魔王の剣   作:厄介な猫さん

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アニメ二期が制作決定……本当にどこまでやるのかな?……帝国編がかなりすっ飛ばされそうな気がするのは気のせいかな?
てな訳でどうぞ


炬燵には鍋

氷の槍が突き出すトラップや、氷壁そのものが倒れてくるといった迷宮らしい様々なトラップと奇襲をかけてくるフロスト系の魔物達を突破し、探索を続けて十二時間は経過した。

 

 

「もう、結構歩いたと思うのだけど……南雲君、距離的にどうかしら?」

 

 

幾ばくか疲労が滲んでいる声色で八重樫が羅針盤を持っているハジメに尋ねる。体力的にはどうということはないが、気が抜けない上に変わり映えしない単調な景色で集中力が切れかかってきているようだ。天之河と谷口も似たような状態だ。

 

 

「う~ん、迷路だから直線距離はあてにならないだろ?一応、入口から二キロくらいは来たみたいだが」

 

「そう……」

 

「ま、丁度いい場所があればそこで一旦休憩でいいだろ。腹が減っては戦は出来ぬと言うしな」

 

「そうだな。無理させてポカをさせるのも本末転倒の上に面倒だし、そうするか」

 

「ふふ、ありがとう。空山君」

 

 

ソウジの提案にハジメが頷いたことで、八重樫は頬を綻ばせながらソウジに礼を伝える。そして、もうひと踏ん張りだと言い聞かせて気合を入れ直した。

……背後から刺さるソウジに侍るハーレムズの視線に気付かずに。

 

 

「龍太郎くんはわりと平気そうだね?」

 

「あー、多分、特訓のおかげだな。樹海のランニング中、ハウリア達がトラップを仕掛けたり、ランダムで奇襲を仕掛けて来たからな。あれと比べれば大分マシだ」

 

「…………」

 

 

坂上の予想外の答えに谷口は言葉を失った。自分が体中を叩かれていた間に、坂上はそんな悪辣なランニングをさせられていたのかと……

ちなみにその悪辣なランニングは、新入り兎人族達もやらされていた。まさに詰め込みすぎの鬼の所業である。

 

それからしばらく歩くと、一行は通路の先に大きな両開きの扉がある突き当たりに出くわした。“芸術家”らしく意匠が細やかな扉には四つほど大きな穴が円形で空いている。

 

 

「これはまた壮観な扉じゃのぉ」

 

「……ん、綺麗」

 

「……そうだな」

 

 

ティオとユエ、アタランテが扉に見入っている間に、ハジメがその扉を渾身の力で押してみる。案の定、扉はびくともしない。

 

 

「はぁ。セオリー通りなら、この不自然な窪みに何かをはめれば扉は開くんだろうな……」

 

「だったらここで一旦休憩にするか。場所とタイミングも丁度いいからな」

 

「そうだな。ここで一旦、休憩にするか」

 

 

ハジメのその言葉で、疲労が溜まっていた天之河達はホッと息を吐いて崩れ落ちるようにその場で座り込む。

 

 

「お前ら、休むなら部屋の中央にしろ。壁際だと奇襲される可能性があるんだからな」

 

 

ソウジの忠告で天之河達がのろのろと中央へ向かう間に、ハジメが“宝物庫”から回復効果のある炬燵と絨毯、結界と冷気遮断機能、ビームモドキによる防衛機能がある天幕を部屋の中央に取り出して、ソウジ達は先に寛いでいく。

部屋の中央に来た天之河達も炬燵の中に入り、寛いでいく。

 

 

「四つの鍵は俺のクロスビットとソウジの紅雪で回収すればいいだろ」

 

「……それってありなの?」

 

「使える手を使って何が悪いんだ?」

 

「だが、場所は……」

 

「んなもん、羅針盤を使えば一発だ。ゲート機能も使えば目的地の割り出しも簡単だ」

 

「「…………」」

 

 

ハジメとソウジの言い分に、八重樫と天之河は何とも言えない表情で無言になる。そんなソウジに、傍らに陣取っていたアタランテがそっと手を握った。

 

 

「……疲れないか?」

 

「天幕と炬燵には回復効果があるからな。これくらいなら然程問題でもないさ」

 

 

ソウジはそう言って、アタランテの手を優しく握り返す。アタランテも頬を緩めてソウジに体を添わせていく。

と、同時にジークリンデもソウジの反対の手を握ってきたので、ソウジはジークリンデに微笑んでアタランテと同じように優しく手を握り返した。

 

ジリジリとフィアもソウジとの距離を詰め、ハジメの方からも甘い空間が漂う中、炬燵に体を沈めていた谷口がポツリと呟いた。

 

 

「……独り者には癒されない空間だね」

 

 

その言葉に、天之河達は激しく同意するのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ほわほわ。ふわふわ。

そんな擬音が聞こえてきそうな程、天幕の中は桃色空間だった。

 

 

「「「「あ~ん」」」」

 

「「……モグモグ」」

 

「……口から砂糖が出そうだよ」

 

 

谷口の呟きに天之河達はこっくりと頷く。現在、炬燵の上にはシアとフィアが作った海鮮鍋と肉鍋の二種類の鍋が置かれている。海鮮鍋はとてもさっぱりし、肉鍋は濃厚な味わいでどちらも大いに食欲をそそってくる。ちなみに量は追加分も含めて三十人前用意している。その理由は大食いがいるからとだけ言っておこう。

 

 

「シア。本当にお前は料理の腕が日増しに上がっていっているな。いい嫁さんになるよ」

 

「もうっ!ハジメさんったら!超絶可愛くて、一時も離したくないくらい愛おしい俺の嫁だなんて言い過ぎですよぉ~!!!」

 

「……私もいいお嫁さんになりますかね?ソウジ様?」

 

「……将来、結婚した男は幸せになるんじゃないか?」

 

 

後ろから抱きついて耳元で囁くフィアの質問に、背中から伝わる柔らかい感触を無視し見向きもせず当たり障りのない答えを返すソウジ。おざなりな対応だが、物理的な排除に動こうとしない辺り、満更ではないのかもしれない。

 

 

「フフッ。でしたら、ソウジ様の好みを調べませんとね……アタランテ様、ジークリンデさん」

 

「そうだな。ちなみにソウジは日本にいた頃、白身魚のフライとやらが好きだったそうだ」

 

「それにタルタルソースとやらや醤油とやらをつけて食べるのが良かったとも」

 

「でしたら、皆様で誰がそのフライを美味しく作れるのか勝負しましょう。勝者はソウジ様との二人きりの混浴で」

「ふっ、良いだろう」

 

「竜人族としての料理の腕前、存分に示させてもらいます」

 

 

一見、修羅場のようにも見える光景だが、実際は結構打ち解けあっている。そんな彼女達を前に、ソウジも結構和んでいる。ユエ達に囲まれているハジメも同様だ。

そんな状況で、黙々と鍋をつつく悲しき四人が当然いた。

 

 

「光輝……」

 

「言うな、龍太郎。俺も複雑なんだ」

 

「一昔前の姿を客観的に見れて、良かったでしょ?」

 

 

肉を食べながら複雑極まりない表情で小声で話し合う天之河と坂上に、八重樫が妙に刺がある物言いで海鮮鍋の魚肉を奪っていく。その視線はチラチラとソウジに向いている。

 

 

「えっと……シズシズ?」

 

「何?」

 

「……いえ、ごめんなさい。何でもないです」

 

 

野菜をつついていた谷口が明らかに不機嫌な八重樫に話しかけるも、八重樫の不機嫌な物言いと表情を前にスゴスゴと引き下がった。

そんな中、探索させていた紅雪の群れの一つがゲートホール付きのクロスビットと共に件の扉の鍵であろう黄色い宝珠を見つけた光景が魔眼石に伝わってくる。

 

同時に体長五メートルはあるフロストオーガが暴れたので、紅雪の砲撃陣形:迦具土の二射同時砲撃で瞬く間に蒸発させた。宝珠はクロスビットに取り付けたゲートホールでハジメが回収したので問題はない。

そのまま食事を再開……

 

 

「「「「いやいやいやいや、おかしいだろう(でしょう)(よね)!!」」」」

 

 

しようとして、ゲートホールで一連の動きを視界に収めていた天之河達から盛大なツッコミが入った。

 

 

「ん?」

 

「おかしいとは何だ?扉の鍵であろう珠をハジメが回収しただけだが?」

 

「……じゃあ、あの蒼い砲撃は?」

 

「体長五メートルはあるフロストオーガを蒸発させただけだが?あれが鍵を守るガーディアンだろうな」

 

「十分おかしいだろ!普通、そういったのは直接対決して、倒して手に入れるものだろ!!」

 

 

天之河の酷く真っ当な意見をハジメとソウジにぶつけるも、件の二人はどこ吹く風で受け流していく。

 

 

「いや、楽に集められるならそれでいいじゃねぇか」

 

「で、でも、それで攻略が認められ……」

 

「【グリューエン大火山】では小舟でマグマの河を下って相当ショートカットしても攻略が認められたからこれくらいは大丈夫だ。残り二つは自力でやればいいだろ。ルートの割り出しはしておくから、精々頑張ってこい」

 

「……本当にこんな攻略で大丈夫なのか?もっと、こう……」

 

「光輝……深く考えるのは止めとけ。胃痛に悩みたくはねぇだろ?」

 

 

常識をガラガラと壊されていく天之河に、悟ったような表情の坂上が肩を叩く。懸命な判断である。

 

 

「そうね。非常識を常にやらかす二人に一々ツッコんでいたらキリがないわよね」

 

「シズシズ……このまま二人に引きずられたら、きっと大変なことになると思うの。だから、頑張って常識を大切にしようね?」

 

 

坂上と同じく悟ったような表情の八重樫に、谷口が悲しげな表情で諌めの言葉をかける。その谷口の認識は正しい。

そうして食事が終わったタイミングで、二つ目の宝珠がハジメの手元に来るのであった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ジャンケンの結果、ユエ、アタランテ、香織、フィアの四人と、決定事項であった勇者パーティーが残りの宝珠を取りにいくこととなった。

そして……

 

 

「グルァアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

天之河達、勇者パーティーは宝珠のガーディアンであるフロストオーガと現在、戦っていた。

 

 

「“天翔閃・震”!!」

 

「吹き飛べぇ!!」

 

 

天之河が衝撃波を放つ光の斬撃を、坂上は竜巻が追従する衝撃波をフロストオーガに向けて放つ。フロストオーガは腕を交差させて斬撃と衝撃を受け止めるも、その超威力から両腕は粉々に粉砕されて後ずさる。

両腕を粉砕されたフロストオーガは背中を大きく仰け反らせ、口から特大の氷のブレスを放つ。

 

 

「“聖絶・散”!!」

 

 

その氷のブレスを谷口が展開した障壁であっさりと防いでいく。氷のブレスを防がれたフロストオーガは意外にもあっさりとブレスを止め、粉砕された腕を再生させた。―――腕を六本に増やして。ついでに顔も三つに増えている。

 

 

「阿修羅!?」

 

 

まんま仏教の神様の姿となったフロストオーガに天之河が吠えると、フロスト阿修羅オーガは三本の腕を頭上へと振り上げる。

 

 

「グォオオオオオオオオオッ!!!」

 

 

フロスト阿修羅オーガは咆哮と共に振り上げた三本腕を鉄槌の如く振り下ろそうと―――

 

 

「交互に奔り、轟け―――“双雷華・焦”!!」

 

 

する前に、八重樫が四皇空雲と鞘から衝撃波を伴う雷の華を咲かせ、フロスト阿修羅オーガに電撃を食らわせる。フロスト阿修羅オーガは体を削られながらも豪腕を振り下ろすも、“神鉄”を纏った坂上によって難なく受け止められてしまう。

 

 

「“光刃・震”!!」

 

 

空力ブーツで上空に躍り出た天之河が衝撃波を発する光の大剣をフロスト阿修羅オーガに向けて垂直に振り下ろす。フロスト阿修羅オーガは迫る光の大剣を避けようとするも、いつの間にか展開されていた障壁によって動きを封じられる。

フロスト阿修羅オーガはそのまま為す術なく、吹き飛ばされるように両断された。

 

 

「よっしゃっあっ!!やったな、光輝!!」

 

「ああ!!」

 

 

坂上の掛け声に、()()()()でフロスト阿修羅オーガを倒せた天之河はスッキリした笑みを浮かべて、パァンッ!と互いの手を叩き合う。

 

 

「本当に倒せたわね……ふふっ、空山君達に感謝しないとね」

 

「うん!」

 

 

同じく笑みを浮かべる八重樫と、八重樫の言葉に同意した言葉に、天之河は胸の奥のモヤモヤ感が一瞬沸き上がるも、目の前の快勝からそれはすぐに鎮まった。

そして、台座に置かれてあった宝珠を無事回収すると、道案内していた四本の紅雪が目の前でゲートを作る。ゲートの先にある両扉の前で待っているソウジ達を確認した八重樫達は迷わずにゲートを潜る。

 

そして、三つの宝珠がはめ込まれた両扉に天之河は最後の窪みに()()()勝ち取った宝珠をはめ込み、両扉の封印を解く。

四つの宝珠がはめ込まれて独りでに開いた両扉の先には、もう鏡と言って良いほどの反射率を持つ氷壁の通路が待ち構えていた。

 

 

「さて、それじゃあ行くか」

 

 

ハジメの号令で、一同は一斉に扉の向こう側へと踏み込んでいった。

ここからが【氷雪洞窟】の真の試練とも知らず……

 

 

 




「追い詰められると阿修羅になるのか……」

「本当にお約束だな」

「……私達の方は香織の分解砲撃一発で終わった」

「フフフ……今ならユエにも負けないよ?」

“分解能力”の派生技能、“分解速度上昇III”と“効率上昇”、“効果上昇”によって強化された分解能力を付与した双大剣を両手を広げるように構えてユエに目を向ける香織の図。※勿論、般若さんもセットで。

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