魔王の剣   作:厄介な猫さん

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今まで投稿した話の幾つかを加筆修正してるけど……二次創作だからセーフだよね?
加筆修正の理由は読み返してこれ、不自然では?と感じたからです。にわかと未熟を痛感します……
てな訳でどうぞ。


鍵と指輪

三人の祝詞のような言葉と共に完成した帰還用のアーティファクト―――“クリスタルキー”が完成した。しかし、魔力を使いきったことで、三人はクリスタルキーを囲ったまま再度気絶してしまった。

それもすぐにアタランテ達が駆け寄り、魔晶石から魔力を分け与えたことですぐに意識を取り戻したが。

 

 

「加減がよくわからなかったから、取り敢えず全力でやったんだが……」

 

「……大丈夫。何となくコツは掴んだ。次からは調整できる」

 

「その“次”もぶっ倒れる前提でやるけどな。加減して半端なアーティファクトになるのは論外だし」

 

 

ソウジのその言葉に、ハジメとユエ、アタランテは確かにと頷き、シア達はまた気絶する程の力でアーティファクトを作るのかと苦笑いする。

 

 

「そのアーティファクトはやっぱり……ユエとアタランテへの干渉を防ぐためのものね?」

 

「ああ。でもまずは……」

 

 

ソウジはそう言って、自身の魔眼石でクリスタルキーの出来を確認しているハジメに顔を向ける。ソウジも魔眼石でクリスタルキーを確認すると、今までのアーティファクトと比べ物にならない魔力が宿っていることが分かる。

 

 

「どうだ?ハジメ」

 

「……会心の出来だ。導越の羅針盤同様、デカイ力を感じる」

 

 

ハジメは満足げな笑みを浮かべながら、“導越の羅針盤”を取り出す。クリスタルキーは“望んだ場所への扉を開く”アーティファクトだが、ある程度の目的地との距離や繋げる場所のイメージが出来なければ空間を繋げることが出来ないのだ。

なので、“導越の羅針盤”で場所を特定し、“ゲートキー”をイメージして目的地の場所を繋げたのだが……

 

 

「この石板は貴様の罪の重さだ。じっくりと噛み締めるがいい」

「ああ~ん!そんなに石を乗せないで~!」

 

 

その繋げた場所で、カムがアルテナに石抱きの刑を実行しているところだった。石板の数は……四つだ。そしてお約束の如く、アルテナは顔を赤めて悦んでいる。

この光景にハジメとユエ、ソウジとアタランテ、シアとフィア以外のメンバーが何とも言えない表情となる。ティオは当然の如く鼻息を荒げていたが。

 

 

「ボ、ボスに教官!?なぜこんな場所にボスのゲートが!?」

 

 

五つ目の石板を抱えていたカムがこちらに気付いて驚愕したように声を上げるも、瞳からハイライトを消したシアが無言で砲撃モードのドリュッケンを構え……一切の躊躇もなく炸裂スラッグ弾を放った。

 

 

「ぎゃああああああ!!」

 

「あぁああああん!!」

 

 

爆音と共に響くカムとアルテナの悲鳴。それを最後にハジメはゲートを閉めた。そして、クリスタルキーをソウジに渡すと、ハジメはユエと共にシアの慰めに入るのだった。

 

 

「……初めての試みで手際の悪さは目立ったが、元の世界に帰る手段は、無事に手に入ったぞ」

 

 

気を取り直すようにクリスタルキーを皆に見せつけるように掲げ、力強く宣言するソウジ。その言葉を皮切りに、召喚組は歓声に沸き上がった。ずっと暗い表情だった天之河でさえ、薄らと微笑むほどに。

 

 

「だが、まだ召喚防止用の概念の創造が残っている。まずは“特別”への干渉を防ぐ概念作りでコツを掴もうとは思うが……こっちは試行錯誤の繰り返しになるだろうな。だから、今すぐ帰るというわけにはいかない」

 

「そこは仕方ないわよ。これは南雲君にも言えることだけど……空山君は本当に、すごいわ。諦めずに、やり遂げたんだから……」

 

 

八重樫のその言葉に、何故か様々な意味が含まれている気がしたソウジは、戸惑ったように視線を泳がせる。谷口に坂上、ハジメに抱きついた香織も同意するように頷いていることもあり、何とも言えない気分となる。

八重樫の本音としては、このままソウジに甘えたかったが……天之河の精神を考慮してそこは我慢した。後でこっそり手を繋ごうと考えてはいたが。

八重樫のその心情だけは察せたがスルーしつつ、ソウジは次の予定を口にする。

 

 

「十分に魔力が回復したら、再びアーティファクトの作製に取り掛かる。クリスタルキーも全力だったが、今度は更なる全力を注ぐつもりだ」

 

 

何処まで通用するかは定かでない以上、下手に加減して失敗に終わるのはもっての他と言外に告げるソウジ。それに対して天之河が手を上げて質問した。

 

 

「……本当にできるのか?帰還用のアーティファクトで全部の魔力を使いきったのに……」

 

「そこも問題ない。次は“変換回復”……ハジメは“蓄雷”で貯めた電気を魔力に還元することで自身の内包する以上の魔力を注ぐつもりだ。オレとハジメだけじゃ難しいだろうが、魔法の天才のユエがいるから大丈夫だろ」

 

「…………」

 

 

ソウジのその返しに、天之河は暗い表情で無言となる。八重樫たちはまた魔力の嵐に晒されるのかと苦笑いしているが。

 

 

「どっちにしろしばらくはここで休憩と足止めだ。その間に休息なり鍛練なり好きに行動すればいい。樹海に“ゲートホール”は置いてあるから、後は勝手にしろ」

 

 

最後だけは投げやり気味であったが、このまま魔人族の国に向かうのは無謀であることは理解している為、谷口はハジメから“ゲートキー”と“ゲートホール”を借りてさっそく樹海の魔物を従えに行った。坂上も谷口に着いていき、八重樫は唯一攻略できなかった天之河を気遣って居残することにしたが。

そこから数時間経ち、樹海から谷口と坂上が魔物の群れを従えて戻ってきた。

 

 

「帰ったか。首尾はどうだ」

 

「うん。十数体、従えることはできたよ」

 

「俺はさっぱりだったぜ!」

 

 

坂上が実にいい笑顔で告げた瞬間、ハジメのドンナーが火を吹いた。

 

 

「危ねぇ!?いきなり撃つなよ南雲!」

 

「……お前には昇華魔法もあるのに、一体も従えられないとかマジでふざけるなよ?この脳筋が」

 

 

ソウジの施した魔改造で通常の銃撃を避けるくらいに反応が良くなった坂上に舌打ちしつつ、ハジメは鋭い視線を向ける。そんなハジメに向かって、谷口が嘆息混じりに口を開いた。

 

 

「龍太郎くんも鈴と同じように魔物を従えようとしたんだけど、どの魔物も龍太郎くんに牙を向けたんだよ。“我を従えたくば、力を示せ”といった感じで」

 

「それでぶん殴って証明したらよ、“それほど強いなら我の力なぞ不要だろう”って感じで去っちまってな。意外と根性がないんだな」

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

 

完全な魔改造の弊害に、ハジメを含めた一同がソウジに視線を向ける。脳筋悪化に対する批難の眼差しを向けられたソウジは顔を明後日の方向に向け、誤魔化しに走っている。

 

 

「……完全な宝の持ち腐れ」

 

「いやいや!ちゃんと使い方は考えたんだって!今からそれを披露するから見ててくれ」

 

 

ユエの辛辣な指摘に坂上はそう弁明すると、魔石を手に詠唱を始めていく。

 

 

「―――“天魔転変”!」

 

 

坂上が最後に魔石を掲げて魔法名を告げると、坂上の姿が漫画などに出てくるリザードマンのような姿となった。

 

 

「どうだ?魔物を従えなれないなら、俺自身が魔物になって戦えばいけるだろ?」

 

「……本来は上級魔法クラス」

 

「さすが脳筋。俺らの想像を超えてきたな」

 

 

本来は魔物を従えたり、強化したりするよりも難易度が高い方法にも関わらず、あっさりとやってのけた事にハジメは逆に感心してしまう。それは香織と八重樫も同じだったようで、コクコクと頷いている。

そこでふと、ソウジはあることを思い出した。

 

 

「そういえばハジメ。あの時のウザ鳥―――エアノスの魔石がまだあったよな?」

 

「ああ……あの時苦しめられたウザ鳥の魔石か。下手に売るわけにもいかなかったから、確かにまだ残ってるな。偶然だったから、内の一つはお前の技で粉々だったが……そうか」

 

 

ハジメはそこでソウジの意図に気付いたのか、“宝物庫”にしまってあったエアノスの魔石を取り出す。その魔石を坂上に向かって放り投げた。

 

 

「この魔石は?」

 

「それは魔人族側の攻略者が作った魔物の魔石だ。使えるかどうかは分からないけどな」

 

「仮に使えなくても、調べれば何かしらの足掛かりにはなるだろ。例の《キライマスシリーズ》関連の魔石だからな」

 

 

ソウジのその言葉を聞き、勇者パーティーはその魔石へと視線を向ける。そして、どうしてその魔石を持っていたのかと視線で二人に訴えかけた。

 

 

「別に最初から狙っていたわけじゃない。偶然手に入ったも同然のもんだ」

 

「【グリューエン大火山】攻略の時に、あの野郎の襲撃を受けたんだよ。不意討ちもあって俺もソウジもボロボロになったが、その戦闘で撃破した際に回収したんだよ。ソウジが肉目的で」

 

 

ハジメのその言葉でパワーアップ目的で回収し、二人で食べたのだと悟った八重樫達は苦笑いするしかない。

 

 

「ソイツは奇声による状況異常付与と催眠、嵐を身に纏って自在に放つという固有魔法を持っていた。一つの身体に二つの魔石を埋め込んでいたから、片方しか使えないだろうが……」

 

「仮にもお前達に苦戦を強いた魔物と同格の魔石だ。決して損にはならないだろ」

 

 

その言葉を聞き終えると、谷口がさっそくその魔石を変成魔法で調査を始めていく。それを尻目にハジメとソウジは魔力の回復に努めるのであった。

 

 


 

 

“クリスタルキー”が出来上がった次の日。ハジメ、ソウジ、ユエは再びアーティファクトの作製に取り掛かっていた。

 

 

「何か、昨日より魔力の圧がスゲェな……」

 

「帰還用のアーティファクトよりも力が籠っているわね。当然と言えば当然なんだけど」

 

 

昨日の魔力の奔流が嵐であるとすれば、今日の魔力の奔流は津波だと感じながら、八重樫はアーティファクトを作製している三人を見つめる。

何せ、昨日ソウジが宣言した通り、自前の魔力だけでなく別口から得られる魔力も注いでいるのだ。まさに、文字通りすべてを注いで作り上げようとしている。

 

 

「…………」

 

 

それに対し、ソウジの最愛であるアタランテは黙って見守っていた。彼女も強烈な魔力の圧を感じているが、微塵も怯むことなく、むしろ微笑を浮かべていた。

その理由は単純。それだけ強く想われているのだと、強く、強く感じ取れているからだ。

そんな彼女らが見守る中、三人の口から込められた概念が紡がれる。

 

 

「「「―――“何者にも特別は奪わせない”」」」

 

 

ハジメとソウジの帰還以上の極限の意志が、見守っている一同にひしひしと伝わる。昨日はハジメとソウジの意志にユエが寄り添う感じだったが、今回は共にあり続けるかのように三色の魔力が流れているのだ。

そして、“クリスタルキー”同様、神結晶をメインにして出来上がったのは、紅と蒼の結晶に金の装飾が施された、四つの指輪だった。

その指輪―――“エクストラリング”が完成すると同時に、三人は魔力枯渇によって倒れることとなった。さすがに二度目とあって、すぐに魔晶石から魔力を与えられて意識を取り戻したが。

 

 

「これは……ペアリングだよね?」

 

「ああ。昨日の“クリスタルキー”もそうだったが、込められた概念に相応しい形状になるんだよ」

 

「……ペアリングということは、二つで一つのアーティファクトかの?」

 

 

ティオのその質問に対し、ハジメは頭を振る。

 

 

「いや、一つでもしっかりと機能するさ。ペアリングなのはさっきも言ったが、込められた概念に相応しい形状だからだ。“互いに特別を奪わせない”……その想いも含まれているからな」

 

 

ハジメのその言葉を聞き、一同は確かにと頷く。ハジメとソウジがそれぞれの“特別”を大切に想っているように、その“特別”である彼女達も同様に想っているのだから。

そして、ハジメとソウジは互いに“エクストラリング”を二つ拾うと、その出来を確かめ合う。昨日の“クリスタルキー”に匹敵……もしくはそれ以上の力を感じ、間違いなく今までの中で最高傑作だと確信する。

そして二人は、それぞれの特別へと向き直った。

 

 

「本来なら、左手にはめるべきなんだが……」

 

「……大丈夫。それに、ハジメとお揃いだから」

 

 

ユエのその言葉にハジメは微笑み、“エクストラリング”をユエの右手の薬指にはめる。ユエも手渡されたもう一つの“エクストラリング”をハジメの右手の薬指へとはめた。

 

 

「右手の薬指は恋人同士の証明……もしくは結婚しても恋人でいようという意思表示……!」

 

「右手の薬指にはそんな意味が……!私も必ずハジメさんと……!」

 

「妾もご主人様と……」

 

 

まさに指輪交換。そんな素晴らしくも羨ましい光景を前に、ハジメハーレムの面々は自分たちも必ず!と意気込んでいた。

ソウジの方も当然、お互いに“エクストラリング”をはめ合っていた。それも左手の薬指に。

 

 

「……確かに大きな力を感じる。これなら、最悪は避けられるかもしれないな」

 

「少なくとも、魂は守り通せる筈だ」

 

「良かったですね、アタランテ様」

 

「ええ。風の噂に聞く、腐敗物に排泄物を混ぜ合わせた程に腐り切っている邪神の反応が楽しみですね♪」

 

 

ジークリンデとフィアは気遣うように微笑みつつも、内心では今の光景を自分達に置き換えて楽しんでいた。フィアはまだしも、常識枠であった筈のジークリンデも大分染められてしまったようである。

 

 

「オロロロロロッ」

 

「……ウエェ」

 

「…………」

 

 

その砂糖をこれでもかと大量投入した桃色空間を前に、坂上は見事に滝の如く吐糖し、谷口も限界を迎えたように吐糖したが。

八重樫は無言で両手で顔を覆いながらも、指の隙間からしっかり覗き見ていた。それもジークリンデとフィアと同じく夢想して。

 

 

「……っ」

 

 

そして天之河はそんなハジメとソウジ……否、ソウジと八重樫を見て顔を俯かせていた。まるで胸中の黒いモヤモヤを抑え込むかのように。

こうして“特別”への干渉防止用アーティファクト“エクストラリング”は四人の指へと収まるのであった。

 

 

 




「ん?ここにあった保存食はどうした?」

「誰かが勝手に食べたんじゃないのか?」

「それもそうか。後で修正しないとな」

「…………」

~~~~

「今、誰が使用しているんだ?」

「トイレくらい、誰かが別に使っててもいいだろ」

「それもそうだな。我ながら変なことを言ったな」

「まったくだ。マキアス様の研究室で倒れていた奴と同じくらいにな」

「……素直に安心できないんだけど」

「……」(ポンポン)

影が薄すぎて未だにバレていない遠藤と、そんな遠藤を慰める相棒の図。
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