てな訳でどうぞ
今回、ソウジ達が転移した場所した場所は洞の中だった。正面には光が見え、外へと通じる出入口が最初から開いている。
メンバーも全員おり、偽物もいないので、互いに頷き合って、光が差し込む出入口に向かって歩き始めていく。
「これは……まるでフェアベルゲンみたいだな」
ハジメの呟きに全員が確かにと頷く。
洞の先は通路となっていたのだが、その通路の正体洞から続く巨大な枝だったのだ。振り返れば、端を捉えきれない程の巨木な木の幹が見える。その巨木からあちこちから突き出している巨大な枝が空中で絡み合って、フェアベルゲンのような空中回廊を作っている。こちらは巨木一本で作り上げられているが。
上を見上げれば石盤が見えるので、ここが馬鹿でかい地下空間だとわかる。そして、この大樹はあの地上の大樹のものである可能性も。
全員が大樹の凄まじい巨大さに度肝を抜かれて無意識に頭上を見上げていると、シアのウサミミがピクピクと動き出した。
「あら?なんでしょうか、この音は……?」
「フィアさんも聞こえてます?」
「ええ。この下からカサカサ、ザワザワと何かが蠢いているような音が微かに」
フィアの狐耳もシアと同じ音を捉えたようでピクピクと動かしている。フィアのその表現に、ソウジはまさかと思い、枝通路の端から下方を覗き込む。暗い上に、相当距離があるので、“遠見”と“夜目”でその音の発生源を視界に捉えた。
「……うげぇ」
ソウジはその正体を理解し、本当にげんなりとした表情で溜め息を深く吐いた。その態度は明らかに嫌なものを見たそれである。
「……ソウジ。一体何を見たのだ?」
普段のソウジらしくない態度に、嫌な予感を感じたアタランテの問いかけに、ソウジは本当にうんざりしたようにその答えを口にした。
「……台所の黒い悪魔―――
「「「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」」」
ソウジが明かしたやつらの正体に、全員が顔を一瞬で青ざめさせた。あのハジメでさえもだ。そして、八重樫が代表して青ざめた表情のまま、恐る恐る問いかけた。
「……ぐ、具体的には?」
「この地下空間全体で隙間なく、重なり合って蠢くくらいだ。もう海といっても過言じゃない」
その瞬間、全員の肌に鳥肌が立った。特にシアはウサミミを塞いでしゃがみこみ、フィアはしゃがまずいつもの表情だが、狐耳を塞いでその音を遮っている。
あの、一匹見つけたら三十匹はいると思え!いつもカサカサ這い寄り、陰から陰へ高速で移動し、途方もない生命力でしぶとく生き足掻く、恐怖と混沌をもたらす悪魔の権化!宙を飛べば、破壊力倍増!混乱と恐慌をもたらすGの悪魔が海を形成するくらいに今いる場所の真下にいるのだから、この反応は当然である。
「……取り敢えず、先に奴らを殲滅するか。間違いなく大迷宮の試練に関係しているからな」
そんな戦慄する周りに構わず、ソウジはそう言って“宝物庫”から竜殺剣を取り出し、同時に紅雪も取り出してGの海を消そうと―――
「やめろソウジ!!本当にやめるんだ!!!」
「……ん!!」
「そ、そうだよ!撃ち漏らした瞬間に地獄が始まっちゃうよ!!!」
「頼むソウジ。今は早計な行動は控えてくれ!」
「ソウジ様、今は様子を見るべきです。ええ、様子を見るべきです!!」
「さすがに妾も勘弁願いたいのじゃ」
「駄目ですよソウジさん!!本当に駄目ですよ!!!」
「今すぐお茶を用意致しますので、どうか落ち着いてください」
「本当にやめて空山君。お願いだから本当にやめてください!!!」
「本当に頼む空山!!俺達の精神が死んでしまう!!」
「あんな大群と一戦交えたくないぜ。マジで!!」
「鈴からもお願い!!Gを刺激しないで!!!」
して、全員が決死の表情でソウジを止めにかかっていた。それはもう、今までにないくらいの切羽詰まった表情で。
彼らは幻視したのだ。数千匹のGが一斉に飛んで来る光景を。もし、そのままGの波に呑まれでもしたら……想像すらしたくない。
「だが、どう考えてもあのGがこの場の試練に関係しているのは明白だぞ?なら、今すぐ殲滅すべきだと思うが?」
「「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」」
ソウジの至極真っ当な正論に、全員が黙りとなる。確かに言われてみれば、この空間にGが大量にいる時点で明らかに大迷宮との試練に無関係ではない。無関係ではないのだが……
「……頼む、ソウジ。少し猶予を与えてくれ。奴らと戦う為の心の準備が欲しい……」
ハジメの真剣な表情の言葉に、全員が真剣な表情でうんうんと頷く。
「……まぁ、ここだと足場が少し悪いからな。奴らの殲滅はあの足場でやるぞ。それまでに覚悟を決めとけよ?後、何時でも迎撃出来る準備もな」
周りより大きな枝通路の足場に指をさして告げたソウジの言葉に、全員が死刑を執行される囚人のような表情で頷いた。どちらにせよ、Gとの戦闘は避けられないようである。
ソウジはそのままニフテリーザを一機取り出し、Gの監視ために下方へと飛ばしてから例の足場を目指して道なりに移動を始めていく。
ハジメ達も、死刑囚のような気持ちでソウジに続いていく。その足取りは著しく重い。
「と、ところで空山君。どうしてそんなに平然としているのよ?」
「日本にいた頃は、家のG退治は全部オレがやっていたからな。要は慣れだ。流石にあの数は引いたがな」
「……ご家族全員、Gが駄目なの?」
「常時、アー○ジェットを三本携帯し、一匹見つけたら速攻でバ○サン焚こうとするくらいには。ホ○ホイも三百個以上設置してる。それも年に一度、全部取り替える徹底ぶりだ」
「……そう」
意外と苦労していたソウジに、八重樫を含めた全員が同情の視線を送る。ソウジはその視線を無視して、Gを監視しながら大きな足場を目指していく。紅雪は既に展開済みである。
「……南雲。俺は今ほど空山に勝てないと思ったことはない」
「安心しろ天之河。俺もだ」
天之河の言葉に、クロスビットを周囲に展開しているハジメが神妙な顔で同意している。そんな二人の言葉に周りが同意するようにするようにうんうんと頷いている。
ソウジはそんな周りの反応に構わず、若干、急ぎ足で例の足場に向かって進んでいく。
「全員急げよ。奴ら動きに変化があった。今にも飛んで来そうな体勢だ」
ソウジの言葉に全員が再び顔を青ざめさせ、例の足場へと素早く、慎重に、急いで目指していく。
そうして、先にソウジがその足場に到着した途端、盛大に舌打ちをかまし、展開していた紅雪を大急ぎで配置し始めた。
「ソウジ?まさか……」
「そのまさかだ。奴らが一斉に飛び立った。もうすぐ此方に来るぞ!!」
「「「「「「「「「「「「ッ!!!!」」」」」」」」」」」」
ソウジの警告に、全員が表情を引き攣らせ、大慌てで例の足場に向かっていく。そして、全員が到着すると―――
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!!!
奴らの大量の羽ばたき音が耳に届いてきた。
「ちくしょおおおおおおおお!!」
「ほ、ほんとに来たぁあああああああああああ!!」
「ひぃいいいいいいいいいいい!!」
「くるなぁあああああああああああ!!」
「ッーーーー!!」
猛烈な勢いで迫ってくる黒い津波に、ハジメはオルカンとクロスビットの爆撃を、ユエは“雷龍”を、アタランテは“雷雨”を、シアはドリュッケンの砲撃を、ティオとジークリンデはブレスを、香織は分解砲撃を、フィアは“幻創”で作ったロケットランチャーを、八重樫は四皇空雲の“飛蒼華刃”を、天之河は“天翔閃”を、坂上は籠手型アーティファクトの衝撃波を、谷口は“天絶・連爆”を一斉にぶっ放した。
ソウジも竜殺剣の“蒼牙號天翔”と紅雪の“迦具土”でGを悉く焼き落としていくも、いかんせん数が多く、Gの波はどんどん迫ってくる。
「―――“聖絶ぅ”!」
谷口が半泣きになりながら障壁を張った直後、ソウジ達のいる広場の更に上空までせりあがっていたGの波は一気に障壁に襲いかかった。
障壁の外壁に物凄い勢いでぶつかり、G達は体液を撒き散らして瞑れる、もしくは外壁を這うというグロテスクな光景を作り上げていく。
「―――ご、め、ん」
「寝るな鈴ぅ!寝たら俺達の精神が死ぬぞ!!だから寝ないでくれぇ!!!」
謝りながら意識を失いかけた谷口を、咄嗟に支えた天之河が必死の形相で、必死に呼び掛ける。
「ユエ、重ねて防御を頼む!」
「……ん、絶対破らせない!」
「紅雪・範囲陣形:
ユエ谷口の障壁に重ねて自身の障壁を展開し、同時にソウジが紅雪を十本を上下一直線の陣形を四陣展開し、それぞれを独楽のように猛烈に回転させ、蒼い炎の竜巻と化してGを次々と吸い込んで殲滅していく。
“紅雪・範囲陣形:甕速”。“嵐陣”を加えたことで使用可能となった炎の竜巻を起こす陣形である。
それでもGが圧倒的に数が多く、雀の涙程の効果しかないのか、一向に減った様子を見せない。
「この迷宮に来てからこんなのばっかりですねぇ……」
「今までの大迷宮より厄介極まりないの~」
「条件が条件だけに、難易度が高く設定されているのは当然なのでしょうが、流石に……」
「は、早く何とかしないと!!」
「大丈夫よ香織。あれの退治に手慣れていると明かした空山君がいるから大丈夫よ。だから空山君。早くあいつらを退治してちょうだい」
「……何で抱きついているんだ?」
「ソウジから離れろ、雫」
正気を失ったように瞳からハイライトが消え、ソウジに抱きついている八重樫をアタランテが憮然とした表情でグイグイと引き剥がしにかかっている。
と、その時、障壁に群がっていたGが一斉に引き、ソウジ達の前で空中で球体を作ると、それを中心に囲むように円環を作り出していく。それも二つである。
その光景は……
「おいおいおい……」
「まさか、魔方陣を形成しているのか?」
Gが作り上げていく幾何学的な模様にハジメとソウジは盛大に頬を引き攣らせる。ハジメとソウジは確信した。あのGは“神の使徒”を模しているんだと。
当然、ソウジ達はその球体に向かって攻撃を仕掛けるも、Gの波が肉壁となって防ぎ……魔法の発動を許してしまった。
「「ギギチチチチチチッ!!!」」
魔方陣が強烈な赤黒い光を放つと、球体はムカデのような全長三メートル程の巨大Gとなり、不快な鳴き声を発した。
手前の巨大Gは真っ黒だが、奥の巨大Gは若干赤みが混じっている。
その巨大Gは周囲のGを操って、更に魔方陣を形成し始めていく。
「チッ、させるッッ!?」
「……んっっ!?」
ハジメとユエが率先してその魔方陣を攻撃しようとした瞬間、突然、足元から魔力の奔流が発生した。
「……なっっ!?」
「しまったっっ!?」
ソウジとアタランテもその奔流を感じ、その正体が、今いる通路の裏側にいるG達が作った魔方陣だと理解した瞬間、Gの魔法が発動した。
足場の枝通路を透過した赤黒い光がソウジ達を襲いかかる。ソウジ達はとっさに顔を手で庇い、その光に包まれる。
光が収まり、無傷のソウジ達が互いに顔を見合わせる。
そこにあったのは―――嫌悪だった。
「スリッパ、新聞紙、はたき、粘着シートetc……」
「ヤバい!南雲が混乱してるぞ!!」
「ガチでまずいぞ!!」
「灼熱地獄は……足場まで崩壊しそうだから無理。毒は……手元に有効なのはないし量が圧倒的に足りないからこれも無理。空間固定の障壁も……時間がかかる上にこちらも多くが攻撃できなくなるから無理。だから、それぞれの遠距離攻撃で対応が今はベストだな」
「こっちは頼もしいけど、冷静過ぎて逆に怖い!!」
Gの海に割と平然としているソウジに戦慄する雫の図。
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