魔王の剣   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


憎悪の瞳

ビッーーーーーーーー!!

 

雪煙を切り裂いて幾条ものレーザーが撫でるように迫って来る。

雪煙の中でも威力が全く減衰せず、寸前まで視認できなくなっているレーザーは厄介さを増しているが、ソウジには通じない。

 

ソウジは“瞬光II”と“熱源感知”を駆使し、こちらに迫って来ているフロストゴーレムに近づきながら最低限の動きで回避していく。“瞬光II”発動状態なら、ハジメのレールガンを楽々回避出来るので、レーザー攻撃の回避も容易かった。

レーザーを回避し終えたソウジは、そのまま流れるように右の絶天空山で“蒼閃牙”を放つ。

 

放たれた空間切断の蒼き焔の斬撃は、振り下ろされていた透明に近い氷のハルバートを両断する。武器を失ったフロストゴーレムは口からブレスを吐こうとするも―――

 

 

「遅い」

 

 

ソウジはそう呟くと同時にフロストゴーレムの懐に一呼吸で潜り込む。ソウジは交差するように構えた二刀の絶天空山を十字に振るい、十字に切り裂く蒼き焔の飛ぶ斬撃―――“蒼牙十字爪”を()()()()()放ち、魔石ごとフロストゴーレムの体を四つに切り裂いた。

 

直後、螺旋を描く光輝く斬撃が飛んできたので、ソウジは“瞬光II”状態で“飛爪・鋭”で魔法の核をピンポイントで切り裂き、霧散させて捌いた。

 

 

「やっぱりこの状況でも狙えるのか」

 

 

予想通りだったことにソウジは苦笑いしながら迫り来るレーザーも回避していると、ソウジの眼前の雪煙が渦を巻き始めていく。

 

その突然の光景にソウジが警戒していると、その渦は竜巻のように螺旋を描いて一直線に伸び、ゴールの扉までのトンネルとなってソウジの前に現れた。螺旋の中心には氷片が一つもなく、レーザーも通っていない。

 

 

「ゴーレムは一人一体だったか。こちらと同じ数だった時点で半ば予想は出来ていたが」

 

 

ソウジはそう呟きながら、雪煙のトンネルを通過していく。トンネルを通ってゴールの扉に辿り着くと、ハジメも同時に到着していた。

 

 

「お互い、無事にクリア出来たようだな」

 

「ああ。零距離から攻撃すれば誘導もクソもないからな」

 

「「……プッ」」

 

 

互いに同じ考えでフロストゴーレムを倒したことを察し、ハジメとソウジは揃って吹いてしまう。

直後、七つのトンネルが出来上がり、それぞれのトンネルからユエ、アタランテ、シア、ジークリンデ、ティオ、香織、フィアが姿を現した。

 

 

「お前達も無事にクリア出来たか」

 

「……ん。一発で沈めた」

 

「私も一撃だな」

 

「私もですぅ!」

 

「妾もじゃ」

 

「私も範囲と威力を落とした“震天”で一発でした」

 

「今の私なら剣もあるから大丈夫だったよ!」

 

「私も支給してくださったアーティファクトの恩恵で苦もなく倒せました」

 

 

ハジメの言葉にそれぞれが当たり前と言わんばかりに答える。

 

 

「これでオレ達のメンバーは全員だな。さて、あいつらは自力でクリアできるかな?」

 

 

ソウジはそう呟いて、雪煙に視線を向けるのであった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――無色透明のハルバートが迫る。まともに喰らえば、その身を両断されるであろう凶刃と、雪煙を裂いて自身に襲い掛かる熱線を雫は必死に回避していく。

 

 

「くっ―――」

 

 

八重樫は顔を苦しげに滲ませながらも、回転しながら抜刀を行って全方位に切り払う八重樫流剣術―――“水月・漣”を“飛天”と重力魔法を使って切り払える距離を広げて、追撃しようとしたフロストゴーレムの接近を防ぐ。

 

 

「ハァ、ハァ……どうやら、範囲を広げた攻撃なら何とかいけるみたいね?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()雫は呼吸を整えながらフロストゴーレムに向き直って考察を口にする。

 

 

―――本当は狙ったのでしょ?

 

「……うるさい」

 

―――彼女が妬ましいくせに

 

「うるさい……」

 

―――どうして私ばかり

 

「うるさいって言っているでしょう!!」

 

 

自身に囁きかける声に、雫は苛立ちを露に怒声を上げる。見たくないものを、直視したくない感情を否定するように。

そんな雫に幾条ものレーザーが再び襲いかかる。

 

 

「ッ!出でよ、“氷陣”!!」

 

 

今から回避は間に合わないと判断し、雫は鞘尻を地面に突き立て、自身の周囲に数個の氷壁を出現させる。

レーザーは氷壁に当たって一時的に止まる。しかし、直ぐに貫かれてしまうだろう。

 

 

「“引天”!!」

 

 

その前に雫は四皇空雲を頭上に掲げ、レーザーを引き寄せていく。引き寄せられたレーザーは刀身に当たった瞬間、反射されてフロストゴーレムのタワーシールドに突き刺さった。

 

 

「へ?」

 

 

予想外の結果に、雫は思わず間抜けな声を洩らしてしまうも、直ぐに我に返り、レーザーを反射させたままフロストゴーレムへと肉薄していく。

 

身動きが出来なくなったフロストゴーレムは、集束されたレーザーをタワーシールドで防ぎながらハルバートを振り上げる。返り討ちにしようという魂胆なのだろう。

 

 

「“離天”!燃え上がれ、“蒼燼”!!」

 

 

雫はそうはさせまいと、集束されたレーザーを一気に弾き飛ばし、フロストゴーレムを怯ませる。そして、間髪入れずに刀身に蒼き焔を纏わせ、タワーシールドごとフロストゴーレムの胸部にその刃を突き刺さした。だが、タワーシールドが壁となった分、その刃はフロストゴーレムの魔石には届いていなかった。

フロストゴーレムはそのまま倒れて雫を地面に押し潰そうとした―――次の瞬間。

 

 

「乱れろ、“狂桜”(くるいざくら)!!」

 

 

雫は四皇空雲に付与された“嵐陣”を発動。蒼き焔を纏った刀身が振動していき、相乗効果で蒼い炎嵐と化して放たれた攻撃は、容赦なくフロストゴーレムを内側から溶かし、中の魔石も砕くのであった。

 

 

「はぁはぁ……一人だと、まだまだ……ね」

 

 

四皇空雲を納刀して膝をついた雫は自嘲気味に呟く。それでも、大きな怪我を負うことなくフロストゴーレムを倒せたのは、間違いなく彼のおかげだろう。

 

何となく、ほんと~に何となく雫は四皇空雲に口付けをする。あくまでこれは相棒への感謝なのだ。断じて、これを渡した彼を幻視したからではない!

その後雫は、眼前に出来上がった雪煙の向こう側にいるソウジ達に向かって、足早に歩き始めるのであった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

大迷路の終着点。その巨大な扉の前で八重樫は香織から軽く治療を受けていた。

 

 

「ありがとう、香織。もう大丈夫よ」

 

「うん。怪我もそんなに負ってなくて……」

 

 

ドゴォオオオオオオオオオンッ!!!

 

香織が微笑みながら安堵した直後、雪煙の方から凄まじい轟音が響いてきた。

 

 

「ちょっ!?何なの、今の!?」

 

 

突然の轟音に八重樫が目を白黒させていると、新しい雪煙のトンネルが出来上がっていく。

出来上がったトンネルの向こう側に居たのは、魔力を大量に消耗しながらも踏ん張って立っている坂上であった。身体の方は無傷である。

 

 

「……大方、“神鉄”で攻撃を全部防いで、その間にフロストゴーレムを殴り続けて、最後に必殺技で木っ端微塵に吹き飛ばしたといったところか……」

 

 

ソウジのその推測に、その場いる全員が阿呆を見る目を坂上に向ける。八重樫に至ってはこめかみをグリグリして頭痛を和らげようとしている始末だ。

結論から言えばソウジの推測は大正解で、坂上は幼馴染み二人からみっちりと説教を貰う羽目となった。

 

 

「どうせなら、頭を叩き飛ばしたらどうだ?イライラを発散するにはちょうどいいだろ。お前も、もうちっと周りに甘えてもいいんだからな」

 

「……それをやったら、龍太郎の脳筋が悪化するでしょう」

 

「ああ、確かに」

 

「ひでぇなっ!?」

 

「そう思うなら、もう少し頭で考えてよね?」

 

「……うっす」

 

 

そんなやり取りをする中、不意に魔力の奔流が雪煙を巻き上げて天を衝いた。

 

 

「これは……」

 

「天之河の“限界突破”だろうな。……相当、焦っているな」

 

 

ソウジは目を細めて雪煙を見つめる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()、“限界突破”無しでもフロストゴーレムを倒せると踏んでいたのだが、どうやら相当苦戦しているようである。

思えば、天之河だけは戦い方に工夫が見られなかった。良く言えばセオリー通りと言えるが、悪く言えば発展がないのである。

 

 

「さて、“限界突破”を使った以上、流石にクリア出来るだろうな。後は谷口だが……」

 

「え?こ、光輝はいいのかしら?」

 

 

あっさりと視線を外したソウジに、心配そうな表情の八重樫が声をかける。ほっといたら救援に駆けつけそうな八重樫に、ソウジは呆れながら言葉を足した。

 

 

「天之河には“限界突破”の派生技能もある。加えて、今回のクリア条件は、一人一体、ゴーレムを倒すことだ。今助けるのは、むしろ逆効果だ」

 

「それは……そうかもしれないけど」

 

「本当にお前は心配性の上に世話焼きだな。だから周りから“義妹(ソウルシスター)製造マシン”やら、“みんなのお母さん”なんて呼ばれるんだよ」

 

「それは明らかに空山君しか言ってないでしょう!!失礼にも程があるわよ!?」

 

 

ソウジの言葉に納得しつつも、続く言葉でポカポカと殴りかかる八重樫。端から見ればイチャついているようにも見える。いや、そうとしか見えない。

 

 

「……やはり増えるか」

 

「完全に秒読みに入ってますね。しかし、当然の摂理かと」

 

「フフッ、また賑やかになりそうですね♪」

 

 

そんなソウジと八重樫の様子をソウジハーレムズがそれぞれの感想を述べる。幸い(?)二人の耳には届いていないようである。

その光景をハジメ達はニヤニヤして見守り、坂上は八重樫がソウジに甘えている事に目をぱちくりする中、また雪煙のトンネルが出来上がる。そこからふらふらと、覚束ない足取りの谷口が姿を現す。

 

 

「鈴!」

 

 

八重樫と香織が心配そうな表情で急いで谷口の下に駆け寄る。

谷口のフロストゴーレムとの戦闘は、十八番となっていたバリアバーストの威力が足りなかったので、炎熱系魔法を追加した結界に閉じ込めて溶かし、ある程度防御力が下がったところで結界内で空間爆発を起こすという荒業で谷口はフロストゴーレムを倒した。その為、谷口の顔には疲労感が滲み出ていた。

 

 

「大丈夫、鈴?」

 

「……うん。凄く疲れたけど大丈夫だよ、シズシズ。……鈴は絶対に、恵里にもう一度会う。その為にも、頑張らないといけないから」

 

「……そう」

 

 

息は荒く、滝のように汗を流しながらも、その瞳には強い意志の輝きを放っている谷口の決意の言葉に、八重樫と香織は笑みを浮かべて受け止める。移動は八重樫のお姫様抱っこである。

そして、谷口のクリアから数分後、天之河も何とかクリアして聖剣を杖替わりに雪煙のトンネルを歩いて来た。

 

 

「……っ……」

 

 

一瞬、天之河の表情が暗く、悔しげに歪むも、坂上が近づいたことですぐに引っ込めて、坂上の肩を借りてソウジ達の下へと到着する。

 

天之河が到着した瞬間、頭上で輝いていた太陽が消え、雪煙も再び天に昇っていく。そして、出口であろう扉はクリアを示すように輝き出し、光の膜を形成し始めていく。

香織が谷口と天之河を治療する間、天之河は暗い表情で俯いていた。

 

 

「……光輝、大丈夫なの?少し横になる?」

 

 

そんな天之河に、八重樫は自身の膝をポンポンと叩きながら心配そうに声をかける。

 

 

「…………」

 

 

だが、当の本人は、一瞬だけ恐れるような眼差しを向けてすぐに逸らし、首を振って瞑目してしまった。……瞑目する直前、ソウジへの視線に明らかな憎悪を宿して。

本当に厄介なコンセプトだな、とソウジは思いつつ、全員の回復がある程度終わったタイミングで一同は光の門へと飛び込むのであった。

 

 

 




「光輝の聖剣には神代魔法は追加しなかったの?」

「神代魔法はわりと根幹に作用するからな。下手に付与したら色々と面倒だったから、ハジメは今回見送ったんだ」

「……そう」

「一応、オプション機能には変換回復機構の簡易な魔力タンク等もあるから、使い方次第では相当な力になる筈だ」

(……あれ?十分に魔改造している気がするんだけど?)

聖剣の強化が魔改造ではないかと疑う雫の図。

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