれを左手で撫でる。

触れると痛い、なんてこともなく、ペンで書かれているなんてことはありえない。

それに、強打したような覚えもないので、自然にできたような痣なのだろう。

 

本当にこれではまるで・・・・・・

 

言葉には出さず、口パクでその言葉を表す。

たった3文字の言葉。

 

彼らには馴染みのあるもの。

マスターの証であり、命令権でもある。

 

 

【令呪】

 

 

いやいやいや、そんな、まさか。

まさか、ね。

今の私は前世の記憶を持つだけの一般人。

 

それに、令呪であれば右手の甲に現れるはずだ。

だから、これはただの痣だ。

そう、いつの間にか出来てしまった痣。

 

私はそう思い込むことにした。

 


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