「君の名は。キルヒアイス」方向性修正版   作:高尾のり子

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第16話

 

 キルヒアイスは三葉の部屋で夏休みの宿題を進めていた。もう克彦と早耶香のことは考えないようにしているし、三葉は部活もバイトもしていないので夏休みになると、かなり時間が自由に使える。宿題の分担をこなした後は家の手伝い以外は読書などに耽っていた。

「お姉様、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 四葉は自由水泳があるので小学校へ向かった。教室で全裸になり、スクール水着を着ると、プールに入る。そして、また予感を覚えた。

「いける、飛べる、かなり飛べる」

 二度目なので落ち着いて身構えると、目を閉じた。

 

 

 

 ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは法務将校として民間企業へ発注した啓発キャンペーンの説明を受けていたのに、居眠りでもしているように一瞬ふらりと頭を揺らした。

「っ……」

 かなり飛べた、四葉は視界に入ってきた三次元モニターを見て確信した。モニターに映る男優が啓発キャンペーンの内容を告知している。

「酒、賭博、麻薬、同性愛、この四悪を宇宙軍から追放しましょう! やめよう賭博! なくそう麻薬! 同性愛は許さない! お酒は控え目に! リゲル航路警備部隊は綱紀粛正に乗り出します! 安全な航路は正しい心から! 飲む、打つ、掘るを無くそう!」

「どうでしょう、ルドルフ少尉。カストロプ次長が予算内におさまるようプロダクションへかけあって3割引で仕上げております」

「男優へもノルデン課長が掛け合い、リゲル星系以外の全銀河へ配信する肖像権の許可を取っておりますぞ」

 まくし立てるように話してくる二人のサラリーマンと思われる男たちに四葉は告げる。

「急に話を変えて悪いけど、今は何年だった?」

「え、あ、はい。宇宙暦288年ですよ、少尉殿」

「宇宙暦……西暦でいうと、何年になる?」

「え、えっと…」

 ノルデン課長が電卓を叩く。

「3088年でございます、ルドルフ少尉」

「よし」

 ルドルフの唇が満足げに微笑み、なんだかわからないけれど、ノルデン課長とカストロプ次長も微笑み返した。それから四葉は2039年以降の人類の歴史を二人へ問い、なぜ、そんなことを訊かれるのだろう、試されているのかな、と思いつつも公共事業を受注したいので二人とも知る限り頑張って答えた。

 

 

 

 ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは糸守小学校のプール内に立っている状態が目に入ってきて、四葉の眉をひそめた。だらりと垂れていた両腕を胸の前で組む。

「………」

「きゃはっは! 冷たいって!」

「えい! ほら! くらえ!」

 周囲では児童たちが楽しく水遊びしている。

「夢か……いや……しかし…」

 夢とは思えない現実感があるし、こんな夢を見る自分ではないという自負がある。自らを恃むこと厚く、自らの正義を信じて疑わないルドルフにとって、夢とも現実とも思えないけれど、落ち着いて周囲を観察する。

「四葉ちゃーん? どうしたの?」

「………。お嬢ちゃん、ここは、どこかな?」

 ルドルフは怖がらせないよう優しく女児に訊いてみた。訊きながら、たしか身長195センチあり、体重も99キロだったはずなのに、なぜか女児と目線が同じであることに気づき、自分の身体を見下ろした。

「っ………オレの……」

 二十歳だったはずの自分が、なぜか10歳くらいの女児の身体をしてスクール水着を着ている。

「どこってプールだよ? 何のなぞなぞ?」

「いや、そうではなく、この星の名を教えてくれないかな、お嬢ちゃん」

 問いながら空を見上げるけれど、見覚えがない惑星のようで昼間なので星もなく銀河系内の位置がつかめない。

「星の名? う~ん……なぞなぞかぁ……」

「あの恒星の名でもいい」

 四葉の指が太陽を指した。指しながら、その手の華奢さに強い違和感を覚えている。

「あれは太陽だよ」

「うむ、太陽ではあるね。どういう名前の太陽か、わかるかな、お嬢ちゃん」

「お日様?」

「…………」

「時間ですよーっ! みんな揚がってくださーーい!!」

 教師のように見える女性が告知している。秩序を重んじるルドルフは言われるとおりにプールサイドへ揚がった。

「みんな目を洗って着替えてくださーい!」

「「「「「はーい!」」」」」

「…………。そこの君」

 ルドルフは女児では埒があかないので女性教師に声をかけてみる。

「ん? 先生のこと?」

「ああ。この星の名を教えてくれないか」

「この星? どの星?」

「この惑星だ」

「ここ?」

 教師が地面を指したので頷く。

「ああ、この惑星の名を知りたい」

「……地球ですよ」

「地球だと?! あの地球だというのか?!」

「はいはい、早く目を洗って着替えてくださいね。あと、先生のことを、そこの君とか言ってはダメですよ」

 教師に背中を押されると、軽い体重の四葉の身体はいとも簡単に列へと押しやられた。

「………」

 仕方がないし、とりあえず消毒剤で目が痛いので素直に目を洗った。

「四葉ちゃん、早く着替えて神社の小川で遊ぼうよ」

「………」

 見知らぬ女児に手を引かれ、拒否しても仕方ないので女子更衣室になっている教室まで歩いた。教室内では小学4年生の女児たちがスクール水着を脱ぎ、平服に着替えている。

「…………」

 明らかに自分も着替える流れで、四葉の衣服だけ誰も手を着けていないので、それが自分の物なのかもしれないと推測もできたけれど、とても抵抗がある。

「……………」

「四葉ちゃん、着替えないの?」

「………」

 仕方がない脱ごう、とルドルフが女児水着を脱ぎ始めたところでスーッと女児たちの着替えている光景が遠くなっていった。

 

 

 

 ルドルフは自席で肩でも凝ったように左肩へ右手をやり、スクール水着を脱ぐために肩紐を掴もうとしたけれど、軍服の上を空振りしただけだった。ノルデン課長が素早く背後へ回って肩をもんでくる。

「お疲れでしょう、ルドルフ少尉」

「……うむ…」

 やはり夢だったのか、それにしては現実感がありすぎたが、とルドルフが目頭を指先で押さえるとカストロプ次長が目薬を出してくれる。

「どうぞ」

「……ああ、ありがとう。カストロプ次長」

 素直に目薬を貸してもらい、目の錯覚だったのか、居眠りだったのか、とにかく落ち着いて二人が用意してきた啓発キャンペーンの映像を確認する。もう確認したはずなのに見直している少尉を次長課長は何も言わず待った。そして、ルドルフが考えつく。

「同性愛以外にも小児性愛を加えられないか?」

「っ、ロ、ロリコンもですかっ? ……」

 なぜか、カストロプ次長が緊張しつつ反問すると、ルドルフは眉をひそめた。

「俗っぽい言い方をするな」

「は…はい。…ペドフィリアもお加えになるのは……」

 次長が困っているので課長が助け船を出す。

「そうなると撮り直しになりますし、キャッチフレーズも全体を考え直さねばなりません。実はこの男優、大変に人気が出てきておりまして発注したときは一介の若手俳優にすぎなかったのですが、今や宇宙に覇を唱えんばかりの勢いの売れっ子でして、再発注となりますと明らかに予算を超えます」

「…………」

 ルドルフは3次元モニターに映るアイスブルーの瞳に豪華な金髪をした顔立ちの美しい男優を値踏みするように見つめる。

「なにしろ、全宇宙抱かれたい男ランキング1位と、銀河ええ男伝説のダブル受賞をしておりますし。また、ここ最近は体調を崩して病気がちのようで、ややスケジュールにも不安定さがあるそうですから。ただ、その分、完成している映像は貴重となりますので、きっとキャンペーンの知名度も鰻登りとなるでしょう」

 さらに、次長が言い訳を思いついた。

「艦隊勤務中には同性愛の機会は多くとも、幼女を連れ込むことはありませんし」

「……たしかに、そうだな…」

 明らかに病人でない艦長が専用看護婦2名を連れていくことはあっても、さすがに幼女は同伴できない。たいていの看護婦が資格を取ったばかりの若い娘ばかりで、ろくな医療現場の経験もなく従軍しているのは、だいたい理由がわかっているけれど、その粛清は自分の権限が増してからの課題とし、小児性愛も今思いついただけだったので予算を考え諦めることにした。

「いいだろう。これで契約する」

「「ははっ! ありがとうございます!」」

 二人が揉み手をしつつ頭を下げた。

「ご契約のお礼もかねて、これから一席どうでしょうか。ノルデン課長、予約してあるね?」

「はい、それはもう! 可愛い子いっぱいおりますよ」

「………」

 ルドルフが不快そうに眉をひそめたので課長は慌てて路線を変更する。

「がっつりステーキなど、どうでしょうか? 良い店を知っておりますよ」

「……ステーキか……」

 身長195センチ、体重99キロを養う胃袋が、すでに食事を待ちかねている。その巨体にはひとかけらの贅肉も一片の脆弱さもないだけに、筋肉量が多くて基礎代謝が高い、その分だけタンパク質は摂りたい。しかも士官食堂へ行けば無料ではあるものの、宇宙軍の腐敗は末端にまで達しており、食材費を横流しされていることもあって、ろくなものが食べられない。粗悪な人造タンパクばかりでは、この巨体は支えられなかった。ルドルフは立ち上がった。

「行こうか」

「「ははっ!」」

「むろん、ワリカンでよい」

「「………」」

 契約直後なので当然に接待もかねて会社の経費で行くつもりだったけれど、この若い少尉は堅物のようで二人は合わせることにした。

「さすが、少尉殿!」

「ルドルフ少尉のような方が出世されれば、宇宙軍の未来も明るいですな!」

 三人でステーキ店で、がっつり食事して黒ビールを呑んだ後、さらに課長が居酒屋へ誘うと、ルドルフは少し迷ったけれど、今日は呑みたい気分だった、どうにも変な体験をして、自らを恃むこと厚いはずの自分が女児になっていた記憶は不可解でアルコールとともに洗い流したい。むしろ、自らを恃むこと厚いだけに、その自らが不確かに感じられるショックは小さくないし、自らを恃むこと薄くなった気がして、取り戻したくもある。おかげで次長課長に勧められるまま、ついつい飲み過ぎた。まだ、20歳なので今ひとつ自分の酒量がわかっていないこともあり、ろれつが怪しくなってきている。

「んーっ…ヒクッ…このビールは、どこのものだ?」

「これはサントリーでございます、少尉殿」

「フン、ビールはな、ドイツ系に限る!」

「さすがはルドルフ少尉! お目が高い! 黒ビールをもう一杯! ピッチャーで!」

「ドイツはいいぞ。とくに中世ドイツが一番美しい。人類の文化のあるべき姿だ! ヒクッ…こんな退廃した、くだらん風俗など、オレに力があれば、一掃してくれる!」

 酔ってくると自分を語りたくなるのは人類に共通した特質だった。契約時に、やたらと歴史について質問してきた少尉が、また中世などと言い出したけれど、もちろん次長課長は話を合わせる。

「中世いいですな!」

「ドイツ最高っすよ!」

「うむ。そもそもだ。遺伝子が、すべて決めるのだ」

 もう酔いが回っているので話が飛びやすい。

「優良な者と劣悪な者、これを、しっかり峻別しなければ、ならん!」

「なるほど、その通り!」

「ルドルフ少尉のおっしゃる通りですな!」

「おお、わかるか。お前たちは優秀だな」

「「ははっ、ありがとうございます」」

「ふむ、オレが考えるに、優秀な者には、それにふさわしい地位を与えるべきだ。中世においては気高き者は公侯伯子男の爵位によって峻別され、大衆と区別されておったものだ」

「爵位ですか…なるほど」

「さすが、おっしゃることが高尚ですな」

「お前たちもオレの役に立て、いずれは公爵、子爵にしてやろう。ヒクッ…」

 次長課長を公爵子爵にしようと言ったルドルフは酒量の限界を迎えたようで眠りつつある。その巨体に爆睡されると困るので、二人はタクシーを呼んで士官宿舎までルドルフを送ってから飲み直すことにした。

「あの少尉が接待を断ってくれたおかげで、かなり経費が浮いたな。ノルデン課長」

「まったくですな。はははは! むしろ、飲み直しておかないと領収書がもらえないくらい浮きましたな!」

「ああいう堅物は御しやすくていい」

「どうせ会社は接待費をつけてくれますからな、浮いた分は私たちで楽しめると」

「フフフ、そちも悪よのう」

「いえいえ、公爵様にはおよびませんよ」

「公爵かぁ……、タクシーの中で騎士も設定するとか言ってたな」

「ええ、啓発キャンペーンが成功したら、あの俳優へも叙勲してやるとか」

「騎士の第一号か」

「アホなことを考えてますな。まあ、まだ20歳、夢見がちな年頃なのかもしれません。歴史は好きなようですが、どういう頭をしているのでしょうな」

「いや、オレも中学生の頃は、ちょっと歴史にハマったことがあるよ」

「カストロプ次長も?」

「オレは中世ドイツより、古代ギリシャが好きだったなぁ」

 次長が遠い目をして退廃した歓楽街をタクシーの車窓から眺めている。

「こんな雑多な文化より、古代ギリシャの方が、ずっとよかったと若い頃は思ったものだ。自分でコスプレ衣装を作ったりさ。まあ、そんなの高校生にもなったら卒業したけどな」

「いわゆる中2病というヤツですな」

「そうそう。ま、そんなのを20歳まで引きずるのは、恥ずかしいヤツだけだ。あいつ、たしか士官学校首席だったよな。勉強と筋トレばっかで、常識を学ぶ機会が無かったんだろう。何にせよ、うまく利用して美味い汁を吸わせてもらおう。今夜も女の子のいる店でな。フフフ」

「え~……カストロプ次長が言う女の子って、たいてい10歳でしょ」

「ロリコンは滅びん! 何度でも蘇るさ! ロリコンこそ人類の夢だからだ!」

「スカトロじゃないだけマシですけど、ボクはどっちかというと、もっと熟れた方が好きなんですよ」

「お、ノルデン課長は熟女系か。じゃあ、親子丼の店にいくか?」

「いいっすね。親子丼!」

「初物が入ってると最高だよ、ノルデン子爵殿」

「そこ行きましょう! カストロプ公!」

 大いなる野望を胸と股間に抱き、タクシーを降りた二人は肩を組み、退廃した銀河連邦末期の歓楽街へと消えた。

 

 

 

 四葉は自分だけ着替えが遅れて、まだスクール水着を着たままなことに感心した。

「さすがは初代皇帝、なかなかに紳士的な人物」

 姉から色々と聞いているので、だんだん歴史の流れがつかめてきている。

「次こそキルヒアイスの時代へ」

「四葉ちゃん? さっきから、変だよ?」

 クラスメートが不思議そうに見てくるので謝っておく。

「ごめん、ごめん。何でもない。私、なにか変なこと言ったり、したりした?」

「あ、この星の名は? ってナゾナゾ出してたよ」

「まあ、それ基本かな」

「で、答えは?」

「もちろん、地球」

「つまんない答え」

「ごめん、ごめん」

 謝りつつ、四葉はスクール水着を脱いで裸になった。

 

 

 

 三葉は旗艦バルバロッサの艦橋で指揮を執っていた。内乱中の帝国内で辺境星域を平定するよう命じられているキルヒアイス艦隊は大小60回を超える戦闘を経ていて、そのうち10回ほどは三葉の指揮で戦ったけれど、今までに教えられたことを落ち着いて実践したので問題なくリッテンハイム侯を討ち滅ぼしている。わずか800隻の高速艦を連れてリッテンハイム軍の真ん中にいる状況で入れ替わりが起こったときも、武者震いして指揮を継続し、手紙にあったキルヒアイスの作戦案を欠けることなく実行していた。

「辺境制圧も、もう終わりかな………私、頑張ったなぁ……これで帝国内は平和になるのかな」

 今は平穏な航海をしているので三葉は手元のパネルを操作して人類の歴史を眺めている。四葉に頼まれたので、そうしているのだったけれど、ベルゲングリューンが興味をもって問いかけてきた。

「ときおり、そのように歴史へ目を通しておられますな。お好きですか?」

「うん…まあ…」

 別に好きではなかったし、千年前の平安時代の出来事が、どうでもいいように、千年先の出来事も、どうでもよく、今まさに自分が歴史の転換点となる内乱に重要な指揮官の一人として参加していることも実感しにくかったけれど、四葉に協力しようという意志はあった。

「閣下、そろそろ交替のお時間です」

「もう、そんな時間か」

「これから一杯、どうですか?」

 ベルゲングリューンが呑みに誘ってくれた。すでに警戒の必要性は低く、夜勤の高級士官と交替する時間なので飲酒しても問題はなかったけれど、三葉は首を横に振った。

「今日は、やめておくよ。また誘って」

「はっ」

「ちょっと超光速通信室を使うね」

 三葉は勤務時間を終え、一人で超光速通信室へ入った。オーディンへ連絡し、まずはノルデンと会話する。

「こんばんは。オーディンは、どう?」

「平和そのものですな。まあ、同盟軍が来るわけも無し。気楽な留守番役ですよ」

 アムリッツァでヤン艦隊と交戦し、大きな損害を被ったノルデン艦隊は提督の戦死という情報と、もともと老朽艦が多かったこともあり、再編が進んでおらず今回の内乱にさいしてはオーディン待機を命じられていた。

「活躍の機会が無いって、拗ねてるかと思ったけど」

「いえいえ、もう上級大将ですからな。出る杭は打たれるとも。それに前回、死にかけて前線は懲りました。あとは定年までに、ゆっくり一階級あげて元帥で十分でしょう」

「たしかに、そうだよね。まあ、気をつけてね。何もないと思うけど」

「キルヒアイス上級大将こそ、気をつけてくださいな」

「うん、ありがと。じゃ、また」

 スマフォで動画通話する感覚でノルデンと話した三葉は、次にアンネローゼのことを考える。

「アンネローゼさんとキルヒアイス、ぜんぜん進展してない感じ……せっかくヒルダと別れてあげたのに……」

 超光速通信で二人が、どんな会話をしているかは次に出会うことがあったときのために三葉も録画映像を見て知っていた。

「お元気ですか、こちらも元気です、って、それ老人の会話だし! よし! ちょっと一つ決めてやる!」

 三葉は閃いて、アンネローゼと通信した。まずはキルヒアイスらしい恭しい態度から入る。

「お元気ですか、アンネローゼ様」

「はい、おかげさまで。ジークは、どうしていますか?」

「私も元気にしていますよ。もう辺境制圧も終わり、明日にはラインハルト様と再会できるでしょう」

 ノルデンとの馴れ馴れしい会話ではなく、キルヒアイスとして話している。

「それは良かったわ。二人とも無事で、ほっとしていますよ」

「ご心配をおかけしました。………」

 まだるっこしい会話だなぁ、もお、と三葉はキルヒアイスを真似た会話のテンポに苛立ちつつも、恭しさを崩さず、それでいて本題に入る。

「今日はアンネローゼ様にお願いがあります」

「私にですか。私にできることなら、なんなりと言ってくださいな」

「では、一つだけ。これからはアンネローゼ様のことを、アンネローゼと単にお名前だけをお呼びしてもよろしいでしょうか」

「まあ……はい、そう呼んでくださいな、ジーク」

 通信画面に映るアンネローゼの顔も嬉しそうだったので、思わず三葉はガッツポーズした。それをアンネローゼに微笑されてしまう。

「フフ、お願いというのは、それだけかしら、ジーク」

「はい。今夜は、これだけです。いずれまた、お願いするかもしれませんが、今夜は、これだけです。おやすみなさい、アンネローゼ」

 含みを残す言い方をして三葉はアンネローゼとの通信を終えた。そして、ちょうどラインハルトから超光速通信が入ってきた。

「キルヒアイスか?」

「ううん」

「そうか、ミツハなのだな。どうだ、そちらは無事か?」

「ばっちり、やってますよ。明日には合流します」

「よくやってくれているようだな」

「ラインハルトのためじゃないけどね」

「フフ、まあいい。ちょうど、ミツハに相談があったのだ」

「私に?」

「ああ。……その、フロイラインマリーンドルフのことなのだが……」

 戦場において決断に迷いのないアイスブルーの瞳が、迷いたっぷりに訊いてくる。

「私は彼女と結婚したいと思っている。だが、むろん上下関係をかさにきて、強要する気は、まったくない。だが、一夜の……その……」

「責任とか考えてる?」

「そうだ。責任を取るべきだと私は考えているのだ。ゆえに私と彼女は結婚すべきだ」

「硬っ……重っ……中性子星みたい…………まあ、そういうのがラインハルトのいいところなのかもしれないし、悪いところでもあるよね。ただ、いろいろと手順を無視して攻略しようとしても、女の子はホーランド艦隊みたいには落ちないよ。むしろ対要塞戦だと思った方がいい」

 あえてラインハルトにわかりやすい喩えにして三葉は語る。ラインハルトも女子である三葉の意見を欲していたし、教えを乞うにロイエンタールは戦略方針に問題があり、ミッターマイヤーを真似た戦術は、すでに実行したけれど失敗に終わっている。

「対要塞戦か……なるほど……」

「まず、まだ相手の呼び方がフロイラインマリーンドルフの段階なのに求婚とか。イゼルローン要塞にむかって降伏勧告してるようなものだからね」

「そうなのか……だが、一夜…」

「うん、それは私が振った後、お互い勢いでやっちゃったんでしょ。たぶん、ヒルダは私というか、キルヒアイスのこと、まだ好きだよ。けど、優しくしてくれるラインハルトのことも悪くないと思ってる。なのに、いきなり結婚とか言われても、ちょっと待ってよ、ってなるんだよ。ここからはさ、じっくり攻めよう。じっくり。今は、いっしょの艦内に?」

「いや、彼女にはオーディンでマリーンドルフ伯とともに、こちら側についた貴族のまとめ役をしてもらっている」

「そういえば、伯爵は結婚のことは、どう言ってるの? また公文書にしろとか、言われた? それって女心には逆効果だからしない方がいいよ、もはやフリードリヒなみになるから」

「伯は今回については家名と領土の安堵を公文書にしてほしいと。娘のことについては、彼女の気持ち次第だと」

「いいお父さんで良かった」

「………オレは、どうすれば、いいと思う? ミツハの意見を聞かせてくれ」

「うん、わかったよ。考えておく。私の責任でもあるから、二人にはうまくいってほしいからね。とりあえず、ちょこちょこヒルダに連絡して、まずは呼び方をフロイラインマリーンドルフからヒルダに変えるところから始めよ」

 三葉は攻略の初歩を手ほどきすると通信を終え、一日頑張って疲れた心と身体を居室に入ってベッドで横にして休めようと思ったのに、重要そうな連絡が入ってきた。

「ヴェスターラントに核攻撃? わかりました。艦橋へ行きます」

 すぐに艦橋へあがって映像を見た。それは成層圏あたりから撮影された映像だった。さらに麾下にあるワーレン艦隊がとらえたシャトルに乗っていた兵士から、ラインハルトたちが核攻撃を政治的な宣伝のために故意に見逃したと聞いて考え込む。

「……きっとオーベルシュタインだよ、その発想は…」

 焦土作戦を発案し、さらに三葉がクーデターを画策すると、それを徹底的な焦土作戦に変えて内憂外患を一挙に解決しようとした義眼の男が裏にいると、もう見抜けるくらいに三葉もラインハルト陣営の人間関係は把握している。

「どうなされますか、閣下」

「どうと言われても……明日、考えます」

 成層圏から撮影された映像は火球に街や村が飲み込まれるというだけで、毎年8月にテレビなど見てきた広島長崎の再現映像などとは比較にならないほど、惨状がわかりにくいもので感情移入させようとするBGMも付いていないので、あまり三葉は200万人が亡くなったという実感をもてなかった。誰一人知り合いのいない、行ったこともないヴェスターラントが壊滅したと聞いても、かわいそうに、と思うだけだったし、むしろ、アンネローゼの呼び方を変えたことをキルヒアイスに伝え、もう様付けは絶対しないよう釘を刺しておくことにこそ意識がいった。

 

 

 

 キルヒアイスは三葉からの手紙を見て、やや不安になったものの超光速通信の録画映像を見て、不安は喜びに変わった。

「……アンネローゼ様から……アンネローゼ……。アンネローゼ」

 口にしてみると、胸が嬉しさと気恥ずかしさで熱くなってしまい、三葉と同じようにガッツポーズしてしまった。けれど、三葉からの手紙では一行だけ、ヴェスターラントという場所で色々あったみたい詳細は記録確認のこと、としか無かった件について情報を艦橋記録とベルゲングリューンからの再報告で知ると、浮かれていた気持ちは沈み、ラインハルトへ詰問のように問うていた。

「ラインハルト様、お話があります」

「なんだ?」

「ヴェスターラントで200万人の住民が虐殺された件です」

「それがどうした?」

「ラインハルト様が、その計画を知りながら、政略的な理由で黙認した、と申す者がおります」

「………」

「事実ですか」

「……そうだ」

 キルヒアイスとアンネローゼに嘘はつきたくない、その気持ちが言いたくない気持ちを上回ったのでラインハルトは答えた。

「………」

「………」

 数秒か、あるいは、もっと長かったのか、重い沈黙があってラインハルトは話題を変えたくてワイングラスを親友へ勧めようとして、その男が涙を零したのでドキリとした。

「……キルヒアイス…」

「ご存じないでしょうし、わからないと思います」

 涙は止まるどころか、話ながらハラリハラリと頬を落ちていく。

「地上で何が起こったか……あんな成層圏からの映像では……」

「………」

「一瞬で死ねたものは、むしろ幸せだったでしょう。運悪く衝撃波と熱線を物陰や地下で、やり過ごせた者は、今頃になって血を吐いて死んでいるでしょう。母親に抱かれていた赤ん坊は、死んだ母親のそばで何時間も……くっ…言葉で言ってわかるものではないのです」

「……お前には、わかるとでも言うのか…」

「わからなくても、少しは知っております! 熱核兵器が生身の人間におよぼす惨劇を! 地獄を! あれは、やってはならないことです! やらせてはならないことです! しかも、戦地に立つ兵士ではなく! 子供や女性がいる…くっ…熱線に皮膚を焼かれて…うぐっ…ぐっ…」

 そこまで言って嗚咽しそうになってキルヒアイスが歯を食いしばると、ラインハルトの両肩をつかんだ。

「200万ですよ! 人類が最初に経験したヒロシマの被爆は10万! あの20倍! あの惨劇の20倍ものことがヴェスターラントで起こった! 起こっている! まだ苦しんでいる者もいるでしょう! 明日、明後日、来年、生き残った者も、ずっと苦しむのです!」

「………」

「なんということをしたのですか……ラインハルト様……」

「……オレがやったわけではない!」

「同じことです! ラインハルト様にしか、止める力も権限もなかった! それをなさらなかった! その不作為は歴史に残るでしょう!」

「くっ……」

 ラインハルトは泣きながら言ってくるキルヒアイスの顔を見ていられなかった。どこかしら、キルヒアイスの雰囲気に女性的なものを感じ、しかもアンネローゼと重なってくるのでラインハルトは、今すぐにでも心から謝罪して許しを乞いたい気持ちを覚えたけれど、顔を伏せて耐える。なおもキルヒアイスは言い募った。

「何百年、何千年、ずっと残ります! ヒロシマナガサキ、13日戦争、そしてヴェスターラント! どうして敗戦明らかな日本へ2発も落としたのか?! なぜ1945年の惨劇を忘れ、百年と経たない2039年に再び使ったのか?! なぜ敗戦明らかな貴族連合が犯す愚行を止めなかったのか?! 歴史を学ぶ者は、みなラインハルト様の名を! 1500年ぶりに人類が犯した過ちに関わった者として記憶するでしょう! 前後に、どんな偉業をなされていようと! 消しようのない悪名が………この先、……ずっと……ラインハルト様の名が……なんということを……どうして……」

「…………」

 ラインハルトは深い罪悪感と強い苛立ちを覚えた。苛立ちは自己嫌悪と後悔が主成分だったけれど、それをキルヒアイスに向ける。

「お説教はたくさんだ! 第一、キルヒアイス、この件に関して、オレがいつお前に意見を求めた?」

「っ…………」

「いつ、お前に意見を求めた、と訊いている」

「………いえ……お求めになっていません」

 号泣していたキルヒアイスが感情を抑え込み、涙を止め、無表情をつくった。それを見てラインハルトは重ねて問う。

「お前はオレの何だ?」

 ラインハルトの言わんとする口調と雰囲気から、キルヒアイスは答えを察した。

「私は閣下の部下です。ローエングラム閣下」

「わかっているんだな、それならいい」

「………」

「お前のために部屋が用意してある。命令があるまで、ゆっくり休め」

「はい。………」

「………」

 まだ何か言いたいことがあるのか、とラインハルトは促したくなかった。けれど、促されずとも、キルヒアイスは言った。

「この戦いが終わってオーディンへ帰還いたしましたら、退役いたします」

「っ…キルヒアイス?!」

「辞めさせてください」

 友人でなく部下なら辞めることもありえる、そして友人でさえ、そうでなくなることもあった。辞意を示したキルヒアイスにラインハルトは焦りを覚えた。

「いや、待て! そんなことは許さん!」

「………」

「お前には、まだまだ仕事があるのだ! そうだ、今回の武勲は大きい! まずは元帥に昇進だ! それから、三長官職のいずれか、いや、その三つすべてをお前のものとしてもいい!」

「………もう辞めさせてください」

「っ…キルヒアイス! オレたちの野望を忘れたのか?! いっしょに宇宙を手に入れよう! もう目の前だ! 帝国は落ちた! あとは同盟とフェザーン! あと5年! いや、3年で落としてみせる!」

「それで、あと何人、死ぬのですか?」

「っ……」

「勝手を申して、すみません」

 そう謝って一礼するとキルヒアイスは踵を返す前にラインハルトを一目だけ見た。これが見納めになるかもしれないという離別の悲しさがこもった視線にラインハルトは既視感を覚えた。姉、アンネローゼが後宮へ捕らわれていくときと同じ目だった。もう会えなくなる、今日が最期、そういう目で見られてラインハルトは追い縋った。

「待ってくれ! オレが悪かった! 行かないでくれ!」

「……ラインハルト様……」

「そうだ。オレは、どうかしていたのだ! どうすればいい?! どうすれば?!」

「ラインハルト様…………」

 背中を向けかけていたキルヒアイスは振り返って、ラインハルトの手を握った。

「過ぎたことは、どうしようもありませんが、私はラインハルト様の味方であり続けたいと思います」

「キルヒアイス……ありがとう。……すまない…」

「ラインハルト様……わかってくださり、ありがとうございます……」

 キルヒアイスは親友を抱きしめて、静かに泣いた。

 

 

 

 三葉は四葉と早朝から山登りしていた。尾根から四葉が眼下を指した。

「ほら、お姉ちゃん。あそこと、こっち、どう見ても隕石が落ちた痕でしょ」

「……うん……そう言われると、そうとしか見えない……2回も……地球って大気があるから、小さい隕石だと燃え尽きるのに……これだけの規模の………こんな規模の隕石が、ごく至近距離で2回もなんて……」

 もう宇宙空間や惑星のことについて、かなり知識を持っている三葉も偶然とは思えない糸守町の地形に驚いている。

「私と四葉が毎回、口噛み酒を奉納してる場所が……」

「どう見てもクレーターの中心だよね。そして、ここへ立ち入っていいのは宮水の巫女だけ。お父さんでさえ何度願っても入れてもらえなかった」

 そう言って四葉はクレーターの中心へと進み、三葉もついていく。石室の中へ入ると、四葉は奥へ奥へと進んだ。

「四葉……そんな奥まで入っていいの?」

「今はね」

「……瓶が……いっぱい……」

 石室の奥には多数の瓶が封印されていた。瓶は同じ形の物もあれば、陶芸の技術の違いなのか、形や材質の違う物もあり、古い物では須恵器まであった。

「これって……全部……口噛み酒?」

「そうだよ。代々の宮水の巫女が、その一生の最期に造った口噛み酒が、ここには封印されてるの」

 そう言った四葉が瓶を二つ、取り上げた。

「これがお母さんが最期に造った口噛み酒、そして、こっちがお婆ちゃんが最期に造った口噛み酒」

「お母さんと……お婆ちゃんが……っ?! ちょ! 開けるの?!」

「私とお姉ちゃんは、1200年周期の最期の巫女だから、いろいろと不足してるんだよ。お母さんも無理をして早く死んじゃった。お婆ちゃんは、いい感じにお役目を終えてるから、ほぼ忘れてる」

 四葉は封印を解いた瓶から一口ずつ、口噛み酒を呑んだ。

「………ああ………そう………そうなんだ………私たちは、やっぱり人間じゃない……」

「よ……四葉……そ、そんな古い物………呑んで……大丈夫なの?」

「大丈夫だよ、おかげで、だいたいわかった」

 そう言った四葉が姉へと瓶を差し出してくる。

「一口ずつ呑んで」

「…………」

 三葉が逃げたそうな顔をすると、四葉は再び瓶を封印した。

「……ごめん……四葉……私、呑む勇気が……」

「いいよ。かわりにキスしよう」

「…………」

 今度も逃げたかったけれど、逃がしてもらえなかった。そっと四葉がキスをしてくる。

「っ……」

 キスをされて唾液が混じると、三葉は膨大な記憶と無数の想いが入ってくるのを感じた。

「どう? わかった? 私たち、人間じゃないでしょ」

「……四葉……私たちって宇宙人なの?」

「語弊はあるけど、宇宙人と人間のハーフじゃないかな」

「ハーフ………」

「私たちの身体は、やっぱり人間そのもの。でも、水に宿る霊、ティアマトから来た私たちの方は地球外生命体ではある。霊であり、流体であり、水である生命」

「霊……霊なんて、存在するの?」

「お姉ちゃんは、何度も時間を超えて入れ替わってるけど、そのとき脳細胞を持っていってると思う?」

「……ううん……そっか………そうだよね……霊なんだ……」

 三葉は自分の両手を見つめ、それから自分を抱いた。

「………私……すべてがイヤになって死んだことがある……のかも……」

「そうだね。あのときの立花瀧は、ひどかったから」

「瀧くん……でも……大好きかもしれない……」

「うまくいくときもあったんだよ」

「なのに……再会したら……世界が止まって……」

「どうしても、無理があるからね。いくら時間や世界を飛び越えられても、因果律の糸までは超越できない」

「………どうして……こんな大切なこと……お母さん、もっと早く教えてくれたら……」

「それは、たぶん、あれだよ」

「あれって?」

「何度も失敗して自分で勉強しなさい、ってこと」

「……ぅぅ……お母さんも……お婆ちゃんも……厳しい人だから……」

「あとは、これも持ち出しておこう」

 四葉は口噛み酒の瓶とは別の場所に保管されていた桐箱を開けると、そこから古文書を出した。

「四葉、それは何?」

「勅命の書状」

「勅命……銀河帝国皇帝の?」

「………。銀河帝国が成立するの、いつか覚えてる?」

「400年くらい前?」

「1100年くらい先!!」

「あ、そっか。そうだった。あそこ中世っぽいから」

「お姉ちゃんは立花瀧と入れ替わってるときも3年先だって気づかないパターンが、ほとんどだったよね?! 人間の方向音痴みたいに、時点音痴なの、どうにかならないの?!」

「うう……時点音痴とか言われた……」

「普通、気づくから。普通の人間でも」

「あ! 瀧くんも、私が死ぬまで気づかなかったよ!」

「………お似合いなんじゃない?」

「うっ……誉めてない……。で、それ、勅命って皇帝じゃないなら、誰の勅命?」

「嵯峨天皇」

「サガ……天皇って……いつの人?」

「813年、1200年前の」

「1200年前……ってことは前に隕石が落ちたときの?」

「そう」

「あ……もしかして、私たちの宇宙人な部分って、2400年前から、じわじわ来襲してるの?」

「来襲はしてないよ。人間と共存してる。まあ、寄生してるとも言うけど」

「寄生………私たちって悪いヤツら?」

「…………。やっぱり、口噛み酒を呑ませようかな……2代といわず5代分くらい…」

「ううっ……」

「私たちは人間の歴史をいい方向に束ねて紐に織り成していく、より高次の霊的存在のはしくれ、いずれは人間も同じステージにあがってもらうためのステップ。わかった?」

「……なんとなく……。で、その勅命の書状は何に使うの?」

「秋祭りの日に落ちてくるティアマト彗星の一部は宮水神社の新たな御神体に加わるから自衛隊にも指一本、触れさせないため安堵証文なの。宮内庁に確かめてもらえば、現代でも通用するはず」

「……天皇制、すごいね……」

「まあ、私たちが巫女なのも、天皇制に寄生してる感じはあるね。共存共栄ってことで」

 四葉は古文書を懐に入れると、外に出て空を見上げた。

「まだ肉眼では見えないけど、感じない? 宇宙に仲間がいること」

「……うーん……なんとなく……。テッシーにムーでも借りようかな」

「変なところから知識を入れようとしないで」

「はーい」

 返事をした三葉は空を見上げて、とりあえず手を振った。

 

 

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