終ぞ、叶わなかった願い   作:黒彼

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あらすじでも書いた通り、残酷な表現が書かれております。
キャラ崩壊のシ-ンもあります。むしろほぼそうです。
それでもよろしければスクロールし、無理だと思われたら戻って下さい。



美しすぎた結末

発端は何だっただろうか。私にも分からない

 

 

随分、随分昔に承太郎との激闘の末に不死身のこのDIOは、スタンドを破壊するという方法で敗れた。

スタンドは確かに不死身ではない。敵ながら、不死身なこの私を攻略した承太郎に感心した。

左足から顔にかけて亀裂が入り、これはもう死んでしまったと認めたくはないが理解してしまった私は叫びながら消滅したはずだった。

だが、唐突に感じた、締め付けられるような頭部の痛みにはっと目が覚めたように意識が覚醒し、無いはずの目を開き周りを確認しようとするが真っ暗で何も見えない。このDIOの身に何が起きているのか全く分からなかった。

押し出そうとしているのか圧し潰そうとしているのか分からないが、とてつもない痛みにSPW財団がこのDIOの体に何かをしているんじゃあないかと思い当たり、腹立たしく思った。

生きてる時では太刀打ちできないので死体となった私にならと攻撃している、雑魚のような行為をしている奴がこのDIOに触れていると思うと腸が煮えくり返るほど憎たらしい。このDIOは敵と正々堂々と、偶に仕掛けを用いていても頂点を手に入れるために対峙した。

こんな姑息な手を使う奴に良いようにやられるなど言語道断!絶対に赦しはしない!!

そう思っていると視界が段々と明るくなってきた。

体が再生してきているのだろうか?なら好都合!このDIO自ら葬ってやるわ!!

何故かまるで流れるように体が動き、光が広がる。

では、反撃しようではないか!

 

WRYYYYYYY!!!!貴様らこのDIOに何をする!!!

「うぃぃぃぃい!!いあぁぁぁーーーう!!!」

 

…何が起きている?

私は確かに言葉を発したはずだった。

何だ、この怪獣のような叫びは。

喉が潰れていたのか?

視界が滲む。まさか私が泣いているというのか…!?

突然の浮遊感。温かい液体に体を突っ込まれ、頭が混乱する。

私を持ち上げた!?195cmの巨体の男をまるで子供のように持ち上げた人物がいる!?

スタンド使いが居たのか…?だとしてもこのDIOが全員殺してやるわぁぁあ!!

 

「生まれたわよ!元気な男の子よ!」

「あぁ、…愛しい、私の子供…」

 

視界が鮮明になり、私を覗き込んでいる二人の女が目に入った。

こんな貧弱な女にこのDIOが持ち上げられている!?嘘だろう!?

……ん?私の子…?

 

「貴方はディオ、ディオ・ブランド―。生まれてきてくれてありがとう」

 

…何十年か経ち、忘れていたらしい。

女の内の一人を、私は見たことがあるじゃないか。

彼女はマリア・ブランド―。

とても哀れなほど優しい、私の母親。

 

 

 

確か始まりがそうだったような気がする。

本当に何年も前なんだ。

このDIOでも全てを覚えているわけではない。

 

 

 

どうやら私は転生をしたらしい。幼少の頃と全く同じ環境に、全く同じ親、全く同じ容姿に名前なので、ループという方が正しいかもしれないが、そこはスルーしよう。

あれから数年して、母は死んだ。前と同じ、過労と栄養失調で。

クズも前と同じで酒に明け暮れ、酒と酒代を俺に集る。

俺も相変わらずイカサマやスリ、強奪と色々とやりながら金を貯める。

当初は困惑したが、一度行っていた行為をもう一度やるだけなので支障はなかった。

スタンドが居ればもっと楽だが、いないのだからしょうがない。

前と同じようにワンチェンから毒を買い、少しずつ少しずつ、真綿で首を締めるように毒を酒に盛って渡し、毒の症状を病気のせいにして毒を薬だと称して与え続けた。

前と同じようにクズは死に、前と同じようにジョースター家に引き取られた。

…何だか味気の無いものだな。

少し変えてみようと、犬を蹴らず、ジョジョにも猫を被り続けた。

相変わらず腐抜けた貴族共はこちらを疑うこともせず、思考が甘ちゃんでとても助かる。

 

——ジョナサン、大丈夫か?

——ジョジョ、知っているかい?

——ジョジョ!

 

警戒もせず、俺を慕うジョナサンを見るのはとても滑稽で笑いを誘う。

毎日、嘲笑を堪えるのに必死だった。

が、結局クズからの手紙で毒の件はバレた。前と同じように追い詰められたが前と同じように仮面を被り、吸血鬼となって死生人を増やし、ジョジョと死闘を繰り広げたが結局敗れ、クルーザーに乗り込んでジョジョの体を奪った。

…なのだが、前と違う現象が発生した。

ジョジョが「体を君に渡したい」と言ってきたのだ。

——どうしても昔の優しい君が忘れられないんだ。だから、生きて、ディオ。

ジョジョは最後の最後まで甘ちゃんだった。宿敵と言えるこのDIOに昔、親切にされたからって情に囚われて見す見す生かしたのだ。だからお前はこのDIOに殺されるんだよ、この腑抜けがぁぁぁ!!

だがあえて、俺は体を乗っ取ることをしなかった。はい、どうぞと情で与えられたものを、このDIOが受け取る訳がないだろう!

だから俺はこのまま素直に焼かれることにした。このDIOの生を終えるにはまだ早いが、ジョジョを良いように騙せていたことを考えると別にいいのではないかと思い始めた。

………この頭の中を巡るモヤモヤから目を背けて―…。

 

 

****

 

 

またループをした。

今度は3歳の時に思い出した。

相変わらずクズはクズのままで、母はまた早くに死んだ。

また毒でクズを殺し、また引き取られた。

接する態度を前々回に戻した。あのモヤモヤは無くなった気がした。

 

前と同じように体を奪い、ジョースター一行を倒す為にまず、私は花京院とポルナレフと接触するのを止めた。

私が送ったことでジョースターと会合し、ジョースターに倒さたと同時に肉の芽を摘出され、共通する敵ができ、情が生まれ、こちらに向かう仲間になるという流れだったのだから、私が2人に会合しなければ敵が減る。

見事に成功し、承太郎は逃がしたがジョセフを倒せた!

今回の生では、このDIOが『世界』を手中に治めるのも赤子の手をひねるように簡単やもしれんなぁ!

 

 

****

 

 

くっ、油断したばかりに!

承太郎は特にジョナサンに似ていたことを失念しておった…!悔しくてしょうがない!!

あの爆発力は本当に厄介で、このDIOも認めていたというのに…!

承太郎がジョセフの浮気相手の子供―仗助を連れて、私に挑んできた。

時止めもいつの間にか習得していた!

今度こそは必ずジョースター家を根絶やしにしてやる!!!

 

 

****

 

 

まさかホルホースが仲間に加わるとは…。

もう少しアイツらを懐柔すれば次こそは…!

 

 

****

 

 

…まさか、自分の息子に敗れるとはな。

敗れたことを憎むべきか、息子の力を褒め称えるべきか…。

難しいものだな。

それにしても、この私とあの汐華の子供がジョースターの血を受け継いだとは…。

何とも複雑だな。

 

 

****

 

 

今度は知らない奴がジョースターの方に付いていた。

私の方にも知らない部下が増えていた。

向う側が七人というのも奇妙なモノを感じるな。

…奇妙というよりも違和感か。何度も見ていて見慣れている一向に、異例の人物がいるのは何だか嫌悪感を覚える。

まるで気に入っていた絵画に他人が良かれと色を加えてしまい、一気にガラクタに感じてしまうように。

私ももう1000年近く生きている。いつになったら『世界』を手に入れられるのだろうか。

 

……いつになったら私のループが止まるのだろうか。

 

 

****

 

 

なんと、今度はこのDIOを実験すると財団のモンキー共が言い出して、体を色々と弄るつもりらしい。

そんなモルモットに行うことをこのDIOに行おうとしているなんて、なんて屈辱的なんだ!!!

ジョースター家も流石に倫理的にも道徳的にも駄目だと言うが、財団は聞かずに私を研究所に運ぼうとする。

承太郎が怒号する。ジョセフも止めたいが体力が無いようで、動けないらしい。承太郎も同様だ。

スタンドで抵抗しろ?お前が砕いたんだろうが。

だが、このDIOも大人しく実験体になるつもりは毛頭ない。

そんなことをされるくらいなら、このDIO自ら自決してやるわ!!

触手を出し、力を振り絞って拘束を解いて外に飛び出す。

眩しい、太陽の光が私を射す。吸血鬼になってから自ら日に当たったのは初めてだから知らなかった。

周りの建物がとても高くて、窓ガラスが日の光を反射している。

人が忙しなく動き、活気の良さを見せる街。

昔より自然が少ないが、ちらほらと生えている木々が生い茂っており、生命力を感じる。

とても綺麗で、同じ青の海にはない魅力を持つ、青空。

あぁ、美しい。壮大だ。太陽を今まで忌々しく思っていたが、悪くないな。

 

体が、崩れる。

でも、こんなに清々しいのは、初めてだな。

ふと、承太郎が、どんな反応して、いるのか、気になって、振り返る。

…おいおい、どうしたんだ、承太郎。

私は、お前の、敵だろう?

何故、悲しみ、を堪えたよ、うな顔を、するん、だ!!

何時かのジョナサンに感じた、あのモヤモヤを、感じたような気がした。

 

 

****

 

 

何故か女になっていた。

何度も確認するほど驚いた。

だが他の事柄は変わっていなかったから、バグも起きると無理矢理受け止め、前と同じように生活を送ろうとしていた。

クズが私を見る。

ゴロツキが私を見る。

まるで見定めるように。

まるで舐めるように。

まるで———盛った犬っころのように。

母はその視線に気付いていて、私を守ろうと頑張ってくれている。

母は今世では若干、長生きしている。だが、弱っている。近い内に死ぬのだろう。

それまでに何とかあのクズを毒殺しなければ…!

 

 

ははが熱で倒れているときを狙って、おそわれた。

体を這う、太い指。

気持ちの悪い息遣いに、かかる吐息。

暴れると腹や、顔を殴られる。

あぁ、いたい、イタイ、痛い!!

止めろ!止めてくれ!!裂けるような痛みに、体の負担を考えないほどの重みのある衝撃を受け、胃液を吐く。

助てくれ!助けて!母さん!!

痛い痛い痛いイタイイタイ痛い痛い!!!!

 

 

 

…頬を軽く叩かれる。呼びかける声は母のもの。

目を開くと、母は涙を流していた。

触れていいのかと戸惑うように彷徨う手。その手に触れると母の顔がさらに悲しみに歪み、私を抱き寄せた。

守れなくてごめんなさいと何度も泣きながら謝っている。

あのクズはどうしたのかと聞くと、母は息を飲み、視線を左に移した。

そちらを見ると———クズが死んでいた。

衝撃を受けた。

母は言う。あの人がディオを犯していると分かり、居ても立っても居られなくなって近くにあった酒瓶を、あの人の頭に振り降ろしたのだと。

あんなに、愛していたじゃあないか。あのクズの事を。

酷い目にあっても、見放すことをしなかったのに、私を守るために…?

続けて母は言う。殺してしまったけれど、遅くなってしまったけど、ディオが生きていて良かったと。

 

あぁ、温かい。

母の温もりは、相も変わらず温かいなぁ。

視界が歪む。嗚咽を我慢しようとするが、時々漏れてしまう。

母はそんな私の頭を優しく撫で、私が生きていることに対して安堵した表情をする。

この時、私の中で母の存在が、共に居たい存在に変わった。

 

 

ジョースター家に保護を願う手紙を書いたが、母は無理が祟り、迎えが来る前に息を引き取ってしまった。私は泣いた。泣いて泣いて、獣のように雄叫びを上げた。

 

私は今世でジョージ氏を殺すことを止めた。

何故か分からないが、その行動を取る気になれなかったのだ。

一番ではないのに、今とても満たされているように感じているのだ。

……本当は理由が分かっている。あんなに母に愛されていたことが分かり、今まで感じていた飢えが無くなったのだ。

私は愛に飢えていたらしい。

まるで子供のような理由に、今までの千年近くの生で目指していた『世界』を手にするという目的は何だったと思うが、しょうがない。満たされてしまったのだから。

女としての人生は初めてだから学ぶことが多い。それも楽しい。

ジョジョとは体力では敵わないので学で張り合うことにした。

前までにはなかった関係、というよりは少しだけ丸くなった関係に納まった今の関係はとても有意義な時だった。

ジョジョとこんなに穏やかに会話をする日が来るとは思わなかった。が、この関係も悪くないと思った。

ジョージ氏は、あのクズに私が何されたのかを手紙で知っているから、縁談を無理に進めて来ない。

とても快適だった。何て居心地の良い場所なんだ。

母さんも早くここに移れば死ななかったのではないだろうか。そこが悔やまれる。

このまま人間として生きて、死にかけている時に墓に眠る母に思い出を語ろう。

それまで楽しかった出来事を忘れないように、日記に綴ろう。

今世では売らなかった母のドレスを形見として、大切にしよう。

母譲りの金色の髪を、母より伸ばしてみよう。

待っていて、母さん。

面白い話を土産に天国に行くからね。

 

 

食事と勉学を終え、私室に戻り一息つく。

今日は、何だか違和感があった。

とても小さくて気付きにくい、けれど気付かないと後々危険に冒される、そんな信号。

何が違う?スクールではいつも通りだった。変わったことと言ったら先輩に告白されたくらいだ。

でも、その時ではない。もっと後だ。いや、今日一日感じてはいたが。

強くなったのは…そうだ、いつも馬車で一緒に帰っていたジョジョが、何故か先に徒歩で帰っていたんだ。

そうだ、その時からだ。いつも一緒に帰ろうと催促するジョジョが何故か、伝言も無しに帰ったのだ。そのことを従者に聞いた時は驚いたが、そんな日もあるかと片付けた。だが、父に憧れ、アイツは紳士を目指している。そんな奴が何もしなかったということは、何か緊急事態があったのではないか?

いや、だが帰宅した時のジョジョの様子は至って普通だった。どこにも焦りなどは無かった。

思い過ごしだったか?いや、どこかが可笑しかった。

 

回想せよ、思い出さなければ、私の人生は終わる。

 

頭の中を巡る警告が、私を焦らせる。

どのタイミングで感じた?何故だ。何故こんなに思い返しても分からないんだ。

焦る。焦燥する。どうして、なにが?急がなければ、私は、殺される。

 

 

コンッ

 

 

突然鳴ったノック音。

三回鳴らすのは、メイド達やジョージ氏。

一回鳴らすのは、ジョジョ。

ということは、訪ねているのはジョジョということになる。

外からジョジョが、私に呼びかける。

やっぱり、ジョジョだ。出なければ。だけれど何故だろう。開けるのがとても怖い。

このDIOが、ジョジョに恐怖している…?何故?なぜ?

不審に思ったジョジョが、もう一度私に呼びかける。慌てて返事をし、入室を許可した。

 

…一向に用件を言わないジョジョに疑念を抱く。

静寂の中、ジョジョを待つが口を開かない。

 

「…おい、ジョジョ。何の用なんだ?」

「……あのさ、」

「…」

「その、今日さ、」

「あ”―――!!じれったい!!何だっていうんだ!男ならはっきりと言え!!」

 

ついに耐えられなくなりジョジョに怒鳴るように言うと、ジョジョは体をビクつかせ口を開いた。

 

「今日の放課後、誰かに君、告白されていただろう?」

「?あぁ、断ったがな」

「そうなんだ」

 

どこか空気が柔らかくなった気がする。

 

「…ディオが告白されているところを見てね、僕、とても驚いたんだ」

 

まるで呆けたように言うジョジョに、違和感を感じる。

 

「あ、別に、ディオが告白されることじゃないよ?」

 

眉間に皺を寄せていたらしくジョジョが慌てて訂正を入れてきた。

だが、では何だというのだ?

 

「僕ね、とても嫉妬していたんだ」

「…は?」

「そうなんだ、僕も驚いたよ。だって、君が告白されたところなんて見慣れてるはずなのに、何故か今日、ふと思ったんだ。君が嫁いだら僕との関係はどうなってしまうんだろうって」

「今まで通りに決まっているじゃあないか」

「本当にそうかい?」

 

ジョジョのいつも輝いているエメラルドグリーンの瞳が、光を失いテールグリーンに見える。

本当に目の前にいるのはジョナサンだろうか。

 

「今まで、僕たちは良きライバルとして接していた。互いに、一番意識している…っていう表現がしっくりくるほどに、僕たちは切磋琢磨して競い合っていた。…でも、君にパートナーが出来たら?子供が出来たら?君の中の僕はどれくらいだけ存在出来ている?」

「…ジョジョ?」

 

何を言っているんだ?

ジョジョ、お前にはエリナという恋人がいるだろう?

そんな変な考えが出てくるほど、ジョジョの言葉がとても重かった。

 

「…私は絶対に嫁がない」

「そんなの分からないじゃないか」

「…ジョジョに言ってなかったが、私はむかし」

「父親に強姦された、だから男とは添い遂げないって?」

 

――――――今、ジョジョはなんといった?

 

「なんでしって…?」

「この前、ディオの母親からの手紙を見つけてね。全部読んだんだ」

 

ジョジョに知られた?あの忌々しい過去を?このDIOの人生最大の汚点を?!!

何で、何故、何故知ってしまったんだ!!

…落ち着け、冷静に会話を続けなければ。

今、可笑しいジョジョに主導権を握られるのは危ないと本能が訴えている。

 

「……知っているなら何故疑うんだ」

「疑っているわけじゃあないんだ。現に、君は一度も告白をOKしたことは無い。だけどね、ディオ」

 

ジョジョがこちらに歩み寄る。

何故かジョジョが恐ろしい怪物に見えて後ずさる。

 

「でもね、ディオ。苦手と言いながら、僕は君の部屋に入れているじゃあないか。君は、他人には厳しいけど身内には甘い。だから、君は一回でも、一瞬でも気を許せば絶対に嫌いにならない。例え酷いことをされても甘受してしまう。その君の優しさに付け込まれたら、そう考えると僕は可笑しくなりそうだったよ」

 

だって、君にはエリナがいるじゃあないか。

第一、私たちは義理とはいえ家族で、ライバルで。部屋に入れるのを許可したのもそれが理由で。

何がいけなかったのだろうか。

私が異性であるにも関わらず、同性のように振る舞っていたことか?

ジョジョなら大丈夫だと隙を見せていたことか?

”原点”と同じようにジョジョと接しなかったからか?

私が”女”だからか?

 

「だからさ、もう一度怖い目に遭えば大丈夫かなぁ?」

 

近くにあった布を、ジョナサンに投げる。

見事に目隠しになれたようでごたついている。その隙に部屋から飛び出す。

それはもう反射だった。あのままだったら、私はジョジョに壊されていたかもしれない。

止めてくれ、ジョジョ、お願いだから元に戻ってくれ、君はそんなことをするような人じゃないだろう!

 

後ろから私を呼ぶ声が聞こえる。

女の私では男のジョジョには足の速さで勝てない。せめて、外に行けば…!

あと少しで扉に着く。あぁ、階段がまどろっこしい!!

 

「ディオ!!」

 

左腕に感じた、逞しい手の感触。あぁ、捕まってしまった!捕まってしまった!!

 

「離してくれ!ジョジョ!」

「離せないよディオ。だって、離したら僕から逃げてしまうだろう?」

 

怖い

怖い、ジョジョじゃあない。

 

「離せと言ってっ…!」

 

ジョジョの手から離れようと、思い切り体を捻ると階段から足を踏み外した。

突如感じた浮遊感。ジョジョがどんどんと離れていく。ジョジョがこちらに手を伸ばしている。

 

体全体に広がる痛みに、意識を失いそうになる。

階段のほぼ一番上から落ちたんだ。しかも頭から。最低でも後遺症が残り、最悪…死ぬだろう。

 

「ディオ!ディオッ!!」

「…」

「お願いだから、目を開けてくれ!」

 

ふん、私だってお前の間抜けな面を拝みたいわ。でもな、目を開けれないんだよ。

死ぬんだろうな、私は。

…ふ、そうだ、違和感。違和感はこれだったのだ。

今日、正確にはこの日付は私が人間を止めた日ではないか。

虫の知らせだったのかもしれない。もっと早くに気付いていたら対策か話し合いくらいなら出来たのかもしれないな。

顔にぽつぽつと当たる雫を感じながら俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

****

 

 

「………ぃ…先輩?」

 

肩を揺すられ、意識が段々と覚醒し始めた。アレは夢だったらしい。アレはいつの私だっけ?

 

「んっ…?」

「先輩起きましたか?」

「…あぁ、すまないね堀君。眠っていたようだ」

「最近特に忙しかったですもんね。隈も酷いですよ。ちゃんと休んでますか?」

 

未だに心配ですと顔に書いてあるような顔をする彼に、苦笑する。

彼は堀 空助君。私の技術を盗もうと頑張っている私の自慢の後輩だ。相変わらずしっかりしている。

 

あれから私はまた何度もループした。今の私は性別は男だが、環境が変わった。

車があり、高い建物が多く、自然が少ない。人でごった返していて、道が狭い。そう、承太郎の生きていた時に近い時代に生まれたのだ。

しかも国が日本ときた!ジョースターの策略じゃないかと最初は警戒したものだ。

今世の父は早くに事故で亡くなり、母が私を一生懸命育ててくれた。

今世の母は前の薄幸な雰囲気が似合わない、とても活発でよく笑う、太陽のような性格だった。そして、前と変わらず優しい。

そんな母に、私は恩返しをするために勉学に励み、家事を手伝い、医大を卒業し、日々励んで大学病院で働いている。

だが、私は目立つことをしなかった。

いつだったかの世で関わっていないのにもかかわらず、俺が写っている写真を見て殺害しに来た時もあった。

ジョースターでは私=悪という認識らしく、私を見つけたら排除しようとする。

せっかくの生を終わらせられないように、俺は潜むことを選んだ。母と平穏に暮らせられるなら何でもいい。

なのでサポートの方を徹底し、あたかもこの人がいたから成功したんです、と振る舞うことにした。

私は目立たず、向うは称賛を浴びる。お互いwin-winなので誰も文句など言わない。

堀君は、そんな中で今までの偉業が私の手腕だと見抜き、私に教えを請いたのだ。そんな後輩を私は重宝している。

 

元気だった母も歳を取り、肺を悪くして入院を繰り返している。

今度こそ救おうと私は母の病気を徹底的に調べた。

が、私は一度として母を救えたことが無い。そんな私が母を救えるのか、という考えが頭を巡る。

だから私は助手、そして堀君を主治医として手術をしてもらう為に、私の持っている技術を堀君に全て教えている。

堀君に一度、”どうして先輩が主治医を担当しないんですか?”と聞かれ、私の弱さを見せると馬鹿にせず、意志を固めたように”任せてください”と言ってくれ、感極まって泣いてしまったのは余談だが。

 

だから油断していたのだ。ここまでが幸福すぎて、忘れていたのだ。

私の前には必ず、ジョースターが現れ、全てを崩壊されることに。

 

病院とは、診察・治療を行う民間施設である。

だから誰でも気軽に行ける施設であるため、いつジョースターの誰かが来院するか警戒しながら私は働いていた。

患者として一度も会ったことは無かった。来院履歴にもない。

この日本にいないんじゃないかと安心していたんだ。

まさか、こんな形で遭遇するとは思わなかった。

 

 

「「ディ、ディオ(DIO)!!」」

 

研修生だと紹介された3人。目の前に現れた研修生は、ジョースター共だった。

期待の星らしく(ジョースターだけに)、沢山の経験を持つ私に紹介されたのだが、向うは驚愕の表情でこちらを見てくる。こっちがしたいわ!何でお前らこうも私の所に来るんだ!私が好きなのか!私の追っかけか!!

 

「え、えっと、私はディオ・ブランド―です。君たちは?」

「てめぇ、なぁにしらばっくれてんだ!」

「ブランド―先生、知り合いですか?」

「いえ、(今世では)初対面です」

「てんめぇ…!」

「…何だか、話し合った方がよさそうですね。後は任せて下さい」

「はぁ…じゃあ、持ち場に戻ります」

「色々とこれからの事を話さないといけないから、空いてる個室に移ろうか」

 

まだ言い足りない、信じられないという顔で見てくる3人に溜息が零れそうになる。

そんな顔をするなら事前に調べとけよ…。

 

 

「…で、ここに連れてきた理由は何だい?」

 

最初に口を開いたのはジョジョだった。

座るように勧めるが警戒してか座る様子を見せない3人に我慢出来ず、溜息を零し、椅子に座る。

 

「理由も何も、あそこで騒いだら迷惑だろう」

「ハッ!どうだかな!」

「いい加減、睨むのを止めてくれないか。仕事に支障が出るだろう。私は今世で何もしていない」

「!記憶があるのか!」

 

一気に殺気立つアイツらに、面倒だなと舌を打つ。

 

「おい、記憶が無かったらお前たち私になんて言い訳するつもりだったんだ?急に怒鳴り、威嚇する研修生なんて印象悪すぎだろう」

「「っ」」

 

バツが悪くなったのか目を逸らすアイツらに、また溜息を吐く。

暴走するところがあるのは、世が変わっても変わらないらしい。

 

「あぁ、確かに記憶はあるぞ。だが今は静かに平和に暮らしているんだ」

「お前が”平和”だなんて言葉を使うとはな」

「お前みたいなゲロ以下が何でここに!」

「私も何巡もすれば丸くはなる。それに元々いたのは私だ。就職先にケチをつけるでないわ」

「っ」

「何巡?」

 

私の言葉に引っ掛かった様子のジョジョが催促の視線で私を見る。

 

「?無いのか?」

「何言ってんだよ。前世の記憶なら」

「そうじゃあない。私は最低でも50回はループしていて記憶も全て保持されている」

「「はぁ!?」」

 

成程、だから反応が若いのか。前は記憶が無い状態にもかかわらず殺しに来たから、記憶があると聞いて勘違いしてしまった。

 

「そうだ。何度も何度もループをし続けている。私が吸血鬼にならなかったり、ジョジョの体を奪わなかったり、女になったり…本当に気が遠くなるくらいに時代を繰り返した。仗助やジョルノと対峙したこともあったぞ?」

「…」

「本当に…気が狂うかと思っていたわ。私が何もしていなくても、お前たちジョースターは私を探し出して殺すのだ。何も覚えていなくても一回目の体験が体に染みついているのか、それが世の摂理なのだというように私はお前たちに殺される」

 

”殺される”という言葉に驚いたのか、三人の目が見開く。

まぁ、そうだろうな。お前たちは覚えていないのだから。

 

「…いずれ、私はお前たちに殺されるのだろう。命乞いはしない。だが、一週間待ってくれないか?」

「…一週間?」

「今、私の母が入院していてね。重い病気で、あまり長くないんだ。…治療法を何とか見つけられたのだが難しくてね、用意を整えるには一週間かかるのだ。だから母の手術まで何もしないでくれ。頼む。こんなに母が長生きなのは今世が初めてなんだ…」

 

頭を下げる。すると、息を飲むような音が聞こえた。

そうだろう。私が、ジョースターに頭を下げているのだ。アイツらからしたら驚く光景だろう。

だが、今はプライドだ何だ言ってられない。

母の命が掛かっている。母を助けられるなら何度だって頭を下げる。

 

「…俺たちが何もしなければ、お前も何もしないんだな」

「あぁ」

「もし、お前の母親の邪魔をしたらどうする」

「…そうだな、どうするか、」

―――そんなの殺すしかないだろう。

 

私が答えると三人は目をまた見開き、見合わせ、決断したようにあの輝くエメラルドグリーンの瞳を私に向けた。

 

「…分かった、俺たちはお前に何もしない」

「正直、まだ疑ってるけどねん」

「君が母親を大切にしていることが凄く伝わったよ。僕たちに出来ることは無いかい?」

 

…初めてだった。

ジョースターが許容した。前までは話も聞かずに、聞いても嘘だろうと切り捨てられて殺された。

何だ、これは。夢か、幻聴か、アイツらの作戦か?

いや、あの目は本当の事を言っていて…?

 

「おい?」

「あ、あぁ、何も動かなければいい。お前たちは周りに多大な影響を与える。何かしらの行動、一言、視線で私に敵意を向けるとそれが広まる。お前たちが私を殺せば褒め称えられ、お前たちが殺さずとも誰かしらが行動に移し、私を殺す。それが今までの流れだ」

「「…」」

「だから、さっきのお前たちの反応を見たアイツが気になるが…まぁ、置いておこう。とにかく私に関わるな、無い者と思え、視界にも入れるな、以上だ」

「「…」」

「あと、母にも関わるな。お前たちの担当は私になっているが、こちらで何とかしよう。……何だ、その目は」

 

まるで不満ですと訴えているような視線でこちらで見てくる三人(195cmの大男)

別にいいだろう。私に教わることや、そもそも対面すること自体お前たちは嫌だろう。何に不満があるというんだ。

 

「べっつにぃ?」

「…」

「何だか、寂しいなぁと思ってさ」

「何を言っている。先程まで啖呵を切り、あんなに警戒をしていたじゃあないか」

「確かにそうなんだけどさ…」

「もう話は終わりだ。私はこれから、先程案内していた男と話をした後、お前たちの担当を変えるように誘導する。そこで大人しいく待っていろ」

 

何だかまだ視線を感じるが、それを無視して部屋を出る。

―――あぁ、顔がにやけそうだ。

関わらないと約束を結べた。あの私の天敵―運命と言っても過言ではない奴等と!!

これで、母は救える。死因が病死でも、栄養失調でも、暴力による失血死でもなく、寿命になる!

これほどの歓喜は今まで感じたことが無い!!

あぁ、早く案内したアイツに話をしなければ。あと、アイツらを押し付けなければ。何と言い訳をしようか?

あぁ、もうそんなことはどうでもいい!この喜び、歓喜に私は浸かりたい…。

母さん待っていてくれ。最高のプレゼントを、貴女に送ります。

 

それから、案内には”何かの大会で昔知り合っていたらしいんだが、その時に彼らの兄を負かしたのを根に持っていたようだ。”と言い訳し(あながち間違ってはいない)、昇進に燃えている同期に研修生がいかに有能かを語り、こんな自分で大丈夫かとワザと不安の色を見せると自分が世話をすると食い付いてきた。教えた研修生が上に上がれば、教授した者も同時に有能だということになるので上司の目に留まることとなるだろう。

これで懸念が減った、と、思っていたんだ!

何故こちらに視線を向ける、何故食堂で隣に座ろうとする、何故私に教えを乞う!!!!

2つはまぁ、たまたま、しょうがなくで済まされる。だが最後に関しては、お前たちの担当がこっちを睨んでくるんだ!早く離れろ!!

 

 

 

私はその時、安堵してしまった

あの宿敵と初めて交渉が出来たのが嬉しくて、舞い上がっていた

 

 

 

 

 

母が、ははが死んだ。

手術を控える前日に、酸素を送っていた機械の電源が切られていて酸素が体に行き渡らず、死んでいた。

母は苦しかったはずなのに、穏やかな顔で眠っていた。

歳を取っているのに肌理が細かい母の肌が、青白くなって、とても冷たい。

綺麗なブラウン色の瞳は瞳孔が開いていて、私を映さない。

心を安らかにさせる、あの優しい声がもう聴けない。

あれ程、未来を語り合ったではないか。私に孫を見せろと言っていたではないか。元気になったら少し遠出をして、その地の産地を沢山食べたいと言っていたではないか。

私に治してもらうのだと、看護師に自慢していると聞いたぞ。あの時は恥ずかしくも思ったが、何だかくすぐったかった。

あぁぁぁぁあああぁぁぁぁっぁああっぁぁあぁぁ?????

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、退職させて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い花があちらこちらに飾られている。

目の前には大きな桐箱。それこそ、人がすっぽりと入れそうな――そりゃあそうだ、これは棺桶なんだから。

昔はアレを寝床にしていたんだなとぼんやりと考える。

小窓から見える母は死に化粧を纏っていて、普段化粧をしない人だったから少し違和感がある。

さっきまで唱えていた住職は私に一礼した後帰ったので、ここにいるのは私一人だけだ。

……いや、一人だったか。

 

「おやおや、私は家族葬にしたはずなんだがな」

「…ディオ」

 

振り返れば、やはりジョースター達が居た。

ジョジョ、ジョセフ、承太郎、高校生くらいの仗助、中学生くらいのジョルノ、あと一人、小学生くらいの女がいるがアレもジョースターの一人なんだろう。

私に関わったことがある奴を連れてきたというところか?女は言った通り知らないが。

 

「ジョォジョォ、笑いに来たのか?そりゃあ滑稽だよなぁ、このDIOが頭を下げて敵に頼んだのに、結局意味が無かったんだ。とんだ道化だろう?」

「そんな事はない!…あんなに調べたり指導したり、どうにかしてディオのお母さんを救おうという行動は僕とジョセフ、承太郎は見ていたんだ。笑うなんてするわけない!」

「相も変わらずな甘ちゃんだなぁ、ジョジョ。なら何故、ここに来た」

 

私はジョースターを睨むが向うの若い三人だけ震え、ジョジョたちは只々私を見るだけだった。

どうして、ここにいるのだろうか。来てもお前たちは関わりがないだろう?

 

「…何だか、DIOに会わなければならないと思ったんだぜ」

「でも、仕事退職してたし。何だか、胸騒ぎがしてねん」

「それでここに来たんだ。この子たちは以前君が会ったことがあるって言ってたし、ジョルノは君の息子だろう?徐倫…一番端の子は承太郎が君に会わせた方がいいと言って連れて来たんだ」

 

まるで気まずそうに、だが意志の強さが伝わる目をした徐倫。

多分、いや十中八九、承太郎の娘だろう。あの青い瞳ではないから確証はないが。

 

「…そうか、その胸騒ぎは運命なんだろうな」

「…どういうことだ?」

「…フ、フフフフ、ッハハハハハ!!!」

 

笑い出す私に、驚いた顔をするがすぐに警戒し、まだ小さい末裔たちを庇うジョジョたち。

そう、その瞳だ。その瞳が輝くのを見たかった。

 

「何で退職したのか、その理由は分からないのか?」

「…あぁ」

「なら、教えてあげよう!何故退職したのか!それは実に簡単、復讐をしたかったからだ!!」

「「ふ、復讐!?」」

「いい反応をありがとう、ジョースター!そうだ、私は、母を殺した犯人を見つけることが出来たのだ!私は憎い!そいつがとても、私は憎い!!!」

「まさか、」

「…勘がいいな、ジョセフ。そうだ、私はそいつを殺すために仕事を辞めたんだ!仕事なんかに時間を割り振るなんて勿体ないことをしたくないからなぁ!」

「てンめぇ…!」

「本当によく来てくれたよ、ジョースター!お前たちが来てくれたお陰で………私は実行できる」

 

取り出すのは拳銃。アイツらはギョッとした顔をして、徐倫は悲鳴を上げる。

銃なんて日本ではあまりお目に掛れないが、誰でも所持できる。所持が出来る条件はめんどくさいが。

ジョジョが迫ってきた時に使おうと準備していたが、全てが終わった後に使うとはな。

 

「馬鹿な真似は止めるんだ、ディオ!」

「フン、お前たちに私を止めることは出来ない」

「ぜってぇに、止めてみせるもんねぇ!」

「そんなことをしてお前のお袋は喜ぶと思ってんのか!」

「………あの人は、望まないだろう。本当にどこにでもいるような女だが、とても優しく、あんなに体が細くなっても私や周りの子供にパンを与えるような人だった」

「ならっ、」

「だからと言って、ユルセナイ、許せる筈がない!!何故許せると言うんだ!?大事な母を、失ったというのに!お前たちだって自分の大事な妻、娘、母、仲間を守る為に私を殺したというのに!!私はお前たちと違って、大切な人を救えてないんだぞ!!何故お前たちは良くて私は駄目なのだ!!」

「「っ!」」

 

あぁ、視界が滲む。だが気にしていられない。

憎い。母を奪う、クズと同じようなことをする奴が!何故生きているんだ!

早く殺したい!息の根を止めて、醜い死に様を晒したい!世界から葬ってやりたい!!

心が真っ黒に染まっていく。早く、早く殺さなけレバ…

 

「それでも、僕は君を止める!止めてみせる!君がしようとしていることは、今までの君の行為を全て無駄にすることになる!元義理兄弟だった僕が、昔君を止められなかった僕が、今度こそ君を止めてみせる!!」

「俺も手伝うぜぇ、ジョナ兄!せっかくまともになったっていうのに、目の前で悪事を働くのを見す見す逃すかっつーの!」

「俺も、受けて立つぜ!今度も止めてやる!」

「フン、無駄無駄無駄ァ!!これは運命だと言っただろう!止めることなど出来るはずがない!…お前たちに言ったな。私は何度もループしていると」

「あ?あぁ…」

 

急な私のトーンダウンに構えていた奴らがたじろぐ。

 

「その中で女にもなったことがあると言っただろう?だが、毎回性別が変わっているわけじゃあないし、環境が変わっているわけでもない。ある条件、を満たした場合のみ私のループした際の環境はガラリと変わる。…私も50以上も繰り返していたらその条件が何なのか分かる。それを私は実行したい」

「…わざわざそれを言ったってことは相当な自信があるんだろうな」

「あぁ、あるとも。お前たちに、私を止めることは出来ない。賭けてもいいくらいだぞ?」

「じゃあ、僕たちが勝ったら、諦めてもらうよ」

「いいぞ、ジョジョ。では、私が勝ったらどうしようか…」

 

 

 

prrrrrr-prrrrrr-

 

唐突に鳴った電子音にアイツらは戸惑う。発信源は私の胸元からだ。

私は胸元のポケットからスマートフォンを取り出し、電話に出てスピーカー設定にする。

 

「もしもし」

『もしもし、ブランド―様でしょうか?』

「あぁ」

『棺の追加を頼みたいと連絡を頂いたようなのですが…?』

「あぁ、近々、亡くなる人間が居てね。先に頼んでおこうと思ってね」

『―――分かりました、何名でしょうか?』

 

女の声から、声が変わる。ノイズがかった声は何度も聞いたことのある声だった。

急な機械音に、アイツらはざわつく。そうだよな、お前たちは前を覚えていないから聞くのは初めてか。

私は、持っていた銃を蟀谷に運ぶ。

驚愕の表情を浮かべ、こちらに進もうとしているが体が動かないようだ。絶望したような顔をしている。

 

「そんなの決まっているだろう?人数など聞く意味があるのか?」

―――――――――私一人だろう?

 

 

響いたのは、一つの銃声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dear 私の宿敵へ

 

私が書いたこの手紙を貴様らが読んでいるということは私は賭けに勝ったのだろう。

私は、私自身を殺害することに成功した。

幽霊という存在が実在するなら私は祝福を挙げているだろう!まぁ、私はまたループを繰り返しているだろうが。

私がループする際に環境を変える条件は一つ、自ら命を絶つことだ。

何故それが分かったのかは省略しよう。聞かせたいわけではないからな。

 

うむ、遺書など書いたことが無いから何を書けばいいのか分からないので、どうして私が自殺することになったのかという経緯を話すとしよう。

始まりは遡ること…いつだろうな。何回目かのループに毒ではなく薬を買い、母を延命させようとしたことがあった。

母は快調になり、何とかクズからの暴力を耐えながら二人で支えあっていた。

そんな日々を過ごしていた時、母が”夕方に帰る”と言って仕事に出たがいやに帰りが遅くて。

胸騒ぎがして町中を探したら、路地裏で死んでいた。暴行された跡があり、長かった母の髪は乱雑に切られていた。

何で母がこんな目に、と私は阿鼻叫喚した。

すぐに母の髪を売った奴を炙りだして殺し、母が亡くなっても酒を求めるクズも毒を飲ませて殺した。

その後何回も何回も母の延命をしようとしたが必ず最後に惨い死を遂げる。

今世も母は死んだ。

実は手術の前日に何者かが、或いはジョースターが来るのではないかと今までの経験が告げていたので、ビデオカメラをいくつか設置していた。約束を交わしていたが、万が一のことを思うとな。

そのうちの一つが件の電源を映していたので犯人を拝んでやろうと映像を見た。

だが、そのカメラには誰も映っていなかった。誰も映ってないのに電源が動いた!

この世界にスタンドという概念が存在しているのかと疑ったがお前たちが使えていないのに存在しているわけがないという確信があるので違うだろう。

そこで思い出したのが母が暴行を受けた時の話だ。

母の髪を売った奴を殺す前に吐かせた時に”自分は暴行を加えてない、自分が女を見つけた時には死んでいた”と言った。

が、あの時間帯に路地裏に入っていったのはその男だけだったのでその時は信じなかったが、今思うと、ある仮説が生まれる。

――ディオ・ブランド―の母は短命というシナリオが存在していて、見えない力に殺されたのではないかと。

私が可笑しくなったと思うだろうが、私はそのシナリオがあると断言出来るのだ。

何故なら、私も”ジョースターに敗れる”というシナリオを持っているのではないかという程、お前たちに殺されているからだ。言い方を変えれば”運命”か。

ある一回の時、自分が死にかけている時に友人に電話を掛けようとした際に圏外になったのだ。目の前のお前らは電話をして身内の無事を確認をしていたのに。見えない力が働いていて私を殺そうとしている。その考えに行きついた時から私はお前たちに反抗する気もなくなったものだ。

…話が逸れたな。

とにかくだ、私は母に長生きをして欲しい、が、”ディオ・ブランド―の母親は短命”というシナリオがあるならばソレが存在する限り、母は人生を謳歌出来ない。ならばどうすればいいか。

―――”母”が他の”何か”になればいい。祖母でも姉妹でも娘でも、幼馴染、先輩、上司、後輩、孫でもいい。”母”でなければいいのだ。

私が死ぬことによって、母が生きられる道が出来るなら良い。…私もここまで生き方が変わるとは思わなかったが。

自殺をした次の生は、環境か性別が変わる。次の生で母が他の存在になっていることを願うとしよう。

まぁ、もしその仮説が違うのなら、他の仮説を立てて試すとしよう。どうせ、私には沢山の”時”がある。

 

では、また来世で会合するだろう。その時、貴様らは覚えてないだろうがな。

 

 

 

P.S.何故お前らの前で死んだかというと、毎回毎回こちらが痛い目を見ているからだ。

  お前らお人好し共は、目の前で自殺した奴を救えないのはさぞ心を痛めただろうな。

  ザマァミロ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しすぎた結末(大事な者の為の自殺)

 

 

 

 

 

 

 

 

また、どこかで産声が上がった。




この後の続きは、お気に入りにして下さった方がいたら書こうと思います。もし続きを書くならば、DIOに優しい世界の話を書く予定ですので、このお話のDIOが幸せなところを見たい方はお気に入りをポチッとして下さい。






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