てな訳でどうぞ
月曜日。
それは新たな一週間の始まりであり、同時に気の重い初日でもある。
今廊下を重い足取りで歩いている少年、空山ソウジもその気の重い初日を感じている一人だ。と言っても、学校に行くこと自体にはそこまで気が重いわけではない。問題は教室で広げられるとある光景からなのだ。
その光景を脳裏に浮かべながら、ソウジは何時も通り時間に余裕をもって教室へと入る。
「おはよう、空山くん!」
「……ああ、おはようさん白崎。あと八重樫も」
「私はついでかしら……」
ソウジに挨拶をしてきたのは学校で二大女神と称されている白崎香織と、ソウジのおまけのような挨拶に呆れているのは同じく二大女神の片割れである八重樫雫だ。
ソウジは比較的彼女達と親交がある。二人はソウジの叔父と叔母が経営している『滝川書店』の常連客なのだ。書店といってもゲームやDVD等も取り扱っているが。
二人が常連客なのは、白崎がとある人物と親交を深めたいが故、八重樫はその付き添いから常連となった。
そのとある人物の名前は南雲ハジメ。滝川書店の常連にして、ソウジの友人である。
白崎は自覚無しで南雲に淡い恋心を抱いている。書店に来店したのも南雲と同じオタクになれば?という八重樫の投げやりなアドバイスからだ。
……最も、地下のアダルトコーナーに突撃していった時は目を疑ったし、店の手伝いをしていたソウジに目撃された時、八重樫は顔を青ざめさせていたが。理由を問い質した際―――
『オタクってこういうのを好むんじゃないの!?』
……あながち間違いとも言えない回答が返ってきたことに、二人が頭を抱えたのは言うまでもないだろう。
その後、南雲の名前が出てきた事である程度白崎の気持ちを察したソウジは、南雲が購入しそうな書物やゲーム、DVDの発売日を白崎に教える事にした。結果、店に来た南雲は毎回白崎に会うという構図が出来上がることとなった。白崎は毎回偶然と言い張っている事もあり、あまり進展してはいないが。
ちなみに八重樫は恋愛系の書物を好んでおり、本人は恥ずかしさからその事を周りに隠している。その為、目的の書物を買う際は変装して店に来ている。
「やあ、おはよう空山」
「よお、空山」
次にソウジに挨拶してきたのは、天之河光輝。白崎と八重樫の幼馴染みにして、容姿、能力共に優れた完璧超人だ。
天之河はよく人助けをしているが、ソウジから見るとどうにも自分本位な行動の上、他人を全く疑わない。しかも都合が悪いと自覚無しでご都合解釈して自己完結するからタチが悪い。その悪癖をソウジは何度も指摘しているのだが、当の本人は笑って受け流すだけで一向に耳を傾けない。
一度、天之河のご都合解釈の悪癖を矯正してもらうよう、八重樫に頼んでみた事がある。だが、八重樫は天之河の悪癖を昔から何度も指摘していたそうで、毎回聞き流されているそうだ。ソウジはそれを知った際、八重樫共々深い溜め息を吐く事となったのは言うまでもない。
最後に挨拶してきたのは坂上龍太郎。天之河の親友にして脳筋である。
ソウジは二人にも挨拶を済ませて席につき、持ってきていた推理小説を読んでいると。
「よぉ、キモオタ!また、徹夜でエロゲか?」
檜山大輔の耳障りな声が飛んできた。
ソウジは本を閉じ、後ろを見やると―――
「おはよう南雲くん!今日もギリギリだね」
白崎がにこやかな笑顔で南雲に話しかけてきていた。それにより、一斉に敵意と侮蔑、一部呆れと羨ましげな視線が南雲に向けられる。
そんな南雲に八重樫、天之河、坂上が近寄り、八重樫だけ南雲に挨拶する。天之河と坂上は南雲の普段の態度からあまり良い印象を抱いていない故、対応も少し辛辣なものだ。
実際、天之河は南雲に見当違いの忠告をするので……
「……天之河。白崎は会話の糸口程度で言ってるだけだから、甘えと違うと思うぞ」
ソウジは爆弾と自覚しつつ、天之河にそう伝える。白崎はあくまで南雲と会話したいから話しかけているのだ。困った顔一つしないのがある意味証拠である。
「そうだよ光輝くん。空山くんの言う通り、私は南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」
そのソウジの言い分に便乗するように、白崎が無自覚に爆弾を投下し、教室内はさらに殺気が充満していったが。
ちなみにクラスの何人かは、白崎は厚意ではなく好意から南雲に話しかけていると気づいている。書店で白崎が南雲に話しかけている光景を何度も目撃していれば、鈍感でない限りさすがに気づくと言うものだ。
「え?……ああ、ホント、香織は優しいな」
その鈍感で白崎の気持ちに全く気づいていない天之河は、白崎の発言をソウジと南雲に気を遣ったと解釈したようだ。相変わらずの天之河に、ソウジはうんざりしていると。
「空山君。何であんな事をいうの?」
「事実を言っただけだ」
南雲が小声で非難してきたので、ソウジも小声であっさりと受け流す。
「てか、いい加減この毎朝の空気をどうにかしろ。鬱陶しくて仕方ないんだよ」
南雲のスタンス―――“趣味の合間に人生”を知っており、その為の努力をしている事も知っている。なのでソウジは変えろとまでは言わないが、稀にこちらに飛び火してくるのである程度の折り合いをつけて欲しいと思っている。
一度檜山から、エロ本読んでるだろ?とちょっかいをかけられたのだ。……檜山は盛大に店のアダルトコーナーに入った事を自白して、撃退する事には成功したが。
そんなソウジの懇願を……
「アハハ……」
南雲は場を誤魔化すための愛想笑いで返した。
「頼むから考えておいてくれ」
時間が迫ってきたこともあり、ソウジは南雲にそれだけ言い、席へと座る。
授業が始まると南雲はいつも通り、夢の世界へと旅立ち、ソウジはそんな南雲の姿に呆れたように嘆息した。
――――――――――――――――――
午前中の授業が終わり昼休みになったので、ソウジは持ってきていた弁当を取り出し、食事を取る。
目を覚ました南雲は定番のチャージ食で済ませ、また眠ろうとするも。
「珍しいね、南雲くん。よかったら一緒にお弁当どうかな?」
白崎がチャンスとばかりに南雲に話しかけ、弁当に誘ってきた。
南雲はもう済ませたと言い、謝りながらチャージ食の残骸を見せるも。
「ええっ!?それだけなの!?私のお弁当、分けてあげるからちゃんと食べようよ!!」
ものの見事に逆効果であった。
ソウジもこれはチャンスと思い、二人に屋上で食べてこいと伝えようとした矢先、天之河が空気を読まずに妨害に入った。しかも『俺が許さないよ?』とか、ソウジからしたら不穏な発言をかまして。
白崎と八重樫に将来、彼氏が出来たらどうするのかと不安になった矢先―――
「は?」
天之河の足元に魔方陣らしきものが輝いており、それが教室全体にへと拡大していき―――
―――視界が光によって、真っ白に塗り潰された。
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