世界を超えた哿と対哿   作:青色の閃光

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原作緋弾のアリア28巻『絶島の珊瑚礁(サウザンクロス)』の内容に触発されて衝動書きしちゃった。
後悔は無い。


弾籠め 序曲の時間

 俺は今オスプレイの上で軍服姿の少女──ネモと対峙している。

 その理由は先日出会ったばかりの妹のかなでを、米軍はアメリカに連れ帰ってかなでの胸に埋まっている逆色金(カウンター・アイ)を摘出する予定だったが、それは逆色金有するかなでを連れ去ろうとする『N』──世界を過去に戻す組織の事だ──から妨害が入り失敗した。

 ちなみに逆色金とは緋緋神、瑠瑠神、璃璃神など神の意思が宿る色金──宇宙から飛来した金属を元に人が作り出した金属の事であり、その逆色金は人が神を乗っ取るための金属だ。

 そしてそういった逆色金の力を使おうとするNからも兄さん、俺、ジーサード、かなめの活躍でかなでの奪還に成功し、逆色金の力も無力化したが、俺は墜落しかけているオスプレイからの脱出が出来ない状態だ。

 そんな俺にネモはNに来いと提示してきた。

 刻一刻と燃えていき空中分解まであと数分と差し迫ったオスプレイを見ながら俺は──

 

「……やむを得ないな。よし、Nの見学に行ってやる」

 

 俺は銃を八岐大蛇(メタルストーム)に収め、ネモの周囲に広がる青い光の靄へと入った。

 その俺を見たネモはニヤリと笑みを浮かべ──

 

「賢明だ、遠山キンジ」

 

 そう答えると瞬間移動のために少し俯いて集中し出した。

 すると青い光の靄は急速に強まる。それを眺めながら俺は心の中でカウントダウンを始める。

 ──3、2、1──今だッ。と、俺はネモの肩を突こうとした時。

 

「では行くぞ」

 

 集中していたネモが突然、背を伸ばし、顔を上げて俺を見上げる。

 結果として姿勢が変わってしまったため、肩を突こうとしていた俺の手は……

 ──むにゅ。

 ネモの()()、つ、掴んじゃったッ……!

 それも両手で。両胸を。なんで俺はここでこんなミスをすんの!

 

「──⁉」

 

 悪賢そうな両目を、まん丸に見開いたネモはツインテールを跳ね上げてビビり、俺も敵とはいえ女の子の胸を掴んだ事でビビる。

 

「……うッ……?」

「──?」

 

 ネモが慌てた声を上げた事で、硬直していた俺は胸を掴んだまま周囲を見回すと気付いた。

 強まった青い光の靄が、()()()()()事に。これはネモの集中が大きく乱れたせいだ。

 歪みは頭上が凹んだようになって、球体だった靄はハートみたいな形になっている。

 ネモの表情は慌て、焦り、青ざめている。

 ──瞬間移動に失敗したんだ。

 それが分かった俺も青ざめた時。

 光に包まれたまま音も無く、空間が切り替わった感覚がした瞬間。

 

 ──ガッシャャャンッ‼

 

 ガラスを突き抜けたような感覚に続き、ガラスが砕けたような音が聞こえ、俺の視界が切り替わると同時に、落とし穴に落ちるような感じがした。

 引力に引っ張られて落下途中に慌てて周囲の状況を確認する。

 そうしたら20mほどの高さからコンクリートの地面に落下していた。それを確かめた俺は体勢を立て直すと、両足の橘花──衝撃を打ち消す防御技──で着地する。

 

(あっぶねぇッ)

 

 着地した俺は周囲を見渡した。

 どこだ? ここは?

 そう思っていると俺が着地した場所から、少し離れた場所にネモが着地した。

 それに続いてダークシーグレー色の鉄板──オスプレイの破片と俺の学生鞄が落ちてきた。

 

「──‼」

「……ッ……‼」

 

 それを見た俺は鞄に向けて駆け寄ると、ネモも俺の鞄に駆け寄り出した。

 

「ネモ! それはお前には必要ないもんだ!」

「ああ、そうだろう。だが貴様には必要な物だろう?」

 

 言いながらネモは腰のホルスターからレ・マット・リボルバーを抜銃して撃ってきた。俺も腕を振り八岐大蛇の袖口から飛び出したベレッタを瞬時に握り、銃弾撃ち(ビリヤード)でネモの撃った銃弾を弾く。

 銃弾を弾いた俺はネモより先に鞄を掴み取り、クルリと回るとネモが俺の額に拳銃を突き付けようとしてきた。

 それを見た俺も拳銃をネモの額に突き付ける。

 同時に拳銃を額に突き付けた俺とネモは互いに睨み合う。

 

「ここまで近ければ、さすがに次次元水晶(エトランジュワルツ)は使えないだろう」

「それはどうだろうな。もしかすると銃口内で展開するかも知れないぞ?」

 

 その可能性は無きにしも非ずだ。

 ちなみに次次元水晶とは攻撃を跳ね返したり、打ち消したりする超々能力(ハイパーステルス)の未知なる技だ。

 

「だが、このまま私が撃ったところで貴様は死ぬワケでは無い。カツェ・グラッセの時と同様の方法で避けるのだろう? この化物め」

「薄気味悪い魔女に言われたくないね」

 

 互いに額に突き付けた拳銃が必殺の武器にならないため、俺とネモは同時に銃口を額から逸らして拳銃をホルスターに収める。

 その時──ひゅう、と風が吹いて気付いた。

 

(7月だと言うのに妙に寒いな)

 

 気温は10度以下だ。

 どういう事だ?

 それにネモも気付いたのか眉を寄せた。

 

「ネモ。違うとは思うが聞くぞ。ここがNか?」

「──否。街の風景からして恐らく日本だろう」

 

 やっぱりか。

 気温的には3月っぽい理由は不明だが……

 

「おい。瞬間移動が時間跳躍になったんじゃないだろうな?」

「だとしたら貴様のせいだ。オスプレイの上で貴様が、あ、あんな不埒な真似をするから陽位相跳躍(フェルミオンリープ)を失錯したのだ。それをムリヤリ再設定したために私は──いや、何でも無い」

「何を言おうとした⁉」

「敵である貴様が知る資格など無い。それよりも貴様、よくも未婚の淑女の、む、胸を触ったな⁉」

「そ、それは悪かった。肩を押そうとしたんだが、お前が姿勢を変えるから……」

「言い訳などするな!」

 

 そう言ってネモは赤い顔で俺の顔面目掛けて、ハイタッチのようなビンタを両手で喰らわそうとしてきた。

 それを俺はヒステリアモードの反射神経で避ける。

 ヒステリアモードとは正式名称をヒステリア・サヴァン・シンドロームといい、俺の家──遠山家が先祖代々受け継いできた特異体質の事だ。

 この体質の人間は常人の約30倍の量の、恋愛時脳内物質βエンドルフィンという神経伝達物質を分泌し、それが大脳・小脳・脊髄といった中枢神経系を強化する事で論理的思考力、判断力、反射神経が向上するのだ。

 つまり性的に興奮すると、一時的にスーパーモードになれるワケである。

 そのヒステリアモードでビンタを躱されたネモは、再び攻撃を仕掛けてこようとした時。

 

 ──ドガァァァンッッッ‼‼‼

 

 耳を(つんざ)くような爆音が聞こえてきた。

 その音を聞いた俺とネモは同時に音の方に振り向く。

 

「日本にしちゃ物騒な音だな」

 

 そんな事を俺が呟くとネモは「この気配は……ッ!」などと言って、爆音が聞こえた方向へと駆けていった。

 放置しといても良かったが、あんな強大な敵を1人で放り出すワケにもいかず追い掛けるしか無かった。

 

 

 

 しばらくネモを追って走ってるとヒステリアモードが徐々に解けてきた。

 それに構わずネモを追ってると、不意にネモの目の前の壁が吹き飛んだ。そこから飛び出してきた存在を俺はヒステリアモードの眼で捉えた。

 なんだ……あれは……

 あのどこまで異質で、異様で、異形の存在は……ッ⁉

 一瞬だけだがタコやイカのような触手が見えた。

 

「ネモッ! あれはNの一員かッ⁉」

 

 グランデュカ──2000年前から生きているライオン頭の巨漢である剣闘士や、ヴァルキュリア──槍を扱い側頭部に小ぶりな翼がある色白で美人な戦乙女(ワルキューレ)のように、異形の生物達が所属するNの一員かと思い問い掛けてみたが、ネモは異形の生物が飛び去っていった方向をただ黙って見ているだけだ。

 そのネモの横顔を見ていると口が動いた。

 それを読唇すると──

 

「なぜだッ。気配はするのに『通信』が、『受信』が、出来ない……」

 

 などと言っていた。

 どういう事だ? 知り合いじゃないのか?

 いや、それよりも先程ネモが言った言葉の意味はなんだ。

『通信』とか『受信』とか言われてもイミフだ。解けかけのヒステリアモードで考えても分からない。

 そんな事を考えてた時だ、異形の生物が吹き飛ばした建物から中学の制服を着た黒髪の少女が飛び出してきた。

 あの少女は……あかりだ。

 雪村あかり。高校に通ってた時の同級生で俺がチーム・バスカービルに居た時のメンバーだ。

 ただ、俺が知ってるあかりより身長が若干低い。

 俺が知ってるのは150㎝弱のあかりだが、今俺の目の前を駆け抜けていったあかりの身長は143㎝ぐらいに見える。

 一体、どういう事だ。

 ここが日本だということ以外は何も分からない。

 あの生物も、今が寒いということも、あかりの身長が縮んでることも何もかもだ。

 ふと、異形の生物が去っていった方向を見ていたネモに視線を向けると、あかりに目を向けて何かに焦った表情で追っていった。

 

「お、おい! ネモ!」

 

 声を掛けたが構わずネモは追っていく。

 

「ああ、くそッ!」

 

 俺は叫ぶと慌ててネモを追い掛けた。

 なぁネモ、一体全体、今俺達の身に何が起きてるんだよ。

 

 

 

 これが俺、(エネイブル)こと遠山金次と対哿(ディスエネイブル)ことネモの2人が巻き込まれた不思議な事件の序曲(プレリュード)である。




ネモがあんなに可愛いとは思わなかったよ。
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