魔王の剣   作:厄介な猫さん

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自由なペースで書いてもいいかな?いいよね?
てな訳でどうぞ


残念ウサギと狩人?少女

若干のショックの後、三人は洞窟を道なりに進む事にした。途中で幾つもの扉とトラップがあったが、オルクスの居住空間で回収した指輪が反応して勝手に解除されていったので問題なく進む事ができた。

そうして進んでいると外の光が見え始め、その外の光が見えた途端、ソウジ達は何の迷いもなく光に向かって駆け出した。

外に出て最初に目に映った光景は巨大な岩壁と上を見上げれば満天の空。ここは魔力を分解する大地―――【ライセン大峡谷】。多数の凶悪な魔物が生息し、東の【ハルツィナ樹海】と西の【グリューエン大砂漠】を繋ぎ、大陸を南北に分断する大地の傷跡だが、彼らにはそんなのは関係ない。ソウジとハジメは数ヶ月、ユエはおよそ三百年ぶりの外の世界。当然三人の顔は緩んでいる。

 

 

「しゃぁああああああああああああああああッ!!」

 

「戻ってきたぞ、この野郎ぉおおおおおおおおおおおッ!!」

 

「んっーーーーーーー!!」

 

 

ソウジ達はその場で両腕を空へとつきあげ、ハジメとユエは当然の流れのようにそのまま抱きしめ合い、くるくると廻り始める。

ソウジは半分空気を読み、もう半分はリア充のいちゃつく場にいたくないからイチャついているハジメとユエから離れていく。二人が見えない場所まで移動すると、ソウジを獲物と判断してかオークのような魔物の群れが近づいてきていた。

 

 

「……八つ当たりできるヤツ、発見」

 

 

ソウジは悪魔のような笑みを浮かべ、腰に帯刀している炎凍空山と風雷南雲を抜き放ち―――“縮地”でオークモドキの一体に急接近しすれ違いざまに切り裂いた。ソウジはそのまま炎凍空山と風雷南雲を自身を独楽のように回転しながら、オークモドキ達を切り裂いていく。せっかくなので炎凍空山と風雷南雲を連結状態にし、残りのオークモドキ達を切り裂いていく。

僅か数分足らずでオークモドキの群れは全滅、ソウジの周りにはオークモドキの屍の山が出来上がった。

 

 

「……予想より弱い。後、魔力をいつもの十倍注がないと満足に能力も使えなさそうだ」

 

 

オークモドキが呆気なく殺られたので消化不十分な気分のままソウジは納刀し、ハジメとユエの所に戻るとハジメの方にもオークモドキの屍があちこちに転がっていた。

 

 

「ソウジどこに行っていた?お陰でユエとの抱擁が中断したんだぞ」

 

「空気読んで二人きりにして文句かよ……後、コイツらと似たような魔物達が近づいてきたからぶった斬っていた」

 

「……討ち漏らし?」

 

「別口だろ。オレの方のは数分で殲滅したからな」

 

「俺も五分もかからずに殲滅したからな……本当にここはライセン大峡谷か?」

 

「……二人が化物なだけ」

 

「ひどいいい様だな」

 

「奈落の魔物が強すぎただけ、っということにしとくか」

 

 

ハジメは肩を竦めながら宝物庫からシュタイフ―――バイクを取り出し、ソウジも続いて試作型宝物庫から翼丸を取り出す。

 

 

「取り敢えず樹海側に向かって探索しながら進むか」

 

「……なぜ、樹海側?」

 

「いや、いきなり砂漠横断は面倒だろ」

 

「……確かに」

 

 

ソウジのツッコミにユエはハジメの提案に納得し、そのままバイクに跨がっていたハジメの後ろに横乗りして腰にしがみつく。魔力操作で車輪関係の機構を動かしているので、ここでは長時間の運転は出来ないが走り続けるよりかはマシである。

せっかくなので少しバイクのエンジン音を出してみる。若干微妙な音だがやっぱり音があるとバイクらしくてロマンがある。ハジメは不敵なサムズアップをするも、ユエから魔力の無駄使いとお叱りを受けた。

そんな訳でソウジとハジメは若干気落ちしてエンジン音無しでバイクを走らせていると、しばらくして、向こう側から頭を二つ持ったティラノモドキの群れが現れた。だが、注目すべきはその双頭ティラノ達ではなく、その群れから必死に逃げている少女と、その少女の腰に半泣きでしがみついているウサミミを生やした少女の二人である。

ソウジ達はバイクを止めその二人を見やると―――

 

 

「あそこです!!あそこにいる人達ですぅ!!やっと見づげまじだ~!!だずけて下さ~い!!」

 

「ええい!!いい加減に離れろ!」

 

 

緑色だが所々銀色の髪を持つ碧眼の少女は、双頭ティラノの群れから逃げながら、腰にしがみついている青みがかった白髪の兎人族の少女の頭に弓を持った左腕からの肘鉄を連続で打ち込んで強引に振りほどこうとしていた。

 

 

「いだいですぅ!お願いでずから肘鉄をじないでぐだざ~い!!」

 

「こうなったのは貴様のせいだぞ!人が狩りの為に隠れていたところを貴様がいきなり、コイツらを連れて現れたんだからな!!」

 

 

聞こえてくる話からして、あのショートヘアの少女はウサミミ少女のせいであの群れに追いかけられているようだ。

 

 

「やっと見つけた?おかしな事を言うウサギだな」

 

「このままだとあの狩人?の少女のように巻き込まれるぞ」

 

「……すごく迷惑」

 

 

ソウジ達は迷惑そうに顔をしかめ、そのままUターンして別方向へ去っていこうとする。

 

 

「ええー!?」

 

「何が、ええー!?っだ!この展開は当然だ!!」

 

 

助ける気が微塵も感じられない事にウサミミ少女は涙目で驚愕、狩人少女は怒りを露にウサミミ少女を睨み付ける。

 

 

「だからさっさと離れろ!!このまま貴様と心中するつもりはない!!」

 

「イヤですぅ!!離せば絶対にみずでまずよねぇ!?」

 

「当然だ!!」

 

「でずがらぜっだいにはなじませんよーーー!!」

 

 

まるでコントのようなやり取りをする二人をソウジ達はチラ見するも助ける気は微塵もなく、そのまま立ち去ろうとする。しかし次の光景でその思考は吹き飛んだ。

 

 

「“緋槍”!!」

 

 

碧眼の狩人少女は苛立ち紛れに二本の“緋槍”を発動させ、炎の槍を双頭ティラノの群れに向けて飛ばす。その炎の槍は分解されることなく一体の双頭ティラノの両方の頭をぶち抜いた。

 

 

「……おい、ハジメ」

 

「……何だ?」

 

 

その光景を見たソウジはハジメにある提案をする。

 

 

「あの魔法を使った奴を助けるぞ。助けた後、ここで普通に魔法が使えた理由を問い質す」

 

 

ここは魔法が分解される場所だ。ユエも普段の十倍くらいの魔力を消費すれば魔法が使えるが、当然燃費は悪いし、射程も相当短くなる。だが先程の“緋槍”は分解された様子がなく、本来の射程で発射されたのだ。

 

 

「俺も同じ事を考えていた。理由がわかればもしかしたらユエも問題なく魔法を使えるのかもしれないからな」

 

「ん。ハジメに従う」

 

 

満場一致で可決し、ソウジとハジメはバイクを反転させ、ソウジは突っ込んでいき、ハジメはドンナーを構える。ソウジは最大加速で双頭ティラノの群れに突っ込んでいき、側面の刃を正面に展開、軽くウィリー走行の体勢にし、スラスター装置を起動、一気に空を飛び双頭ティラノの片方の頭を両断する。そのまま空中回転して双頭ティラノ達を切り裂いていく。ハジメもドンナーで双頭ティラノの頭を次々と撃ち抜き骸を作っていき、僅か一分で双頭ティラノの群れは全滅した。

双頭ティラノの群れが全滅した光景に狩人少女とウサミミ少女は茫然としていたが……

 

 

「助けてくれてありがとうございますぅ!」

 

 

ウサミミ少女はすぐに我に返り、彼女らに近づいて来ていたハジメに抱きつこうとするも、ハジメは当然避けてスルー。地面にダイブしたウサミミ少女を無視し、そのまま狩人少女の方へと向かっていく。

 

 

「どうして無視するんですかぁ!?」

 

 

ウサミミ少女の文句を当然ハジメはスルーするが、ウサミミ少女は無視しないでと云わんばかりにハジメの腰にしがみついた。

 

 

「離れろウザウサギ。俺はお前に用は一切無いんだよ。つうか汚いから離れろ」

 

「イヤですぅ!!話を聞いてくれるまで絶対に離しませんよぉ!!」

 

 

ウサミミ少女の標的がハジメに変わったのを尻目にソウジはいまだに茫然としている狩人少女の前に立った。

 

 

「……貴様達は一体何者だ?見たこともないアーティファクトを所持し、ダイヘドアの群れを駆逐する等……」

 

「そんなもんどうでもいい。オレが知りたいのはお前が魔法を普通に使えていた理由だ。それを知るためにわざわざ助けたんだからな」

 

「……少なくともヤツの手先ではなさそうだな」

 

「ヤツ?」

 

「こちらの話だ。不本意ではあるが貴様達に助けられたからな。質問にはちゃんと答えよう」

 

 

一応答えてくれそうなのでソウジは狩人少女に理由を問い質す事にした。

 

 

「離れてほしいなら私の仲間も助けてください!!」

 

「マジでふざけるなクソウサギ!!」

 

 

後ろから聞こえる図太過ぎるウサミミ少女とハジメのやり取りを無視して……

 

 

 




オリヒロ······いいよね?オリヒロでもいいよね?
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