てな訳でどうぞ
あの激闘からおよそ二ヶ月が経過した頃、ソウジは終着点の空間にある巨大な滝に打たれていた。そして二ヶ月前の事を振り返っていた。
あの戦いの後、ソウジは魔力枯渇から、ハジメは身体のダメージからその場で気絶して倒れ、神水で回復したユエが必死に二人を引きずって独りでに開いた扉を覗くとそこには住み心地の良さそうな住居があり、ハジメ優先でハジメをベッドに寝かせて神水で付きっきりの看病をし続け、通常通りの回復をした時点でユエもそこで意識を手放したそうだ。……床にボロボロのソウジをほったらかしたまま……
目を覚まし、その事実に若干頭にきたソウジは、ユエにアイアンクローを食らわせたのは決して悪い事ではない。
そして三人はこの空間を調べていき、三階の部屋で謎の魔法陣と服を着た骸骨の骸を見つけ、その魔法陣の中央から骸と同じ服を着た青年が現れた。
「私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ」
その青年―――この迷宮の創造者、オスカー・オルクスが魔法陣に残していた記録映像から、この世界の真実が語られた。
この世界の争いは初めから神の遊戯として作られたものであり、反逆者と呼ばれる人達はそんな神を殺そうとしていたがその神の策略により真実を知らない周りの人間達を巧みに煽動し、逆に反逆者を追い詰めた。
七人の反逆者―――“解放者”は散り散りとなりながらも各地で迷宮を作り上げ、その攻略者に自身の神代の魔法を授けるという手段を取ったとの事。
それを知った三人の感想は、簡潔に言えば「あっ、そ」という感じであった。この世界の為に戦う気等微塵もないし、オスカーの映像も強制するつもりはないと言っていたので別にいいだろうという考えからだ。
お陰で“生成魔法”というアーティファクト制作魔法を習得できたし、あのまま勇者一行として活動しても元の世界に帰れないと分かったから一応感謝はしたが。ちなみにソウジの生成魔法の適性はユエよりマシだが単体でアーティファクトを制作するには難しいレベルだった。
その後、脱出用の魔法陣も見つかったがハジメの提案で、ここでしっかりと準備をする事になったのである。
ちなみに現在のソウジのステータスはこうなっている。
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空山ソウジ 17歳 男 レベル:???
天職:剣士
筋力:12780
体力:13210
耐性:9860
敏捷:19890
魔力:10560
耐魔:14260
技能:剣術(+双剣術)(+大剣術)(+両剣術)(+刺突速度上昇)(+斬撃速度上昇II)(+抜刀速度上昇)(+無拍子)(+絶断)(+飛爪)・魔力操作(+魔力放射)(+魔力圧縮)(+遠隔操作)(+消費魔力減少)・胃酸強化・放炎(+熱耐性)(+熱閃)(+火属性無効)(+熱源感知)(+蒼煌)・天歩(+空力)(+縮地)(+爆縮地)(+豪脚)(+震脚)(+瞬光)・凍鎧(+凍結無効)(+氷刻)(+冷気操作)(+吸熱)(+冷気集束)・夜目・遠見・気配感知(+特定感知)・魔力感知(+特定感知)・気配遮断(+幻踏)・毒耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛(+部分強化)・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復(+変換回復)・魔力変換(+体力変換)(+治癒力変換)(+変換効率上昇)・限界突破・生成魔法・言語理解
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こんな感じでハジメ共々、完全なチート存在となっており互いに苦笑いしたのは記憶に新しい。
ハジメと比べると派生技能の数が多いのは非リア充の悲しさからだ。ハジメとユエは正式な恋人同士となり、独り身となったソウジは二人の甘~い空間から逃れる為に独り寂しく鍛練をしていたからだ。二人の仲を引き裂く気は微塵もないが、夜のそういった雰囲気は堪ったものではない。ちなみに二人はソウジの心情に気付いていない。もし気付いていたら多少は控えた筈である。
そしてどこかの少女から般若が出現したり、般若が出現するたびに親友は友人に怨みを飛ばして、その都度内心で首を傾げたりしていたが別にいいだろう。
そして装備も新しくなり、追加もされた。
先ず上げるのは帯刀用の刀―――“
他には“
不知火は“試作型宝物庫”と呼ばれるハジメが持つ事になった“宝物庫”の試作品に収納されている。
この試作型宝物庫は宝物庫と比べると収納空間は大分小さいようで、片っ端から詰め込んでみた結果、大きめの自家用車の格納庫位の大きさだということがわかった。
他にも移動用に作成したハジメの二輪バイク:シェタイフをベースにソウジ好みに別物レベルで魔改造した“
騎○ノ一閃!をやってみたかったからというオタク心全開装備ではあるがハジメからは好評だった。ちなみにバイクのエンジン音をある程度再現したマフラーも協力して作り上げた。このマフラーはハジメのシェタイフにも装備されておりこれもハジメからは好評であった。·····ユエには呆れられていたが。
さらにもうひとつ、現時点では全く使えないが、F○の某変形ロボットのようにバイク形態から人型への変形機構も搭載されている。これもハジメと協力して作り上げた。将来的には可能であればゴーレムとして戦わせる心算である。
右の義足はオスカーの工房にあった義足をハジメがソウジにあわせて改良した義足にへと変わった。この義足はハジメの義手と比べてギミックは圧倒的に少ないが、十分すぎる性能を持っている。
左目もハジメの右目同様の“魔眼石”となり、ハジメ同様完全な中二キャラとなりハジメ共々その場で崩れ落ちた。当然ながらユエはハジメを慰めるのに集中していたのでソウジの復活には丸三日がかかった。
そんな訳で少しでもハジメと差分をつけるため、バンダナを左目の眼帯代わりに使用、服装も上着の方はユエに頼んで着物に似せた作りにしてもらった。
ハジメもドンナーと破壊されたシュラーゲンの新調、ドンナーの対となる拳銃:シュラークに電磁加速式機関砲:メツェライとロケット&ミサイルランチャー:オルカン、移動用の車:ブリーゼを開発しており、準備を着実に進めていっていた。
そして今日、全ての準備が終わり、ついに出発の日なのである。
十日前にハジメがユエに神結晶を加工した魔力タンクアクセサリーを渡してプロポーズと勘違いされたり、それを見たソウジは口から砂糖を大量に放出したりしたが、三人は共に地上への転送用の魔方陣を起動し、ハジメが静かに口を開く。
「俺達の存在は地上では異端だ」
「ん……」
「だろうな」
「アーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて高い。バックの自称神の狂人共も敵対するかもしれない」
「ん……」
「その連中とは高確率でぶつかるだろうな。オレ達という“面白い駒”を無視するとは思えないし」
「そうだな。そして、全てを敵にまわしかねないヤバイ旅だ」
「今更……」
「愚問だな。オレはオレの望みのために進んで行く。もうその腹は決まっている。後は願いに向かって足を踏み出すだけだ」
ソウジのそのセリフに、ハジメは不敵に笑ってユエの頭に手を置く。
「そうだな。俺達はすべてをなぎ倒して世界を越える。俺達は…………最強だからな」
「んっ!!」
ハジメのその言葉をユエは花が咲くような笑みを、ソウジは先程のハジメのように不敵に笑って受け取った。
その直後、魔方陣の光が部屋を満たし、光が収まった先の光景は―――
「なんでやねん」
「ええ~……」
洞窟であった……
「……秘密の通路……隠すのは当然」
ガッカリする二人に対するユエのツッコミが妙に洞窟内で響いたのは気のせいであろう。
とりあえず、彼らの世界を越える旅はここから始まった。
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